電波でんぱ

アンテナ（中央ちゅうおう）から電波でんぱが放射ほうしゃされる様子ようすを表あらわした図ず

ダイポールアンテナが電波でんぱを受信じゅしんする様子ようすを表あらわす模も式しき図ず。緑みどりの矢印やじるしが電波でんぱによる電界でんかいであり、黒くろの矢印やじるしが電流でんりゅうである。

電波でんぱ（でんぱ、（英えい: radio wave）とは、電磁波でんじはのうち、比較的ひかくてき周波数しゅうはすうの低ひくい（波長はちょうの長ながい）ものを指さす。日本にっぽんの電波でんぱ法ほうなどでは300万まんメガヘルツ以下いかのものと定義ていぎされる。

概説がいせつ

電磁波でんじはの存在そんざいを初はじめて実証じっしょうしたハインリヒ・ヘルツは著書ちょしょ『Electric Waves』（1893年ねん）の中なかで、電磁波でんじはを「Electromagnetics wave in air（空中くうちゅうの電磁波でんじは）」と「The propagation of electric Waves bymeans of wire（線上せんじょうの電磁波でんじは）」に区別くべつしており、電波でんぱに関かんする国際こくさい機関きかんITU-Rにおけるradio waveの定義ていぎも

radio waves or hertzian waves:Electromagnetics waves of frequencies arbitrarily lower than 3000GHz,propagated in space without artificial guide. — 『ARTICLE 1 Terms and definitions,1.5』、ITU（1992）

とあるように、「人工じんこう的てきなガイドなしで空中くうちゅうを伝搬でんぱんする電磁波でんじは」であることを明確めいかく化かしている。

用途ようと

電波でんぱの用途ようととしては、次つぎのようなものを挙あげることができる。

• 通信つうしん・放送ほうそう 類るい
  • 放送ほうそう（地上波ちじょうはや衛星えいせい放送ほうそう。ラジオやテレビ）
  • 行政ぎょうせい無線むせん（防災ぼうさい無線むせん、警察けいさつ無線むせん、消防しょうぼう無線むせんなど）
  • 業務ぎょうむ無線むせん（船舶せんぱく無線むせん、航空こうくう管制かんせい、鉄道てつどう無線むせん、マルチチャネルアクセス無線むせんなど）
  • アマチュア無線むせん
  • 携帯けいたい電話でんわ（スマートフォン、フィーチャーフォン、PHS、衛星えいせい電話でんわなど）
  • コードレス電話でんわ
  • 遠隔えんかくのデータ取得しゅとく（テレメータ、ラジオゾンデなど）
  • 近距離きんきょりのデータ送受そうじゅ（無線むせんLAN、Wi-Fi、Bluetoothなど。またVICSも）
• 遠隔えんかく操作そうさ（ラジコン）
• 位置いち測定そくてい（GPS、ロランなど）
• レーダー
• 加熱かねつ（電子でんしレンジなど）
• 核かく磁気じき共鳴きょうめい分光ぶんこう法ほう
• 電子でんしスピン共鳴きょうめい

歴史れきし

1864年ねんにジェームズ・クラーク・マクスウェルは「光ひかりは波なみの姿すがたをした電磁でんじ散乱さんらんである」と予測よそくした。それから13年ねん後ごの1887年ねんにハインリッヒ・ヘルツがマクスウェルの方程式ほうていしきから光ひかりよりも周波数しゅうはすうの低ひくい電磁波でんじは（電波でんぱ）の姿すがたを推測すいそくし、電磁波でんじはの発生はっせいと検出けんしゅつを可能かのうとする実験じっけん機器ききを考案こうあん制作せいさくしてその存在そんざいを実証じっしょうした。

今日きょう、電波でんぱは英語えいごでは"Radio wave"もしくは"Hertzian wave"と呼よばれており、"Radio"と略りゃくして呼よばれる場合ばあいもある。CCIR（現在げんざいのITU-R）の基金ききんが設立せつりつされた1927年ねんに世界せかい的てきな公用こうよう語ごとして定着ていちゃくした。一方いっぽう、1904年ねんにイギリスの郵便ゆうびん局きょくが無線むせん電信でんしんをRadioと称しょうしたことから、Radioは空間くうかんに適てきした周波数しゅうはすう帯たいの電磁波でんじはを使用しようして情報じょうほうを搬送はんそうする技術ぎじゅつ・機器きき・システムを指さす語かたりとして一般いっぱんに使つかわれるようになった。

日本語にほんごの「電波でんぱ」という訳語やくごは明治めいじ26年ねん（1893年ねん）に逓信ていしん省しょう技師ぎしの伊藤いとう潔きよしが著あらわした『電気でんき訳語やくご集しゅう』が初出しょしゅつと考かんがえられる。『電気でんき訳語やくご集しゅう』では、"Electric wave"の訳わけとして「電波でんぱ」を充あてている。その後ご「電波でんぱ」の用例ようれいは増ふえていったが、大正たいしょう4年ねん（1929年ねん）の無線むせん電信でんしん法ほうには「電波でんぱ」の文字もじはない。昭和しょうわ25年ねん（1950年ねん）に制定せいていされた電波でんぱ法ほうによって現代げんだいの「電波でんぱ」が公用こうよう語ごとして定義ていぎされた。

電波でんぱにおける電磁でんじスペクトル

→「電磁でんじスペクトル」および「電波でんぱの周波数しゅうはすうによる分類ぶんるい」も参照さんしょう

周波数しゅうはすうと対応たいおうする波長はちょうによって電波でんぱは以下いかの周波数しゅうはすう帯たいに分割ぶんかつされる。

周波数しゅうはすう帯たい	略称りゃくしょう	ITU基準きじゅん	周波数しゅうはすう	波長はちょう	用途ようと例れい
			3Hz以下いか	100,000km以上いじょう
極極ごくごく極ごく超ちょう長波ちょうは	ELF	1	3 - 30Hzへるつ	10,000 - 100,000km	潜水せんすい艦かんの通信つうしん
極極ごくごく超ちょう長波ちょうは	SLF	2	30 - 300Hzへるつ	1,000 - 10,000km
極ごく超ちょう長波ちょうは	ULF	3	300 - 3000Hzへるつ	100 - 1,000km	鉱山こうざんにおける通信つうしん
超ちょう長波ちょうは	VLF	4	3 - 30kHz	10 - 100km	無線むせん心拍しんぱく計けい 地球ちきゅう物理ぶつり学がく
長波ちょうは	LF	5	30 - 300kHzきろへるつ	1 - 10km	電波でんぱ航法こうほう 電波でんぱ時計とけい 長波ちょうは放送ほうそう（一部いちぶの国くにでのAM放送ほうそう）
中波ちゅうは	MF	6	300 - 3000kHzきろへるつ	100m - 1km	中波ちゅうは放送ほうそう（多おおくの国くにでのAM放送ほうそう） 雪崩なだれビーコン
短波たんぱ	HF	7	3 - 30MHz	10 - 100m	短波たんぱ放送ほうそう アマチュア無線むせん 業務ぎょうむ無線むせん 核かく磁気じき共鳴きょうめい分光ぶんこう法ほう
超ちょう短波たんぱ	VHF	8	30 - 300MHz	1 - 10m	超ちょう短波たんぱ放送ほうそう（FM放送ほうそう） VHFテレビ放送ほうそう 業務ぎょうむ通信つうしん 核かく磁気じき共鳴きょうめい分光ぶんこう法ほう
極ごく超ちょう短波たんぱ	UHF	9	300 - 3000MHz	100mm - 1m	UHFテレビ放送ほうそう（地ちデジ含ふくむ） 電子でんしレンジ 携帯けいたい電話でんわ 無線むせんLAN Bluetooth GPS 業務ぎょうむ通信つうしん 核かく磁気じき共鳴きょうめい分光ぶんこう法ほう
センチメートル波は	SHF	10	3 - 30GHz	10 - 100mm	ETC 無線むせんLAN 5G 衛星えいせい放送ほうそう 最新さいしんレーダー 電子でんしスピン共鳴きょうめい
ミリ波は	EHF	11	30 - 300GHz	1 - 10mm	電波でんぱ天文学てんもんがく 高速こうそく中継ちゅうけい放送ほうそう 最新さいしんレーダー（ミリ波はレーダー） 電子でんしスピン共鳴きょうめい
サブミリ波は			300GHz以上いじょう	1mm以下いか

日本にっぽんでの規定きてい

質しつの規定きてい

電波でんぱ法ほう第だい28条じょうに「送信そうしん設備せつびに使用しようする電波でんぱの周波数しゅうはすうの偏差へんさ及および幅はば、高調こうちょう波はの強度きょうど等とう電波でんぱの質しつは、総務そうむ省令しょうれいで定さだめるところに適合てきごうするものでなければならない。」と規定きていしている。これを受うけた無線むせん設備せつび規則きそくには、第だい1章しょう総則そうそく第だい2節電せつでん波はの質しつとして、第だい5条じょうから第だい7条じょうに「周波数しゅうはすうの許容きょよう偏差へんさ」、「占有せんゆう周波数しゅうはすう帯たい幅はばの許容きょよう値ち」、「スプリアス発射はっしゃ又または不要ふよう発射はっしゃの強度きょうどの許容きょよう値ち」があり、具体ぐたい的てきな値ねは別表べっぴょう第だい1号ごうから第だい3号ごうに規定きていするものとしている。

広域こういき使用しよう電波でんぱという線引せんひき

電波でんぱ法ほう第だい103条じょうの2第だい2項こうに「広範囲こうはんいの地域ちいきにおいて同一どういつの者ものにより相当そうとう数すう開設かいせつされる無線むせん局きょくに専もっぱら使用しようさせることを目的もくてきとして別表べっぴょう第だい7の上うえ欄らんに掲かかげる区域くいきを単位たんいとして総務そうむ大臣だいじんが指定していする周波数しゅうはすう（6000MHz以下いかのものに限かぎる。）の電波でんぱ」と規定きていしている。 広域こういき使用しよう電波でんぱの指定していは、電波でんぱ法ほう施行しこう規則きそく第だい51条じょうの9の9に「総務そうむ大臣だいじんが別べつに告示こくじにより行おこなうものとする。」とされ、この規定きていに基もとづき告示こくじされる。

この規定きていは、電波でんぱ利用りよう料りょうの算定さんていに際さいし、電波でんぱの経済けいざい的てき価値かちに応おうじて負担ふたんする考かんがえ方かたを導入どうにゅうしたもので、携帯けいたい電話でんわなど特定とくてい無線むせん局きょくとして包括ほうかつ免許めんきょされるものについて適用てきようされ、使用しようする周波しゅうは数すう幅ぶくに応おうじて増減ぞうげんされる。当初とうしょの上限じょうげんは3000MHz以下いかであったが後のちに6000MHz以下いかとなった。なお、導入どうにゅうの検討けんとう時じから「広域こういき専せん用よう電波でんぱ」という文言もんごんが使用しようされ、電波でんぱ法ほう改正かいせい後ごでもこの語かたりを使用しようした記事きじがあるが、これは誤字ごじである。

関連かんれん項目こうもく

• 電波でんぱの周波数しゅうはすうによる分類ぶんるい - アマチュア無線むせんの周波数しゅうはすう帯たい
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• 非ひ電離でんり放射線ほうしゃせん
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• 電波でんぱ系けい

外部がいぶリンク

• 電波でんぱ利用りようホームページ
• Signal Identification Guide（無線むせん信号しんごう同定どうていガイド）
• 情報じょうほう通信つうしん振興しんこう会かい
  • 情報じょうほう通信つうしん法令ほうれいwiki - 用語ようご解説かいせつ
    • 電波でんぱ 2016年ねん7月がつ10日とおか時点じてんでのウェイバックマシン
    • 電波でんぱの質しつ 2021年ねん9月がつ5日にち時点じてんでのウェイバックマシン