ネレイド [7] [8] (Neptune II Nereid) は、海王星 かいおうせい の第 だい 2衛星 えいせい である。トリトン に次 つ いで2番目 ばんめ に発見 はっけん された海王星 かいおうせい の衛星 えいせい であり、極端 きょくたん な楕円 だえん 軌道 きどう で公転 こうてん している。
ネレイドは、1949年 ねん 5月1日 にち にジェラルド・カイパー によって発見 はっけん された。彼 かれ はマクドナルド天文台 てんもんだい の 82 インチ望遠鏡 ぼうえんきょう を用 もち いて観測 かんそく した写真 しゃしん 乾板 かんぱん から、海王星 かいおうせい の付近 ふきん に写 うつ る天体 てんたい を発見 はっけん した[9] 。発見 はっけん を報告 ほうこく する論文 ろんぶん の中 なか で Neptune II という呼称 こしょう を用 もち いており、またこの衛星 えいせい に対 たい してネレイドという名称 めいしょう を提案 ていあん している[1] [9] 。この名前 なまえ はギリシア神話 しんわ の海 うみ の精 せい ネレイデス に由来 ゆらい する[1] [9] 。
ネレイドはトリトンに次 つ いで2番目 ばんめ に発見 はっけん された海王星 かいおうせい の衛星 えいせい であり、1989年 ねん にボイジャー2号 ごう が海王星 かいおうせい に到達 とうたつ するまでに存在 そんざい が確認 かくにん された最後 さいご の衛星 えいせい である[10] 。ただしラリッサ はボイジャー2号 ごう 到達 とうたつ 前 まえ の1981年 ねん に掩蔽 えんぺい 観測 かんそく によって一 いち 度 ど だけ検出 けんしゅつ されているが、衛星 えいせい であると確定 かくてい したのはボイジャー2号 ごう による再 さい 発見 はっけん の後 のち である[11] 。
ネレイドは順行 じゅんこう 軌道 きどう で海王星 かいおうせい をほぼ1年 ねん の周期 しゅうき で公転 こうてん しており、海王星 かいおうせい との平均 へいきん 距離 きょり はおよそ551万 まん km である。しかし軌道 きどう 離 はなれ 心 しん 率 りつ が0.7507と非常 ひじょう に大 おお きい極端 きょくたん な楕円 だえん 軌道 きどう で公転 こうてん しているため、海王星 かいおうせい に最 もっと も接近 せっきん した際 さい の距離 きょり はおよそ137万 まん km、最 もっと も離 はな れた際 さい はおよそ966万 まん km と大 おお きく変化 へんか する[3] [4] 。軌道 きどう が分 わ かっている太陽系 たいようけい 内 うち の衛星 えいせい の中 なか では最 もっと も軌道 きどう 離 はなれ 心 しん 率 りつ が大 おお きい (衛星 えいせい 以外 いがい の天体 てんたい では、軌道 きどう 離 はなれ 心 しん 率 りつ が 0.86 のセドナ などの例 れい がある)[1] 。
このような変 か わった軌道 きどう を持 も つことから、ネレイドは海王星 かいおうせい に捕獲 ほかく された小惑星 しょうわくせい かカイパーベルト天体 てんたい であるか、あるいは海王星 かいおうせい 最大 さいだい の衛星 えいせい トリトンが捕獲 ほかく された際 さい に軌道 きどう を大 おお きく乱 みだ されたかつての内 うち 衛星 えいせい である可能 かのう 性 せい が示唆 しさ されている[1] [12] 。
海王星 かいおうせい を周回 しゅうかい するネレイドの軌道 きどう 。極端 きょくたん な楕円 だえん 軌道 きどう であることがわかる
1991年 ねん の観測 かんそく では、ネレイドの光度 こうど 曲線 きょくせん の解析 かいせき から自転 じてん 周期 しゅうき はおよそ13.6時 じ 間 あいだ と推定 すいてい されている[13] 。2003年 ねん の別 べつ の観測 かんそく では、11.52 ± 0.14 時 じ 間 あいだ という異 こと なる自転 じてん 周期 しゅうき が測定 そくてい されている[6] 。しかしこの測定 そくてい には後 のち に否定 ひてい 的 てき な見解 けんかい が示 しめ され、別 べつ の研究 けんきゅう 者 しゃ による地上 ちじょう からのネレイドの光度 こうど 曲線 きょくせん の観測 かんそく からは、明確 めいかく な周期 しゅうき 性 せい は見出 みだし だせなかったという報告 ほうこく がなされている[14] 。これにより、ネレイドが歳 とし 差 さ 運動 うんどう によって自転 じてん 周期 しゅうき が変化 へんか しているか、あるいは潮汐 ちょうせき 力 りょく の影響 えいきょう でカオス的 てき な自転 じてん をしていることが示唆 しさ された。不規則 ふきそく 回転 かいてん している天体 てんたい の例 れい としては、土星 どせい の衛星 えいせい ヒペリオン がある。
しかし2016年 ねん のケプラー を用 もち いた観測 かんそく では、11.594 ± 0.017 時 じ 間 あいだ の明確 めいかく な自転 じてん 周期 しゅうき が測定 そくてい されており、さらにネレイドが潮汐 ちょうせき 力 りょく によって強制 きょうせい 的 てき に歳 とし 差 さ 運動 うんどう を起 お こされるほど細長 ほそなが い形状 けいじょう をしていないことも明 あき らかになった[15] 。
ネレイドのCG。
ネレイドは、海王星 かいおうせい の衛星 えいせい の中 なか ではトリトン 、プロテウス に続 つづ いて3番目 ばんめ に大 おお きく、平均 へいきん 半径 はんけい はおよそ 170 km である。これは不規則 ふきそく 衛星 えいせい としてはかなり大 おお きいサイズである[6] 。
ネレイドの詳細 しょうさい な形状 けいじょう は分 わ かっていない。1987年 ねん 以降 いこう に行 おこな われた地上 ちじょう からの測光 そっこう 観測 かんそく ではネレイドは等級 とうきゅう にして1程度 ていど の大 おお きな明 あか るさの変動 へんどう を見 み せ、それは数 すう 年 ねん や数 すう ヶ月 かげつ にわたって発生 はっせい することもあれは、数日 すうじつ 程度 ていど で発生 はっせい することもあることが報告 ほうこく された[14] 。また、干渉 かんしょう 性 せい 後方 こうほう 散乱 さんらん に起因 きいん する衝効果 こうか も観測 かんそく されている[14] 。しかし、この明 あか るさの変動 へんどう は全 すべ ての観測 かんそく で同様 どうよう に見 み つかっているわけではなく、自転 じてん がカオス的 てき であることを示唆 しさ しているとされた。ネレイドが海王星 かいおうせい からの潮汐 ちょうせき 力 りょく が強制 きょうせい 力 りょく となった歳 とし 差 さ 運動 うんどう を起 お こしている場合 ばあい は、地球 ちきゅう から見 み た平均 へいきん のアルベド や断 だん 面積 めんせき が観測 かんそく のタイミングによって変化 へんか するため、このような不規則 ふきそく な光度 こうど 変化 へんか を起 お こしうる[14] 。そのためには、ネレイドの形状 けいじょう の長 ちょう 軸 じく と短 たん 軸 じく の比 ひ は 1.9:1 かそれ以上 いじょう という、非常 ひじょう に細長 ほそなが い形状 けいじょう をしている必要 ひつよう があることが示唆 しさ された[14] 。
しかし、2016年 ねん にケプラー を用 もち いてネレイドの観測 かんそく が行 おこな われた際 さい は異 こと なる結果 けっか が報告 ほうこく されている。ケプラーは系 けい 外 がい 惑星 わくせい のトランジット を検出 けんしゅつ することを主 おも 目的 もくてき とした宇宙 うちゅう 機 き だが、K2ミッションでは黄道 こうどう 面 めん の観測 かんそく を行 おこな っていたため海王星 かいおうせい もその観測 かんそく 視野 しや に入 はい っていた。ケプラーの観測 かんそく ではネレイドの光度 こうど 変化 へんか は等級 とうきゅう にしてわずか0.033と小 ちい さく、長 ちょう 軸 じく と短 たん 軸 じく の比 ひ は最大 さいだい で 1.3:1 程度 ていど と小 ちい さいことが示唆 しさ された[15] 。さらにスピッツァー宇宙 うちゅう 望遠鏡 ぼうえんきょう とハーシェル宇宙 うちゅう 望遠鏡 ぼうえんきょう を用 もち いた赤外線 せきがいせん 観測 かんそく に基 もと づく熱 ねつ モデルからも、ネレイドの長 ちょう 軸 じく と短 たん 軸 じく の比 ひ の上限 じょうげん が 1.3:1 であることが示 しめ された[15] 。これはネレイドが非常 ひじょう に細長 ほそなが い形状 けいじょう をしているという過去 かこ の測定 そくてい を否定 ひてい するものであり、またこの軸 じく 比 ひ では潮汐 ちょうせき 力 りょく を強制 きょうせい 力 りょく とした歳 とし 差 さ 運動 うんどう を起 お こせないことが指摘 してき された[15] 。この熱 ねつ モデルではネレイドの表面 ひょうめん は非常 ひじょう に粗 あら くクレーター が多 おお いことを示唆 しさ しており、これは土星 どせい の衛星 えいせい ヒペリオンに類似 るいじ している[15] 。
ネレイドのスペクトル は灰色 はいいろ であり[16] 、表面 ひょうめん には水 みず の氷 こおり が検出 けんしゅつ されている[12] 。スペクトルは天王星 てんのうせい の衛星 えいせい チタニア とウンブリエル の中 なか 間 あいだ 程度 ていど であり、ネレイドの表面 ひょうめん は水 みず 氷 ごおり とスペクトル的 てき に中間色 ちゅうかんしょく を示 しめ す物質 ぶっしつ の混合 こんごう 物 ぶつ で構成 こうせい されていることを示唆 しさ している[12] 。このスペクトルは外部 がいぶ 太陽系 たいようけい の小惑星 しょうわくせい 、ケンタウルス族 ぞく のフォルス 、キロン 、カリクロー とは大 おお きく異 こと なっており、ネレイドは捕獲 ほかく された天体 てんたい ではなく海王星 かいおうせい の周 まわ りで形成 けいせい された天体 てんたい である可能 かのう 性 せい が高 たか いことを示唆 しさ している[12] 。より外側 そとがわ を公転 こうてん する衛星 えいせい ハリメデ は色 いろ が似 に ており、ネレイドの破片 はへん ではないかとも考 かんが えられている[16] 。
ネレイドに接近 せっきん 観測 かんそく した探査 たんさ 機 き はボイジャー2号 ごう のみである。1989年 ねん 4月 がつ 20日 はつか から8月 がつ 19日 にち の間 あいだ に 4,700,000 km の距離 きょり にまで接近 せっきん した[17] [18] 。ボイジャー2号 ごう はこの間 あいだ に83枚 まい のネレイドの画像 がぞう を取得 しゅとく し、その観測 かんそく 精度 せいど は 70 km から 800 km であった[18] 。ボイジャー2号 ごう 到達 とうたつ 以前 いぜん のネレイドの観測 かんそく は地上 ちじょう からに限 かぎ られており、その明 あか るさと軌道 きどう 要素 ようそ しか明 あき らかになっていなかった[19] 。ボイジャー2号 ごう の観測 かんそく で得 え られた画像 がぞう は表面 ひょうめん の特徴 とくちょう を識別 しきべつ できるほどの十分 じゅうぶん な解像度 かいぞうど ではなかったものの、ネレイドの大 おお きさを測定 そくてい することには成功 せいこう し、灰色 はいいろ の表面 ひょうめん を持 も ち、海王星 かいおうせい の他 ほか の小 ちい さい衛星 えいせい よりも高 たか いアルベド を持 も つことも明 あき らかになった[10] 。
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