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OSI参照さんしょうモデル

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

OSI参照さんしょうモデル(OSIさんしょうモデル、えい: OSI reference model)は、コンピュータネットワーク利用りようされている多数たすうプロトコルについて、それぞれの役割やくわり分類ぶんるいし、明確めいかくするためのモデルである[1]国際こくさい標準ひょうじゅん機構きこう (ISO) によって策定さくていされた。OSI基本きほん参照さんしょうモデルOSIモデルなどともばれ、通信つうしん機能きのう通信つうしんプロトコル)を7つの階層かいそうけて定義ていぎしている。

概要がいよう

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OSI参照さんしょうモデルあいだ通信つうしんれいだい3そうからだい5そう

OSI参照さんしょうモデルは、1977ねんから1984ねんにかけて定義ていぎされたOSIのために策定さくていされた。OSI自体じたい普及ふきゅうせず、OSI参照さんしょうモデルだけがネットワークの基礎きそ知識ちしきとしてひろまったものである。現在げんざい幅広はばひろくに利用りようされているEthernetTCP/IPとは適合てきごうしていないという主張しゅちょう[2]、ネットワークを理解りかいするためのモデルとして不適切ふてきせつであるという意見いけんがある[3]タネンバウムは、OSI参照さんしょうモデルは参照さんしょうモデルとしては仕様しよう実装じっそう区別くべつをしているてん有用ゆうようだが、プレゼンテーションそうとセッションそう不要ふようだったとしている[4]実際じっさい、これらさい上位じょういの3そうはアプリケーションそうとして1つにまとめられることがおお[5]

OSI参照さんしょうモデルは ISO 7498 として規格きかくされ、のちITU-Tでは X.200[6]JISでは JIS X5003 として、どういち内容ないよう定義ていぎしている。ITU, JISともにネットで規格きかく文書ぶんしょ公開こうかいしており、通信つうしん規約きやく規定きていする技術ぎじゅつ仕様しよう記述きじゅつするじょうでの出発しゅっぱつてんとしてもちいることができる。

レイヤー構成こうせい

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国際こくさい標準ひょうじゅん機構きこう (ISO) によって制定せいていされた、機種きしゅあいだタ通信たつうしん実現じつげんするためのネットワーク構造こうぞう設計せっけい方針ほうしん開放かいほうがたシステムあいだ相互そうご接続せつぞく (Open Systems Interconnection、OSI)」にもとづいて通信つうしん機能きのう以下いかの7かいそうレイヤ)に分割ぶんかつする。

だい7そう : アプリケーションそう[注釈ちゅうしゃく 1]
具体ぐたいてき通信つうしんサービス(たとえばファイル・メール転送てんそう遠隔えんかくデータベースアクセスなど)を提供ていきょうHTTPFTPなどの通信つうしんサービス。
だい6そう : プレゼンテーションそう
データの表現ひょうげん方法ほうほうたとえばEBCDICコードテキストファイルASCIIコードのファイルへ変換へんかんする)。
だい5そう : セッションそう
通信つうしんプログラムあいだ通信つうしん開始かいしから終了しゅうりょうまでの手順てじゅんたとえば接続せつぞく途切とぎれた場合ばあい接続せつぞく回復かいふくこころみる)。
だい4そう : トランスポートそう
ネットワークのはしからはしまでの通信つうしん管理かんりエラー訂正ていせい再送さいそう制御せいぎょなど)。
だい3そう : ネットワークそう
ネットワークにおける通信つうしん経路けいろ選択せんたくルーティング)。データ中継ちゅうけい
だい2そう : データリンクそう
直接的ちょくせつてき隣接りんせつてき)に接続せつぞくされている通信つうしん機器ききあいだ信号しんごうわたし。
だい1そう : 物理ぶつりそう
物理ぶつりてき接続せつぞく。コネクタのピンのかず、コネクタ形状けいじょう規定きていなど。どうせんひかりファイバあいだ電気でんき信号しんごう変換へんかんなど。

下記かきは、OSIモデルの各層かくそうごとのプロトコルやサービスのれいである。ただし上述じょうじゅつのようにOSIモデルはOSI準拠じゅんきょプロトコルのための参照さんしょうモデルであり、OSIスイート以外いがいはOSIモデルに沿って設計せっけい開発かいはつされるわけではない。このため、したれいはあくまで「かりにOSIでえばどのそう相当そうとうするとおもわれる」程度ていど参考さんこうである。

実際じっさいには、一部いちぶのプロトコルやサービスは、OSIモデルのどのそうぞくするかについて、いくつかのことなる見解けんかい存在そんざいする。また複数ふくすうそうまたがっているものもある。図示ずしれいはあくまでもいち見解けんかいぎない。

これらのれいほかにも、いくつかの教科書きょうかしょでは、理解りかいたすけるための参考さんこう資料しりょうなどとして、SNAの7階層かいそうTCP/IPモデル沿っているプロトコルなどを、このOSIのモデルに対応付たいおうづけしたひょうなどがられる。これについては、IETFなどがインターネット・プロトコル・スイート開発かいはつはOSIに準拠じゅんきょする意図いとはないとしている。

そうべつれい

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そうべつ・プロトコルスイートべつれい

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そう れい・その IP suite、TCP/IP SS7[7] AppleTalk suite OSI suite IPX/SPX SNA UMTS
# 名称めいしょう
7 アプリケーションそう HL7, Modbus NNTP, SIP, SSI, DNS, FTP, Gopher, HTTP, NFS, NTP, DHCP, SMPP, SMTP, SNMP, Telnet, RIP, BGP INAP, MAP, TCAP, ISUP, TUP AFP, ZIP, RTMP, NBP FTAM, X.400, X.500, DAP, ROSE, RTSE, ACSE RIP, SAP APPC
6 プレゼンテーションそう TDI, ASCII, EBCDIC, MIDI, MPEG MIME, XDR, SSL, TLS (Not a separate layer) AFP ISO/IEC 8823, X.226, ISO/IEC 9576-1, X.236
5 セッションそう 名前なまえきパイプ, NetBIOS, SAP, Half Duplex, Full Duplex, Simplex, SDP Sockets. Session establishment in TCP. SIP. (Not a separate layer with standardized API.), RTP ASP, ADSP, PAP ISO/IEC 8327, X.225, ISO/IEC 9548-1, X.235 NWLink DLC?
4 トランスポートそう NBF TCP, UDP, SCTP DDP ISO/IEC 8073, TP0, TP1, TP2, TP3, TP4 (X.224), ISO/IEC 8602, X.234 SPX
3 ネットワークそう NBF, Q.931, IS-IS インターネットそう,IP, IPv4,IPv6,IPsec, ICMP, IGMP, OSPF SCCP, MTP ATP (TokenTalk or EtherTalk) ISO/IEC 8208, X.25 (PLP), ISO/IEC 8878, X.223, ISO/IEC 8473-1, CLNP X.233. IPX RRC PDCP and BMC
2 データリンクそう 802.3 (Ethernet), 802.11a/b/g/n MAC/LLC, 802.1Q (VLAN), ATM, HDP, FDDI, Fibre Channel, フレームリレー, HDLC, ISL, PPP, Q.921, トークンリング, CDP, ARP (maps layer 3 to layer 2 address), ITU-T G.hn DLL リンクそう,PPP,媒体ばいたいアクセス制御せいぎょ,イーサネット, SLIP, PPTP, L2TP MTP, Q.710 LocalTalk, AppleTalk Remote Access, PPP ISO/IEC 7666, X.25 (LAPB), トークンバス, X.222, ISO/IEC 8802-2 LLC Type 1 and 2 IEEE 802.3 framing, Ethernet II framing SDLC LLC , MAC
1 物理ぶつりそう RS-232, V.35, V.34, I.430, I.431, T1, E1, 10BASE-T, 100BASE-TX, POTS, SONET, SDH, DSL, 802.11a/b/g/n PHY, ITU-T G.hn PHY MTP, Q.710 RS-232, RS-422, STP, PhoneNet X.25 (X.21bis, EIA/TIA-232, EIA/TIA-449, EIA-530, G.703) Twinax UMTS L1

歴史れきし

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1970年代ねんだいちゅうごろ、ネットワーク機器きき各社かくしゃ独自どくじネットワークアーキテクチャー次々つぎつぎ発表はっぴょうされはじめた。IBMSNADECのDNA、富士通ふじつうFNA日立製作所ひたちせいさくしょのHNA、日本電気にほんでんき(NEC)のDINA電電でんでん公社こうしゃDCNAなどである。機器ききひとつのメーカーせいそろえられるのであれば問題もんだいいが現実げんじつてきにはむずかしく、ことなる機種きしゅ同士どうし接続せつぞくするための標準ひょうじゅんいそがれていた。

ISO(国際こくさい標準ひょうじゅん機構きこう)の情報処理じょうほうしょりシステム技術ぎじゅつ委員いいんかい1977ねん3がつにSC 16を設置せっち、OSIの国際こくさい標準ひょうじゅん開始かいしする。

しかし、CCITT[注釈ちゅうしゃく 2]国際電信電話こくさいでんしんでんわ諮問しもん委員いいんかい)がOSI参照さんしょうモデルあん参考さんこうとして独自どくじ検討けんとう開始かいし。CCITTとSC 16での意見いけんのすりわせをおこない、基本きほんてき意見いけん合意ごうい1982ねんにトランスポートそう標準ひょうじゅん1983ねんにセッションそう標準ひょうじゅん草稿そうこう完成かんせい

1984ねん情報処理じょうほうしょりシステム技術ぎじゅつ委員いいんかいはSC 16からSC 21にOSIの標準ひょうじゅんがせ、1985ねん応用おうようそうしんプロトコルを標準ひょうじゅん項目こうもく追加ついかした。その現在げんざいまで、拡張かくちょうあらたなプロトコルの制定せいていつづけられている。[よう出典しゅってん]

その当初とうしょ予定よていでは、OSI参照さんしょうモデルをもとに、準拠じゅんきょした通信つうしん機器ききやソフトウェアが開発かいはつ製品せいひんしていくはずであった。TCP/IPが1990ねんだいなかごろから急速きゅうそく普及ふきゅうしたため、OSI準拠じゅんきょ製品せいひん普及ふきゅうしないまま、現在げんざいいたる。

回線かいせん速度そくど通信つうしん速度そくど

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ISDNADSLやIEEE 802.3などで表記ひょうきされる回線かいせん速度そくどだい2そうのことであり、たとえばファイル転送てんそう計測けいそくする通信つうしん速度そくどとはことなる。ファイル転送てんそう計測けいそくする速度そくどじつアプリケーションから速度そくどであって、通常つうじょうだい3そう以上いじょう各種かくしゅ制御せいぎょ情報じょうほう付記ふきされるため、回線かいせん事業じぎょうしゃうた回線かいせん速度そくどより若干じゃっかんひくとなる。

比喩ひゆ

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米国べいこくでは、OSI参照さんしょうモデルの7階層かいそうモデルを拡張かくちょうして技術ぎじゅつてきでないことまでししてしまう、というジョークもある。られているのは10階層かいそうモデルであり、「だい8そうユーザそう」「だい9そう財務ざいむそう」「だい10そう政治せいじそう」あるいは「だい8そうかねそう」「だい9そう政治せいじそう」「だい10そう宗教しゅうきょうそう」などとなっている。

ネットワーク技術ぎじゅつしゃが「だい8そう問題もんだいだよ」とっていれば、それは「ネットワーク自体じたいには問題もんだいくて、エンドユーザ問題もんだいがあるんだよ」という意味いみである。同様どうように、財務ざいむそう問題もんだいがあるとはコストのめん問題もんだいがあるということ。おかね解決かいけつできることはけっしてすくなくない。政治せいじそうは、社内しゃない政治せいじ導入どうにゅう関連かんれんするSI同士どうし競合きょうごうによって導入どうにゅうできる技術ぎじゅつ仕様しよう制限せいげんがかかる、といった状況じょうきょうす。宗教しゅうきょうそうは「しんずるもの」の意味いみである。導入どうにゅう責任せきにんしゃ技術ぎじゅつ志向しこうせい信念しんねんなどに相当そうとうする。

OSIモデルをタコベルモデル(7だんかさねのブリート有名ゆうめい)と比喩ひゆすることもある。

だい0そう土建どけんそう」(有線ゆうせんネットワークを敷設ふせつする建物たてもの構造こうぞう)という比喩ひゆもある。

OSIモデルを”あぷせとねでぶ”と頭文字かしらもじって学習がくしゅうすることがある。

関連かんれん書籍しょせき

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  • 『OSIプロトコルとき読本とくほん』(初版しょはんム社むしゃ(1987ねん発行はっこう) ISBN 4-274-07379-3
  • 『OSIプロトコルとき読本とくほん』(改版かいはんム社むしゃ(1989ねん発行はっこう) ISBN 4-274-07530-3

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ OSI参照さんしょうモデルのだい7そうにおける「アプリケーション」とは、あくまでHTTPやFTPなどの通信つうしんサービスのことであり、いわゆる「アプリケーションソフト」の意味いみではない。また "ユーザーが操作そうさするインターフェース" (UI) のことでもない。これは頻繁ひんぱん誤解ごかいされている[よう出典しゅってん]ことなので注意ちゅうい必要ひつようである。だい7そう一般いっぱんユーザーには直接ちょくせつにはまったえないかたちで、メーリングソフトやホームページ作成さくせい公開こうかいソフトなどのアプリケーションソフトの背後はいご動作どうさしているものである。
  2. ^ 現在げんざいはITU-Tとばれている。

出典しゅってん

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  1. ^ "OSI参照さんしょうモデル". 日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)、ASCII.jpデジタル用語ようご辞典じてん. コトバンクより2021ねん6がつ17にち閲覧えつらん
  2. ^ Metzler, Steve Taylor and Jim (2008ねん9がつ23にち). “Why it's time to let the OSI model die” (英語えいご). Network World. 2021ねん8がつ28にち閲覧えつらん
  3. ^ Computers Are Bad”. computer.rip. 2021ねん8がつ28にち閲覧えつらん
  4. ^ アンドリュー・S・タネンバウム、デイビッド・J・ウエザロール『コンピュータネットワーク』(だい5はん日経にっけいBPしゃ、2013ねん9がつ12にち、106,115ぺーじISBN 9784822284763 
  5. ^ 日経にっけいクロステック(xTECH) (2007ねん5がつ17にち). “アプリケーションにぞくするだい5~7そうだい29かい”. 日経にっけいクロステック(xTECH). 2024ねん2がつ19にち閲覧えつらん。 “実際じっさいにはOSIだい5~7そう別々べつべつのプロトコルとして実装じっそうされることはまれです〔…〕インターネットで使つかわれているTCP/IPの体系たいけいでは、OSIだい5~7そう相当そうとうする階層かいそうがアプリケーションそうばれるひとつの階層かいそうになっているからです。”
  6. ^ ITU X.200-1988” (PDF) (英語えいご). ITU. Reference Model of Open Systems Interconnection for CCITT applications. 国際電気こくさいでんき通信つうしん連合れんごう (1988ねん11月). 2024ねん2がつ19にち閲覧えつらん
  7. ^ ITU-T Recommendation Q.1400 (03/1993), Architecture framework for the development of signalling and OA&M protocols using OSI concepts, pp 4, 7.

関連かんれん項目こうもく

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