臨界りんかい点てん

代表だいひょう的てきな相そう図ず。

純じゅん物質ぶっしつの臨界りんかい点てん（りんかいてん、英語えいご: critical point）とは、気き相しょう - 液えき相しょう間あいだの相あい転移てんいが起おこりうる温度おんどおよび圧力あつりょくの上限じょうげんである。気体きたいの温度おんどを臨界りんかい点てん以下いかにしない限かぎり、どれだけ圧縮あっしゅくしても気体きたいは決けっして液化えきかしない。また、臨界りんかい点てんより高たかい圧力あつりょくの下したでは、どんなに加熱かねつしても液体えきたいは決けっして沸騰ふっとうしない。

純じゅん物質ぶっしつの臨界りんかい点てんは各かく物質ぶっしつに固有こゆうの値ねである。例たとえば水みずの臨界りんかい点てんは 373.95 °C (647.10 K), 220.64バール (22.064 MPa; 217.75 atm) である。臨界りんかい点てんの温度おんどをその物質ぶっしつの臨界りんかい温度おんど T_c、圧力あつりょくを臨界りんかい圧力あつりょく P_c という。物質ぶっしつの沸点ふってん T_b は臨界りんかい温度おんど以上いじょうにはならない。すなわち臨界りんかい温度おんどは沸点ふってんの上限じょうげんである（T_b < T_c）。同様どうように、臨界りんかい圧力あつりょくはその物質ぶっしつの蒸気じょうき圧あつ P_vap の上限じょうげんである（P_vap < P_c）。臨界りんかい点てんにおける物質ぶっしつの密度みつどを臨界りんかい密度みつど ρろー_c 、モル体積たいせきを臨界りんかい体積たいせき V_{m, c} という。水みずの臨界りんかい密度みつどは 0.322±0.003 g/cm³ である。この値ねは常温じょうおん常つね圧あつの水みずの密度みつどの約やく1/3であり、水蒸気すいじょうきを理想りそう気体きたいと仮定かていしたときの臨界りんかい点てんでの密度みつどの4.4倍ばいである。

温度おんど T を横よこ軸じく、圧力あつりょく P を縦たて軸じくとした相そう図ずでは、気き-液えき境界きょうかい線せん（右みぎ図ずの青あお線せん）の右みぎ端はしの点てんが臨界りんかい点てんにあたる。すなわち蒸気じょうき圧あつ曲線きょくせんの右みぎ端はしの点てんが臨界りんかい点てんである。臨界りんかい点てんより低ひくい温度おんど・圧力あつりょくで気き液えき平衡へいこうにあるとき、気体きたいの密度みつど ρろー_gas は液体えきたいの密度みつど ρろー_liq よりも小ちいさい。気き液えき平衡へいこうを保たもちながら蒸気じょうき圧あつ曲線きょくせんに沿そって温度おんど T を上あげていくと、気体きたいの密度みつどは増加ぞうかし、液体えきたいの密度みつどは減少げんしょうする。臨界りんかい点てんに近ちかづくにつれて二ふたつの密度みつどの差さはますます小ちいさくなり、(T, P_vap) → (T_c, P_c) の極限きょくげんで密度みつどの差さがなくなって ρろー_gas = ρろー_liq = ρろー_c となる。これは液えき相しょうと気き相しょうの二に相そうが平衡へいこう状態じょうたいで境界きょうかい面めんがある状態じょうたいから、二に相そうの密度みつどが等ひとしくなりその境界きょうかい面めんがなくなる状態じょうたいに変化へんかすることを意味いみしている。また臨界りんかい点てんでは、密度みつどだけでなく、他たの示しめせ強きょう性せいの状態じょうたい量りょうも等ひとしくなる。そのため、気き-液えき境界きょうかい線せん上じょうの気き相しょうと液えき相しょうのモルエンタルピー（または比ひエンタルピー）の差さとして定義ていぎされる気化きか熱ねつは、臨界りんかい点てんで 0 となる。すなわち蒸気じょうき圧あつ曲線きょくせんの右みぎ端はしの点てんは、気化きか熱ねつが 0 となる点てんである。

臨界りんかい温度おんど以下いかの気体きたいを蒸気じょうきと呼よぶ。純じゅん物質ぶっしつの蒸気じょうきは等温とうおん的てきに圧縮あっしゅくすると相あい転移てんいを起おこして液化えきかする。物質ぶっしつの温度おんどと圧力あつりょくを共ともに臨界りんかい点てん以上いじょうにすると、液体えきたいと気体きたいの区別くべつがつかない状態じょうたいになる。この状態じょうたいの流体りゅうたいを超ちょう臨界りんかい流体りゅうたいと呼よぶ。相あい図上ずじょうで、臨界りんかい点てんを迂回うかいする形かたちで物質ぶっしつの状態じょうたいを変化へんかさせると、密度みつどが連続れんぞく的てきに変化へんかするような、蒸気じょうき⇔液体えきたいの変化へんかが可能かのうである。例たとえば、蒸気じょうきを T_c を超こえるまで定圧ていあつで加熱かねつし、これを加圧かあつして超ちょう臨界りんかい流体りゅうたいにしてから、T_c を下回したまわるまで定圧ていあつで冷却れいきゃくすると液体えきたいになる。この一連いちれんの過程かていで相あい転移てんいは起おこらず、物質ぶっしつの状態じょうたいは連続れんぞく的てきに変化へんかしている。

固かた相しょうと液えき相しょうの間あいだに、超ちょう高圧こうあつのもとで区別くべつがなくなるような臨界りんかい点てんがあるかどうかは未み解明かいめいである。固かた相しょうと液えき相しょうの間あいだの臨界りんかい点てんは、2015年ねん現在げんざい、実験じっけん的てきに観測かんそくされたことがない。結晶けっしょうは液体えきたいと対称たいしょう性せいが違ちがうので、多おおくの研究けんきゅう者しゃは、固体こたいと液体えきたいの区別くべつがなくなるような状態じょうたいは存在そんざいしないと考かんがえている。但ただし、並進へいしん対称たいしょう性せいを破やぶるような周期しゅうき的てきな外部がいぶポテンシャルを加くわえると固かた液えき臨界りんかい点てんが理論りろん的てきに存在そんざいできる。また、そのような外そと場じょうを加くわえない場合ばあいでも、固かた液えき臨界りんかい点てんの存在そんざいが計算けいさん科学かがくにより示しめされているが、この場合ばあいの固体こたい相しょうが結晶けっしょうなのかアモルファスなのか分わかっておらず、アモルファスの場合ばあいは上うえの自発じはつ的てき対称たいしょう性せいの破やぶれの議論ぎろんとも矛盾むじゅんしない。

参考さんこう文献ぶんけん

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• 望月もちづき建けん爾なんじ「カーボンナノチューブに内包ないほうされた水みずの固かた液えき臨界りんかい現象げんしょう (特集とくしゅう 水すいが関係かんけいする結晶けっしょう成長せいちょうのトピックス)」『日本にっぽん結晶けっしょう成長せいちょう学会がっかい誌し』第だい42巻かん第だい4号ごう、日本にっぽん結晶けっしょう成長せいちょう学会がっかい、2015年ねん、290-294頁ぺーじ、doi:10.19009/jjacg.42.4_290、2017年ねん9月がつ4日にち閲覧えつらん。 
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関連かんれん項目こうもく

• 相そう (物質ぶっしつ)
• 三重みえ点てん
• 三重みえ臨界りんかい点てん
• 臨界りんかい指数しすう
• ファンデルワールスの状態じょうたい方程式ほうていしき

外部がいぶリンク

• “critical temperature”. IUPAC. doi:10.1351/goldbook.C01402. 2017年ねん9月がつ4日にち閲覧えつらん。
• “critical pressure”. IUPAC. doi:10.1351/goldbook.C01397. 2017年ねん9月がつ4日にち閲覧えつらん。
• “critical point”. IUPAC. doi:10.1351/goldbook.C01396. 2017年ねん9月がつ4日にち閲覧えつらん。
• “蒸気じょうき”. コトバンク. 2017年ねん9月がつ4日にち閲覧えつらん。