(Translated by https://www.hiragana.jp/)
ネレイド (衛星) - Wikipedia コンテンツにスキップ

ネレイド (衛星えいせい)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ネレイド
Nereid
ボイジャー2ごう撮影さつえいしたネレイド
かり符号ふごう別名べつめい Neptune II
分類ぶんるい 海王星かいおうせい衛星えいせい
発見はっけん
発見はっけん 1949ねん5月1にち[1][2]
発見はっけんしゃ ジェラルド・カイパー
軌道きどう要素ようそ性質せいしつ
軌道きどうちょう半径はんけい (a) 5,513,787 km[3][4]
きんてん距離きょり (q) 1,372,000 km
とおてん距離きょり (Q) 9,655,000 km
はなれしんりつ (e) 0.7507[3][4]
公転こうてん周期しゅうき (P) 360.1362 にち[4]
平均へいきん軌道きどう速度そくど 0.934 km/s
(最高さいこう 2.95 km/s、
最低さいてい 0.42 km/s)
軌道きどう傾斜けいしゃかく (i) 32.55° (海王星かいおうせい赤道せきどうめんたいして)
7.090° (局所きょくしょラプラスめんたいして)[3][4]
海王星かいおうせい衛星えいせい
物理ぶつりてき性質せいしつ
平均へいきん半径はんけい 170 ± 25 km[5]
質量しつりょう 3.1×1019 kg[1]
平均へいきん密度みつど 1.5 g/cm3[1]
自転じてん周期しゅうき 0.48 にち (11あいだ31ふん)[6]
アルベド反射はんしゃのう 0.155[5]
表面ひょうめん温度おんど 50 K (推定すいてい平均へいきん)
大気たいき性質せいしつ
なし
Template (ノート 解説かいせつ■Project

ネレイド[7][8] (Neptune II Nereid) は、海王星かいおうせいだい2衛星えいせいである。トリトンいで2番目ばんめ発見はっけんされた海王星かいおうせい衛星えいせいであり、極端きょくたん楕円だえん軌道きどう公転こうてんしている。

発見はっけん命名めいめい

[編集へんしゅう]

ネレイドは、1949ねん5月1にちジェラルド・カイパーによって発見はっけんされた。かれマクドナルド天文台てんもんだいの 82 インチ望遠鏡ぼうえんきょうもちいて観測かんそくした写真しゃしん乾板かんぱんから、海王星かいおうせい付近ふきんうつ天体てんたい発見はっけんした[9]発見はっけん報告ほうこくする論文ろんぶんなかNeptune II という呼称こしょうもちいており、またこの衛星えいせいたいしてネレイドという名称めいしょう提案ていあんしている[1][9]。この名前なまえギリシア神話しんわうみせいネレイデス由来ゆらいする[1][9]

ネレイドはトリトンにいで2番目ばんめ発見はっけんされた海王星かいおうせい衛星えいせいであり、1989ねんボイジャー2ごう海王星かいおうせい到達とうたつするまでに存在そんざい確認かくにんされた最後さいご衛星えいせいである[10]。ただしラリッサはボイジャー2ごう到達とうたつまえ1981ねん掩蔽えんぺい観測かんそくによっていちだけ検出けんしゅつされているが、衛星えいせいであると確定かくていしたのはボイジャー2ごうによるさい発見はっけんのちである[11]

軌道きどう自転じてん

[編集へんしゅう]

ネレイドは順行じゅんこう軌道きどう海王星かいおうせいをほぼ1ねん周期しゅうき公転こうてんしており、海王星かいおうせいとの平均へいきん距離きょりはおよそ551まん km である。しかし軌道きどうはなれしんりつが0.7507と非常ひじょうおおきい極端きょくたん楕円だえん軌道きどう公転こうてんしているため、海王星かいおうせいもっと接近せっきんしたさい距離きょりはおよそ137まん km、もっとはなれたさいはおよそ966まん km とおおきく変化へんかする[3][4]軌道きどうかっている太陽系たいようけいうち衛星えいせいなかではもっと軌道きどうはなれしんりつおおきい (衛星えいせい以外いがい天体てんたいでは、軌道きどうはなれしんりつが 0.86 のセドナなどのれいがある)[1]

このようなわった軌道きどうつことから、ネレイドは海王星かいおうせい捕獲ほかくされた小惑星しょうわくせいカイパーベルト天体てんたいであるか、あるいは海王星かいおうせい最大さいだい衛星えいせいトリトンが捕獲ほかくされたさい軌道きどうおおきくみだされたかつてのうち衛星えいせいである可能かのうせい示唆しさされている[1][12]

海王星かいおうせい周回しゅうかいするネレイドの軌道きどう極端きょくたん楕円だえん軌道きどうであることがわかる

1991ねん観測かんそくでは、ネレイドの光度こうど曲線きょくせん解析かいせきから自転じてん周期しゅうきはおよそ13.6あいだ推定すいていされている[13]2003ねんべつ観測かんそくでは、11.52 ± 0.14 あいだということなる自転じてん周期しゅうき測定そくていされている[6]。しかしこの測定そくていにはのち否定ひていてき見解けんかいしめされ、べつ研究けんきゅうしゃによる地上ちじょうからのネレイドの光度こうど曲線きょくせん観測かんそくからは、明確めいかく周期しゅうきせい見出みだしだせなかったという報告ほうこくがなされている[14]。これにより、ネレイドがとし運動うんどうによって自転じてん周期しゅうき変化へんかしているか、あるいは潮汐ちょうせきりょく影響えいきょうでカオスてき自転じてんをしていることが示唆しさされた。不規則ふきそく回転かいてんしている天体てんたいれいとしては、土星どせい衛星えいせいヒペリオンがある。

しかし2016ねんケプラーもちいた観測かんそくでは、11.594 ± 0.017 あいだ明確めいかく自転じてん周期しゅうき測定そくていされており、さらにネレイドが潮汐ちょうせきりょくによって強制きょうせいてきとし運動うんどうこされるほど細長ほそなが形状けいじょうをしていないこともあきらかになった[15]

物理ぶつりてき特徴とくちょう

[編集へんしゅう]
ネレイドのCG。

ネレイドは、海王星かいおうせい衛星えいせいなかではトリトンプロテウスつづいて3番目ばんめおおきく、平均へいきん半径はんけいはおよそ 170 km である。これは不規則ふきそく衛星えいせいとしてはかなりおおきいサイズである[6]

ネレイドの詳細しょうさい形状けいじょうかっていない。1987ねん以降いこうおこなわれた地上ちじょうからの測光そっこう観測かんそくではネレイドは等級とうきゅうにして1程度ていどおおきなあかるさの変動へんどうせ、それはすうねんすうヶ月かげつにわたって発生はっせいすることもあれは、数日すうじつ程度ていど発生はっせいすることもあることが報告ほうこくされた[14]。また、干渉かんしょうせい後方こうほう散乱さんらん起因きいんする効果こうか観測かんそくされている[14]。しかし、このあかるさの変動へんどうすべての観測かんそく同様どうようつかっているわけではなく、自転じてんがカオスてきであることを示唆しさしているとされた。ネレイドが海王星かいおうせいからの潮汐ちょうせきりょく強制きょうせいりょくとなったとし運動うんどうこしている場合ばあいは、地球ちきゅうから平均へいきんアルベドだん面積めんせき観測かんそくのタイミングによって変化へんかするため、このような不規則ふきそく光度こうど変化へんかこしうる[14]。そのためには、ネレイドの形状けいじょうちょうじくたんじくは 1.9:1 かそれ以上いじょうという、非常ひじょう細長ほそなが形状けいじょうをしている必要ひつようがあることが示唆しさされた[14]

しかし、2016ねんケプラーもちいてネレイドの観測かんそくおこなわれたさいことなる結果けっか報告ほうこくされている。ケプラーはけいがい惑星わくせいトランジット検出けんしゅつすることをおも目的もくてきとした宇宙うちゅうだが、K2ミッションでは黄道こうどうめん観測かんそくおこなっていたため海王星かいおうせいもその観測かんそく視野しやはいっていた。ケプラーの観測かんそくではネレイドの光度こうど変化へんか等級とうきゅうにしてわずか0.033とちいさく、ちょうじくたんじく最大さいだいで 1.3:1 程度ていどちいさいことが示唆しさされた[15]。さらにスピッツァー宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょうハーシェル宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょうもちいた赤外線せきがいせん観測かんそくもとづくねつモデルからも、ネレイドのちょうじくたんじく上限じょうげんが 1.3:1 であることがしめされた[15]。これはネレイドが非常ひじょう細長ほそなが形状けいじょうをしているという過去かこ測定そくてい否定ひていするものであり、またこのじくでは潮汐ちょうせきりょく強制きょうせいりょくとしたとし運動うんどうこせないことが指摘してきされた[15]。このねつモデルではネレイドの表面ひょうめん非常ひじょうあらクレーターおおいことを示唆しさしており、これは土星どせい衛星えいせいヒペリオンに類似るいじしている[15]

ネレイドのスペクトル灰色はいいろであり[16]表面ひょうめんにはみずこおり検出けんしゅつされている[12]。スペクトルは天王星てんのうせい衛星えいせいチタニアウンブリエルなかあいだ程度ていどであり、ネレイドの表面ひょうめんみずごおりとスペクトルてき中間色ちゅうかんしょくしめ物質ぶっしつ混合こんごうぶつ構成こうせいされていることを示唆しさしている[12]。このスペクトルは外部がいぶ太陽系たいようけい小惑星しょうわくせいケンタウルスぞくフォルスキロンカリクローとはおおきくことなっており、ネレイドは捕獲ほかくされた天体てんたいではなく海王星かいおうせいまわりで形成けいせいされた天体てんたいである可能かのうせいたかいことを示唆しさしている[12]。より外側そとがわ公転こうてんする衛星えいせいハリメデいろており、ネレイドの破片はへんではないかともかんがえられている[16]

探査たんさ

[編集へんしゅう]

ネレイドに接近せっきん観測かんそくした探査たんさボイジャー2ごうのみである。1989ねん4がつ20日はつかから8がつ19にちあいだに 4,700,000 km の距離きょりにまで接近せっきんした[17][18]。ボイジャー2ごうはこのあいだに83まいのネレイドの画像がぞう取得しゅとくし、その観測かんそく精度せいどは 70 km から 800 km であった[18]。ボイジャー2ごう到達とうたつ以前いぜんのネレイドの観測かんそく地上ちじょうからにかぎられており、そのあかるさと軌道きどう要素ようそしかあきらかになっていなかった[19]。ボイジャー2ごう観測かんそくられた画像がぞう表面ひょうめん特徴とくちょう識別しきべつできるほどの十分じゅうぶん解像度かいぞうどではなかったものの、ネレイドのおおきさを測定そくていすることには成功せいこうし、灰色はいいろ表面ひょうめんち、海王星かいおうせいほかちいさい衛星えいせいよりもたかアルベドつこともあきらかになった[10]

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ a b c d e f g In Depth | Nereid – Solar System Exploration: NASA Science”. アメリカ航空こうくう宇宙うちゅうきょく (2017ねん12月5にち). 2019ねん1がつ22にち閲覧えつらん
  2. ^ Planet and Satellite Names and Discoverers”. Planetary Names. 国際こくさい天文学てんもんがく連合れんごう. 2015ねん1がつ11にち閲覧えつらん
  3. ^ a b c d Jacobson, R. A. (3 April 2009). “The Orbits of the Neptunian Satellites and the Orientation of the Pole of Neptune”. The Astronomical Journal 137 (5): 4322–4329. Bibcode2009AJ....137.4322J. doi:10.1088/0004-6256/137/5/4322. http://iopscience.iop.org/article/10.1088/0004-6256/137/5/4322/pdf. 
  4. ^ a b c d e Jet Propulsion Laboratory (2013ねん8がつ23にち). “Planetary Satellite Mean Orbital Parameters”. Jet Propulsion Laboratory Solar System Dynamics. ジェット推進すいしん研究所けんきゅうじょ. 2018ねん12月25にち閲覧えつらん
  5. ^ a b Jet Propulsion Laboratory (2015ねん2がつ19にち). “Planetary Satellite Physical Parameters”. Jet Propulsion Laboratory Solar System Dynamics. ジェット推進すいしん研究所けんきゅうじょ. 2018ねん12月25にち閲覧えつらん
  6. ^ a b c Grav, T.; M. Holman; J. J. Kavelaars (2003). “The Short Rotation Period of Nereid”. The Astrophysical Journal 591 (1): 71–74. arXiv:astro-ph/0306001. Bibcode2003ApJ...591L..71G. doi:10.1086/377067. 
  7. ^ 『オックスフォード天文学てんもんがく辞典じてん』(初版しょはんだい1さつ朝倉書店あさくらしょてん、308ぺーじISBN 4-254-15017-2 
  8. ^ 太陽系たいようけいない衛星えいせいひょう”. 国立こくりつ科学かがく博物館はくぶつかん. 2019ねん3がつ9にち閲覧えつらん
  9. ^ a b c Kuiper, Gerald P. (1949). “The Second Satellite of Neptune”. Publications of the Astronomical Society of the Pacific 61: 175. doi:10.1086/126166. ISSN 0004-6280. 
  10. ^ a b Smith, B. A.; Soderblom, L. A.; Banfield, D.; Barnet, C.; Basilevsky, A. T.; Beebe, R. F.; Bollinger, K.; Boyce, J. M. et al. (1989). “Voyager 2 at Neptune: Imaging Science Results”. Science 246 (4936): 1422–1449. Bibcode1989Sci...246.1422S. doi:10.1126/science.246.4936.1422. PMID 17755997. 
  11. ^ Brian G. Marsden (1989ねん8がつ2にち). “IAUC 4867: NEPTUNE; JUPITER”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際こくさい天文学てんもんがく連合れんごう. 2019ねん1がつ22にち閲覧えつらん
  12. ^ a b c d Brown, Michael E.; Koresko, Christopher D.; Blake, Geoffrey A. (December 1998). “Detection of Water Ice on Nereid”. The Astrophysical Journal 508 (2): L175–L176. Bibcode1998ApJ...508L.175B. doi:10.1086/311741. 
  13. ^ Williams, I.P.; Jones, D.H.P.; Taylor, D.B. (1991). “The rotation period of Nereid”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 250: 1P–2P. Bibcode1991MNRAS.250P...1W. doi:10.1093/mnras/250.1.1p. 
  14. ^ a b c d e Schaefer, Bradley E.; Tourtellotte, Suzanne W.; Rabinowitz, David L.; Schaefer, Martha W. (2008). “Nereid: Light curve for 1999–2006 and a scenario for its variations”. Icarus 196 (1): 225–240. arXiv:0804.2835. Bibcode2008Icar..196..225S. doi:10.1016/j.icarus.2008.02.025. 
  15. ^ a b c d e Kiss, C.; Pál, A.; Farkas-Takács, A. I.; Szabó, G. M.; Szabó, R.; Kiss, L. L.; Molnár, L.; Sárneczky, K. et al. (2016-04-01). “Nereid from space: rotation, size and shape analysis from K2, Herschel and Spitzer observations”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 457: 2908–2917. arXiv:1601.02395. Bibcode2016MNRAS.457.2908K. doi:10.1093/mnras/stw081. ISSN 0035-8711. 
  16. ^ a b Grav, Tommy; Holman, Matthew J.; Fraser, Wesley C. (2004-09-20). “Photometry of Irregular Satellites of Uranus and Neptune”. The Astrophysical Journal 613 (1): L77–L80. arXiv:astro-ph/0405605. Bibcode2004ApJ...613L..77G. doi:10.1086/424997. 
  17. ^ Jones, Brian (1991). Exploring the Planets. Italy: W.H. Smith. pp. 59. ISBN 0-8317-6975-0 
  18. ^ a b Jacobson, R.A. (1991). “Triton and Nereid astrographic observations from Voyager 2”. Astronomy and Astrophysics Supplement Series 90 (3): 541–563. Bibcode1991A&AS...90..541J. 
  19. ^ PIA00054: Nereid”. アメリカ航空こうくう宇宙うちゅうきょく (1996ねん1がつ29にち). 2009ねん11月8にち閲覧えつらん

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]