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狼煙のろし

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インディアン狼煙のろし

狼煙のろし(のろし)とは、ものくことでけむりげ、それをはなれたところから確認かくにんすることによって、情報じょうほう伝達でんたつする手段しゅだんである。夜間やかんなどけむりえない場合ばあいは、そのものも使つかわれる。烽火ほうか狼火ろうか(ろうか)、おおかみひうち(ろうすい)ともう。

概要がいよう

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特長とくちょうとしては、ひとうま手紙てがみはこぶよりも遠距離えんきょり高速こうそく情報じょうほう伝達でんたつできる、リレーによって距離きょりばすことができるなどである。欠点けってんとしては、天候てんこう影響えいきょうされる、基本きほんてきけむり有無うむだけなので、つたえられる情報じょうほうりょうすくないなどがげられる。また、やすものによって、けむりいろえられるため[1]けむりいろわせややす順序じゅんじょ次第しだいで、複数ふくすう意図いとつたえられる場合ばあいもある。

ふるくからてき攻撃こうげきらせることなど、せんがらみの合図あいずよう使つかわれた。狼煙のろしげるために、とくつくられた施設しせつ狼煙のろしだいといい、中国ちゅうごく万里ばんり長城ちょうじょうなどにそれらしい遺構いこうのこっている。とうだんなりしきせんの『とりざつまないた』に「おおかみくそけむり直上ちょくじょう烽火ほうかよう」(おおかみくそけむり直上ちょくじょうさせ、烽火ほうかもちいた)としるされ、「狼煙のろしよんおこり」の成語せいごがある[2]18世紀せいきすえになると、遠方えんぽう信号しんごうしめ文字もじコードを、望遠鏡ぼうえんきょうとおしてる"optical telegraphy"(日本語にほんご定訳ていやくはないが、いて意味いみをとれば「光学こうがくでんしん」)が登場とうじょう[3]、さらに、19世紀せいき中葉ちゅうよう以降いこう電気でんきてき通信つうしん手段しゅだん発達はったつすることで、実用じつよう使つかわれることはほとんどなくなった。

日本にっぽんでは、8世紀せいきはじめに成立せいりつした『日本書紀にほんしょき』や『肥前ひぜんこく風土記ふどき』に「(トブヒ)」として記述きじゅつられる。やすものめられており、ヨモギワラなどをあなれ、そのなかやしたものとかんがえられている(狼煙のろしようあなとみられる遺構いこう確認かくにんされている)。そのため、中国ちゅうごくしきだいじょうものやす狼煙のろしとは形式けいしきことなるものだったとみられている(大陸たいりくちがい、動物どうぶつくそもちいていないてんもあげられる)。

「烽家」の土器どきへん出土しゅつどした地点ちてん復元ふくげんされた竪穴たてあなしき建物たてもの
狼煙のろしばん詰所つめしょだったとかんがえられている。

栃木とちぎけん宇都宮うつのみや所在しょざい山城やましろあとから出土しゅつどした9世紀せいき中頃なかごろ土器どきへん須恵すえの坏)には「烽家」とかれたれいがある。ここでの「いえ」とは、古代こだい律令りつりょうにおける公的こうてき施設しせつ意味いみし、9世紀せいきごろ東北とうほく地方ちほう活発かっぱつした蝦夷えぞ反乱はんらんから東国とうごく軍事ぐんじ体制たいせい整備せいび一環いっかんとして、烽に関連かんれんした公的こうてき施設しせつきずかれたとかんがえられている。

戦国せんごく時代じだいには戦国せんごく大名だいみょう通信つうしん手段しゅだんとしてもちいたとわれ、『きのえようぐんかん』にれば甲斐かいこく武田たけだ信玄しんげん一方いっぽう国境こっきょうせんとなり、また、べつ国境こっきょうせんとなっても伝令でんれいせたという。

上泉かみいずみ信綱のぶつなつての『くん閲集』(大江おおえ兵法ひょうほうしょ戦国せんごくふうあらためたしょまきおさむじょうもりじょう」には、「(めて敵勢てきせいが)しょうぐんならひとつ、ちゅうぐんならふたつ、大軍たいぐんならみっ狼煙のろしをあげる」ことと記述きじゅつしている。

モンゴルチンギス・ハーン帝国ていこくでも狼煙のろし連携れんけいによる情報じょうほう通信つうしんおこなわれていた。その伝達でんたつ速度そくど時速じそく140kmにおよんだという(2006ねん11月18にち放送ほうそうテレビ朝日てれびあさひのモンゴル特集とくしゅう番組ばんぐみでの実験じっけんでは時速じそく159kmを記録きろく)。けむりもととしては、ひつじくそ地上ちじょうした石油せきゆ(ネフトザグとばれる)などが使つかわれたらしい。またモンゴルの遊牧民ゆうぼくみんはその生育せいいく環境かんきょうのおかげで視力しりょくが2.5をえており、はるか彼方かなたのものをることができたのも狼煙のろし使つかった通信つうしん手段しゅだん実現じつげんうえ有利ゆうりだったようである。

その

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  • 石川いしかわけん能登半島のとはんとう突端とったんには、狼煙のろしというまちがあり、この町名ちょうめい海上かいじょう交通こうつうよう狼煙のろしげられたことに由来ゆらいするとわれる。現在げんざい、ほぼおな目的もくてきろくつよし埼灯だいがある(禄剛崎ろくごうざき参照さんしょう)。
  • 日本にっぽんでも、昭和しょうわ30年代ねんだいまで比較的ひかくてき本土ほんどちか離島りとうでは通信つうしん手段しゅだんとして狼煙のろしもちいていたところがある。(島根しまねけん高島たかしまなど)
  • 東北とうほく地方ちほうでは運動会うんどうかい当日とうじつあさ狼煙のろし花火はなび)をらして決行けっこうらせる風習ふうしゅうがある[4]
  • くに史跡しせきであるさきとう諸島しょとうばんもりでは[5]かくしま中継ちゅうけいする狼煙のろしにより、船舶せんぱく運航うんこうじょうきょう琉球りゅうきゅうおうへとらせていた。
  • 遭難そうなん災害さいがいとう緊急きんきゅうにおいて、自分じぶん居場所いばしょらせるために狼煙のろしげる場合ばあいもある。
  • てんじて、「おおきな行動こうどうのきっかけとなる行動こうどうをする」という意味いみで、スポーツの逆転ぎゃくてんげきなどで「反撃はんげき狼煙のろし(をあげる)」といった言葉ことば使用しようされることがある。
  • 狼煙のろしリレー」というものがある[6]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ ぜん近代きんだい中国ちゅうごくでは、緊急きんきゅうたか場合ばあいくさよりおおかみくそもちい、よりくろけむり明確めいかく遠方えんぽうでもえる狼煙のろし)をげたとされ、やすものによってけむりいろしており、その状況じょうきょうによってやすものえていた。また、げる狼煙のろしかずてきかずさだめてらせていた(れい、1つなら100にん、2つなら500、4つなら5せん)。参考さんこう・ディスカバリーHVチャンネル『中国ちゅうごく七不思議ななふしぎスペシャル』番組ばんぐみない説明せつめい一部いちぶ参考さんこうしたがって、やすものとわせ次第しだいで、複数ふくすう意図いとつたえた。
  2. ^ かんてん」の「成語せいご検索けんさく http://www.zdic.net/cy/ch/ZdicE7Zdic8BZdicBC13700.htm
  3. ^ フランスしき腕木うでき通信つうしん、その欧米おうべい諸国しょこくもちいられたシャッターしき通信つうしんがある。日本にっぽんでは江戸えど時代じだい相場そうば情報じょうほう伝達でんたつするため、同様どうよう望遠鏡ぼうえんきょう信号しんごうはた通信つうしん出現しゅつげんした。
  4. ^ 早朝そうちょう花火はなびに「やめて」のこえ 運動会うんどうかいらせる東北とうほく風習ふうしゅう仙台せんだいでは見送みおく学校がっこう増加ぞうか - 河北かわきた新報しんぽう
  5. ^ 文化ぶんか遺産いさんオンライン さきとう諸島しょとうばんもり
  6. ^ 信玄しんげんおおやけ生誕せいたん500ねん狼煙のろしで66かしょ300キロつなぐ記念きねんリレー…2あいだはんかけ到達とうたつ”. 読売新聞よみうりしんぶんオンライン (2021ねん11月1にち). 2021ねん11月3にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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