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カロン (衛星えいせい)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
カロン
Charon
2015年7月14日にニュー・ホライズンズが撮影。
2015ねん7がつ14にちニュー・ホライズンズ撮影さつえい
かり符号ふごう別名べつめい P I, P 1
S/1978 P 1
(134340) Pluto I
分類ぶんるい 冥王星めいおうせいがた天体てんたい衛星えいせい
発見はっけん
発見はっけん 1978ねん6月22にち
発見はっけんしゃ J. クリスティー
軌道きどう要素ようそ性質せいしつ
平均へいきん公転こうてん半径はんけい 19,571.4 ± 4.0 km
はなれしんりつ (e) 0.0
公転こうてん周期しゅうき (P) 6にち 9 あいだ 18 ふん
軌道きどう傾斜けいしゃかく (i) 0.001
冥王星めいおうせい衛星えいせい
物理ぶつりてき性質せいしつ
赤道あかみちめんでの直径ちょっけい 1,208km
質量しつりょう (1.52 ± 0.06)
×1021 kg
冥王星めいおうせいとの相対そうたい質量しつりょう 0.116
平均へいきん密度みつど 1.63 ± 0.07 g/cm3
表面ひょうめん重力じゅうりょく 0.28 ± 0.01 m/s2
自転じてん周期しゅうき 6にち 9 あいだ 18 ふん
公転こうてん同期どうき
アルベド反射はんしゃのう 0.37 ± 0.02
いろ指数しすう (B-V) 0.702 ± 0.010
いろ指数しすう (V-I) 0.83
大気たいきあつ なし
Template (ノート 解説かいせつ■Project

カロン[1][2]えい: Charon)は、太陽系たいようけいじゅん惑星わくせい冥王星めいおうせいがた天体てんたい)である冥王星めいおうせいだい1衛星えいせいかつ冥王星めいおうせい最大さいだい衛星えいせい

概要がいよう[編集へんしゅう]

冥王星めいおうせい衛星えいせい発見はっけん写真しゃしんひだり写真しゃしん冥王星めいおうせい不自然ふしぜん突起とっきうつっている。

カロンは1978ねん6月22にちアメリカ天文学てんもんがくしゃジェームズ・クリスティーによって発見はっけんされた。その冥王星めいおうせい冥府めいふおうプルートーにちなむことから、この衛星えいせいギリシア神話しんわ冥府めいふかわ・アケローンのわたもりカローンにちなんで「カロン」と命名めいめいされた。なおクリスティーは当初とうしょから一貫いっかんしてCharonの「char」をつまシャーリーン (Charlene) のニックネーム「シャー (Char)」とおなじように発音はつおんしていたため、これが英語えいごけん定着ていちゃくして「シャーロン」とばれるようになった。

2005ねん10月31にちあらたな衛星えいせいが2(S/2005 P 1とS/2005 P 2。P1はのちヒドラ、P2はニクス命名めいめい)が発見はっけんされるまでは、カロンが冥王星めいおうせい唯一ゆいいつ衛星えいせいかんがえられていた。

カロンは、衛星えいせいにしては「惑星わくせい」にたいする質量しつりょうがあまりにもおおきく、また共通きょうつう重心じゅうしん冥王星めいおうせいとカロンのあいだ宇宙うちゅう空間くうかんにあるため、冥王星めいおうせいおよびカロンはじゅう惑星わくせいであるとの解釈かいしゃくもできる。

冥王星めいおうせいとカロンの公転こうてん内側うちがわ冥王星めいおうせい外側そとがわ衛星えいせいカロンである。

2006ねん8がつ16にちからひらかれたIAU総会そうかいでは、2003 UB313エリス発見はっけん当初とうしょだい10惑星わくせいともわれた天体てんたい)の発見はっけんけて惑星わくせい定義ていぎ議題ぎだいとなった。当初とうしょ定義ていぎあんでは、2003 UB313およびケレスともに、カロンも太陽系たいようけい惑星わくせいぞくすることとなり、そのあん可決かけつされた場合ばあいにはこれらすべてが惑星わくせい追加ついかされることになっていた。しかしこの定義ていぎあんについては反対はんたい意見いけんおおかったため、修正しゅうせいあん同月どうげつ24にち採択さいたくされた。修正しゅうせいされた定義ていぎでは上記じょうき3天体てんたいのみならず、カロンのはは天体てんたいである冥王星めいおうせい惑星わくせいにはたらないとされ、カロンは「じゅん惑星わくせい衛星えいせい」とばれることになった。

特性とくせい[編集へんしゅう]

冥王星めいおうせい衛星えいせい上部じょうぶ)と、とくおおきい冥王星めいおうせいぞく天体てんたいオルクスイクシオンとのおおきさ、アルベドいろ比較ひかく

探査たんさニュー・ホライズンズ接近せっきんまえでもカロンには大気たいきがないため、地上ちじょう望遠鏡ぼうえんきょうからでもほぼ正確せいかく直径ちょっけいもとめることができていた(1186 km - 1220kmほど)。ニュー・ホライズンズの測定そくていにより直径ちょっけいが1208kmとさい確認かくにんされた[3]

質量しつりょうは1.90 ×1021 kgで冥王星めいおうせいの7ぶんの1である。赤外線せきがいせんスペクトル観測かんそくによってカロンの表面ひょうめんこおりおおわれていることがわかった。このてんはメタンにおおわれている冥王星めいおうせいとはおおきくことなる。

冥王星めいおうせいとはたがいに同期どうき回転かいてんしているため、カロンはつね冥王星めいおうせいおなめんけ、冥王星めいおうせいもカロンにたいしてつねおなめんけている。よって、かり冥王星めいおうせいおよびカロンからたがいをたとするとそらいちてんからうごかないようにえる。

1980年代ねんだい後半こうはんには、カロンが地球ちきゅう冥王星めいおうせいあいだ通過つうかすることにより、冥王星めいおうせい表面ひょうめんあかるさが変化へんかする様子ようす観測かんそくできた。冥王星めいおうせいが1かい公転こうてんするあいだに2かい、それぞれすう年間ねんかんにわたってこの状態じょうたいになる。

冥王星めいおうせい - カロンけいは、太陽系たいようけいない最大さいだいれんほしけい、すなわち重心じゅうしんしゅ天体てんたい地表ちひょうそとにあるけいなか最大さいだいのものとして注目ちゅうもくあたいする(より小規模しょうきぼれいとして小惑星しょうわくせいパトロクロスなどがある)。このことと、カロンの直径ちょっけい冥王星めいおうせい半分はんぶん以上いじょうもあることから、天文学てんもんがくしゃ[だれ?]なかには冥王星めいおうせい - カロンけいじゅう惑星わくせいぼうとかんがえるものもいた。

カロンは平均へいきん密度みつどが2.24g/cm3あり、冥王星めいおうせいの2.05g/cm3よりおおきい。これは、メタンなどのかる物質ぶっしつたいする、みずこおり割合わりあいおおいためとおもわれる。なお、表面ひょうめんこおり存在そんざいすることが1999ねん確認かくにんされた[4]

また、かつて地下ちかうみ存在そんざいした可能かのうせい示唆しさされている。現在げんざい冥王星めいおうせいとカロンはつねにおたがいにおなめんけ、安定あんていしたえん軌道きどうまわっているが、この状態じょうたいいたるまでにカロンは細長ほそなが楕円だえん軌道きどうまわっていた時期じきがあったとかんがえられている。そのような時期じきには潮汐ちょうせき変形へんけいねつ発生はっせいし、カロン内部ないぶ液体えきたいうみ存在そんざいした可能かのうせいもあるという[5]

冥王星めいおうせいとカロンの、地球ちきゅうつきとの比較ひかく
名称めいしょう 直径ちょっけい
(km)
質量しつりょう
(kg)
軌道きどう半径はんけい (km) 軌道きどう周期しゅうき
冥王星めいおうせい 2,370
つきの68%)
1.3×1022
つきの18%)
2,390
つきの0.6%)
6.3872
つきの25%)
カロン 1,208
つきの35%)
1.5×1021
つきの2%)
19,570
つきの5%)

カロンの起源きげん[編集へんしゅう]

研究けんきゅうしゃなかには(レイモンド・リットルトンなど)、冥王星めいおうせいとカロンは過去かこにはトリトンとも海王星かいおうせい衛星えいせいであり、衛星えいせい同士どうしによる重力じゅうりょく相互そうご作用さようにより海王星かいおうせい公転こうてんする軌道きどうからはじきされたという仮説かせつてているものもいた。海王星かいおうせい最大さいだい衛星えいせいであるトリトンは、大気たいき地質ちしつがくてき組成そせい冥王星めいおうせい類似るいじしており、過去かこには太陽たいよう公転こうてんする太陽系たいようけい外縁がいえん天体てんたいだった可能かのうせいもある。しかし今日きょうでは、冥王星めいおうせい海王星かいおうせい公転こうてんしていたことはなかったということがひろれられている[6]

2005ねん発表はっぴょうされたロビン・キャヌプ (Robin Canup) によるシミュレーションによると、カロンは地球ちきゅうつき同様どうようやく45おくねんまえだい衝突しょうとつによって誕生たんじょうしたとかんがえられている(ジャイアント・インパクトせつ参照さんしょう)。シミュレーションによると、冥王星めいおうせい場合ばあいには、直径ちょっけいが1,600kmから2,000kmほどあるほか太陽系たいようけい外縁がいえん天体てんたいが、1 km/sほどで衝突しょうとつしたとされた。キャヌプは、このような衛星えいせい形成けいせい過程かてい初期しょき太陽系たいようけいでは一般いっぱんてきだった可能かのうせいがあると推測すいそくしている[7]

地形ちけい[編集へんしゅう]

ニュー・ホライズンズの観測かんそくによってこれまでなぞだったカロンの地形ちけいあきらかになってきた。カロンの北極ほっきょく付近ふきんには300km以上いじょうわたってくら領域りょういきがあり、研究けんきゅうチームのあいだでは「こくこく」を意味いみする、「指輪ゆびわ物語ものがたり」に登場とうじょうするめいおうサウロンにちなんだ「モルドール(MORDOR)」の愛称あいしょうばれている。北極ほっきょくくら原因げんいんはまだかっていないが、くら物質ぶっしつ地表ちひょう存在そんざいしているためだとされている[3][8][9]。さらにみぎじょうのカロンの画像がぞうしたがわにはながさ1000kmにもわたグランド・キャニオンながさ429km)よりも巨大きょだいたにふかさ7 - 9kmのふかたにうつっている[9]。さらに冥王星めいおうせい同様どうようクレーターすくないという特徴とくちょうられる[9]。これらのことからカロンでは冥王星めいおうせい同様どうよう地殻ちかく変動へんどうきている可能かのうせいもある。しかし冥王星めいおうせい同様どうよう地殻ちかく変動へんどうこる内部ないぶ熱源ねつげん原因げんいんになる、はるかにおおきな天体てんたいがないため、これらの地形ちけいのプロセスを形成けいせいされたと推測すいそくされている[9]

カロンの地形ちけい

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 『オックスフォード天文学てんもんがく辞典じてん』(初版しょはんだい1さつ朝倉書店あさくらしょてん、94ぺーじISBN 4-254-15017-2 
  2. ^ 衛星えいせい日本語にほんご表記ひょうき索引さくいん”. 日本にっぽん惑星わくせい協会きょうかい. 2019ねん3がつ9にち閲覧えつらん
  3. ^ a b 従来じゅうらいより「おおきくなった」冥王星めいおうせい”. 国立こくりつ天文台てんもんだい (2015ねん7がつ14にち). 2015ねん7がつ17にち閲覧えつらん
  4. ^ すばる望遠鏡ぼうえんきょう 冥王星めいおうせいにエタンのこおり、カロンにみずこおり発見はっけん”. 国立こくりつ天文台てんもんだい (1999ねん7がつ19にち). 2014ねん7がつ3にち閲覧えつらん
  5. ^ 衛星えいせいカロンに地下ちかうみはあったか こたえは来夏らいか冥王星めいおうせい探査たんさ” (2014ねん6がつ17にち). 2014ねん7がつ3にち閲覧えつらん
  6. ^ McKinnon, W. B. (1984). “On the origin of Triton and Pluto”. Nature 311: 355-358. https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/1984Natur.311..355M/abstract. 
  7. ^ “SwRI scientist: Pluto-Charon origin may mirror that of Earth and its Moon”. Southwest Research Institute (SwRI) News. (2005ねん1がつ27にち). http://www.swri.org/9what/releases/2005/pluto.htm 2010ねん2がつ5にち閲覧えつらん 
  8. ^ ニュー・ホライズンズ、いよいよ明日あした冥王星めいおうせいさい接近せっきん”. 国立こくりつ天文台てんもんだい (2015ねん7がつ13にち). 2015ねん7がつ17にち閲覧えつらん
  9. ^ a b c d 冥王星めいおうせいのクローズアップ画像がぞう公開こうかい、3500mきゅう氷山ひょうざん”. 国立こくりつ天文台てんもんだい (2015ねん7がつ16にち). 2015ねん7がつ17にち閲覧えつらん

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]