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あい転移てんい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
それぞれのそうあい転移てんい名前なまえ

あい転移てんい(そうてんい、英語えいご: phase transition)とは、あるけいそう(phase)がべつそうわることをす。しばしばあい変態へんたい(そうへんたい、英語えいご: phase transformation)ともばれる。ねつ力学りきがくまたは統計とうけい力学りきがくにおいて、そうはある特徴とくちょうったけい安定あんてい状態じょうたい集合しゅうごうとして定義ていぎされる。一般いっぱんには物質ぶっしつ状態じょうたい固体こたい液体えきたい気体きたい)の相互そうご変化へんかとして理解りかいされるが、同相どうしょう物質ぶっしつちゅう物性ぶっせい変化へんか結晶けっしょう構造こうぞう密度みつど磁性じせいなど)や基底きてい状態じょうたい変化へんかたいしてももちいられる。あい転移てんいあらわれる現象げんしょうたんに「あい転移てんい」とぶことがある。

概要がいよう

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なにって「そう」と定義ていぎするかは分野ぶんやによってことなる。たとえば平衡へいこうねつ力学りきがく範疇はんちゅうでは、じゅん安定あんてい状態じょうたいねつ力学りきがくてき状態じょうたいとして定義ていぎできないため、じゅん安定あんてい状態じょうたいくみそうとして定義ていぎすることもできない。じゅん安定あんてい状態じょうたいあつかうためには、じゅん安定あんてい状態じょうたいにおいても平衡へいこう状態じょうたい同様どうよう温度おんど圧力あつりょくなどが定義ていぎでき、平衡へいこうねつ力学りきがく枠組わくぐみであつかえることを仮定かていするなどの工夫くふう必要ひつようになる。

けいそう多種たしゅ多様たようかんがえられるのと同様どうように、あい転移てんい機構きこうもまた、対象たいしょうとするけいとそのそうによって様々さまざまだが、あい転移てんいこる理由りゆうはそのけいにとってより安定あんていけい状態じょうたいあらわれたためである。その状態じょうたい安定あんていかどうかは、たとえばねつ力学りきがくでは温度おんど圧力あつりょく磁場じば電場でんじょうなどのわせによって決定けっていされるが、微視的びしてきには原子げんし分子ぶんし、あるいはかく電子でんしあいだ相互そうご作用さようや、それらととの相互そうご作用さようなどが寄与きよしている。

あい転移てんい顕著けんちょれいとして、こおりみずになったりみず水蒸気すいじょうきになったりする、かたしょうえきしょうしょうあいだ転移てんいほかに、ことなるかたち同素体どうそたいへの転移てんいげられる。炭酸たんさんカルシウムヴァテライトからカルサイトアラゴナイトへと変化へんかしたり、炭素たんそダイヤモンドからグラファイト変化へんかしたりするのがそのれいである。

ほかにも様々さまざまあい転移てんいがあり、その代表だいひょうてきれいとして以下いかのものがある。

あい転移てんい検出けんしゅつする技術ぎじゅつとしては、しめせねつ分析ぶんせき (DTA[ちゅう 1]) などがあり、たとえば合金ごうきん構造こうぞうしょう転移てんいなどにたいしてもちいられる。

転移てんいてん

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あい転移てんいこす温度おんど圧力あつりょくなどの状態じょうたいりょうくみ転移てんいてん変態へんたいてん[ちゅう 2]び、とく転移てんいてんじょう温度おんど転移てんい温度おんどという。特定とくてい物質ぶっしつにおいて転移てんいてんねつ力学りきがくてき状態じょうたいにより決定けっていされるであり、たとえば特定とくてい成分せいぶんけいえきしょう-しょう転移てんいてんでは圧力あつりょくなどの状態じょうたいりょう指定していされれば、のこりの状態じょうたいりょうである温度おんど、すなわち沸点ふってん一意いちい決定けっていされる。このようにあい転移てんい状態じょうたい温度おんど-圧力あつりょくそううえでは転移てんいてん連続れんぞくした線分せんぶん形成けいせいする。

転移てんいてんれいつぎしめす。

あい転移てんい種類しゅるい

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あい転移てんい大別たいべつするとじゅん安定あんてい状態じょうたいだい一種いっしゅしょう転移てんい[ちゅう 4]と、それをたないだいしゅしょう転移てんい [ちゅう 5]分類ぶんるいされる。

これとはべつポール・エーレンフェスト分類ぶんるいほうでは自由じゆうエネルギー温度おんどあるいは圧力あつりょくn かい微分びぶん不連続ふれんぞくてんゆうする場合ばあいn つぎしょう転移てんい[ちゅう 6]ぶ。たとえば、 1 かい微分びぶん不連続ふれんぞくてんゆうする場合ばあいいちしょう転移てんい[ちゅう 7]、2 かい微分びぶん不連続ふれんぞくてんゆうする場合ばあいしょう転移てんい[ちゅう 8]ぶ。[ちゅう 9]転移てんいてんいちしょう転移てんいしょう転移てんいかのべつにより「いちしょう転移てんいてん」、「しょう転移てんいてん」とける場合ばあいもある。

いちしょう転移てんいだい一種いっしゅしょう転移てんいとは一致いっちするが、エーレンフェストのしょう転移てんい定義ていぎ該当がいとうしない高次こうじしょう転移てんいだいしゅしょう転移てんいにはふくまれる。なお、実験じっけんてきには誤差ごさ存在そんざいにより自由じゆうエネルギーの高次こうじ微分びぶん連続れんぞくなのか不連続ふれんぞくなのかを見分みわけることがむずかしい場合ばあいおおいため、以上いじょう高次こうじあい転移てんい区別くべつせずに「高次こうじしょう転移てんい」などとぶこともある。

あい転移てんい自発じはつてきしょうじる場合ばあいもあるが、いちしょう転移てんいのようにじゅん安定あんてい状態じょうたいちうる場合ばあいは、過熱かねつ状態じょうたい冷却れいきゃく状態じょうたいのように転移てんいてんえてもあい転移てんいしょうじない場合ばあいがある。このようなじゅん安定あんてい状態じょうたいではなんらかの外的がいてき要因よういんかくとなるあたらしいそう発生はっせいし、それががねとなってけい全体ぜんたいあい転移てんい波及はきゅうする。

だい一種いっしゅしょう転移てんい

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物質ぶっしつさんたいあいだ状態じょうたい変化へんかはいずれも代表だいひょうてきだい一種いっしゅしょう転移てんいであり、つぎのようにけられる。

転移てんいまえそう 転移てんいそう 現象げんしょう呼称こしょう 転移てんいてん呼称こしょう 転移てんいねつ呼称こしょう
かたしょう
固体こたい
えきしょう
液体えきたい
融解ゆうかいゆうかい 融点ゆうてんゆうてん 融解ゆうかいねつゆうかいねつ
しょう
気体きたい
昇華しょうかしょうか
気化きかきか
昇華しょうかてんしょうかてん 昇華しょうかねつしょうかねつ
えきしょう
液体えきたい
かたしょう
固体こたい
凝固ぎょうこぎょうこ
固化こかこか
凝固ぎょうこてんぎょうこてん 凝固ぎょうこねつぎょうこねつ
しょう
気体きたい
蒸発じょうはつじょうはつ[ちゅう 10]
気化きかきか
沸点ふってんふってん 蒸発じょうはつねつじょうはつねつ
気化きかねつきかねつともぶ。
しょう
気体きたい
えきしょう
液体えきたい
凝縮ぎょうしゅくぎょうしゅく[ちゅう 11]
液化えきかえきか
とくになし) 凝縮ぎょうしゅくねつぎょうしゅくねつ
かたしょう
固体こたい
しこりはな旧名きゅうめい昇華しょうかぎゃく転移てんい同名どうめい凝固ぎょうこ凝結ぎょうけつ[1][2]ばれることもある) とくになし) とくになし)

だい一種いっしゅしょう転移てんい転移てんいてん圧力あつりょくにより変化へんかする。物質ぶっしつ固有こゆう三重みえてん以下いか圧力あつりょくではえきしょう存在そんざいしないため、蒸発じょうはつ凝縮ぎょうしゅく融解ゆうかい狭義きょうぎ凝固ぎょうここらない。また、臨界りんかいてん以上いじょう圧力あつりょくではしょうえきしょう相違そういがなくなり、単一たんいつそうしか存在そんざいしない。

物理ぶつりがくてき性質せいしつ

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いちしょう転移てんいてん前後ぜんごでは、エントロピーやモル熱容量ねつようりょう(モル比熱ひねつ)などが不連続ふれんぞくである。そして、前後ぜんご化学かがくポテンシャル μみゅー1, μみゅー2 とは一致いっちし、あい転移てんい状態じょうたいにある2つのそうにはクラウジウス-クラペイロンのしき成立せいりつする。

だい一種いっしゅしょう転移てんいじゅん安定あんてい状態じょうたいつので固体こたい表面ひょうめん空間くうかん浮遊ふゆうする吸湿きゅうしつせい微小びしょう粒子りゅうしイオンなどの刺激しげきするものが存在そんざいしないことが原因げんいん過熱かねつ状態じょうたい冷却れいきゃく状態じょうたいのように転移てんいてんえてもあい転移てんいしょうじない場合ばあいがある。すなわち電子でんしレンジで過熱かねつしたみず突沸や、放射線ほうしゃせん検出けんしゅつきりばこあわばこ原理げんりはこのだい一種いっしゅしょう転移てんいじゅん安定あんてい状態じょうたい由来ゆらいする。

物性ぶっせいとしての蒸発じょうはつのしやすさ、しなんさを「揮発きはつせい」・「不揮発ふきはつせい」という。液体えきたい表面張力ひょうめんちょうりょくねつ運動うんどうエネルギーを分子ぶんし蒸発じょうはつすることができる。いいかえると、蒸発じょうはつする分子ぶんし液体えきたい表面ひょうめんへの付着ふちゃくについての仕事しごと関数かんすうえる力学りきがくエネルギーをもっている。したがって蒸発じょうはつ液体えきたい温度おんどたかかったり、表面張力ひょうめんちょうりょくひくかったりするほどはや進行しんこうする。

また、理想りそう気体きたいあるいは理想りそう液体えきたいでは圧力あつりょく依存いぞんしてそのいをえることはないが、実際じっさい物質ぶっしつ場合ばあいにはこうあつになるとしょうえきしょういに相違そういがなくなる。その限界げんかい転移てんいてんを「臨界りんかいてん」とぶ。その臨界りんかいてんえたそう状態じょうたいちょう臨界りんかい状態じょうたいぶ。

転移てんいねつ

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ねつてき現象げんしょうとしてはだい一種いっしゅしょう転移てんい進行しんこうちゅういち成分せいぶんけい圧力あつりょく一定いってい場合ばあいけい温度おんど一定いっていのままでのけいがいへのねつ放出ほうしゅつあるいは吸収きゅうしゅうられる。このような機構きこうしょうじるねつ(てんいねつ)[ちゅう 12]または(せんねつ)[ちゅう 13]とよぶ。そもそもねつ定義ていぎ物体ぶったい作用さよう[よう曖昧あいまい回避かいひ]することで温度おんど変化へんかをもたらす物理ぶつりりょうであり、いちしょう転移てんいてん以外いがい状態じょうたいではねつ作用さよう温度おんど変化へんかをもたらすのでこの場合ばあいあらわねつ[ちゅう 14]とよび、いちしょう転移てんいてんにおいて作用さようにより温度おんど変化へんかしょうじない場合ばあい潜熱せんねつけたことに由来ゆらいするので、あらわねつ潜熱せんねつとで物理ぶつりりょうであるねつとしてちがいがあるわけではない。

あい転移てんい前後ぜんこう状態じょうたい1状態じょうたい2とした場合ばあい、それぞれのそう生成せいせいエンタルピー H1, H2総量そうりょう差分さぶんだけ、転移てんいねつ発生はっせいする。

転移てんいねつ単位たんい質量しつりょうあたりの熱量ねつりょう (J/g) または物質ぶっしつりょうあたりの熱量ねつりょう (J/mol) でしめされる。たとえば、みず融解ゆうかいねつは 333.5 J/g、気化きかねつは 2256.7 J/g である。

つぎ転移てんいねつ該当がいとうするねつ現象げんしょうつぎしめす。

  • 蒸発じょうはつねつ気化きかねつ凝縮ぎょうしゅくねつ) - しょうえきしょうあいだだい一種いっしゅしょう転移てんい
  • 融解ゆうかいねつ凝固ぎょうこねつ)- えきしょうかたあいあいだだい一種いっしゅしょう転移てんい

だいしゅしょう転移てんい

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代表だいひょうてきだいしゅしょう転移てんいである物理ぶつり現象げんしょうとしては、一部いちぶ構造こうぞうしょう転移てんい磁気じきしょう転移てんいつね伝導でんどうからちょう伝導でんどう状態じょうたいへの転移てんい液体えきたいヘリウムちょう流動りゅうどう状態じょうたいなどがげられる。一般いっぱんだいしゅしょう転移てんいはある秩序ちつじょ変数へんすう秩序ちつじょ無秩序むちつじょへと転移てんいする現象げんしょうである。秩序ちつじょ変数へんすうとしては結晶けっしょうない原子げんし配列はいれつ規則きそく磁性じせいたい磁気じきてき秩序ちつじょとう多岐たきわたる。

あるいは高次こうじあい転移てんいでは化学かがくポテンシャルいちしるべ関数かんすう連続れんぞくであるため転移てんいねつ発生はっせいせず、体積たいせき不連続ふれんぞくてん発生はっせいしない。

一方いっぽうしょう転移てんいでは、化学かがくポテンシャルのしるべ関数かんすうとう不連続ふれんぞく比熱ひねつ磁化じかりつ転移てんいてん不連続ふれんぞくせいしめす。そのほかにもだいしゅしょう転移てんいてん付近ふきんでは物理ぶつりりょう異常いじょうせいあらわれ、それらは臨界りんかい現象げんしょう総称そうしょうされる。たとえば、比熱ひねつだいしゅしょう転移てんいてん付近ふきんギリシャ文字もじλらむだかたちのグラフをしめして発散はっさんするケースはラムダ転移てんいばれる。

関連かんれん図書としょ

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  • レフ・ランダウエフゲニー・リフシッツ統計とうけい物理ぶつりがくじょうだい 3 はん)、岩波書店いわなみしょてん理論りろん物理ぶつりがく教程きょうてい〉。ISBN 978-4000057202 
  • レフ・ランダウ、エフゲニー・リフシッツ『統計とうけい物理ぶつりがくだい 3 はん)、岩波書店いわなみしょてん理論りろん物理ぶつりがく教程きょうてい〉。ISBN 978-4000057219 
  • ヴォルフガング・ゲプハルト、ウヴェ・クライ『あい転移てんい臨界りんかい現象げんしょう吉岡よしおか書店しょてん物理ぶつりがく叢書そうしょ〉。ISBN 978-4842702421 
  • ユージン・スタンレーあい転移てんい臨界りんかい現象げんしょう』(新装しんそうばん東京とうきょう図書としょISBN 978-4489002410 
  • P.W.アンダーソン凝縮ぎょうしゅくけい物理ぶつりがく基本きほん概念がいねん吉岡よしおか書店しょてん物理ぶつりがく叢書そうしょ〉。ISBN 978-4842702124 
  • author: Franz Schwabl, translator: William Brewer (2006) (English). Statistical Mechanics (Second ed.). Springer. ISBN 978-3-540-32343-3. http://www.springer.com/materials/book/978-3-540-32343-3 
  • 西森にしもりしげるみのる:「あい転移てんい臨界りんかい現象げんしょう統計とうけい物理ぶつりがく」、培風館ばいふうかんISBN 978-4563024352(2005ねん11月)。
  • 田崎たさきはれあきら, はらたかし, 岡本おかもと和夫かずお (へん):「あい転移てんい臨界りんかい現象げんしょう数理すうり」、共立きょうりつ出版しゅっぱんISBN 978-4320111080(2015ねん6がつ9にち)。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ えい: differential thermal analysis
  2. ^ えい: phase transition points
  3. ^ スピングラス以外いがいのガラス転移てんいあい転移てんいとはかんがえられていない。スピングラスについても,平衡へいこうしょう転移てんいであるかどうかは議論ぎろん余地よちがある。
  4. ^ えい: phase transition of the first kind
  5. ^ えい: phase transition of the second kind
  6. ^ えい: n-th order phase transition
  7. ^ えい: first-order phase transition
  8. ^ えい: second-order phase transition
  9. ^ Schwabl (2006) p.332
  10. ^ 沸点ふってんにおいて液体えきたい全体ぜんたいから蒸発じょうはつしょうじる場合ばあいは「沸騰ふっとう」とばれる。
  11. ^ 凝結ぎょうけつばれる場合ばあいがある。とく固体こたい表面ひょうめんでの凝縮ぎょうしゅくは「結露けつろ」とばれる。
  12. ^ えい: heat of transition
  13. ^ えい: latent heat
  14. ^ えい: sensible heat

出典しゅってん

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  1. ^ 佐藤さとう明子あきこ, 細矢ほそや治夫はるお, 化学かがく教育きょういく, 49(10), p.651 (2001)
  2. ^ 細矢ほそや治夫はるお, 化学かがく教育きょういく, 61(7), p.366 (2013)

関連かんれん項目こうもく

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