誘電ゆうでんたい

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誘電ゆうでんたい(ゆうでんたい、えい: dielectric)とは、導電性どうでんせいよりも誘電ゆうでんせい優位ゆうい物質ぶっしつである。ひろバンドギャップゆうし、直流ちょくりゅう電圧でんあつたいしては電気でんきとおさない絶縁ぜつえんたいとしてふるまう。身近みぢかられる誘電ゆうでんたいれいとして、おおくのプラスチックセラミックス雲母うんも(マイカ)、あぶらなどがある。

誘電ゆうでんたい電子でんし機器きき絶縁ぜつえん材料ざいりょうコンデンサ電極でんきょくあいだ挿入そうにゅう材料ざいりょう半導体はんどうたい素子そしのゲート絶縁ぜつえんまくなどにもちいられている。また、たか誘電ゆうでんりつゆうすることは光学こうがく材料ざいりょうとしてきわめて重要じゅうようであり、ひかりファイバーレンズ光学こうがくコーティング、非線形ひせんけい光学こうがく素子そしなどにもちいられている。

誘電ゆうでん分極ぶんきょく[ソースを編集へんしゅう]

誘電ゆうでん分極ぶんきょく参照さんしょう

誘電ゆうでん分散ぶんさん[ソースを編集へんしゅう]

誘電ゆうでんりつ電界でんかい周波数しゅうはすう依存いぞんする。これを誘電ゆうでん分散ぶんさんぶ。 空間くうかん電荷でんか分極ぶんきょく配向はいこう分極ぶんきょく緩和かんわがた、イオン分極ぶんきょく電子でんし分極ぶんきょく共鳴きょうめいがた誘電ゆうでん分散ぶんさんしめす。

誘電ゆうでん緩和かんわ[ソースを編集へんしゅう]

誘電ゆうでん緩和かんわとは、物質ぶっしつ誘電ゆうでんりつ瞬間しゅんかんてきおくれのこと。 通常つうじょうこれは誘電ゆうでん媒質ばいしつ(コンデンサ内部ないぶふたつのおおきな導体どうたい表面ひょうめんあいだなど)の変動へんどう電場でんじょうによる分子ぶんし分極ぶんきょくおくれによってこる。 変動へんどう電場でんじょうによる誘電ゆうでん緩和かんわは、(インダクタ変圧へんあつにおける)変動へんどう磁場じばによるヒステリシス同様どうようかんがえることができる。 一般いっぱんてき緩和かんわ線形せんけい応答おうとうおくれであるため、誘電ゆうでん緩和かんわ期待きたいされた線形せんけい定常ていじょう状態じょうたい平衡へいこう誘電ゆうでんりつについて測定そくていされる。

物理ぶつりがくにおける誘電ゆうでん緩和かんわは、誘電ゆうでん媒質ばいしつ外部がいぶからの振動しんどう電場でんじょうへの緩和かんわ応答おうとう意味いみする。 この緩和かんわ誘電ゆうでんりつ周波数しゅうはすう依存いぞんせい記述きじゅつされ、理想りそうけいではデバイしきあらわされる。 一方いっぽうで、イオン分極ぶんきょく電子でんし分極ぶんきょくについてのゆがみは共鳴きょうめいがたまたは振動しんどうがたのふるまいをしめす。 ゆが過程かてい特性とくせいは、試料しりょう構造こうぞう組成そせい環境かんきょう依存いぞんする。

デバイ緩和かんわ[ソースを編集へんしゅう]

デバイ緩和かんわとは、外部がいぶ電場でんじょうあたえられたときの理想りそうてき相互そうご作用さようのない双極そうきょく集団しゅうだん誘電ゆうでん緩和かんわ応答おうとうである。 周波数しゅうはすうωおめが変数へんすうとした複素ふくそ誘電ゆうでんりつεいぷしろんあらわされる。

ここでεいぷしろん高周波こうしゅうは上限じょうげんでの誘電ゆうでんりつΔでるたεいぷしろん = εいぷしろんsεいぷしろんεいぷしろんs静的せいてきてい周波しゅうは誘電ゆうでんりつτたう媒質ばいしつ緩和かんわ時間じかんである。

この緩和かんわモデルは物理ぶつり学者がくしゃピーター・デバイによって1913ねん導出みちびきだされた[1]

デバイしきほかひょうしき[ソースを編集へんしゅう]

誘電ゆうでんたい分類ぶんるい[ソースを編集へんしゅう]

誘電ゆうでんたい分類ぶんるいとその関係かんけい

誘電ゆうでんたいにはもっと基本きほんてきつね誘電ゆうでんたいおよびあつでんたいこげでんたいつよし誘電ゆうでんたいぜん4種類しゅるい分類ぶんるいされ、以下いかのような性質せいしつしめす。なお、つよ誘電ゆうでんたいはこれらすべての特徴とくちょうそなえ、こげでんたいあつでんたいつね誘電ゆうでんたい性質せいしつしめすなど、みぎのような関係かんけいにある。

つね誘電ゆうでんたい[ソースを編集へんしゅう]

つよ誘電ゆうでんたい以外いがい誘電ゆうでんたいのことをいう[2]

あつでんからだ[ソースを編集へんしゅう]

応力おうりょくくわえることにより分極ぶんきょく(および電圧でんあつ)がしょうじる誘電ゆうでんたいあつでんからだぶ。 また、ぎゃく電圧でんあつ印加いんかすることで応力おうりょくおよび変形へんけいしょうじる。これらの性質せいしつあつでんせいばれ、ソナーなどに利用りようされている。

こげでんからだ[ソースを編集へんしゅう]

あつでんたいのうち、そとから電界でんかいあたえなくても自発じはつてき分極ぶんきょくゆうしているものをとくこげでんからだぶ。微小びしょう温度おんど変化へんかおうじて誘電ゆうでん分極ぶんきょく(およびそれによる起電きでんりょく)がしょうじる性質せいしつ名称めいしょう由来ゆらいである。この性質せいしつ赤外線せきがいせんセンサなどに応用おうようされている。

つよ誘電ゆうでんたい[ソースを編集へんしゅう]

こげでんたいのうち、これを外部がいぶからの電界でんかいによって方向ほうこう反転はんてんさせることのできるものをとくつよ誘電ゆうでんたいぶ。 つよ誘電ゆうでんたい特徴とくちょうとして、分極ぶんきょく外部がいぶ電場でんじょうたいするヒステリシス特性とくせいゆうすることがげられる。この特性とくせい不揮発ふきはつせいメモリの1しゅであるFeRAM応用おうようされている。

こう誘電ゆうでんりつ材料ざいりょうてい誘電ゆうでんりつ材料ざいりょう[ソースを編集へんしゅう]

半導体はんどうたい素子そし微細びさいてい消費しょうひ電力でんりょくのために、トランジスタのゲート絶縁ぜつえんまく薄膜うすまくし、せいでん容量ようりょうおおきくすることで高性能こうせいのうはかってきたが、量子力学りょうしりきがくてきトンネル効果こうかひとしによるリーク電流でんりゅう増大ぞうだいまねき、デバイスの信頼しんらいせいいちじるしく低下ていかさせている。薄膜うすまくわるせいでん容量ようりょう増大ぞうだいさせる方法ほうほうとして、ゲート絶縁ぜつえんまく従来じゅうらい誘電ゆうでんりつひくいSiO2けい材料ざいりょうからこう誘電ゆうでんりつ絶縁ぜつえんまくHigh-κかっぱ絶縁ぜつえんまく)にする必要ひつようせいたかまってきている。有望ゆうぼうこう誘電ゆうでんりつ絶縁ぜつえんまくとしてHfO2けい材料ざいりょうなどがげられる。

同時どうじ半導体はんどうたい素子そし微細びさいは、多層たそう配線はいせんあいだでコンデンサ容量ようりょう寄生きせい容量ようりょう)を形成けいせいしてしまい、これによる配線はいせん遅延ちえん問題もんだいになってきている。寄生きせい容量ようりょう低減ていげんさせるために層間そうかん絶縁ぜつえんまくてい誘電ゆうでんりつ絶縁ぜつえんまくLow-κかっぱ絶縁ぜつえんまく)にする必要ひつようせいたかまってきている。有望ゆうぼうてい誘電ゆうでんりつ絶縁ぜつえんまくとしてSiOF(酸化さんかシリコンフッ素ふっそ添加てんかしたもの)、SiOC(酸化さんかシリコンに炭素たんそ添加てんかしたもの)、有機ゆうきポリマーけい材料ざいりょうなどがある。

脚注きゃくちゅう[ソースを編集へんしゅう]

  1. ^ P. Debye (1913), Ver. Deut. Phys. Gesell. 15, 777; reprinted 1954 in collected papers of Peter J.W. Debye Interscience, New York
  2. ^ 物理ぶつり測定そくてい技術ぎじゅつ4 電気でんきてき測定そくてい朝倉あさくら