(Translated by https://www.hiragana.jp/)
状態方程式 (熱力学) - Wikipedia コンテンツにスキップ

状態じょうたい方程式ほうていしき (ねつ力学りきがく)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

状態じょうたい方程式ほうていしき(じょうたいほうていしき、えい: equation of state[1])とは、ねつ力学りきがくにおいて、状態じょうたいりょうあいだ関係かんけいしきのことをいう。巨視的きょしてきけいねつ力学りきがくてき性質せいしつ反映はんえいしており、けいによってしきかたち変化へんかする[2]状態じょうたい方程式ほうていしき具体ぐたいてきかたち実験じっけんてき決定けっていされるか、統計とうけい力学りきがくもとづいて計算けいさんされ、ねつ力学りきがくからはあたえられない[2]

広義こうぎには、すべての状態じょうたいりょうあいだ関係かんけいしきのことであるが、とくに、流体りゅうたい圧力あつりょく温度おんど体積たいせき物質ぶっしつりょうあらわしき場合ばあいおお[3]流体りゅうたいだけでなく固体こたいたいしても、そのねつ力学りきがくてき性質せいしつ表現ひょうげんする状態じょうたい方程式ほうていしきかんがえることが出来できる。磁性じせいたい誘電ゆうでんたいでも状態じょうたい方程式ほうていしきかんがえる場合ばあいもある。おもねつ平衡へいこうにおけるけい温度おんど状態じょうたいりょうとの関係かんけいあらわ関係かんけいしきすが、かならずしも温度おんどとの関係かんけいあらわすとはかぎらない。温度おんど依存いぞんせいかんがえないかたち関係かんけいしき構成こうせい方程式ほうていしきばれることもある。

流体りゅうたい状態じょうたい方程式ほうていしき

[編集へんしゅう]

温度おんど T体積たいせき V物質ぶっしつりょう N平衡へいこう状態じょうたいにある流体りゅうたい圧力あつりょく p適当てきとう関数かんすう f によって

のようにあらわしたものが(狭義きょうぎの)状態じょうたい方程式ほうていしきである。ただし、物理ぶつりがくでは変数へんすう記号きごう関数かんすう記号きごう混用こんようして

のようにかれることがおおい。

状態じょうたいりょう圧力あつりょく温度おんどしめせきょうせい体積たいせき物質ぶっしつりょうしめせりょうせいから、スケール変換へんかん (V,N) → (λらむだV,λらむだN)たいして

となる。 とく体積たいせき次元じげん適当てきとう定数ていすう V*固定こていして、スケール変換へんかんのパラメータを λらむだ=V*/Vえらぶと

となる[ちゅう 1]。ここで ρろー = N/V単位たんい体積たいせきあたりの物質ぶっしつりょう、つまり密度みつどである。このようにしめせりょうせい考慮こうりょすることで、状態じょうたい方程式ほうていしきから変数へんすうひとらすことができる。 また、物質ぶっしつりょう次元じげん適当てきとう定数ていすう N*固定こていして、変換へんかんパラメータを λらむだ = N*/Nえらぶと

となる[ちゅう 1]。ここで v = V/N単位たんい物質ぶっしつりょうあたりの体積たいせき、つまりようである。

化学かがく分野ぶんやでは、体積たいせき温度おんど圧力あつりょく物質ぶっしつりょうあらわした

かたち状態じょうたい方程式ほうていしき場合ばあいおおい。 しめせりょうせい考慮こうりょすれば

として変数へんすうひとらすことができる。

状態じょうたい方程式ほうていしき微分びぶん

[編集へんしゅう]

体積たいせき V(T,p)温度おんど T によるへん微分びぶん

あらわされる。ここで αあるふぁねつ膨張ぼうちょう係数けいすうである。

体積たいせき V(T,p)圧力あつりょく p によるへん微分びぶん

あらわされる。ここで κかっぱT等温とうおん圧縮あっしゅくりつである。

したがって、体積たいせきぜん微分びぶん

となる。 これを変形へんけいすれば、圧力あつりょくぜん微分びぶん

となる。ぜん微分びぶんかたちから、圧力あつりょく p(T,V)へん微分びぶんとして

られる。

固体こたい状態じょうたい方程式ほうていしき

[編集へんしゅう]

弾性だんせいたい

[編集へんしゅう]

弾性だんせいたい状態じょうたいあらわ変数へんすうは、ゆが εいぷしろん応力おうりょく σしぐま である。体積たいせき圧力あつりょくことなり、一般いっぱんには2かいテンソルあらわされる。 状態じょうたい方程式ほうていしき

あるいは

かたちかれる。

応力おうりょくゆがみによる微分びぶん

として、弾性だんせいりつあらわされる。 ゆがみの応力おうりょくによる微分びぶん

として、弾性だんせいコンプライアンスあらわされる。

ゆがみの温度おんどによる微分びぶん

としてねつゆがあらわされる。 したがって、ゆがみのぜん微分びぶん

となる。 応力おうりょくぜん微分びぶん

となる。

誘電ゆうでんたい

[編集へんしゅう]

誘電ゆうでんたい状態じょうたいあらわ変数へんすうは、誘電ゆうでん分極ぶんきょく P外部がいぶ電場でんじょう E である。状態じょうたい方程式ほうていしき

かたちかれる。 電場でんじょうによる微分びぶん

として、電気でんき感受かんじゅりつあらわされる。 応力おうりょくによる微分びぶん

として、あつでん係数けいすうあらわされる。 温度おんどによる微分びぶん

として、こげでん係数けいすうあらわされる。 誘電ゆうでんりつぜん微分びぶん

となる。

磁性じせいたい

[編集へんしゅう]

磁性じせいたい状態じょうたいあらわ変数へんすうは、磁化じか M外部がいぶ磁場じば H である。状態じょうたい方程式ほうていしき

かたちかれ、その微分びぶん

として、磁化じかりつあらわされる。磁化じか磁化じかりつ温度おんど依存いぞんせいキュリーの法則ほうそくなどで記述きじゅつされる。

具体ぐたいてきかたち

[編集へんしゅう]

気体きたい

[編集へんしゅう]

理想りそう気体きたい

[編集へんしゅう]

理想りそう気体きたい状態じょうたい方程式ほうていしきは、

である。R気体きたい定数ていすうである。このしきボイル=シャルルの法則ほうそくアボガドロの法則ほうそくからみちびかれる。なお、このしきもちいられている温度おんど T絶対温度ぜったいおんどあるいはねつ力学りきがく温度おんどばれる。

分母ぶんぼはらった

というかたちてくることもおおい。

また、このしき統計とうけい力学りきがくまとには相互そうご作用さようをしないけいとしてみちびくことができる。

実在じつざい気体きたい

[編集へんしゅう]

実在じつざい気体きたい場合ばあいは、以下いかのいくつかの近似きんじしき提案ていあんされている。

マーナハンの状態じょうたい方程式ほうていしき

[編集へんしゅう]

固体こたいにおける状態じょうたい方程式ほうていしきとしては、バンド計算けいさんなどで利用りようされるマーナハン (Murnaghan) の状態じょうたい方程式ほうていしき

有名ゆうめいである。EtotけいぜんエネルギーB体積たいせき弾性だんせいりつB'体積たいせき弾性だんせいりつ圧力あつりょく微分びぶんV0平衡へいこう格子こうし定数ていすうでのけい体積たいせきEtot(V0)は平衡へいこう格子こうし定数ていすうでのぜんエネルギーである。このしきで、V = V0 において、右辺うへん括弧かっこないがゼロになり、Etot(V0)となる。

うえしきは、ぜんエネルギーと体積たいせきとの関係かんけいしきであるが、マーナハンのしきには圧力あつりょく体積たいせきとの関係かんけいしき

がある。このような固体こたいにおける圧力あつりょく体積たいせきなどの関係かんけいしき状態じょうたい方程式ほうていしき)にはいくつか派生はせいがた存在そんざいする。マーナハンのしき指数しすう関数かんすうふくむため、あつかいがむずかしい。そのため応用おうようじょう問題もんだい範囲はんい近似きんじおこない、多項式たこうしき展開てんかいなおしたバーチ・マーナハン(Birch-Murnaghan)のしきがよく使つかわれる。

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
注釈ちゅうしゃく
  1. ^ a b 2番目ばんめしき最後さいごしき関数かんすうのとる変数へんすうくみことなるが、記号きごう混用こんようしている。
出典しゅってん

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]
  • 文部省もんぶしょう日本にっぽん物理ぶつり学会がっかいへん学術がくじゅつ用語ようごしゅう 物理ぶつりがくへん培風館ばいふうかん、1990ねんISBN 4-563-02195-4http://sciterm.nii.ac.jp/cgi-bin/reference.cgi 
  • 田崎たさきはれあきらねつ力学りきがく 現代げんだいてき視点してんから』培風館ばいふうかんしん物理ぶつりがくシリーズ〉、2000ねんISBN 4-563-02432-5 

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]