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衛星えいせい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
主要しゅよう衛星えいせいおおきさ比較ひかく

衛星えいせい(えいせい、英語えいご: natural satellite)は、惑星わくせいじゅん惑星わくせい小惑星しょうわくせいまわりを公転こうてんする天然てんねん天体てんたい。ただし、惑星わくせいたまきなどを構成こうせいするこおり岩石がんせきなどのしょう天体てんたいは、普通ふつう衛星えいせいとはばれない。

概要がいよう

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地球ちきゅう衛星えいせいであるつき先史せんし時代じだいから存在そんざいられていた唯一ゆいいつ衛星えいせいであるが、コペルニクス以前いぜん天動説てんどうせつでは惑星わくせいひとつとかんがえられていた。ガリレオ・ガリレイ木星もくせい発見はっけんした4つの衛星えいせいいわゆるガリレオ衛星えいせい有史ゆうし以後いご発見はっけんされた最初さいしょ衛星えいせいである。そしてヨハネス・ケプラーによって地動説ちどうせつ優勢ゆうせいになるなり、ラテン語らてんご従者じゅうしゃ意味いみするsatellesから「衛星えいせい」とばれるようになった。

国際こくさい天文学てんもんがく連合れんごう(IAU)では、2006ねん太陽系たいようけい惑星わくせい定義ていぎ決議けつぎしたが、衛星えいせい定義ていぎかんしては「今後こんご天文学てんもんがく連合れんごう検討けんとうされて決定けっていする見込みこみ」とするにとどまった[1]。ただ、惑星わくせい定義ていぎ単純たんじゅん衛星えいせい転用てんようすることは適切てきせつでないとかんがえられており、たとえば惑星わくせい定義ていぎふくまれる「重力じゅうりょく平衡へいこう形状けいじょう(ほぼ球状きゅうじょう)をつ」を条件じょうけんにすると、これまで衛星えいせいばれていた天体てんたい定義ていぎからはずれるケースをしょうじると指摘してきされている[1]土星どせい衛星えいせいヒペリオン(ハイペリオン)は、ちょうじくみちやく360km、たんじくみちやく225km(は1.6)の太陽系たいようけい最大さいだい球形きゅうけい天体てんたいである[1]。また、冥王星めいおうせいカロンのようにサイズがちかく、天体てんたいあいだ共通きょうつう重心じゅうしんはは惑星わくせい表面ひょうめんよりも外側そとがわにある場合ばあいを、従来じゅうらいのようにじゅん惑星わくせい-衛星えいせいけいかんがえるかじゅう天体てんたいじゅうじゅん惑星わくせい)とかんがえるかも議論ぎろんになっている[1]

人間にんげんつくった人工じんこう天体てんたい場合ばあいには天然てんねん衛星えいせい自然しぜん衛星えいせい)と区別くべつするために「人工じんこう衛星えいせい」(えい: Artificial Satellite) とぶが、これをたんに「衛星えいせい」とぶこともすくなくない。英語えいごでは、口語こうごてきに "moons" という言葉ことばで、日本語にほんごでも「(惑星わくせい)のつき」というかたで、つきにかぎらず、かく惑星わくせいとう衛星えいせい全般ぜんぱんすこともある。

衛星えいせいまわりを公転こうてんする天体てんたいまご衛星えいせいぶ。天然てんねんまご衛星えいせい現在げんざいのところ発見はっけんされておらず、一時いちじてき存在そんざいできたとしても軌道きどう不安定ふあんていであるとかんがえられている。

安定あんていする条件じょうけん

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惑星わくせいからロシュ限界げんかい以上いじょうはなれていること
惑星わくせいちかすぎると、惑星わくせい重力じゅうりょく原料げんりょうのデブリの凝集ぎょうしゅうふせぐので球状きゅうじょう衛星えいせいれない[2]
同期どうき軌道きどう外側そとがわ存在そんざいしていること
衛星えいせい同期どうき軌道きどうより内側うちがわ公転こうてんしていると潮汐ちょうせきりょく影響えいきょう惑星わくせい自転じてん速度そくどげるため、自身じしん運動うんどうエネルギーをうしなってしまい軌道きどうがどんどん降下こうかして(同時どうじ公転こうてん周期しゅうきみじかくなり)ロシュ限界げんかい突入とつにゅうしてしまう。
ぎゃく同期どうき軌道きどうよりとお場合ばあい惑星わくせい自転じてん速度そくどから運動うんどうエネルギーをもらい徐々じょじょ軌道きどうがっていき公転こうてん周期しゅうきながくなるが、惑星わくせい自転じてん速度そくどおそくなるので最終さいしゅうてきにこれらがい、衛星えいせい公転こうてん周期しゅうき惑星わくせい自転じてん周期しゅうきになったところまるので安定あんていする[3]
逆行ぎゃっこう衛星えいせいでないこと
逆行ぎゃっこう衛星えいせい場合ばあい潮汐ちょうせきりょく惑星わくせい自転じてん自身じしん運動うんどうエネルギーが相殺そうさいって運動うんどうエネルギーをうしなうので、最初さいしょ軌道きどうがいかにはなれていても降下こうかしていき、最終さいしゅうてき衛星えいせいはロシュ限界げんかい突入とつにゅうする[4]
衛星えいせいが1つだけか、惑星わくせい衛星えいせいよりはるかにおおきく複数ふくすう衛星えいせい軌道きどう共鳴きょうめい関係かんけいにあること
基本きほんてき複数ふくすう衛星えいせい不安定ふあんてい惑星わくせいとの潮汐ちょうせきりょく影響えいきょう軌道きどうわっていくさい均一きんいつ移動いどうしていかず、最終さいしゅうてきにくっついて1つになってしまう。
これをふせぐには木星もくせいのガリレオ衛星えいせいのようにそれぞれの衛星えいせい軌道きどう共鳴きょうめいにあることで、これならばおたが運動うんどうエネルギーをてはうしなうことを周期しゅうきてきかえして必要ひつようがあるが、これは惑星わくせい衛星えいせいよりはるかにおおきい場合ばあいにのみ成立せいりつし、つき地球ちきゅうのような衛星えいせい惑星わくせい質量しつりょうちか場合ばあい不可能ふかのうである[5]

また、衛星えいせい形成けいせい原因げんいん以下いかの4とおりのせつされている[6]

  • 惑星わくせいとともに形成けいせいされた
  • 惑星わくせいから分裂ぶんれつした(ただしきわめてかんがえにくい[7][8]
  • 衝突しょうとつによって惑星わくせいから分離ぶんりした
  • 惑星わくせいによって捕捉ほそくされた

これらのうち惑星わくせいとともに形成けいせいされたせつ惑星わくせいたい質量しつりょう相当そうとうおおきな衛星えいせい存在そんざいる(ガス惑星わくせい地球ちきゅうサイズの衛星えいせいというわせも可能かのう)が、捕捉ほそくせつ天体てんたいおおきくなる[9]惑星わくせい引力いんりょく捕捉ほそく困難こんなんになるため成立せいりつしなくなるほか衝突しょうとつせつ岩石がんせき惑星わくせい場合ばあいいが、ガス惑星わくせい場合ばあい衝突しょうとつ放出ほうしゅつされるものの大半たいはん水素すいそやヘリウムといったガスなのですぐにらばり、おおきな衛星えいせい形成けいせい困難こんなんになるといったちがいがある[10]

また、逆行ぎゃっこう衛星えいせい場合ばあい捕捉ほそくせつ以外いがい成因せいいんはほぼ不可能ふかのうで、海王星かいおうせいのトリトンはこうした逆行ぎゃっこう軌道きどうであることから過去かこ海王星かいおうせい捕捉ほそくした天体てんたいというのが定説ていせつとなっている[11]

太陽系たいようけい惑星わくせいじゅん惑星わくせい衛星えいせい

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2023ねん5がつ現在げんざい太陽系たいようけい惑星わくせい周回しゅうかいする衛星えいせいは284発見はっけんされている[12]。また2007ねんすえ時点じてんで、そのうち144名前なまえがついている[1]

組成そせい

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太陽系たいようけい衛星えいせいには地球ちきゅう衛星えいせいであるつきのようにおも岩石がんせきのみで構成こうせいされた岩石がんせき衛星えいせい岩石がんせきがた衛星えいせい)と、木星もくせい以遠いえん領域りょういきにあるだい部分ぶぶん衛星えいせいのように二酸化炭素にさんかたんそ主体しゅたいこおり岩石がんせきあるいはこおりのみで構成こうせいされたこおり衛星えいせいけられる[1]。ただ、こおり衛星えいせい太陽系たいようけいにごくありふれた存在そんざいであり、太陽系たいようけい衛星えいせいこおりをまとっていないのは地球ちきゅうつき火星かせいの2つのしょう衛星えいせい木星もくせい衛星えいせいイオだけである[13]

地球ちきゅうはやや特殊とくしゅなパターンで、衛星えいせいきわめておおきいものが1つだけあるという構造こうぞうであり、つき質量しつりょう地球ちきゅうの81ぶんの1におよぶ。惑星わくせい衛星えいせい場合ばあい質量しつりょうがはるかにちいさく、おおきくてもそれがぞくする惑星わくせいの1まんぶんの3程度ていど普通ふつうで、つぎおおきい海王星かいおうせいたいするトリトン質量しつりょうやく5000ぶんの1である[14]

衛星えいせい一覧いちらん

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太陽系たいようけいおも衛星えいせい
直径ちょっけい (km) 地球ちきゅう 火星かせい 木星もくせい 土星どせい 天王星てんのうせい 海王星かいおうせい 冥王星めいおうせい ハウメア マケマケ エリス
5000+ ガニメデ タイタン
4000 - 5000 カリスト
3000 - 4000 つき イオ
エウロパ
2000 - 3000 トリトン
1000 - 2000 レア
イアペトゥス
ディオネ
テティス
チタニア
オベロン
ウンブリエル
アリエル
カロン
500 - 1000 エンケラドゥス
100 - 500 アマルテア
ヒマリア
ミマス
ヒペリオン
フェーベ
ヤヌス
エピメテウス
ミランダ
シコラクス
パック
ポーシャ
プロテウス
ネレイド
ラリッサ
ガラテア
デスピナ
ヒイアカ
ナマカ
S/2015 (136472) 1 ディスノミア
50 - 100 テーベ
エララ
パシファエ
プロメテウス
パンドラ
ビアンカ
クレシダ
デスデモナ
ジュリエット
ロザリンド
ベリンダ
キャリバン
タラッサ
ナイアド
ハリメデ
ネソ
ヒドラ
ニクス
10 - 50 フォボス
ダイモス
シノーペ
リシテア
カルメ
アナンケ
レダ
アドラステア
メティス
ヘレネ
テレスト
カリプソ
アトラス
パン
ユミル
パーリアク
タルボス
イジラク
キビウク
アルビオリックス
シャルナク
ポリデウケス
コーディリア
オフィーリア
プロスペロー
セティボス
ステファノー
フランシスコ
ファーディナンド
ペルディータ
マブ
キューピッド
サオ
ラオメデイア
プサマテ
ヒッポカンプ
ケルベロス
ステュクス
0 - 10 カリロエ
テミスト
メガクリテ
タイゲテ
カルデネ
ハルパリケ
カリュケ
イオカステ
エリノメ
イソノエ
プラクシディケ
アウトノエ
スィオネ
ヘルミッペ
アイトネ
エウリドメ
エウアンテ
エウポリエ
オーソシエ
スポンデ
カレ
パシテー
ヘゲモネ
ムネメ
アオエデ
テルクシノエ
アルケ
カリコレ
ヘリケ
カルポ
エウケラデ
キレーネ
コレ
ヘルセ
S/2010 J 1
S/2010 J 2
ディア
S/2016 J 1
S/2003 J 18
S/2011 J 2
Eirene
Philophrosyne
S/2017 J 1
Eupheme
S/2003 J 19
Valetudo
S/2017 J 2
S/2017 J 3
Pandia
S/2017 J 5
S/2017 J 6
S/2017 J 7
S/2017 J 8
S/2017 J 9
Ersa
S/2011 J 1
S/2003 J 2
S/2003 J 4
S/2003 J 9
S/2003 J 10
S/2003 J 12
S/2003 J 16
S/2003 J 23
スットゥングル
ムンディルファリ
スカジ
エリアポ
スリュムル
ナルビ
メトネ
パレネ
ダフニス
エーギル
ベブヒオン
ベルゲルミル
ベストラ
ファールバウティ
フェンリル
フォルニョート
ハティ
ヒュロッキン
カーリ
ロゲ
スコル
スルト
アンテ
ヤルンサクサ
グレイプ
タルクェク
(S/2004 S 3)
(S/2004 S 4)
(S/2004 S 6)
S/2004 S 7
S/2004 S 12
S/2004 S 13
S/2004 S 17
S/2006 S 1
S/2006 S 3
S/2007 S 2
S/2007 S 3
S/2009 S 1
トリンキュロー
マーガレット
  • 木星もくせい土星どせいの50km以下いか天王星てんのうせいの100km以下いか登録とうろく番号ばんごうじゅん
  • ()きは存在そんざいしない可能かのうせいがあるもの

比喩ひゆ表現ひょうげん

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衛星えいせい比喩ひゆとして「衛星えいせい都市とし」、「衛星えいせい国家こっか」などの表現ひょうげんもちいられる。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c d e f 木村きむら あつし衛星えいせい内部ないぶ構造こうぞう分類ぶんるいがくじゅん惑星わくせいへの示唆しさ」(PDF)『ゆうほしにんだい17かんだい1ごう日本にっぽん惑星わくせい学会がっかい、2008ねん、29ぺーじCRID 1520572357853211008 
  2. ^ カミンズ(2010)p.69-70
  3. ^ カミンズ(2010)p.69-71
  4. ^ カミンズ(2010)p.128-135
  5. ^ カミンズ(2010)p.337
  6. ^ カミンズ(2010)p.31・117
  7. ^ カミンズ(2010)p.338
  8. ^ 小惑星しょうわくせいとくにラブルパイル小惑星しょうわくせい場合ばあいは、自転じてん太陽光たいようこう影響えいきょうによるYORP効果こうか加速かそくされることによって赤道あかみち付近ふきんふくらみがしょうじ、やがて分裂ぶんれつして衛星えいせいになる場合ばあいがあるというせつがあるが、太陽系たいようけい地球ちきゅうがた惑星わくせいのようなおおきな天体てんたいではほぼ不可能ふかのうかんがえられる。
  9. ^ 地球ちきゅうつき比率ひりつ(81:1)ぐらいなら片方かたがた既存きそんちいさな衛星えいせい運動うんどうエネルギーをあたえてほうし、自分じぶん速度そくどとして捕獲ほかくされることも可能かのうだが(カミンズ(2010)p.39-41)、既知きちのガス惑星わくせいちゅう最小さいしょう海王星かいおうせい岩石がんせき惑星わくせいちゅう最大さいだい地球ちきゅう程度ていど質量しつりょう(17:1)になると捕捉ほそくがほぼ不可能ふかのうになる。
  10. ^ カミンズ(2010)p.67-68
  11. ^ カミンズ(2010)p.117-121
  12. ^ 惑星わくせい衛星えいせいすう衛星えいせい一覧いちらん”. 国立こくりつ天文台てんもんだい (2023ねん5がつ16にち). 2023ねん5がつ18にち閲覧えつらん
  13. ^ 木村きむらあつしこおり衛星えいせい地質ちしつ活動かつどうこおりからのダイナミクス」『低温ていおん科学かがくだい66かん北海道大学ほっかいどうだいがく低温ていおん科学かがく研究所けんきゅうじょ、2008ねん3がつ、149-157ぺーじCRID 1050564288950858880hdl:2115/34723ISSN 1880-7593 
  14. ^ カミンズ(2010)p.30-31・67

参考さんこう関連かんれん文献ぶんけん

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  • ニール・F・カミンズ ちょ増田ますだまもる やく『もしもつきが2つあったなら』東京書籍とうきょうしょせき、2010ねんISBN 978-4-487-80494-8 
  • 完全かんぜん図解ずかい宇宙うちゅう手帳てちょう世界せかい宇宙うちゅう開発かいはつ活動かつどうぜん記録きろく」』(ブルーバックス、2012ねん03がつ ISBN 978-4062577625)- 衛星えいせい直径ちょっけいはなれしんりつ等級とうきゅうのデータが掲載けいさいされている。

関連かんれん項目こうもく

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