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マントル

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
地球ちきゅう内部ないぶ構造こうぞうえがいた想像そうぞう

マントル英語えいご: mantle, 「おおい」の)は、天体てんたい内部ないぶそうひとつ。

概要がいよう[編集へんしゅう]

惑星わくせい衛星えいせいにおいて、かく外側そとがわにあるそうである。地球ちきゅうがた惑星わくせいなどでは金属きんぞくかくたいしマントルは岩石がんせきからなり、さらに外側そとがわには、岩石がんせきからなるがわずかに組成そせい物性ぶっせいちがう、ごくうす地殻ちかくがある。

名称めいしょうフランス語ふらんすごマント(manteau)に由来ゆらいし、マントルがかくまわりをつつんでいることをあらわしている[1]

地球ちきゅう科学かがくじょう解決かいけつ問題もんだい
マントルの均一きんいつせいとレオロジーの詳細しょうさいなにか?660 kmの不連続ふれんぞくせい構造こうぞうと、極地きょくちドリフトのただしいひながた原形げんけい)との関係かんけいなにか?[2]
地球ちきゅう科学かがくじょう解決かいけつ問題もんだい
内部ないぶマントル構造こうぞうは、地球ちきゅうじくのチャンドラーのぐらつきにたいする共鳴きょうめい提供ていきょうするのか、それとも外部がいぶメカニズムなのか。利用りよう可能かのううごきは、433日間にちかんのぐらつきの期間きかんのための一貫いっかんしたドライバーではないようである。

地球ちきゅう[編集へんしゅう]

1.地殻ちかく、2.マントル、3a.そとかく、3b.うちかく
4.リソスフェア、5.アセノスフェア
マントルの構造こうぞう[3]

地球ちきゅう場合ばあいは、大陸たいりく地域ちいき地表ちひょうやく30 – 70 kmから、海洋かいよう地域ちいき海底かいていめんやく7 kmからやく2,900 kmまでの範囲はんいす。地殻ちかく大陸たいりく地殻ちかく海洋かいよう地殻ちかくといったちがいがあるが地表ちひょうめんから地下ちかおよそ5 – 60 kmまでのあつさをゆうしており、マントルはその下層かそう位置いちしている。

地球ちきゅうのマントルと地殻ちかく境界きょうかいは、発見はっけんしゃからモホロビチッチ不連続ふれんぞくめん略称りゃくしょうモホめん)とばれている。地震じしんがモホめんとおるときには密度みつどちがいから速度そくど急変きゅうへん角度かくどによって屈折くっせつこす。地殻ちかく直下ちょっかのマントルは物理ぶつりてき地殻ちかく一体化いったいかしているが、同時どうじに、モホめんという境界きょうかい観測かんそくされるのである。密度みつどちがいは地殻ちかくとマントルの物質ぶっしつ組成そせいことなることによる。マントルの下面かめんグーテンベルク不連続ふれんぞくめんばれており、そとかくとの境界きょうかいになっている。

地球ちきゅう上部じょうぶマントルはかんらんがん主成分しゅせいぶんとする岩石がんせき構成こうせいされており、マントルないにおける化学かがく組成そせいおおきな差異さいはないとするせつと、上部じょうぶマントルと下部かぶマントルでことなるとするせつ対立たいりつしているが、現在げんざいでは地震じしん観測かんそく解析かいせき精度せいどがあがり、高温こうおんだかあつ物性ぶっせい物理ぶつりがくおおきく進展しんてんしたことにより成層せいそうしているとのせつ主流しゅりゅうになっている。

成層せいそう構造こうぞう[編集へんしゅう]

深度しんどふかくなるにつれ、温度おんど密度みつどともに上昇じょうしょうするが、とく密度みつどについては、鉱物こうぶつしょうあい転移てんいすることにより不連続ふれんぞく増加ぞうかする。410 km、520 km、660 km、2,700 kmの地点ちてん地震じしん不連続ふれんぞくめんがあり、これがあい転移てんい境界きょうかいかんがえられている。このなかでは660 km不連続ふれんぞくめん明瞭めいりょうであり、これをさかい上部じょうぶマントルと下部かぶマントルにけている。鉱物こうぶつしょうによる分類ぶんるいについては、上位じょういからかんらんせきαあるふぁしょう)、変形へんけいスピネルしょうβべーたしょう、ウォズレイアイトとも)、スピネルしょうγがんましょうリングウッダイトとも)、ペロブスカイトしょうポストペロブスカイトしょう(D’’そう ディーツープライム とも)となっている。マントル構成こうせい物質ぶっしつは、この境界きょうかい移動いどうするごとにあい転移てんい結晶けっしょう構造こうぞう変化へんか密度みつど変化へんかする。

かんらんせきそうはモホめんから440 km不連続ふれんぞくめんまでで、マントルのさい上部じょうぶめる。このそうは、地殻ちかくとともに圧力あつりょく温度おんど水分すいぶん含有がんゆうりょうなどの条件じょうけんにより、部分ぶぶん溶融ようゆうこしマグマ生成せいせいする。変形へんけいスピネルしょうおよびスピネルしょうはマントル遷移せんいそうまたは転移てんいそうともばれている。660 km以深のペロブスカイトしょうそうでは、圧力あつりょくは23.4 GPaをえている[4]。スピネルしょう構造こうぞうのかんらんせき分解ぶんかいされ、マグネシオウスタイト (Mg,Fe)Oと稠密ちゅうみつ構造こうぞうのペロブスカイト MgSiO3 とで構成こうせいされている。2,700 km以深のマントルのさい下部かぶはD’’そうともばれ、ペロブスカイトしょうよりも稠密ちゅうみつ密度みつどたかいポストペロブスカイトしょうとなっている。ポストペロブスカイトしょう発見はっけんは、2004ねんのことである。かく境界きょうかい付近ふきん構造こうぞう不明ふめい部分ぶぶんおおく、下部かぶマントルそう深部しんぶかくせっしている部分ぶぶんうすそう溶解ようかいし、この溶解ようかい部分ぶぶんからマントル・プリューム上昇じょうしょうしているのではないかというせつがある[5]

また、マントルを力学りきがく性質せいしつから分類ぶんるいすると、上位じょういから地殻ちかくわせてリソスフェアアセノスフェアメソスフェア分類ぶんるいされる[3]。リソスフェアは地殻ちかくふくんだマントル上部じょうぶそうで、温度おんど密度みつどひくく、剛性ごうせいたかい。その下面かめんは60 – 100 kmの地点ちてんにある。リソスフェアはプレートテクトニクスにおけるプレートにほぼ相当そうとうする部分ぶぶんで、地表ちひょうめん移動いどうしている。アセノスフェアはリソスフェアとメソスフェアのあいだにあるそうで、100 – 300 kmのあいだにある。地震じしんてい速度そくどいきであり、物質ぶっしつ部分ぶぶん溶融ようゆうし、流動りゅうどうせいゆうしている。てい速度そくどいきのみがアセノスフェアとされるが、場合ばあいによっては下限かげんを660 kmのめんかんがえるせつもある。メソスフェアはマントルのだい部分ぶぶんめ、たか剛性ごうせいゆうする固体こたいかんがえられている。

構成こうせい成分せいぶん[編集へんしゅう]

リングウッド(A. E. Ringwood, 1963)らは、上部じょうぶマントルの組成そせいダナイト玄武岩げんぶがんが3:1の割合わりあい混合こんごうしたパイロライト(pyrolite)とばれる仮想かそうてき岩石がんせきから構成こうせいされ、この物質ぶっしつ分別ふんべつ溶融ようゆうこすと玄武岩げんぶがんしつマグマが生成せいせいするとかんがえた[6][7]

下部かぶマントルの組成そせいについては諸説しょせつあり、上部じょうぶマントルとおなじパイロライトの組成そせい維持いじしているとするせつ[8][9]、または、化学かがく組成そせいことなりより二酸化にさんかケイ素けいそ成分せいぶんんだペロブスカイトしょう(MgSiO3)を主成分しゅせいぶんとするとするせつ[10]があり決着けっちゃくがついていない。前者ぜんしゃであればマントルは太陽系たいようけい元素げんそ組成そせいちかCIコンドライトよりもケイ素けいそ枯渇こかつしていることになり、後者こうしゃであればはじめげんてき隕石いんせきであるC1コンドライトの化学かがく組成そせい一致いっちするが、マントルは2そう対流たいりゅう上部じょうぶ下部かぶ物質ぶっしつ混合こんごうこりにくい構造こうぞう支持しじする。

上部じょうぶマントルの構成こうせい元素げんそ[11][12]
構成こうせい元素げんそ 含有がんゆうりつ/%
酸素さんそ
マグネシウム 22.22
ケイ素けいそ 21.31
てつ 5.86
カルシウム 2.50
アルミニウム 2.17
クロム 0.301
ナトリウム 0.2745
ニッケル 0.2108
チタン 0.132
マンガン 0.1016

調査ちょうさほう[編集へんしゅう]

従来じゅうらい地底ちてい直接ちょくせつ探査たんさは、コラ半島はんとうちょう深度しんど掘削くっさくあな(ソビエト連邦れんぽう)や国際こくさい深海しんかい掘削くっさく計画けいかくなどでも到達とうたつ深度しんど地殻ちかくにとどまっている。マントルやそのした構造こうぞう地震じしんつたわりかたなどから推測すいそくして調査ちょうさされてきた[13]日本にっぽん海洋かいよう研究けんきゅう開発かいはつ機構きこう(JAMSTEC)が地球ちきゅう深部しんぶ探査たんさせんちきゅう」により、2020年代ねんだい前半ぜんはんのマントル掘削くっさく試料しりょう直接ちょくせつ採取さいしゅ目指めざしている[14]

このほかにJAMSTECは静岡大学しずおかだいがく新潟大学にいがただいがく金沢大学かなざわだいがくとともに、国際こくさい陸上りくじょう科学かがく掘削くっさく計画けいかく(ICDP)に参加さんか過去かこ地殻ちかく変動へんどう地表ちひょうちかくにせりがってきたマントルがふくまれるオフィオライト中東ちゅうとうオマーン採取さいしゅし、ちきゅう船内せんないはこんで分析ぶんせきしている[15]

上記じょうきのように、マントル上部じょうぶ物質ぶっしつについてはオフィオライト[16]など、造山つくりやま運動うんどうなどにより地表ちひょうあらわれたものがあり、マントル下部かぶ物質ぶっしつについてもキンバーライトなど地表ちひょう噴出ふんしゅつしたものが発見はっけんされている。

地震じしんトモグラフィーにより、地球ちきゅう内部ないぶ密度みつどなどを算定さんていするほか、地表ちひょうられたマントル物質ぶっしつ参考さんこうに、シミュレーションのほか、鉱物こうぶつこうあつ実験じっけんによる再現さいげん実験じっけんおこない、条件じょうけん圧力あつりょく温度おんど密度みつどとそのさい鉱物こうぶつしょうあきらかにしている[17][10]

物性ぶっせい[編集へんしゅう]

マントルの物性ぶっせい下表かひょうのようであるとされている。マントルの流動りゅうどう研究けんきゅうには流体りゅうたい力学りきがくなどが援用えんようされるが、物性ぶっせいのうちとく粘性ねんせいの(通常つうじょう流体りゅうたい比較ひかくしたときの)特異とくいせいCFDなどをもちいた解析かいせき困難こんなんなものにしている。

マントル物質ぶっしつ物性ぶっせい[18]
物性ぶっせい 備考びこう
ねつ膨張ぼうちょうりつ 10−5 K−1
ねつ拡散かくさんりつ 10−6 m2/s
定圧ていあつ比熱ひねつ 103 J/kg K
密度みつど 3.3–5.6×103 kg/m3 深度しんどちがいによって、上下じょうげやく65%のがあるとされる。
体積たいせき弾性だんせいりつ 100–600 GPa
粘性ねんせいりつ 1021–1022 Pa s 100 Kの温度おんど変化へんかで1けた低下ていかする。
どう粘性ねんせいりつ 1016–1020 m2/s
プラントルすう やく1024
応力おうりょく緩和かんわ時間じかん 10ねん – 10まんねん

地球ちきゅう以外いがい天体てんたい[編集へんしゅう]

地球ちきゅうがた惑星わくせいつき内部ないぶ構造こうぞうえがいた絵図えず灰色はいいろがマントル。つき内部ないぶ構造こうぞうもまた想像そうぞうである。

地球ちきゅうがた惑星わくせい大型おおがた岩石がんせき衛星えいせいは、地球ちきゅうたマントルをつと推定すいていされている。金属きんぞくかく割合わりあいたかいとされる水星すいせいのマントルは地球ちきゅう比較ひかくして酸化さんかてつ割合わりあいすくなく、硫黄いおう含有がんゆうりょうおおいと推定すいていされる[19]たいして、火星かせいのマントルは酸化さんかてつ含有がんゆうりょうおおいと推定すいていされる[20]

木星もくせいがた惑星わくせいは、かく外側そとがわ金属きんぞく水素すいそのマントルをち、その外側そとがわには液体えきたい水素すいそそうがあると推測すいそくされている。天王星てんのうせいがた惑星わくせいは、かく外側そとがわみずアンモニアメタンこおりからなるマントルがあり、その外側そとがわには水素すいそとヘリウムのそうがあると推定すいていされている。ただし、これらのそうがマントルとばれることは比較的ひかくてきすくない。

大型おおがたこおり衛星えいせい太陽系たいようけい外縁がいえん天体てんたいなかには、こおり岩石がんせきの2そうからなっているものがあると推測すいそくされている。この場合ばあい中心ちゅうしん岩石がんせきそうかく周辺しゅうへんこおりそうをマントルとぶ。エウロパガニメデなどでは、マントルのさい下層かそう潮汐ちょうせき摩擦まさつによる地熱じねつけてうみになっている可能かのうせいがある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Twitter - たつみ好幸よしゆき
  2. ^ Lowrie, William (2007). Fundamentals of geophysics (2nd ed.). Cambridge University Press. p. 117. ISBN 9781139465953. https://books.google.com/books?id=h2-NjUg4RtEC&pg=PA117 
  3. ^ a b 地球ちきゅう構造こうぞう 地質ちしつ調査ちょうさ総合そうごうセンター
  4. ^ (Mg,Fe)2SiO4けいのカンランせき-リングウッダイト転移てんいあい平衡へいこう関係かんけい決定けってい (PDF) 岡山大学おかやまだいがく 惑星わくせい物質ぶっしつ研究所けんきゅうじょ
  5. ^ 松原まつばらさとし 『ダイヤモンドの科学かがく - うつくしさとかたさの秘密ひみつ講談社こうだんしゃ〈ブルーバックス〉、2006ねんISBN 4-06-257517-5
  6. ^ D. H. Green, A. E. Ringwood, 1963, Mineral assemblages in a model mantle composition, J. Geophys. Res., 68, 937–946.
  7. ^ B.メイスン ちょ松井まつい義人よしひといちこく雅巳まさみ やく一般いっぱん地球ちきゅう化学かがく岩波書店いわなみしょてん、1970ねん 
  8. ^ ITo, E. and E. TAKAHASHI, 1987, Ultrahigh pressure phase transformations and the constitution of the deep mantle, in High Pressure Research in Mineral Physics, edited by M. H. Manghnani and Y. Syono, pp. 221–229.
  9. ^ にゅう舩徹おとこ, 下部かぶマントル領域りょういきでのマントル物質ぶっしつ相関そうかんがかり密度みつど変化へんか地球ちきゅう原料げんりょう解明かいめいへ-(プレスリリース), SPring8 大型おおがた放射光ほうしゃこう施設しせつ
  10. ^ a b 村上むらかみ元彦もとひこ, 地球ちきゅうのマントルは化学かがく組成そせいことなる2そう構造こうぞうだった! — 地球ちきゅう科学かがく定説ていせつくつがえす —(プレスリリース), SPring8 大型おおがた放射光ほうしゃこう施設しせつ
  11. ^ WANKE, H., G. DREIBUS and E. JAGOUTZ, 1984, Mantle chemistry and accretion history of the Earth, Archean geochemistry, editd by A. Kroner, G. N. Hanson and A. M. Goodwin, pp. 1–24, Springer Verlag, New York.
  12. ^ 理科りか年表ねんぴょう』2008ねん
  13. ^ 地球ちきゅうなかはどうなっているの?どうやって調しらべるの?日本にっぽん地球ちきゅう学会がっかい
  14. ^ JAMSTECまんとるプロジェクト
  15. ^ 「ちきゅう」船上せんじょうにおけるオマーン陸上りくじょう掘削くっさくコア記載きさい開始かいし将来しょうらい海底かいていでの「マントル掘削くっさく」へけた重要じゅうようなマイルストーン~JAMSTECプレスリリース(2017ねん7がつ14にち
  16. ^ 惑星わくせい地球ちきゅう進化しんか放送大学ほうそうだいがく教材きょうざい 松本まつもとりょう浦辺うらべ徹郎てつお田辺たなべ英一ひでかず ISBN 978-4-595-30759-1
  17. ^ たとえば世界せかいはつ!マントル深部しんぶ高温こうおんだかあつ条件下じょうけんか地震じしん速度そくど精密せいみつ測定そくてい成功せいこう マントル遷移せんいそう化学かがく組成そせい解明かいめい・「プレートの墓場はかば」の存在そんざい示唆しさ 愛媛大学えひめだいがく 2008ねん
  18. ^ 鳥海とりうみ光弘みつひろ岩波いわなみ講座こうざ地球ちきゅう惑星わくせい科学かがく10 『地球ちきゅう内部ないぶダイナミクス』、岩波書店いわなみしょてん、268ページ、1998ねんISBN 4-00-010730-5
  19. ^ 形成けいせい水星すいせいにおけるコア-マントルあいだ硫黄いおう分配ぶんぱい (PDF)
  20. ^ 火星かせい基本きほん情報じょうほう, JAXA, 宇宙うちゅう情報じょうほうセンター

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]