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労働ろうどう条件じょうけん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
労働ろうどう条件じょうけん
拘束こうそくりょく順位じゅんい
1.(さい上位じょうい) 労働ろうどう法規ほうき
2. 労働ろうどう協約きょうやく
3 就業しゅうぎょう規則きそく
4. 労働ろうどう契約けいやく
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労働ろうどう条件じょうけん(ろうどうじょうけん)とは、労働ろうどうしゃ契約けいやくむすんで使用しようしゃしたはたらさい労働ろうどうしゃ使用しようしゃあいだめられた就労しゅうろうかんする条件じょうけんである[1]

使用しようしゃ労働ろうどう契約けいやく締結ていけつさいし、労働ろうどうしゃたいして賃金ちんぎん労働ろうどう時間じかんその労働ろうどう条件じょうけん明示めいじしなければならない。うち絶対ぜったいてき明示めいじ事項じこうについては、書面しょめん交付こうふ労働ろうどう条件じょうけん通知つうちしょ)によらなければならない。

なお求人きゅうじんにおいても労働ろうどう条件じょうけん明示めいじ必要ひつようとされるが[2]、その明示めいじ賃金ちんぎんについては「見込みこみがく」でよい。採用さいよう面接めんせつにその見込みこみがくをそのまま実際じっさい初任しょにんきゅうがくとするむね合意ごういがなされたとみとめられる状況じょうきょうがなければ、見込みこみがく初任しょにんきゅうがくとする雇用こよう契約けいやく成立せいりつしたとはいえない。

  • ほんこう労働ろうどう基準きじゅんほうについて以下いかではじょうすうのみをげる。

労働ろうどう条件じょうけん内容ないよう決定けってい

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日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい27じょうだい2こうでは、「賃金ちんぎん労働ろうどう時間じかん休息きゅうそくその勤労きんろう条件じょうけんかんする基準きじゅんは、法律ほうりつでこれをさだめる。」と規定きていしている。具体ぐたいてきには、労働ろうどう基準きじゅんほう昭和しょうわ22ねん4がつ7にち法律ほうりつだい49ごう)のほか、最低さいてい賃金ちんぎんほう昭和しょうわ34ねん4がつ15にち法律ほうりつだい137ごう)・賃金ちんぎん支払しはらい確保かくほとうかんする法律ほうりつ昭和しょうわ51ねん5がつ27にち法律ほうりつだい34ごう)・雇用こよう分野ぶんやにおける男女だんじょ均等きんとう機会きかいおよ待遇たいぐう確保かくほとうかんする法律ほうりつ昭和しょうわ47ねん7がつ1にち法律ほうりつだい113ごう)などの法律ほうりつ制定せいていされている。なお、船員せんいん船員せんいんほうだい1じょう規定きていする船員せんいん)には労働ろうどう基準きじゅんほうじょう労働ろうどう条件じょうけん規定きてい適用てきようされず(だい116じょう)、船員せんいん労働ろうどう条件じょうけんについては船員せんいんほうによってさだめている。

日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい25じょうだい1こうは「すべて国民こくみんは、健康けんこう文化ぶんかてき最低さいてい限度げんど生活せいかついとな権利けんりゆうする。」と規定きていし、これをけて労働ろうどう基準きじゅんほうでは、「労働ろうどう条件じょうけんは、労働ろうどうしゃひとたるにあたいする生活せいかついとなむための必要ひつようたすべきものでなければならない。」(だい1じょう1こう)、「この法律ほうりつさだめる労働ろうどう条件じょうけん基準きじゅん最低さいていのものであるから、労働ろうどう関係かんけい当事とうじしゃは、この基準きじゅん理由りゆうとして労働ろうどう条件じょうけん低下ていかさせてはならないことはもとより、その向上こうじょうはかるようにつとめなければならない。」(だい1じょう2こう)、「労働ろうどう条件じょうけんは、労働ろうどうしゃ使用しようしゃが、対等たいとう立場たちばにおいて決定けっていすべきものである。」(だい2じょう1こう)とさだめられている[ちゅう 1]。そして「使用しようしゃは、労働ろうどうしゃ国籍こくせき信条しんじょうまた社会しゃかいてき身分みぶん理由りゆうとして賃金ちんぎん労働ろうどう時間じかんその労働ろうどう条件じょうけんについて差別さべつてき取扱とりあつかいをしてはならない。」(だい3じょう)として、差別さべつてき取扱とりあつかいをしてはならない理由りゆう限定げんてい列挙れっきょしている。

だい1じょう~だい3じょうでいう「労働ろうどう条件じょうけん」とは、賃金ちんぎん労働ろうどう時間じかんはもちろんのこと、解雇かいこ災害さいがい補償ほしょう安全あんぜん衛生えいせい寄宿舎きしゅくしゃひとしかんする条件じょうけんをすべてふく労働ろうどうしゃ職場しょくばにおける一切いっさい待遇たいぐうをいう。なお、労働ろうどう契約けいやく締結ていけつまえやといれにおける条件じょうけん労働ろうどう条件じょうけん内容ないようにあたらない[ちゅう 2]

国際こくさい労働ろうどう機関きかん(ILO)は「人道的じんどうてき労働ろうどう条件じょうけん」「社会しゃかい正義まさよし実現じつげん」をもとめ、労働ろうどうしゃが「人間にんげんらしいまともな労働ろうどうディーセント・ワーク)」をられることを目標もくひょうに、労働ろうどう条件じょうけんかんするおおくの条約じょうやく制定せいていしている。日本にっぽん常任じょうにん理事りじこくとしてILOに加盟かめいしているが、日本にっぽん労働ろうどう条件じょうけんかんする条約じょうやくおおくを批准ひじゅんしていない[ちゅう 3]

労働ろうどう条件じょうけん明示めいじ

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労働ろうどう条件じょうけん明示めいじ

だい15じょう  

  1. 使用しようしゃは、労働ろうどう契約けいやく締結ていけつさいし、労働ろうどうしゃたいして賃金ちんぎん労働ろうどう時間じかんその労働ろうどう条件じょうけん明示めいじしなければならない。この場合ばあいにおいて、賃金ちんぎんおよ労働ろうどう時間じかんかんする事項じこうその厚生こうせい労働ろうどう省令しょうれいさだめる事項じこうについては、厚生こうせい労働ろうどう省令しょうれいさだめる方法ほうほうにより明示めいじしなければならない。
  2. 前項ぜんこう規定きていによつて明示めいじされた労働ろうどう条件じょうけん事実じじつ相違そういする場合ばあいにおいては、労働ろうどうしゃは、即時そくじ労働ろうどう契約けいやく解除かいじょすることができる。
  3. 前項ぜんこう場合ばあい就業しゅうぎょうのために住居じゅうきょ変更へんこうした労働ろうどうしゃが、契約けいやく解除かいじょから14にち以内いない帰郷ききょうする場合ばあいにおいては、使用しようしゃは、必要ひつよう旅費りょひ負担ふたんしなければならない。
労働ろうどう条件じょうけん通知つうちしょ

使用しようしゃ労働ろうどう条件じょうけん明示めいじ書面しょめんまた口頭こうとうによるが、明示めいじ事項じこうのうち絶対ぜったいてき明示めいじ事項じこう昇給しょうきゅうかんする事項じこうのぞく)については労働ろうどうしゃたいする書面しょめん交付こうふ必要ひつようとなる(いわゆる「労働ろうどう条件じょうけん通知つうちしょ」。だい15じょう1こう後段こうだん施行しこう規則きそくだい5じょう3こう)。これは労働ろうどうしゃたいして労働ろうどう条件じょうけん内容ないようあきらかにし、紛争ふんそう発生はっせい防止ぼうしをその趣旨しゅしとするものである。もっとも、明示めいじがなされなかったからといって労働ろうどう契約けいやく成立せいりつしないわけではない。書面しょめん様式ようしき自由じゆうである(平成へいせい11ねん1がつ29にちもとはつ45ごう[3]。さらに、労働ろうどう条件じょうけん通知つうちしょ絶対ぜったいてき明示めいじ事項じこうのみならず相対そうたいてき明示めいじ事項じこうあわせて記載きさい労働ろうどうしゃ交付こうふするよう、つよ行政ぎょうせい指導しどうおこなわれている(平成へいせい11ねん2がつ19にちもとはつ81ごう)。なお、日雇ひやとい労働ろうどうしゃ場合ばあいは、どういち条件じょうけん労働ろうどう契約けいやく更新こうしんされる場合ばあいには、最初さいしょやとれのさい書面しょめん交付こうふすることでり、その都度つど当該とうがい書面しょめん交付こうふしなくてもつかえない(昭和しょうわ51ねん9がつ28にちもとはつ690ごう)。


平成へいせい31ねん4がつ改正かいせいほう施行しこうにより、使用しようしゃは、だい15じょう1こう規定きていにより労働ろうどうしゃたいして明示めいじしなければならない労働ろうどう条件じょうけん事実じじつことなるものとしてはならない[ちゅう 4]、と条文じょうぶん明記めいきされた(施行しこう規則きそくだい5じょう2こう)。また労働ろうどうしゃ希望きぼうした場合ばあいには、ファクシミリや電子でんしメールとう当該とうがい労働ろうどうしゃ当該とうがい電子でんしメールとう記録きろく出力しゅつりょくすることにより書面しょめん作成さくせいすることができるものにかぎる)で労働ろうどう条件じょうけん明示めいじすることができるようになった(施行しこう規則きそくだい5じょう4こう)。

使用しようしゃ合理ごうりてき労働ろうどう条件じょうけんさだめられている就業しゅうぎょう規則きそく労働ろうどうしゃ周知しゅうちさせていた場合ばあいだい106じょう)には、労働ろうどう契約けいやく内容ないようは、その就業しゅうぎょう規則きそくさだめる労働ろうどう条件じょうけんによるものとなり(労働ろうどう契約けいやくほうだい7じょう)、実際じっさいには労働ろうどうしゃ個々ここさだめる事項じこう以外いがい就業しゅうぎょう規則きそく労働ろうどうしゃ交付こうふすることで一律いちりつ労働ろうどう条件じょうけんさだめることになる。

労働ろうどう条件じょうけん明示めいじ事項じこう

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労働ろうどう条件じょうけん明示めいじ事項じこうについては、施行しこう規則きそくだい5じょう1こう各号かくごう列挙れっきょされている。

絶対ぜったいてき明示めいじ事項じこう使用しようしゃ労働ろうどうしゃたいして明示めいじすることが絶対ぜったいてき必要ひつようとされている事項じこう

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  1. 労働ろうどう契約けいやく期間きかんかんする事項じこうどうこうだい1ごう
  2. 期間きかんさだめのある労働ろうどう契約けいやく更新こうしんする場合ばあい基準きじゅんかんする事項じこう更新こうしんする場合ばあいがあるものの締結ていけつ場合ばあいかぎる)(どうこうだい1ごうの2)
    • 平成へいせい25ねん4がつ1にち改正かいせいほう施行しこうにより追加ついかされた。更新こうしん基準きじゅん内容ないようは、有期ゆうき労働ろうどう契約けいやく締結ていけつする労働ろうどうしゃが、契約けいやく期間きかん満了まんりょうみずからの雇用こよう継続けいぞく可能かのうせいについて一定いってい程度ていど予見よけんすることが可能かのうとなるものであることをようするものである。たとえば、「更新こうしん有無うむ」として、「自動的じどうてき更新こうしんする」「更新こうしんする場合ばあいがありる」「契約けいやく更新こうしんはしない」とうを、また、「契約けいやく更新こうしん判断はんだん基準きじゅん」として、「契約けいやく期間きかん満了まんりょう業務ぎょうむりょうにより判断はんだんする」「労働ろうどうしゃ勤務きんむ成績せいせき態度たいどにより判断はんだんする」「労働ろうどうしゃ能力のうりょくにより判断はんだんする」「会社かいしゃ経営けいえいじょうきょうにより判断はんだんする」「従事じゅうじしている業務ぎょうむ進捗しんちょくじょうきょうにより判断はんだんする」とう明示めいじすることがかんがえられるものである。また、更新こうしん基準きじゅんについても、労働ろうどう条件じょうけん同様どうよう労働ろうどう契約けいやく内容ないようとなっている労働ろうどう条件じょうけん使用しようしゃ変更へんこうする場合ばあいには、労働ろうどうしゃとの合意ごういその方法ほうほうにより、適法てきほう変更へんこうされる必要ひつようがある(平成へいせい24ねん10がつ26にちもとはつ1026002ごう)。
  3. 就業しゅうぎょう場所ばしょおよ従事じゅうじすべき業務ぎょうむかんする事項じこうどうこうだい1ごうの3)
    • 従事じゅうじすべき業務ぎょうむ」は、具体ぐたいてきかつ詳細しょうさい明示めいじすること(昭和しょうわ22ねん9がつ13にちはつもと17ごう)。やとい直後ちょくご就業しゅうぎょう場所ばしょおよ従事じゅうじすべき業務ぎょうむ明示めいじすればりるものであるが、将来しょうらい就業しゅうぎょう場所ばしょ従事じゅうじさせる業務ぎょうむあわ網羅もうらてき明示めいじすることはつかえない(平成へいせい11ねん1がつ29にちもとはつ45ごう)。
    • 事業じぎょうぬしは、外国がいこくじん労働ろうどうしゃ採用さいようするにたっては、あらかじめ、当該とうがい外国がいこくじんが、採用さいよう従事じゅうじすべき業務ぎょうむについて、在留ざいりゅう資格しかくじょう従事じゅうじすることがみとめられるものであることを確認かくにんすることとし、従事じゅうじすることがみとめられないものについては、採用さいようしてはならない(「外国がいこくじん労働ろうどうしゃ雇用こよう管理かんり改善かいぜんとうかんして事業じぎょうぬし適切てきせつ対処たいしょするための指針ししん」(平成へいせい19ねん厚生こうせい労働省ろうどうしょう告示こくじだい276ごう))。
  4. 始業しぎょうおよ終業しゅうぎょう時刻じこく所定しょてい労働ろうどう時間じかんえる労働ろうどう有無うむ休憩きゅうけい時間じかん休日きゅうじつ休暇きゅうかならびに労働ろうどうしゃを2くみ以上いじょうけて就業しゅうぎょうさせる場合ばあいにおける就業しゅうぎょう転換てんかんかんする事項じこうどうこうだい2ごう
    • 当該とうがい労働ろうどうしゃ適用てきようされる労働ろうどう時間じかんとうかんする具体ぐたいてき条件じょうけん明示めいじしなければならない。なお、当該とうがい明示めいじすべき事項じこう内容ないよう膨大ぼうだいなものとなる場合ばあいにおいては、労働ろうどうしゃ利便りべんせいをも考慮こうりょし、所定しょてい労働ろうどう時間じかんえる労働ろうどう有無うむ以外いがい事項じこうについては、勤務きんむ種類しゅるいごとの始業しぎょうおよ終業しゅうぎょう時刻じこく休日きゅうじつとうかんするかんがかたしめしたうえ当該とうがい労働ろうどうしゃ適用てきようされる就業しゅうぎょう規則きそくじょう関係かんけい条項じょうこうめい網羅もうらてきしめすことでりるものである(平成へいせい11ねん1がつ29にちもとはつ45ごう)。
  5. 賃金ちんぎん決定けってい計算けいさんおよ支払しはらい方法ほうほう賃金ちんぎん締切しめきおよ支払しはらい時期じきならびに昇給しょうきゅうかんする事項じこうどうこうだい3ごう。ただし、退職たいしょく手当てあて臨時りんじ支払しはらわれる賃金ちんぎんのぞく。)
    • 具体ぐたいてきには、基本きほん賃金ちんぎんがく手当てあてがく割増わりまし賃金ちんぎん割増わりましりつ賃金ちんぎんおよ支払しはらいなどである。就業しゅうぎょう規則きそく賃金ちんぎん規定きてい当該とうがい労働ろうどうしゃについて確定かくていしうるものであればよく、たとえば就業しゅうぎょう規則きそく規定きていされている賃金ちんぎん等級とうきゅう表示ひょうじされたものでもつかえない(昭和しょうわ51ねん9がつ28にちもとはつ690ごう)。
  6. 退職たいしょくかんする事項じこうどうこうだい4ごう。なお、解雇かいこ事由じゆうふくむ。)
    • 明示めいじすべき労働ろうどう条件じょうけんとして、「退職たいしょくかんする事項じこう」に「解雇かいこ事由じゆう」がふくまれることを施行しこう規則きそくにおいてあきらかにすることとしたものである。なお、当該とうがい明示めいじすべき事項じこう内容ないよう膨大ぼうだいなものとなる場合ばあいにおいては、労働ろうどうしゃ利便りべんせいをも考慮こうりょし、当該とうがい労働ろうどうしゃ適用てきようされる就業しゅうぎょう規則きそくじょう関係かんけい条項じょうこうめい網羅もうらてきしめすことでりるものである(平成へいせい15ねん10がつ22にちもとはつ1022001ごう)。

相対そうたいてき明示めいじ事項じこうさだめがある場合ばあいかぎり、使用しようしゃ労働ろうどうしゃたいして明示めいじすることが必要ひつようとされる事項じこう

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  1. 退職たいしょく手当てあてさだめが適用てきようされる労働ろうどうしゃ範囲はんい退職たいしょく手当てあて決定けってい計算けいさんおよ支払しはらい方法ほうほうならびに退職たいしょく手当てあて支払しはらい時期じきかんする事項じこうどうこうだい4ごうの2)
  2. 臨時りんじ支払しはらわれる賃金ちんぎん退職たいしょく手当てあてのぞく。)、賞与しょうよおよびこれらにじゅんずるものならびに最低さいてい賃金ちんぎんがくかんする事項じこうどうこうだい5ごう
  3. 労働ろうどうしゃ負担ふたんさせるべき食費しょくひ作業さぎょう用品ようひんそのかんする事項じこうどうこうだい6ごう
  4. 安全あんぜんおよ衛生えいせいかんする事項じこうどうこうだい7ごう
  5. 職業しょくぎょう訓練くんれんかんする事項じこうどうこうだい8ごう
  6. 災害さいがい補償ほしょうおよ業務ぎょうむがい傷病しょうびょう扶助ふじょかんする事項じこうどうこうだい9ごう
  7. 表彰ひょうしょうおよ制裁せいさいかんする事項じこうどうこうだい10ごう
  8. 休職きゅうしょくかんする事項じこうどうこうだい11ごう

労働ろうどうしゃ解除かいじょけん

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使用しようしゃから明示めいじされた労働ろうどう条件じょうけん事実じじつ相違そういする場合ばあいにおいては、労働ろうどうしゃは、即時そくじ労働ろうどう契約けいやく解除かいじょすることができる(だい15じょう2こう)。いわゆる会社かいしゃ労働ろうどうしゃ予告よこくなしにおこなう「懲戒ちょうかい解雇かいこ」にたいする、労働ろうどうしゃ会社かいしゃ予告よこくなしに退職たいしょくできる「懲戒ちょうかい退職たいしょく」のことである。なお、だい15じょう1こう労働ろうどうしゃ自己じこ労働ろうどう条件じょうけん具体ぐたいてき内容ないよう承知しょうちせずしてやとれられることのないよう使用しようしゃ労働ろうどう条件じょうけん明示めいじ義務付ぎむづけたものであるから、労働ろうどうしゃ労働ろうどう条件じょうけん事実じじつ相違そういしていたとしても即時そくじ解除かいじょはできない(昭和しょうわ23ねん11月27にちもとおさむ3514ごう)。

  • 労働ろうどう契約けいやく締結ていけつにあたり社宅しゃたく供与きょうよすべきむね契約けいやくしたにもかかわらずこれを供与きょうよしなかった場合ばあい社宅しゃたく利用りようする利益りえきだい11じょうでいう「賃金ちんぎん」である場合ばあいは、社宅しゃたく供与きょうよすべきむね条件じょうけんだい15じょう1こうの「賃金ちんぎん労働ろうどう時間じかんその労働ろうどう条件じょうけん」であるから、これを供与きょうよしなかった場合ばあいだい15じょう2こう規定きてい適用てきようされる。社宅しゃたくたんなる福利ふくり厚生こうせい施設しせつとみなされる場合ばあいは、社宅しゃたく供与きょうよすべきむね条件じょうけんだい15じょう1こうの「労働ろうどう条件じょうけん」にはふくまれないから、これを供与きょうよしなかった場合ばあいでもだい15じょう2こう規定きてい適用てきようはない。なおだい15じょう規定きていがない場合ばあいにおいても、民法みんぽうだい541じょう規定きていによって契約けいやく解除かいじょすることはできる(昭和しょうわ23ねん11月27にちもとおさむ3514ごう)。

この場合ばあい就業しゅうぎょうのために住居じゅうきょ変更へんこうした労働ろうどうしゃが、契約けいやく解除かいじょから14にち以内いない帰郷ききょうする場合ばあいにおいては、使用しようしゃは、必要ひつよう旅費りょひ負担ふたんしなければならない(3こう)。 この「旅費りょひ」には、住居じゅうきょ変更へんこうまえまでの旅費りょひにとどまらず、親族しんぞく保護ほごける場合ばあいにはそのもの住所じゅうしょまでの実費じっぴふくみ、また就業しゅうぎょうのために移転いてんした家族かぞく労働ろうどうしゃにより生計せいけい維持いじされている同居どうきょ親族しんぞくをいう(昭和しょうわ23ねん7がつ20日はつかもとおさむ2483ごう))の旅費りょひふくまれる(昭和しょうわ22ねん9がつ13にちはつもと17ごう)。

また、この場合ばあいにおける離職りしょくは、雇用こよう保険ほけんにおける基本きほん手当てあて受給じゅきゅうにおいて「特定とくてい受給じゅきゅう資格しかくしゃ」(倒産とうさん解雇かいことうにより離職りしょくしたもの)としてあつかわれ、一般いっぱん受給じゅきゅう資格しかくしゃよりも所定しょてい給付きゅうふ日数にっすうおおくなる(雇用こよう保険ほけんほうだい23じょう雇用こよう保険ほけんほう施行しこう規則きそくだい36じょう2ごう)。

船員せんいん

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船舶せんぱく所有しょゆうしゃは、やといにゅう契約けいやく締結ていけつしようとするときは、あらかじめ当該とうがいやとえにゅう契約けいやく相手方あいてがたとなろうとするものたいし、つぎかかげる事項じこうについて書面しょめん交付こうふして説明せつめいしなければならない(船員せんいんほうだい32じょう1こうどう施行しこう規則きそくだい16じょう)。この場合ばあいにおいて、当該とうがいやとえにゅう契約けいやくかか航海こうかい海上かいじょう運送うんそうほうだい26じょう1こう規定きていによる命令めいれいによるものであるときは、船舶せんぱく所有しょゆうしゃは、あらかじめ、相手方あいてがたたいし、そのむね書面しょめん交付こうふして説明せつめいしなければならない(船員せんいんほうだい32じょう2こう)。

  • 船舶せんぱく所有しょゆうしゃ名称めいしょうまた氏名しめいおよ住所じゅうしょ
  • 雇用こよう期間きかん
  • むべき船舶せんぱく名称めいしょう総トン数そうとんすう用途ようと漁船ぎょせんにあっては、従事じゅうじする漁業ぎょぎょう種類しゅるいふくむ。)およ就航しゅうこう航路こうろまた操業そうぎょう海域かいいきかんする事項じこう
  • 職務しょくむかんする事項じこう
  • 給料きゅうりょうその報酬ほうしゅう決定けってい方法ほうほうおよ支払しはらいにかんする事項じこう
  • 報酬ほうしゅう歩合ぶあいによって支払しはらわれる場合ばあい船員せんいんほうだい58じょう1こう一定いっていがくおよどうじょう3こうがく
  • 基準きじゅん労働ろうどう期間きかん労働ろうどう時間じかん休息きゅうそく時間じかん休日きゅうじつおよ休暇きゅうかかんする事項じこうならびに交代こうたい乗船じょうせんせいとう特殊とくしゅ乗船じょうせんせいをとる場合ばあいにおける当該とうがい乗船じょうせんせいかんする事項じこう
  • 災害さいがい補償ほしょうかんする事項じこう
  • 退職たいしょく解雇かいこ休職きゅうしょくおよ制裁せいさいかんする事項じこう
  • 送還そうかんかんする事項じこう
  • 予備よび船員せんいん制度せいどがあるときは、その概要がいよう

船舶せんぱく所有しょゆうしゃは、やといにゅう契約けいやく成立せいりつしたときは、遅滞ちたいなく、つぎかかげる事項じこう記載きさいした書面しょめんを2つう作成さくせいし、うち1つう船員せんいん交付こうふし、の1つう船員せんいん死亡しぼうまたやといにゅう契約けいやく終了しゅうりょうから3ねん経過けいかするまでのあいだしゅたる船員せんいん労務ろうむ管理かんり事務じむおこな事務所じむしょそなかなければならない(船員せんいんほうだい36じょうどう施行しこう規則きそくだい16じょうの4)。

  • 船員せんいんほうだい32じょう1こう各号かくごうかかげる事項じこう
  • 当該とうがいやとえにゅう契約けいやく締結ていけつした船員せんいん氏名しめい住所じゅうしょおよ生年月日せいねんがっぴ
  • 当該とうがいやとえにゅう契約けいやく締結ていけつした場所ばしょおよ年月日ねんがっぴ

船長せんちょうは、やといにゅう契約けいやく成立せいりつ終了しゅうりょう更新こうしんまた変更へんこうがあったときは、国土こくど交通こうつう省令しょうれいさだめるところにより、遅滞ちたいなく、国土こくど交通こうつう大臣だいじんとどなければならない。この場合ばあいにおいて船長せんちょうとどることができないときは、船舶せんぱく所有しょゆうしゃは、船長せんちょうわってとどなければならない(船員せんいんほうだい37じょう)。国土こくど交通こうつう大臣だいじんは、やといにゅう契約けいやく成立せいりつとう届出とどけでがあったたときは、そのやといにゅう契約けいやく航海こうかい安全あんぜんまた船員せんいん労働ろうどう関係かんけいかんする法令ほうれい規定きてい違反いはんするようなことがないかどうかおよ当事とうじしゃ合意ごうい充分じゅうぶんであったかどうかを確認かくにんするものとする。この場合ばあいにおいて、国土こくど交通こうつう大臣だいじんは、必要ひつようがあるとみとめるときは、船員せんいんほうだい101じょう1こう規定きていによる命令めいれいその必要ひつよう措置そちこうずるものとする(船員せんいんほうだい38じょう)。

船員せんいんは、以下いかのいずれかに該当がいとうする場合ばあいには、やといにゅう契約けいやく解除かいじょすることができる(船員せんいんほうだい41じょう)。

  • 船舶せんぱくやとえにゅう契約けいやく成立せいりつときにおける国籍こくせきうしなったとき。
  • やとえにゅう契約けいやくによりさだめられた労働ろうどう条件じょうけん事実じじつとがいちじるしく相違そういするとき。
  • 船員せんいん負傷ふしょうまた疾病しっぺいのため職務しょくむこたえないとき。
  • 船員せんいん国土こくど交通こうつう省令しょうれいさだめるところにより教育きょういくけようとするとき。

派遣はけん労働ろうどうしゃ

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派遣はけん労働ろうどうしゃについては、派遣はけんもと使用しようしゃ労働ろうどう条件じょうけんについて明示めいじしなければならない。労働ろうどう契約けいやく締結ていけつ派遣はけん同時どうじである場合ばあいには労働ろうどう条件じょうけん明示めいじ労働ろうどうしゃ派遣はけんほうさだめる派遣はけんさき就業しゅうぎょう規則きそく明示めいじあわせてってつかえない(昭和しょうわ61ねん6がつ6にちもとはつ333ごう)。出向しゅっこう在籍ざいせきがた移籍いせきがたとも)の場合ばあい出向しゅっこうさき使用しようしゃ労働ろうどう条件じょうけん明示めいじをしなければならない。

短時間たんじかん労働ろうどうしゃたいする事業じぎょうぬし責務せきむ

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事業じぎょうぬしは、短時間たんじかん労働ろうどうしゃやとれたときは、すみやかに、当該とうがい短時間たんじかん労働ろうどうしゃたいして、上記じょうき明示めいじ事項じこうくわえ、「昇給しょうきゅう有無うむ」「退職たいしょく手当てあて有無うむ」「賞与しょうよ有無うむ」「短時間たんじかん労働ろうどうしゃ雇用こよう管理かんり改善かいぜんとうかんする事項じこうかか相談そうだん窓口まどぐちかんする事項じこう」について文書ぶんしょ交付こうふとうにより明示めいじしなければならない。これら以外いがい事項じこうについても文書ぶんしょ交付こうふとうにより明示めいじするようにつとめるものとされる(パートタイム労働ろうどうほうだい6じょう)。 事業じぎょうぬしは、その雇用こようする短時間たんじかん労働ろうどうしゃからもとめがあったときは、労働ろうどう条件じょうけんかんする決定けっていをするにたって考慮こうりょした事項じこうについて、当該とうがい短時間たんじかん労働ろうどうしゃ説明せつめいしなければならない(パートタイム労働ろうどうほうだい14じょう)。

特定とくてい有期ゆうき雇用こよう労働ろうどうしゃ

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専門せんもんてき知識ちしきとうゆうする有期ゆうき雇用こよう労働ろうどうしゃとうかんする特別とくべつ措置そちほうさだめる特定とくてい有期ゆうき雇用こよう労働ろうどうしゃについては、上記じょうき明示めいじ事項じこうくわえ、以下いか事項じこう文書ぶんしょ交付こうふとうにより明示めいじしなければならない(平成へいせい27ねん厚生こうせい労働ろうどう省令しょうれいだい36ごう)。

  1. 専門せんもんてき知識ちしきとうゆうする有期ゆうき雇用こよう労働ろうどうしゃとうかんする特別とくべつ措置そちほうだい8じょう規定きていもとづき適用てきようされる労働ろうどう契約けいやくほうだい18じょう1こう規定きてい特例とくれい内容ないようかんする事項じこう
  2. 就業しゅうぎょう場所ばしょおよ従事じゅうじすべき業務ぎょうむかんする事項じこう労働ろうどう基準きじゅんほう施行しこう規則きそくだい5じょう1こう1ごうの3にかかげる事項じこうのぞき、1.の特例とくれいかか特定とくてい有期ゆうき業務ぎょうむ範囲はんいかんする事項じこうかぎる。)(だい一種いっしゅ認定にんてい事業じぎょうぬしのみ)

建設けんせつ労働ろうどうしゃ林業りんぎょう労働ろうどうしゃ

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建設けんせつ労働ろうどうしゃ雇用こよう改善かいぜんとうかんする法律ほうりつさだめる建設けんせつ労働ろうどうしゃについては、上記じょうき明示めいじ事項じこうくわえ、以下いか事項じこう文書ぶんしょ交付こうふにより明示めいじしなければならない(建設けんせつ労働ろうどうしゃ雇用こよう改善かいぜんとうかんする法律ほうりつだい7じょう)。林業りんぎょう労働ろうどうりょく確保かくほ促進そくしんかんする法律ほうりつさだめる林業りんぎょう労働ろうどうしゃについては、上記じょうき明示めいじ事項じこうくわえ、以下いか事項じこう文書ぶんしょ交付こうふにより明示めいじするようにつとめなければならない(林業りんぎょう労働ろうどうりょく確保かくほ促進そくしんかんする法律ほうりつだい31じょう)。建設けんせつ労働ろうどうしゃ林業りんぎょう労働ろうどうしゃについては、かくじょうおよ労働ろうどう基準きじゅんほうだい15じょう1こうりょう規定きていあいまって、雇用こよう関係かんけい明確めいかく実効じっこうすることとしているものである。この規定きてい主眼しゅがんは、とかく雇用こよう関係かんけい明確めいかく有期ゆうき雇用こよう労働ろうどうしゃ雇用こよう関係かんけい明確めいかくはかることにあるので、指導しどうたっては、とくに、有期ゆうき雇用こよう労働ろうどうしゃについてその趣旨しゅし徹底てっていするよう配慮はいりょするものとする(昭和しょうわ51ねん9がつ7にちしょくはつ409ごう平成へいせい8ねん5がつ24にちしょくはつ371ごう)。

外国がいこくじん労働ろうどうしゃ

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事業じぎょうぬしは、外国がいこくじん労働ろうどうしゃとの労働ろうどう契約けいやく締結ていけつさいし、賃金ちんぎん労働ろうどう時間じかんとう主要しゅよう労働ろうどう条件じょうけんについて、当該とうがい外国がいこくじん労働ろうどうしゃ理解りかいできるようその内容ないようあきらかにした書面しょめん交付こうふすること。また、事業じぎょうぬしは、賃金ちんぎんについて明示めいじするさいには、賃金ちんぎん決定けってい計算けいさんおよ支払しはらい方法ほうほうとうはもとより、これに関連かんれんする事項じこうとして税金ぜいきん労働ろうどう社会しゃかい保険ほけんりょう労使ろうし協定きょうていもとづく賃金ちんぎん一部いちぶ控除こうじょ取扱とりあつかいについても外国がいこくじん労働ろうどうしゃ理解りかいできるよう説明せつめいし、当該とうがい外国がいこくじん労働ろうどうしゃ実際じっさい支給しきゅうするがくあきらかとなるようつとめること、とされる[4]

労働ろうどう条件じょうけん禁止きんし制限せいげん事項じこう

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だい15じょう使用しようしゃ労働ろうどうしゃたいして明示めいじすべき労働ろうどう条件じょうけん範囲はんいさだめているのであって、労働ろうどう基準きじゅんほうにいう労働ろうどう条件じょうけん定義ていぎさだめたものではない(昭和しょうわ29ねん6がつ29にちもとはつ355ごう)。したがって上記じょうき列挙れっきょ事項じこう以外いがいにも、労使ろうし合意ごういすれば任意にんい事項じこう労働ろうどう条件じょうけんさだめることができるが、公序良俗こうじょりょうぞくはんしてはならない(民法みんぽうだい90じょう)ほか、労働ろうどう基準きじゅんほうじょう以下いか制限せいげんがある。

効力こうりょく関係かんけい

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(この法律ほうりつ違反いはん契約けいやく

だい13じょう  

この法律ほうりつさだめる基準きじゅんたっしない労働ろうどう条件じょうけんさだめる労働ろうどう契約けいやくは、その部分ぶぶんについては無効むこうとする。この場合ばあいにおいて、無効むこうとなつた部分ぶぶんは、この法律ほうりつさだめる基準きじゅんによる。

労働ろうどう契約けいやく就業しゅうぎょう規則きそく労働ろうどう協約きょうやくさだめる基準きじゅんたっしない場合ばあいはその部分ぶぶん無効むこうとなり、当該とうがい基準きじゅんによることとなる(だい93じょう労働ろうどう組合くみあいほうだい16じょう労働ろうどう契約けいやくほうだい12じょう)。たとえば、個々ここ労働ろうどうしゃを「月給げっきゅう16まんえん」との条件じょうけんやとれた場合ばあいでも、就業しゅうぎょう規則きそく月額げつがく賃金ちんぎんを18まんえん以上いじょうとするむねさだめている場合ばあいは18まんえん支給しきゅうしなければならず、さらに賃金ちんぎんつき19まんえん以上いじょうとするむね労働ろうどう協約きょうやく締結ていけつした場合ばあいには、19まんえん支給しきゅうしなければならないのである。最低さいてい賃金ちんぎんほうひとし強行きょうこう規定きてい違反いはんする場合ばあい同様どうようである。船員せんいんにもどう趣旨しゅし規定きていがある(船員せんいんほうだい31じょう)。

労働ろうどう契約けいやく就業しゅうぎょう規則きそく労働ろうどう協約きょうやく法令ほうれい効力こうりょく関係かんけいについては、上位じょういからじゅんに、法令ほうれい労働ろうどう協約きょうやく就業しゅうぎょう規則きそく労働ろうどう契約けいやくじゅんとなる(ただし、就業しゅうぎょう規則きそくよりも労働ろうどうしゃ有利ゆうり労働ろうどう契約けいやく無効むこうとはならない(有利ゆうり原則げんそく))。

労働ろうどう条件じょうけん不利益ふりえき変更へんこう

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労働ろうどうしゃおよ使用しようしゃは、その合意ごういにより、労働ろうどう契約けいやく内容ないようである労働ろうどう条件じょうけん変更へんこうすることができるが(労働ろうどう契約けいやくほうだい8じょう)、使用しようしゃは、労働ろうどうしゃ合意ごういすることなく、就業しゅうぎょう規則きそく変更へんこうすることにより、労働ろうどうしゃ不利益ふりえき労働ろうどう契約けいやく内容ないようである労働ろうどう条件じょうけん変更へんこうすることはできず(労働ろうどう契約けいやくほうだい9じょう)、原則げんそくとして使用しようしゃによる一方いっぽうてき労働ろうどう条件じょうけん不利益ふりえき変更へんこうおこなえない。

しかし、使用しようしゃ変更へんこう就業しゅうぎょう規則きそく労働ろうどうしゃ周知しゅうちさせ、かつ、就業しゅうぎょう規則きそく変更へんこうが、「労働ろうどうしゃける不利益ふりえき程度ていど」「労働ろうどう条件じょうけん変更へんこう必要ひつようせい」「変更へんこう就業しゅうぎょう規則きそく内容ないよう相当そうとうせい」「労働ろうどう組合くみあいひとしとの交渉こうしょう状況じょうきょう」その就業しゅうぎょう規則きそく変更へんこうかか事情じじょうらして合理ごうりてきなものであるときは、労働ろうどう契約けいやく内容ないようである労働ろうどう条件じょうけんは、当該とうがい変更へんこう就業しゅうぎょう規則きそくさだめるところによるものとされ(労働ろうどう契約けいやくほうだい10じょう)、労働ろうどうしゃとの合意ごういがなくても、就業しゅうぎょう規則きそく変更へんこうにより労働ろうどうしゃ不利益ふりえき労働ろうどう条件じょうけん変更へんこうできる[ちゅう 5]

労働ろうどう契約けいやく期間きかん

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契約けいやく期間きかんとう

だい14じょう  

労働ろうどう契約けいやくは、期間きかんさだめのないもののぞ一定いってい事業じぎょう完了かんりょう必要ひつよう期間きかんさだめるもののほかは、3ねん(つぎ各号かくごうのいずれかに該当がいとうする労働ろうどう契約けいやくにあつては、5ねん)をえる期間きかんについて締結ていけつしてはならない。
  1. 専門せんもんてき知識ちしき技術ぎじゅつまた経験けいけん(以下いかこのごうおよだい41じょうの2だい1こうだい1ごうにおいて「専門せんもんてき知識ちしきとう」という。)であつて高度こうどのものとして厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじんさだめる基準きじゅん該当がいとうする専門せんもんてき知識ちしきとうゆうする労働ろうどうしゃ(当該とうがい高度こうど専門せんもんてき知識ちしきとう必要ひつようとする業務ぎょうむものかぎる。)とのあいだ締結ていけつされる労働ろうどう契約けいやく
  2. まん60さい以上いじょう労働ろうどうしゃとのあいだ締結ていけつされる労働ろうどう契約けいやく(前号ぜんごうかかげる労働ろうどう契約けいやくのぞく。)
日本にっぽん雇用こようしゃ
総務そうむしょう統計とうけいきょく、2019年度ねんど労働ろうどうりょく調査ちょうさ[5]
雇用こよう形態けいたい まんにん
役員やくいん 335
期間きかんさだめのない労働ろうどう契約けいやく 3,728
1ねん以上いじょう有期ゆうき契約けいやく 451
1かげつ~1ねん未満みまん有期ゆうき契約けいやく臨時りんじやとい 763
1かげつ未満みまん有期ゆうき契約けいやく日雇ひやと 15
期間きかんがわからない 239

労働ろうどう基準きじゅんほう施行しこうは、有期ゆうき労働ろうどう契約けいやく期間きかん上限じょうげん一律いちりつ「1ねん」であったが、平成へいせい11ねん改正かいせいほう施行しこうにより高度こうど専門せんもんてき能力のうりょくゆうし、企業きぎょうわくえて柔軟じゅうなんはたらかたもとめる労働ろうどうしゃが、その能力のうりょく存分ぞんぶん発揮はっきするための環境かんきょう整備せいびし、企業きぎょうがこのような労働ろうどうしゃ活用かつようして積極せっきょくてき事業じぎょう展開てんかいすることや、高齢こうれいしゃ経験けいけん能力のうりょくかせる雇用こよう確保かくほすることを可能かのうとすることを目的もくてきとして、「専門せんもんてき知識ちしきとう」「まん60さい以上いじょう」の労働ろうどう契約けいやくについては上限じょうげんが「3ねん」に延長えんちょうされた。さらに平成へいせい16ねん改正かいせいほう施行しこうにより有期ゆうき契約けいやく労働ろうどうしゃおおくが契約けいやく更新こうしんかえすことにより、一定いってい期間きかん継続けいぞくして雇用こようされている現状げんじょうとうまえ、有期ゆうき労働ろうどう契約けいやく労使ろうし双方そうほうから良好りょうこう雇用こよう形態けいたいひとつとして活用かつようされるようにすることを目的もくてきとして、一般いっぱん労働ろうどう契約けいやくは「3ねん」、「専門せんもんてき知識ちしきとう」「まん60さい以上いじょう」の労働ろうどう契約けいやくについては「5ねん」に上限じょうげんがそれぞれ延長えんちょうされた。

だい1ごうの「厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじんさだめる基準きじゅん」(平成へいせい28ねん10がつ19にち厚生こうせい労働省ろうどうしょう告示こくじ376ごう)に該当がいとうするとは、つぎのいずれかに該当がいとうするものである。これらのもの専門せんもんてき知識ちしき技術ぎじゅつおよ経験けいけんゆうしており、みずからの労働ろうどう条件じょうけんめるにたり、交渉こうしょうじょう劣位れついつことのない労働ろうどうしゃであるとかんがえられるためである。また労働ろうどうしゃがこれらの資格しかくとうゆうしているだけではりず、当該とうがい資格しかくとう関係かんけいする業務ぎょうむおこなうことが労働ろうどう契約けいやくじょうみとめられているひとし必要ひつようである(平成へいせい15ねん10がつ22にちもとはつ1022001ごう)。

  1. 博士はかせ学位がくい外国がいこくにおいて授与じゅよされたこれに該当がいとうする学位がくいふくむ。)をゆうするもの
  2. つぎかかげるいずれかの資格しかくゆうするもの
  3. 情報処理じょうほうしょり促進そくしんかんする法律ほうりつだい29じょう規定きていする情報処理じょうほうしょり技術ぎじゅつしゃ試験しけん区分くぶんのうち「ITストラテジスト試験しけん合格ごうかくしたものしくは情報処理じょうほうしょり技術ぎじゅつしゃ試験しけん規則きそくとう一部いちぶ改正かいせいする省令しょうれいだい2じょう規定きていによる改正かいせいまえ当該とうがい区分くぶんのうち」システムアナリスト試験しけん合格ごうかくしたものまたアクチュアリーかんする資格しかく試験しけん保険ほけん業法ぎょうほうだい122じょうの2だい2こう規定きていにより指定していされた法人ほうじんおこな保険ほけん数理すうりおよ年金ねんきん数理すうりかんする試験しけんをいう。)に合格ごうかくしたもの
    • 「アクチュアリー」とは、かくりつ数理すうり統計とうけい手法しゅほう駆使くしして、保険ほけんりょうりつ算定さんてい配当はいとう水準すいじゅん決定けってい保険ほけん商品しょうひん開発かいはつおよ企業きぎょう年金ねんきん設計せっけいとうおこなうものであり、「アクチュアリーにかんする資格しかく試験しけん」とは、社団しゃだん法人ほうじん日本にっぽんアクチュアリーかいおこなうアクチュアリーにかんする資格しかく試験しけんすものである(平成へいせい15ねん10がつ22にちもとはつ1022001ごう)。
  4. 特許とっきょほうだい2じょう2こう規定きていする特許とっきょ発明はつめい発明はつめいしゃ意匠いしょうほうだい2じょう2に規定きていする登録とうろく意匠いしょう創作そうさくしたものまた種苗しゅびょうほうだい20じょう1こう規定きていする登録とうろく品種ひんしゅ育成いくせいしたもの
  5. つぎのいずれかに該当がいとうするものであって、労働ろうどう契約けいやく期間きかんちゅう支払しはらわれることが確実かくじつ見込みこまれる賃金ちんぎんがくいちねんたりのがく換算かんさんしたがく1,075まんえん下回したまわらないもの
    • 農林のうりんすい産業さんぎょうしくは鉱工業こうこうぎょう科学かがく技術ぎじゅつ人文じんぶん科学かがくのみにかかるものをのぞく。以下いかおなじ。)しくは機械きかい電気でんき土木どぼくしくは建築けんちくかんする科学かがく技術ぎじゅつかんする専門せんもんてき応用おうよう能力のうりょく必要ひつようとする事項じこうについての計画けいかく設計せっけい分析ぶんせき試験しけんしくは評価ひょうか業務ぎょうむこうとするもの情報処理じょうほうしょりシステム(電子でんし計算けいさん使用しようしておこな情報処理じょうほうしょり目的もくてきとして複数ふくすう要素ようそわされた体系たいけいであってプログラム設計せっけい基本きほんとなるものをいう。)の分析ぶんせきしくは設計せっけい業務ぎょうむ(「システムエンジニア業務ぎょうむ」)にこうとするものまた衣服いふく室内しつない装飾そうしょく工業こうぎょう製品せいひん広告こうこくとうあらたなデザインの考案こうあん業務ぎょうむこうとするものであって、つぎのいずれかに該当がいとうするもの
      1. 学校がっこう教育きょういくほうによる大学だいがく短期大学たんきだいがくのぞく。)においてしゅうこうとする業務ぎょうむかんする学科がっかおさめて卒業そつぎょうしたもの昭和しょうわ28ねん文部省もんぶしょう告示こくじだい5ごう規定きていするものであって、こうとする業務ぎょうむかんする学科がっかおさめたものふくむ。)であって、こうとする業務ぎょうむに5ねん以上いじょう従事じゅうじした経験けいけんゆうするもの
      2. 学校がっこう教育きょういくほうによる短期大学たんきだいがくまた高等こうとう専門せんもん学校がっこうにおいてしゅうこうとする業務ぎょうむかんする学科がっかおさめて卒業そつぎょうしたものであって、こうとする業務ぎょうむに6ねん以上いじょう従事じゅうじした経験けいけんゆうするもの
      3. 学校がっこう教育きょういくほうによる高等こうとう学校がっこうにおいてしゅうこうとする業務ぎょうむかんする学科がっかおさめて卒業そつぎょうしたものであって、こうとする業務ぎょうむに7ねん以上いじょう従事じゅうじした経験けいけんゆうするもの
        • しゅうこうとする業務ぎょうむかんする学科がっか」とは、労働ろうどうしゃ従事じゅうじさせようとする業務ぎょうむにそれぞれかんするものである。なお、「学科がっか」には、大学だいがく設置せっち基準きじゅんだい5じょうもとづき学科がっかえて設置せっちされている「課程かてい」もふくまれる。「〇ねん以上いじょう従事じゅうじした経験けいけん」には、それぞれの学位がくい資格しかくとう以前いぜん経験けいけんふくむ(平成へいせい15ねん10がつ22にちもとはつ1022001ごう)。
        • 支払しはらわれることが確実かくじつ見込みこまれる賃金ちんぎんがく」とは、個別こべつ労働ろうどう契約けいやくまた就業しゅうぎょう規則きそくとうにおいて、名称めいしょう如何いかにかかわらず、あらかじめ具体ぐたいてきがくをもって支払しはらわれることが約束やくそくされ、支払しはらわれることが確実かくじつ見込みこまれる賃金ちんぎんはすべてふくまれる。したがって、所定しょていがい労働ろうどうたいする手当てあて労働ろうどうしゃ勤務きんむ成績せいせきとうおうじて支払しはらわれる賞与しょうよ業績ぎょうせききゅうとうその支給しきゅうがくがあらかじめ確定かくていされていないものはふくまれない。ただし、賞与しょうよ業績ぎょうせききゅうでもいわゆる最低さいてい保障ほしょうがくさだめられ、その最低さいてい保障ほしょうがくについては支払しはらわれることが確実かくじつ見込みこまれる場合ばあいには、その最低さいてい保障ほしょうがくふくまれる(平成へいせい15ねん10がつ22にちもとはつ1022001ごう)。
    • 事業じぎょう運営うんえいにおいて情報処理じょうほうしょりシステムを活用かつようするための問題もんだいてん把握はあくまたはそれを活用かつようするための方法ほうほうかんする考案こうあんしくは助言じょげん業務ぎょうむ(いわゆるシステムコンサルタント)にこうとするものであって、システムエンジニアの業務ぎょうむに5ねん以上いじょう従事じゅうじした経験けいけんゆうするもの
  6. くに地方ちほう公共こうきょう団体だんたい一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじんまた一般いっぱん財団ざいだん法人ほうじんそのこれらにじゅんずるものによりそのゆうする知識ちしき技術ぎじゅつまた経験けいけんすぐれたものであると認定にんていされているものぜん各号かくごうかかげるものじゅんずるものとして厚生こうせい労働省ろうどうしょう労働ろうどう基準局きじゅんきょくちょうみとめるものかぎる。)
    • 厚生こうせい労働省ろうどうしょう労働ろうどう基準局きじゅんきょくちょうみとめるもの」については、おって必要ひつようおうじ、厚生こうせい労働省ろうどうしょう労働ろうどう基準局きじゅんきょくちょう通達つうたつによりさだめることとする(平成へいせい15ねん10がつ22にちもとはつ1022001ごう)。しかしながら現在げんざい当該とうがい通達つうたつ発出はっしゅつである。

だい2ごうの「まん60さい以上いじょう労働ろうどうしゃとのあいだ締結ていけつされる労働ろうどう契約けいやく」とは、契約けいやく締結ていけつまん60さい以上いじょうである労働ろうどうしゃとのあいだ締結ていけつされるものであることをようする(平成へいせい11ねん1がつ29にちもとはつだい45ごう平成へいせい15ねん10がつ22にちもとはつ1022001ごう)。

建設けんせつ工事こうじとう有期ゆうきてき事業じぎょうであれば、3ねん(5ねん)をえその完了かんりょうまでの期間きかん労働ろうどう契約けいやく締結ていけつできる。なお、上記じょうき各号かくごう労働ろうどう契約けいやくおよ一定いってい事業じぎょう完了かんりょう必要ひつよう期間きかん労働ろうどう契約けいやくのぞき、1ねんえる期間きかんさだめのある労働ろうどう契約けいやく締結ていけつした労働ろうどうしゃであっても、当該とうがい契約けいやく期間きかん初日しょにちから1ねん経過けいかした以後いごにおいては、その使用しようしゃもうることにより、いつでも(やむをえない事由じゆうがなくても)退職たいしょくできる(だい137じょう)。

職業しょくぎょう能力のうりょく開発かいはつ促進そくしんほうだい24じょう1こうもとづく都道府県とどうふけん知事ちじ認定にんていけておこな職業しょくぎょう訓練くんれんける労働ろうどうしゃについて必要ひつようがある場合ばあいにおいては、その必要ひつよう限度げんどで、契約けいやく期間きかんについて、厚生こうせい労働ろうどう省令しょうれい別段べつだんさだめをすることができる(だい70じょう)とされ、職業しょくぎょう能力のうりょく開発かいはつ促進そくしんほう施行しこう規則きそくさだめる訓練くんれん期間きかん範囲はんいないで3ねん(5ねん)をえる契約けいやく期間きかんさだめることができる。この場合ばあい当該とうがい事業じぎょうじょうにおいてさだめられた訓練くんれん期間きかんえてはならない(施行しこう規則きそくだい34じょうの2の2)。

3ねん(5ねん)をえるさだめの労働ろうどう契約けいやくはそのさだめが無効むこうとなり、だい13じょうによりその期間きかんは3ねん(5ねん)に短縮たんしゅくされる(平成へいせい11ねん1がつ29にちもとはつだい45ごう平成へいせい15ねん10がつ22にちもとはつ1022001ごう)。

有期ゆうき労働ろうどう契約けいやく締結ていけつ更新こうしんおよやといめにかんする基準きじゅん

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だい14じょう

2. 厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじんは、期間きかんさだめのある労働ろうどう契約けいやく締結ていけつおよ当該とうがい労働ろうどう契約けいやく期間きかん満了まんりょうにおいて労働ろうどうしゃ使用しようしゃとのあいだ紛争ふんそうしょうずることを未然みぜん防止ぼうしするため、使用しようしゃこうずべき労働ろうどう契約けいやく期間きかん満了まんりょうかか通知つうちかんする事項じこうその必要ひつよう事項じこうについての基準きじゅんさだめることができる。

3. 行政ぎょうせい官庁かんちょうは、前項ぜんこう基準きじゅんかんし、期間きかんさだめのある労働ろうどう契約けいやく締結ていけつする使用しようしゃたいし、必要ひつよう助言じょげんおよ指導しどうおこなうことができる。

平成へいせい16ねん改正かいせいほう施行しこうによりだい14じょうに2こう、3こう追加ついかされた。だい14じょう2こうもとづき、厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじん有期ゆうき労働ろうどう契約けいやく締結ていけつ更新こうしんおよやといめにかんする基準きじゅん(いわゆる「やと基準きじゅん」、平成へいせい24ねん10がつ26にち厚生こうせい労働省ろうどうしょう告示こくじだい551ごう)をさだめている。この基準きじゅん法的ほうてき拘束こうそくりょくはないが、近年きんねん労働ろうどう契約けいやくほうひとしにより有期ゆうき労働ろうどう契約けいやくかんする規制きせい強化きょうかされており、労働ろうどう契約けいやく更新こうしんかんする解釈かいしゃくとして参考さんこうになる。

やと基準きじゅんだい1じょう

  • 使用しようしゃは、期間きかんさだめのある労働ろうどう契約けいやく当該とうがい契約けいやくを3かい以上いじょう更新こうしんし、またやといれのから起算きさんして1ねんえて継続けいぞく勤務きんむしているものかかるものにかぎ、あらかじめ当該とうがい契約けいやく更新こうしんしないむね明示めいじされているものをのぞく。つぎじょうだい2こうにおいておなじ。)を更新こうしんしないこととしようとする場合ばあいには、すくなくとも当該とうがい契約けいやく期間きかん満了まんりょうする30にちまえまでに、その予告よこくをしなければならない。

やと基準きじゅんだい2じょう 

  1. 前条ぜんじょう場合ばあいにおいて、使用しようしゃは、労働ろうどうしゃ更新こうしんしないこととする理由りゆうについて証明しょうめいしょ請求せいきゅうしたときは、遅滞ちたいなくこれを交付こうふしなければならない。
  2. 期間きかんさだめのある労働ろうどう契約けいやく更新こうしんされなかった場合ばあいにおいて、使用しようしゃは、労働ろうどうしゃ更新こうしんしなかった理由りゆうについて証明しょうめいしょ請求せいきゅうしたときは、遅滞ちたいなくこれを交付こうふしなければならない。

やと基準きじゅんだい3じょう

  • 使用しようしゃは、期間きかんさだめのある労働ろうどう契約けいやく当該とうがい契約けいやくを1かい以上いじょう更新こうしんし、かつ、やといれのから起算きさんして1ねんえて継続けいぞく勤務きんむしているものかかるものにかぎる。)を更新こうしんしようとする場合ばあいにおいては、当該とうがい契約けいやく実態じったいおよ当該とうがい労働ろうどうしゃ希望きぼうおうじて、契約けいやく期間きかんできるかぎながくするようつとめなければならない。

賠償ばいしょう予定よてい禁止きんし

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賠償ばいしょう予定よてい禁止きんし

だい16じょう  

使用しようしゃは、労働ろうどう契約けいやく不履行ふりこうについて違約いやくきんさだめ、また損害そんがい賠償ばいしょうがく予定よていする契約けいやくをしてはならない。

契約けいやく相手方あいてがたは、労働ろうどうしゃのみならず、親権しんけんしゃ身元みもと保証人ほしょうにんなどもふくまれる。なお、あらかじめさだめておくことが禁止きんしされているのであって、現実げんじつ徴収ちょうしゅうしなくてもさだめておくだけで違反いはんとなる。もっとも現実げんじつしょうじた損害そんがいについて損害そんがい賠償ばいしょうすることまで禁止きんしされているのではない(昭和しょうわ22ねん9がつ13にちはつもと17ごう)。船員せんいんにもどう趣旨しゅし規定きていがある(船員せんいんほうだい33じょう)。

使用しようしゃ費用ひようして被用者ひようしゃ海外かいがい留学りゅうがくをさせる場合ばあいに、留学りゅうがく費用ひよう使用しようしゃ労働ろうどうしゃ貸与たいよする形式けいしきをとり、ただ帰国きこく一定いってい期間きかん勤続きんぞくした場合ばあいにその返還へんかん免除めんじょするという契約けいやく締結ていけつした場合ばあいは、そのような契約けいやくが、労働ろうどう契約けいやくとは別個べっこ免除めんじょ特約とくやくづけ金銭きんせん消費しょうひ貸借たいしゃく契約けいやくにあたるとみなされれば、だい16じょう違反いはんとはならない。ただしその場合ばあいも、返還へんかん免除めんじょ基準きじゅん明確めいかくであったり、返還へんかんがく過度かど高額こうがくであるとう事情じじょうがある場合ばあいには、当該とうがい費用ひよう返還へんかん規定きてい労働ろうどうしゃ退職たいしょく過度かど抑制よくせいするものとして違法いほうとなりうる(長谷工はせこうコーポレーション事件じけん東京とうきょうばんたいら9.5.26)。

なお、減給げんきゅう制裁せいさいだい91じょう)はだい16じょう違反いはんとはならない。

ぜん借金しゃっきん相殺そうさい禁止きんし

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ぜん借金しゃっきん相殺そうさい禁止きんし

だい17じょう  

使用しようしゃは、ぜん借金しゃっきんその労働ろうどうすることを条件じょうけんとするぜんかし債権さいけん賃金ちんぎん相殺そうさいしてはならない。

ぜん借金しゃっきん」とは、労働ろうどうすることを条件じょうけんとして使用しようしゃからおかねり、将来しょうらい賃金ちんぎんにより弁済べんさいすることを約束やくそくした金銭きんせんをいう。金銭きんせん貸借たいしゃく関係かんけい労働ろうどう関係かんけいとを完全かんぜん分離ぶんりし、金銭きんせん貸借たいしゃく関係かんけいもとづく身分みぶんてき拘束こうそく防止ぼうしすることがだい17じょう趣旨しゅしである。したがって、労働ろうどうしゃ使用しようしゃから人的じんてき信用しんようもとづいてける金融きんゆう弁済べんさい繰上くりあとうあきらかに身分みぶんてき拘束こうそくともなわないものは、労働ろうどうすることを条件じょうけんとする債権さいけんにはふくまれない(昭和しょうわ22ねん9がつ13にちはつもと17ごう)。なお、だい17じょう禁止きんししたのは、「ぜん借金しゃっきんについての使用しようしゃ債権さいけんぜんかし債権さいけん)で賃金ちんぎんたいする労働ろうどうしゃ債権さいけん賃金ちんぎん債権さいけん)を相殺そうさいすること」であるから、ぜん借金しゃっきんわたすこと自体じたいきんじられているわけではない(東京とうきょうだかばんあきら48.11.21)。 

使用しようしゃ労働ろうどう組合くみあいとの労働ろうどう協約きょうやく締結ていけつあるいは労働ろうどうしゃからのさるもとづき、生活せいかつ必需ひつじゅひん購入こうにゅうとうのための生活せいかつ資金しきんけ、そのこの貸付かしつけきん賃金ちんぎんより分割ぶんかつ控除こうじょする場合ばあいにおいては、その貸付かしつけ原因げんいん期間きかん金額きんがく金利きんり有無うむとう総合そうごうてき判断はんだんして労働ろうどうすることが条件じょうけんとなっていないことがきわめて明白めいはく場合ばあいには、だい17じょう適用てきようされない(昭和しょうわ23ねん10がつ15にちもとはつ1510ごう)。労使ろうし合意ごういによる相殺そうさい具体ぐたいれいとしては、住宅じゅうたくローンかんしてなされた合意ごうい相殺そうさいにつき、労働ろうどうしゃ自由じゆう意思いしもとづくものとみとめられるような場合ばあいには、適法てきほうであると判断はんだんした最高裁さいこうさい判決はんけつがある(日新製鋼にっしんせいこう事件じけんさいはんひらめ2.11.26)。

事業じぎょうぬし育児いくじ休業きゅうぎょう期間きかんちゅう社会しゃかい保険ほけんりょう保険ほけんしゃ負担ふたんぶん立替たてかえ、復職ふくしょく賃金ちんぎんから控除こうじょする制度せいどは、いちじるしいたか金利きんりされるとうにより、その貸付かしつけ労働ろうどうすることを条件じょうけんとしている場合ばあいのぞいて、一般いっぱんてきにはだい17じょう違反いはんとはならない。ただし、この場合ばあいは、だい24じょう1じょう但書ただしがき賃金ちんぎん控除こうじょ協定きょうてい賃金ちんぎん全額ぜんがくばらいの原則げんそくとその例外れいがい)にもとづき、労使ろうし協定きょうてい必要ひつようとなる。また一定いってい年限ねんげん労働ろうどうすれば、当該とうがい債務さいむ免除めんじょするむねあつかいもだい17じょう違反いはんとはしない(平成へいせい3ねん12月20にちもとはつ712ごう)。

相殺そうさい制限せいげん

船員せんいんほうだい35じょう  

船舶せんぱく所有しょゆうしゃは、船員せんいんたいする債権さいけん給料きゅうりょう支払しはらい債務さいむとを相殺そうさいしてはならない。ただし、相殺そうさいがく給料きゅうりょうがくの3ぶんの1をえないときおよ船員せんいん犯罪はんざい行為こうい損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうけんもってするときは、このかぎりでない。

船員せんいんほうにおいては労働ろうどう基準きじゅんほうとは趣旨しゅしことなる規定きていかれている。

強制きょうせい貯蓄ちょちく禁止きんし

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使用しようしゃは、労働ろうどう契約けいやく附随ふずいして貯蓄ちょちく契約けいやくをさせ、また貯蓄ちょちくきん管理かんりする契約けいやく強制きょうせい貯蓄ちょちく)をしてはならない(だい18じょう1こう)。戦前せんぜんにおいては強制きょうせい貯蓄ちょちく労働ろうどうしゃ足留あしどさくとして利用りようされ、また貯蓄ちょちくきん使用しようしゃ事業じぎょう資金しきん流用りゅうようして労働ろうどうしゃはらもどしをけることが困難こんなんまた不可能ふかのうとなる事態じたいきることがあった。そのため、労働ろうどう基準きじゅんほうでは強制きょうせい貯蓄ちょちく全面ぜんめんてき禁止きんししている

いっぽう、労働ろうどうしゃ委託いたくけて社内しゃない預金よきんをするようなこと(任意にんい貯蓄ちょちく)は禁止きんしされていない。船員せんいんにもどう趣旨しゅし規定きていがある(船員せんいんほうだい34じょう)。具体ぐたいてきには、使用しようしゃ自身じしん預金よきんれて直接ちょくせつ管理かんりする「社内しゃない預金よきん」と、使用しようしゃれた預金よきん労働ろうどうしゃ名義めいぎ金融きんゆう機関きかんとう預入よにゅうし、その通帳つうちょう印鑑いんかん使用しようしゃ保管ほかんする「通帳つうちょう保管ほかん」とがある。いずれの場合ばあいにおいても、使用しようしゃ以下いか措置そち共通きょうつう措置そち)をらなければならない。

  • 労使ろうし協定きょうてい貯蓄ちょちくきん管理かんり協定きょうてい)を締結ていけつし、所轄しょかつ労働ろうどう基準きじゅん監督かんとくしょちょう届出とどけでこと(だい18じょう2こう
    • 届出とどけで様式ようしきだい1ごうによっておこなう(施行しこう規則きそくだい6じょう)。協定きょうてい締結ていけつ届出とどけでおこなうことなく事業じぎょうぬし労働ろうどうしゃ預金よきんれをおこなうことは、だい18じょう2こう違反いはんのみならず、出資法しゅっしほうにも抵触ていしょくするおそれがある(昭和しょうわ52ねん1がつ7にちもとはつ4ごう)。
  • 貯蓄ちょちくきん管理かんり規程きていさだめ、これを労働ろうどうしゃ周知しゅうちさせるため作業場さぎょうばそなけるとう措置そちをとること(だい18じょう3こう
  • 労働ろうどうしゃ貯蓄ちょちくきん返還へんかん請求せいきゅうしたときは、遅滞ちたいなく返還へんかんすること(だい18じょう5こう

労働ろうどうしゃ派遣はけん労働ろうどうしゃ場合ばあいは、貯蓄ちょちくきん管理かんり派遣はけんもと使用しようしゃおこなう。派遣はけんさき使用しようしゃ貯蓄ちょちくきん管理かんりをすることはできない昭和しょうわ61ねん6がつ6にちもとはつ333ごう)。

労働ろうどうしゃ貯蓄ちょちくきん返還へんかん請求せいきゅうしたにもかかわらず、使用しようしゃがこれを返還へんかんしない場合ばあいにおいて、当該とうがい貯蓄ちょちくきん管理かんり継続けいぞくすることが労働ろうどうしゃ利益りえきいちじるしくがいするとみとめられるときは、所轄しょかつ労働ろうどう基準きじゅん監督かんとく署長しょちょうは、使用しようしゃたいして、その必要ひつよう限度げんど範囲はんいないで、当該とうがい貯蓄ちょちくきん管理かんり中止ちゅうしすべきことをめいずることができる(だい18じょう6こう[ちゅう 6]。この規定きていにより貯蓄ちょちくきん管理かんり中止ちゅうしすべきことをめいぜられた使用しようしゃは、遅滞ちたいなく、その管理かんりかか貯蓄ちょちくきん労働ろうどうしゃ返還へんかんしなければならない(だい18じょう7こう)。「その必要ひつよう限度げんど範囲はんいない」とは、貯蓄ちょちくきん管理かんり委託いたくしている労働ろうどうしゃ全部ぜんぶまたは一部いちぶについて中止ちゅうしさせるとのであり、個々ここ労働ろうどうしゃ貯蓄ちょちくきん一部いちぶについてその管理かんり中止ちゅうしさせるとのではない(昭和しょうわ27ねん9がつ20日はつかもとはつ675ごう)。

社内しゃない預金よきん

社内しゃない預金よきん場合ばあい共通きょうつう措置そちくわえ、以下いか措置そちらなければならない。

  1. 貯蓄ちょちくきん管理かんり協定きょうてい以下いか事項じこうさだめること(施行しこう規則きそくだい5じょうの2)
    • 預金よきんしゃ範囲はんい
      • 預金よきんしゃ範囲はんい」は、だい9じょうでいう「労働ろうどうしゃ」にかぎられる。したがって、取締役とりしまりやく監査かんさやくとう事業じぎょうぬしとのあいだ使用しよう従属じゅうぞく関係かんけいにないもの代表だいひょうけん業務ぎょうむ執行しっこうけんゆうしないで工場こうじょうちょう部長ぶちょうとうしょくにあって事業じぎょうぬしから賃金ちんぎん支払しはらいをけるもののぞく)、退職たいしょくしゃ労働ろうどうしゃ家族かぞく社内しゃない親睦しんぼく団体だんたいふくまれない(昭和しょうわ52ねん1がつ7にちもとはつ4ごう)。
      • 事業じぎょうぬしとしてだい18じょう2こうにより労働ろうどうしゃ貯蓄ちょちくきん管理かんりおこなものは、だい10じょう規定きていする使用しようしゃかぎられ、会社かいしゃ共済きょうさいかいとうはこれにふくまれない(昭和しょうわ52ねん1がつ7にちもとはつ4ごう)。
    • 預金よきんしゃ1にんたりの預金よきんがく限度げんど
      • れる預金よきん原資げんしは、雇用こよう関係かんけいもとづくだい11じょうでいう「賃金ちんぎん以外いがいのものはれないむねあきらかにする。労働ろうどうしゃ家族かぞく労働ろうどうしゃ名義めいぎ預金よきんをすること、労働ろうどうしゃ兼業けんぎょう収入しゅうにゅう財産ざいさん処分しょぶんによる収入しゅうにゅうとう原資げんしとして適当てきとうでない(昭和しょうわ52ねん1がつ7にちもとはつ4ごう)。
      • 預金よきんしゃいちにんたりの預金よきんがく限度げんどは、上記じょうき趣旨しゅし沿って、当該とうがい事業じぎょうじょう賃金ちんぎん水準すいじゅん預金よきん目的もくてきとう考慮こうりょして具体ぐたいてきさだめること。「賃金ちんぎんがくの〇ヶ月かげつぶん」とするさだめも「具体ぐたいてきさだめ」に該当がいとうする(昭和しょうわ52ねん1がつ7にちもとはつ4ごう)。
    • 預金よきん利率りりつおよ利子りし計算けいさん方法ほうほう
      • 社内しゃない預金よきん場合ばあい使用しようしゃ利子りしをつけなければならない(だい18じょう4こう)。これは預金よきん利率りりつについてその最低限さいていげん規制きせい労働ろうどうしゃ保護ほごはかるものであるが、はなはだしくたか利率りりつさだめることも本来ほんらい趣旨しゅしにもとり、これによる弊害へいがい黙視もくししえないものがあるので、行政ぎょうせい指導しどううえ利率りりつ上限じょうげん市中しちゅう預金よきん金利きんり最高さいこう利率りりつ変動へんどう連関れんかんさせて決定けっていするものとする(昭和しょうわ52ねん1がつ7にちもとはつ4ごう)。もっとも、平成へいせい6ねんをもって市中金利しちゅうきんり完全かんぜん自由じゆうされたこと、いちじるしい高利こうりりつによる預金よきん安全あんぜんせい確保かくほについては、上限じょうげん利率りりつかか指導しどうによる規制きせいによってではなく、本来ほんらい保全ほぜん措置そち適正てきせいによってはかるべきものであること、上限じょうげん利率りりつかか指導しどう背景はいけいとなった昭和しょうわ30ねんから40年代ねんだいし、現在げんざい企業きぎょうとうにおいても金融きんゆう機関きかんからの資金しきん調達ちょうたつ容易よういになったうえ市中金利しちゅうきんりてい水準すいじゅんにあるなどの状況じょうきょう変化へんかにより、いちじるしい高利こうりりつ設定せってい予想よそうされないことひとし現在げんざい状況じょうきょうにおいては、上限じょうげん利率りりつしめし、それにかか指導しどうおこな意義いぎとぼしくなっているとみとめられることから、当面とうめん上限じょうげん利率りりつしめすことおよ当該とうがい利率りりつかか指導しどうおこなわないとされる(平成へいせい8ねん2がつ16にちもとはつ62ごう)。
      • 下限かげん利率りりつは、市中金利しちゅうきんり実勢じっせい考慮こうりょした妥当だとう利率りりつ改正かいせいしていくものであることから、毎年まいとし1がつ見直みなお作業さぎょうおこない、改正かいせい必要ひつようみとめられる場合ばあいには、4がつ1にち施行しこうとし、年度ねんど単位たんい改正かいせいおこなうこととしていること(昭和しょうわ52ねん1がつ7にちもとはつ4ごう平成へいせい9ねん1がつ16にちもとはつ17ごう)。現在げんざい下限かげん利率りりつとし0.5%とされ(れい5ねん2がつ6にちもとかんはつ0206だい2ごう)、導入どうにゅう企業きぎょう平均へいきん利率りりつとし0.79%である[6]下限かげん利率りりつ下回したまわ利率りりつさだめても無効むこうとなり、この場合ばあいには、下限かげん利率りりつさだめたものとみなされる。
      • 利子りし計算けいさん方法ほうほう」は、単利たんり複利ふくりべつづけ単位たんい利息りそく計算けいさん期間きかんとうさだめる(昭和しょうわ52ねん1がつ7にちもとはつ4ごう)。
    • 預金よきん受入うけいおよはらもどしの手続てつづき
      • 貯蓄ちょちくきん管理かんり適正てきせいのためには、預金よきんしゃ各人かくじんにつき預金よきんがく常時じょうじあきらかにされなければならないことは当然とうぜんであり、協定きょうていにおいては、すくなくとも、預金よきん通帳つうちょうとう預金よきん受入うけいがく払戻はらいもどがくおよ預金よきん残高ざんだか記録きろくした書面しょめん交付こうふならびにこれらの事項じこう預金よきんしゃ各人かくじんべつ記録きろくした預金よきん元帳もとちょう備付そなえつけを明記めいきする必要ひつようがある。預金よきんしゃ交付こうふする書面しょめんは、通常つうじょう普通ふつう預金よきんおよ積立つみたて預金よきん場合ばあいには預金よきん通帳つうちょう定期ていき預金よきん場合ばあいには預金よきん証書しょうしょとなるが、積立つみたて預金よきんのうち、預金よきん方法ほうほうだい24じょう1こう但書ただしがき規定きていによる協定きょうていもとづき賃金ちんぎんから控除こうじょして預金よきんとしてれるものに限定げんていされているものについては、預金よきんしゃ交付こうふする賃金ちんぎん支給しきゅう明細めいさいしょにそのつき積立つみたて金額きんがくおよ積立つみたて合計ごうけいがく記載きさいし、これをもって預金よきん通帳つうちょうえることはつかえない。預金よきん元帳もとちょうは、本社ほんしゃとうにおいて一括いっかつ管理かんりしてつかえない(昭和しょうわ52ねん1がつ7にちもとはつ4ごう)。
    • 預金よきん保全ほぜん方法ほうほう
      • 事業じぎょうぬし毎年まいとし3月31にちにおける受入うけいれ預金よきんがく[ちゅう 7]について、同日どうじつ1年間ねんかんつうずる貯蓄ちょちくきん保全ほぜん措置そちこうじなければならず(賃金ちんぎん支払しはらい確保かくほほうだい3じょう)、労働ろうどう基準きじゅん監督かんとく署長しょちょうは、事業じぎょうぬし保全ほぜん措置そちこうじていないときは、文書ぶんしょにより、当該とうがい事業じぎょうぬしたいして、期限きげん指定していして、その是正ぜせいめいずることができる(賃金ちんぎん支払しはらい確保かくほほうだい4じょう)。退職たいしょく手当てあてについても、その支払しはらいにてるべき一定いっていがくについて保全ほぜん措置そちじゅんずる措置そちこうじるようつとめなければならない(賃金ちんぎん支払しはらい確保かくほほうだい5じょう)。「貯蓄ちょちくきん保全ほぜん措置そち」とは、以下いかのいずれかの方法ほうほうである(賃金ちんぎん支払しはらい確保かくほほう施行しこう規則きそくだい2じょう)。なおどうじょう貯蓄ちょちくきん保全ほぜん措置そちとして適当てきとうみとめられるものを列挙れっきょしたものであり、どうじょうさだめる措置そち以上いじょう併用へいようすることはつかえないが、どうじょうさだめる措置そち以外いがい措置そちこうじている場合ばあいは、ちんかくほう規定きていする保全ほぜん措置そちとしてみとめない趣旨しゅしである(昭和しょうわ52ねん1がつ7にちもとはつ4ごう)。
        • 銀行ぎんこうその金融きんゆう機関きかんにおける保証ほしょう契約けいやく
          • この方法ほうほうは、預金よきん返還へんかんにつき、金融きんゆう機関きかんまた債務さいむ保証ほしょうごうとする公益こうえき法人ほうじんであって厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじん指定していするものが事業じぎょうぬし連帯れんたいして保証ほしょうし、これにより預金よきん保全ほぜんはかるものである(昭和しょうわ52ねん1がつ7にちもとはつ4ごう)。
        • 信託しんたく会社かいしゃとの信託しんたく契約けいやく
          • この方法ほうほうは、事業じぎょうぬし信託しんたく会社かいしゃ信託しんたく業務ぎょうむ兼営けんえいする銀行ぎんこうふくむ)とのあいだに、事業じぎょうぬし貯蓄ちょちくきん払戻はらいもどしにかか債務さいむ履行りこうなくなった場合ばあいに、信託しんたく財産ざいさんから預金よきんしゃ弁済べんさいするため、事業じぎょうぬしゆうする財産ざいさん信託しんたく財産ざいさんとする信託しんたく契約けいやく締結ていけつするものである。信託しんたく財産ざいさんについては、換価かんか容易よういであるものがのぞましい。また、価額かがく変動へんどうをきたすものはこのましくないので、金銭きんせんその価額かがく安定あんていしたものをこれにあてることがのぞましい(昭和しょうわ52ねん1がつ7にちもとはつ4ごう)。
        • しつけんまた抵当ていとうけん設定せってい
          • この方法ほうほうは、預金よきんしゃ事業じぎょうぬしとのあいだに、その貯蓄ちょちくきん払戻はらいもどしにかか債権さいけん担保たんぽするため、事業主じぎょうぬしまた第三者だいさんしゃゆうする財産ざいさん質物しちもつまた抵当ていとうけん目的もくてきぶつとするしつけんまた抵当ていとうけん設定せってい契約けいやく締結ていけつするものである。質物しちもつについては、価額かがく変動へんどうをきたすものはこのましくないので、しつけん設定せっていしゃ事業じぎょうぬし)が金融きんゆう機関きかんたいしてゆうする預金よきん債権さいけん金融きんゆうさい生命せいめい保険ほけん契約けいやくじょう債権さいけんとう質物しちもつとすることがのぞましい。抵当ていとうけん目的もくてきぶつについては、不動産ふどうさんそと各種かくしゅ財団ざいだん抵当ていとうほうによる財団ざいだん工場こうじょう財団ざいだん鉱業こうぎょう財団ざいだんとう)、自動車じどうしゃ建設けんせつ機械きかいとうがある。抵当ていとうけんは、同一どういつ目的もくてきぶつにつき複数ふくすう債権さいけん担保たんぽのために設定せっていすることができ、その抵当ていとうけん相互そうごあいだ優先ゆうせん順位じゅんいは、登記とうき前後ぜんごによってさだまるものであるので、原則げんそくとしてだいいち順位じゅんい抵当ていとうけん設定せっていのぞましいが、貯蓄ちょちくきん払戻はらいもどしにかか債権さいけんにつき設定せっていする抵当ていとうけんが、こう順位じゅんいであっても、目的もくてきぶつ価額かがく当該とうがい順位じゅんいたる貯蓄ちょちくきん払戻はらいもどしにかか債権さいけんをも担保たんぽするに十分じゅうぶんであるかぎり、こう順位じゅんい抵当ていとうけんであってもつかえないこと。なお、この場合ばあい第三者だいさんしゃたいする対抗たいこう要件ようけん抵当ていとうけんについては、その設定せってい登記とうき)をそなえなければ第三者だいさんしゃ対抗たいこうできないことに留意りゅういすること(昭和しょうわ52ねん1がつ7にちもとはつ4ごう)。
        • 預金よきん保全ほぜん委員いいんかい設置せっちし、かつ、貯蓄ちょちくきん管理かんり勘定かんじょうその適当てきとう措置そちさだめること
          • 預金よきん保全ほぜん委員いいんかいは、労働ろうどうしゃ預金よきん貯蓄ちょちくきん管理かんり勘定かんじょうとして経理けいりすることとう措置そちをあわせこうずることにより、貯蓄ちょちくきん管理かんりにつき、預金よきんしゃたる労働ろうどうしゃ意思いし反映はんえいさせるとともに、自己じこ預金よきん安全あんぜんせい監視かんしさせることにより、返還へんかん不能ふのうのおそれがある場合ばあいには事前じぜん預金よきんしゃ自主じしゅてき預金よきん払出はらいだしを期待きたいし、実質じっしつてき預金よきん保全ほぜんはかろうとするものである。したがって、預金よきん保全ほぜん委員いいんかいは、事業じぎょうぬしたいして貯蓄ちょちくきん管理かんりにつき意見いけんべることができるが、預金よきん運用うんよう方法ほうほうとうにつき、交渉こうしょう決定けっていする機関きかんではないこと。なお、預金よきん保全ほぜん委員いいんかいは、ちんかくそくだい2じょう2こうすべての要件ようけんをみたさなければ、適法てきほう保全ほぜん措置そちとはみとめられない。預金よきん保全ほぜん委員いいんかいは、貯蓄ちょちくきん管理かんり企業きぎょう単位たんいおこなっている場合ばあいには企業きぎょう単位たんいで、事業じぎょうじょう単位たんいおこなっている場合ばあいには事業じぎょうじょう単位たんいまた企業きぎょう単位たんい設置せっちすることとし、協定きょうていにおいて、設置せっち単位たんい明記めいきすること(昭和しょうわ52ねん1がつ7にちもとはつ4ごう)。
          • 貯蓄ちょちくきん管理かんり勘定かんじょう」とは、社内しゃない預金よきん受入うけいれ、払戻はらいもどしの状況じょうきょうについて記録きろくする貸方かしかた勘定かんじょうひとつであって、これにより預金よきんばら状況じょうきょう常時じょうじあきらかにし、預金よきん保全ほぜん委員いいんかい活動かつどう実効じっこうあるものにするためのものである。具体ぐたいてきには、貯蓄ちょちくきんとしてれたがくはらもどしたがく元帳もとちょう貯蓄ちょちくきん管理かんり勘定かんじょう口座こうざもうけ、これに記入きにゅうする。なお、この勘定かんじょうは、かく四半期しはんきごとにるものとし、またあわせて、かく四半期しはんきにおける貯蓄ちょちくきん運用うんようじょうきょうあきらかにすることをようする。「その適当てきとう措置そち」とは、支払しはらい準備じゅんびきん制度せいどをいうものであって、貯蓄ちょちくきん管理かんり勘定かんじょう設置せっちまた支払しはらい準備じゅんびきん制度せいどのうち、いずれを採用さいようしてもつかえないが、そのいずれを採用さいようするかは、協定きょうていにおいてあきらかにしなければならない。また、預金よきん保全ほぜん委員いいんかい設置せっちあわせて貯蓄ちょちくきん管理かんり勘定かんじょうもうけるのみではたん受払うけはらい状況じょうきょう確認かくにんするにとどまるものであることから、実質じっしつてき保全ほぜん機能きのうたかめるためには、貯蓄ちょちくきん管理かんり勘定かんじょう支払しはらい準備じゅんびきん制度せいど併用へいようのぞましい(昭和しょうわ52ねん1がつ7にちもとはつ4ごう)。
  2. 前項ぜんこう事項じこうおよびそれらの具体ぐたいてき取扱とりあつかいについて、貯蓄ちょちくきん管理かんり規程きていさだめること
  3. 毎年まいとし3がつ31にち以前いぜん1年間ねんかんにおける預金よきん管理かんり状況じょうきょうを、4がつ30にちまでに、様式ようしきだい24ごうにより所轄しょかつ労働ろうどう基準きじゅん監督かんとく署長しょちょう報告ほうこくすること(預金よきん管理かんりじょうきょう報告ほうこくだい104じょうの2、施行しこう規則きそくだい57じょう
    • 預金よきん管理かんりじょうきょう報告ほうこくは、以下いか要件ようけんをすべてたしている場合ばあいには、本社ほんしゃ所轄しょかつ労働ろうどう基準きじゅん監督かんとく署長しょちょう一括いっかつして報告ほうこくすることができる(昭和しょうわ52ねん1がつ7にちもとはつ4ごう)。
      • 貯蓄ちょちくきんかんする労使ろうし協定きょうてい内容ないよう支社ししゃとうにおいても同一どういつであること
      • 預金よきん元帳もとちょう本社ほんしゃにおいて集中しゅうちゅう管理かんりされていること
      • 保全ほぜん措置そち支社ししゃとう預金よきんにつき本社ほんしゃにおいて一括いっかつしてこうじられていること
  4. とし5りん以上いじょう利率りりつによる利子りしをつけること
    • とし5りん以上いじょう利率りりつになるのであれば、日歩ひぶによる利子りしでもよい(昭和しょうわ63ねん3がつ14にちもとはつ150ごう
通帳つうちょう保管ほかん

通帳つうちょう保管ほかん場合ばあいは、共通きょうつう措置そちくわえ、貯蓄ちょちくきん管理かんり規程きてい預金よきんさき金融きんゆう機関きかんめい預金よきん種類しゅるい通帳つうちょう保管ほかん方法ほうほうおよ預金よきんれの取次とりつぎ方法ほうほうさだめなければならない(昭和しょうわ63ねん3がつ14にちもとはつ150ごう)。

罰則ばっそく

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だい15じょうだい1こうもしくはだい3こう違反いはんしたものは、30まんえん以下いか罰金ばっきんしょせられる(だい120じょう)。なおどうじょうは、労働ろうどう条件じょうけん明示めいじをしなかったことや、帰郷ききょう旅費りょひ負担ふたんをしなかったという使用しようしゃたいする罰則ばっそくであり、明示めいじした労働ろうどう条件じょうけん実際じっさい労働ろうどう条件じょうけん相違そういすることについての罰則ばっそく規定きていしていない。

だい16じょうだい17じょうだい18じょう1こう違反いはんしたものは、6ヶ月かげつ以下いか懲役ちょうえきまたは30まんえん以下いか罰金ばっきんしょせられる(だい119じょう)。

だい14じょうだい18じょう7こう違反いはんしたものは、30まんえん以下いか罰金ばっきんしょせられる(だい120じょう)。なおだい14じょう使用しようしゃとも労働ろうどうしゃとも規定きていしていないが、どうじょう立法りっぽう趣旨しゅしかんがみ、どうじょう罰則ばっそく使用しようしゃのみに適用てきようがある(昭和しょうわ22ねん12月15にちもとはつ502ごう昭和しょうわ23ねん4がつ5にちもとはつ535ごう)。だい18じょう2こう違反いはんについては労働ろうどう基準きじゅんほうじょう罰則ばっそく規定きていされていないが、たん協定きょうてい締結ていけつ届出とどけでおこたったのみでは罰則ばっそく問題もんだいしょうじない。なおどうじょう要件ようけんたさずこれに違反いはんして預金よきんれをおこなった場合ばあいは、出資法しゅっしほうだい2じょう違反いはんとなり、3ねん以下いか懲役ちょうえきもしくは30まんえん以下いか罰金ばっきんしょし、またはこれらを併科へいかすることができるとされる(昭和しょうわ23ねん6がつ16にちもとおさむ1935ごう)。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ ただし、労働ろうどう基準きじゅんほうだい1じょうだい2じょうについては、罰則ばっそくさだめはない。
  2. ^ 最高さいこう裁判所さいばんしょ三菱樹脂みつびしじゅし事件じけん判決はんけつで「労働ろうどう基準きじゅんほうだい3じょう労働ろうどうしゃ信条しんじょうによって賃金ちんぎんその労働ろうどう条件じょうけんにつき差別さべつすることをきんじているが、これは、やといにおける労働ろうどう条件じょうけんについての制限せいげんであって、やといれそのものを制約せいやくする規定きていではない。」としている(昭和しょうわ43ねん(オ)だい932ごう労働ろうどう契約けいやく関係かんけい存在そんざい確認かくにん請求せいきゅう事件じけん)。
  3. ^ ILOのぜん189条約じょうやくのうち、2016ねん時点じてん日本にっぽん批准ひじゅんしているのは49条約じょうやくにとどまる。
  4. ^ 事実じじつことなるもの」とは、だい15じょう2こうにより労働ろうどうしゃ即時そくじ労働ろうどう契約けいやく解除かいじょすることができる場合ばあい同様どうよう判断はんだんされる(平成へいせい30ねん9がつ7にちもとはつ0907だい1ごう)。
  5. ^ 判例はんれいとして、山梨やまなし県民けんみん信用組合しんようくみあい事件じけんさいはん平成へいせい28ねん2がつ19にち
  6. ^ 中止ちゅうし命令めいれいは、様式ようしきだい1ごうの3による文書ぶんしょ所轄しょかつ労働ろうどう基準きじゅん監督かんとく署長しょちょうがこれをおこなう(施行しこう規則きそくだい6じょうの3)
  7. ^ 保全ほぜん措置そちこうずべき貯蓄ちょちくきんがくは、ちんかくほうだい3じょうさだめられた毎年まいとし3がつ31にち現在げんざいにおける受入うけいれ預金よきんがく全額ぜんがくであり、そのにおいて受入うけいれ預金よきんがく増減ぞうげんがあっても、法律ほうりつじょう保全ほぜんすべき貯蓄ちょちくきんがくには影響えいきょうおよぼさない。したがって、保証ほしょう契約けいやくしつけん設定せってい契約けいやくまた抵当ていとうけん設定せってい契約けいやくによって貯蓄ちょちくきん保全ほぜんおこな場合ばあいにあっては、一定いってい極度きょくどがくさだめた保証ほしょうしつまた根抵当ねていとうとなることが通例つうれいである(昭和しょうわ52ねん1がつ7にちもとはつ4ごう)。

出典しゅってん

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  1. ^ 労働ろうどう基準きじゅんほうだい15じょうだい1こう
  2. ^ 職業しょくぎょう安定あんていほうだい5じょうの3だい2こう
  3. ^ 主要しゅよう様式ようしきダウンロードコーナー 厚生こうせい労働ろうどうしょうでは労働ろうどう条件じょうけん通知つうちしょのモデルを用意よういしている。
  4. ^ 外国がいこくじん労働ろうどうしゃ雇用こよう管理かんり改善かいぜんとうかんして事業じぎょうぬし適切てきせつ対処たいしょするための指針ししん」(平成へいせい19ねん厚生こうせい労働省ろうどうしょう告示こくじだい276ごう
  5. ^ 労働ろうどうりょく調査ちょうさ 基本きほん集計しゅうけい ぜん都道府県とどうふけん 結果けっかはらおもて 全国ぜんこく 年次ねんじ 2019ねん | ファイル | 統計とうけいデータをさがす | 政府せいふ統計とうけい総合そうごう窓口まどぐち』(レポート)総務そうむしょう統計とうけいきょく、2019ねん1がつ31にち基本きほん集計しゅうけい だいII-10ひょうhttps://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200531&tstat=000000110001&cycle=7&year=20190&month=0&tclass1=000001040276&tclass2=000001040283&tclass3=000001040284&result_back=1 
  6. ^ 1%のおたから預金よきんも 社内しゃない預金よきん下限かげん」の不思議ふしぎ 日本経済新聞にほんけいざいしんぶん2020ねん8がつ26にち

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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