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宇宙うちゅうろん

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宇宙うちゅうろん(うちゅうろん、えい: cosmology)とは、「宇宙うちゅう」や「世界せかい」などとばれる人間にんげんをとりかこむなんらかのひろがり全体ぜんたい[ちゅう 1]広義こうぎには、それのなかにおける人間にんげん位置いち、にかんする言及げんきゅうろん[ちゅう 2]研究けんきゅうなどのことである。

宇宙うちゅうろんには神話しんわ宗教しゅうきょう哲学てつがく神学しんがく科学かがく天文学てんもんがく天体てんたい物理ぶつりがく)などが関係かんけいしている。

「Cosmology コスモロジー」という言葉ことばはじめて使つかわれたのはクリスティアン・ヴォルフの 『Cosmologia Generalis』(1731)においてであるとされている。

ほんこうでは、神話しんわ宗教しゅうきょう哲学てつがく神学しんがくなどであつかわれた宇宙うちゅうろん幅広はばひろふくめてあつかう。

概論がいろん

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古代こだいにおいても、人間にんげん自身じしんをとりかこむ世界せかいについてかたっていた。

古代こだいインドではヴェーダにおいて、「からの発生はっせい」や「原人げんじんによる創造そうぞう」といった宇宙うちゅうそうせいろんられ、のちには「かえ生成せいせい消滅しょうめつしている宇宙うちゅう」というかんがかたあらわれたという。

古代こだいギリシャにおいては、エウドクソスカリポスアリストテレスらが、地球ちきゅう中心ちゅうしんせつ構築こうちくした。アリストテレスは celestial spheres は永遠えいえん不変ふへん世界せかいで、エーテルふくんでいる、とかんがえた。

ヨーロッパ中世ちゅうせいスコラ哲学すこらてつがくにおいても、アリストテレスてき宇宙うちゅうろん採用さいようされた。

ヨーロッパにおいては19世紀せいきごろまで、宇宙うちゅうろん形而上学けいじじょうがくいち分野ぶんやとされ、自然しぜん哲学てつがくにおいてあつかわれていた[ちゅう 3]

現在げんざい自然しぜん科学かがく宇宙うちゅうろんにつながるそれは、天体てんたい地上ちじょう物体ぶったいはたらいているのとおな物理ぶつり法則ほうそくしたがっていることを示唆しさするコペルニクスの原理げんりと、それらの天体てんたい運動うんどう数学すうがくてき理解りかいはじめて可能かのうにしたニュートン力学りきがくはしはっしている。これらは現在げんざいでは天体てんたい力学りきがくばれている。

現代げんだい宇宙うちゅうろんは20世紀せいきはじめのアルベルト・アインシュタインによる一般いっぱん相対性理論そうたいせいりろん発展はってんと、非常ひじょうとお距離きょりにある天体てんたい観測かんそく技術ぎじゅつ進歩しんぽによってはじまった。

天文学てんもんがく宇宙うちゅう物理ぶつりがくにおける宇宙うちゅうろんは、我々われわれ宇宙うちゅう自体じたい構造こうぞう研究けんきゅうおこなうもので、宇宙うちゅう生成せいせい変化へんかについての根本こんぽんてき疑問ぎもん関連かんれんしている。

20世紀せいきには宇宙うちゅう起源きげんについて様々さまざま仮説かせつてることが可能かのうになり、定常ていじょう宇宙うちゅうろんビッグバン理論りろん、あるいは振動しんどう宇宙うちゅうろんなどのせつ提唱ていしょうされた。

1970年代ねんだいころから、おおくの宇宙うちゅうろん研究けんきゅうしゃがビッグバン理論りろん支持しじするようになり、みずからの理論りろん観測かんそく基礎きそとしてれるようになった。

分野ぶんやごとの定義ていぎ

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それぞれの観点かんてんから場合ばあいの「宇宙うちゅう」の定義ていぎには、以下いかのようなものがある。

宗教しゅうきょう哲学てつがく

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哲学てつがくてき宗教しゅうきょうてき観点かんてんから場合ばあい宇宙うちゅう全体ぜんたい一部いちぶでありながら全体ぜんたい類似るいじしたものを「小宇宙しょううちゅう」とぶのにたいして、宇宙うちゅう全体ぜんたいのことを「だい宇宙うちゅう」とぶ。

天文学てんもんがくおよび現代げんだい宇宙うちゅうろん

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天文学てんもんがくてき観点かんてんから場合ばあい、「宇宙うちゅう」はすべての天体てんたい空間くうかんふく領域りょういきをいう。銀河ぎんがのことを「小宇宙しょううちゅう」とぶのにたいして「だい宇宙うちゅう」ともいう。

航空こうくう宇宙うちゅうおよび宇宙うちゅう工学こうがく

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地球ちきゅう大気圏たいきけんそと空間くうかん」という意味いみでは、国際こくさい航空こうくう連盟れんめい (FAI) の規定きていによると空気くうき抵抗ていこうがほぼ無視むしできる真空しんくうである高度こうど 100 km 以上いじょうのことを[1][2]。この基準きじゅんカーマン・ラインばれる[3]

その宇宙うちゅう地球ちきゅう大気圏たいきけんける基準きじゅんとして、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける宇宙うちゅう飛行ひこう認定にんていプログラムの規定きていがある。1950ねんごろ、アメリカ空軍くうぐん(USAF)では高度こうど 50 測量そくりょうマイル(50 ✕ 6336/3937 km ≒ 80.47 km[1959ねん以前いぜん当時とうじ])以上いじょう到達とうたつした飛行ひこう宇宙うちゅう飛行ひこう認定にんていする規定きていもうけていた[4]連邦れんぽう航空局こうくうきょく(FAA)は USAF の基準きじゅん踏襲とうしゅうし 50 測量そくりょうマイル以上いじょう到達とうたつした飛行ひこう民間みんかん宇宙うちゅう飛行ひこう認定にんていしている[5]

語意ごい

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宇宙うちゅう」というかたり一般いっぱんには、cosmos, universe, (outer) space訳語やくごとしてもちいられる。 英語えいごcosmos古代こだいギリシアκόσμος由来ゆらいする。κόσμος原義げんぎでは秩序ちつじょだった状態じょうたいすが、ピタゴラスによって世界せかいそのものを言葉ことばとしてももちいられるようになった[6]。「宇宙うちゅう」は後者こうしゃ意味いみたいしてあてられる。一般いっぱんには universe同義どうぎだが cosmos原義げんぎより秩序ちつじょ調和ちょうわのあることを含意がんいする。「時間じかん空間くうかんうち秩序ちつじょをもって存在そんざいする『こと』や『もの』の総体そうたい[7]としての宇宙うちゅう (cosmos) にかんしてはコスモスこう参照さんしょう

英語えいご universeラテン語らてんご universum由来ゆらいし、すべてのもの事象じしょう総体そうたい意味いみする[8]接頭せっとう uni-数詞すうしの “1” をあらわすが、universe から派生はせいして multiverse, omniverse などが造語ぞうごされている。詳細しょうさいはそれぞれ多元たげん宇宙うちゅうおよびオムニバースこう参照さんしょう

英語えいご outer space あるいはたんspace は、地球ちきゅう大気圏たいきけんそと空間くうかんや、地球ちきゅうふくかく天体てんたい大気圏たいきけんがい空間くうかんし、日本語にほんごでは「宇宙うちゅう空間くうかん」ないし「そと宇宙うちゅう」のわけがあてられ、また日本語にほんごにおいてもたんに「宇宙うちゅう」とぶことが一般いっぱんてきである。地球ちきゅう大気たいきかんして、宇宙うちゅう空間くうかん大気圏たいきけんない境界きょうかいとして(便宜べんぎてきに)カーマン・ライン定義ていぎされている。詳細しょうさい宇宙うちゅう空間くうかんこう参照さんしょう

宇宙うちゅうろん歴史れきし

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古代こだいインド

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ヴェーダ紀元前きげんぜん1000ねんごろから紀元前きげんぜん500ねんごろ)の時代じだいから、すでにからの発生はっせい原初げんしょ原人げんじん犠牲ぎせいによる創造そうぞう苦行くぎょうねつからの創造そうぞう、といった宇宙うちゅう生成せいせいろんがある、という。また、地上ちじょうかいそらかい天界てんかいという三界さんがいへの分類ぶんるいもあったという[9]

時代じだいかえ生成せいせい消滅しょうめつしている宇宙うちゅうというかんがかた成立せいりつしたという[9]。これにはごう(ごう、カルマン)の思想しそう関連かんれんしているという[9]

この無限むげん反復はんぷく原因げんいんは、比較的ひかくてき初期しょき仏教ぶっきょうにおいては、衆生しゅじょうごうちから集積しゅうせきとして理解りかいされていた[9]という。それが、ヒンドゥーきょうにおいては、創造そうぞうしんブラフマーねむりと覚醒かくせい周期しゅうきとして表象ひょうしょうされるようになったという(ブラフマーはのちヴィシュヌわった)[9]

様々さまざま神話しんわ

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世界せかい各地かくちには、かみによって世界せかいつくられたとする言及げんきゅう物語ものがたりせつ多数たすう存在そんざいする。それらは創造そうぞう神話しんわ創世そうせい神話しんわともばれている。

関連かんれん項目こうもく

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古代こだいギリシャ

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紀元前きげんぜん700ねんころに活動かつどうしたヘシオドスの『かみみつる』の116ぎょうには「まず最初さいしょにchaos カオスしょうじた」とある。古代こだいギリシャ元々もともと意味いみでは「chaos」は《おおきくひらいたくち》を意味いみしていた。まずそのchaosがあり、そこから万物ばんぶつ生成せいせいした、とされたのである。そしてそのカオスは暗闇くらやみんでいるともされた。

ピタゴラス学派がくは人々ひとびと宇宙うちゅうコスモスんだ。この背景はいけい説明せつめいすると、古代こだいギリシャでは「kosmosコスモス」という言葉ことばは、調和ちょうわがとれていたり秩序ちつじょがある状態じょうたい表現ひょうげんする言葉ことばであり、庭園ていえん社会しゃかいほうにんしんなどが調和ちょうわがとれている状態じょうたいを「kata kosmon(コスモスに合致がっちしている)」と表現ひょうげんした。どう学派がくは人々ひとびとは、かず信仰しんこうしており、存在そんざいしゃのすべてがハルモニアシンメトリアといったすうてき美的びてき秩序ちつじょ根源こんげんとしているとかんがえ、この世界せかいはコスモスなのだ、とかんがえた。このようになすことによりどう学派がくは人々ひとびとは、一見いっけんすると不規則ふきそくてんおお天文てんもん現象げんしょう背後はいごにひそむすうてき秩序ちつじょ説明せつめいすることを追及ついきゅうすることになった。その延長えんちょうじょうプロラオスエウドクソスらによる宇宙うちゅうろんがある。

ペトルス・アピアヌス[ちゅう 4]によってえがかれた“Cosmographia”。古代こだいから中世ちゅうせいにかけての宇宙うちゅうろん。(アントワープ、1539ねん

古代こだいギリシャのエウドクソス紀元前きげんぜん4世紀せいきころ)は、中心ちゅうしんにあり、天体てんたいがそのまわりをまわっているとした(→地球ちきゅう中心ちゅうしんせつ天動説てんどうせつ)。27のそうからなる天球てんきゅうかこんでいると想定そうていした。 古代こだいギリシャのカリポス紀元前きげんぜん370-300ごろ)は、エウドクソスのせつ発展はってんさせ、天球てんきゅうを34にやした。

アリストテレス紀元前きげんぜん384-322ねん)は『形而上学けいじじょうがく』において、エウドクソスおよびカリポスのせつ継承けいしょう発展はってんさせた。 やはりこの中心ちゅうしんにあり、天球てんきゅうかこんでいる、とした。ただし、エウドクソスやカリポスは天球てんきゅうたがいに独立どくりつしているとかんがえていたのにたいし、連携れんけいがあるシステムとし、そのかずは48ないし56とした。各層かくそうは、それぞれ固有こゆうかみみずからはうごかずうごかすかみen:unmoved mover)によってうごかされている、とした。こちらがわ世界せかいよん元素げんそ構成こうせいされているとし、他方たほう天球てんきゅうよん元素げんそ以外いがいだい番目ばんめ不変ふへん元素げんそエーテルふくんでいるとかんがえた。天球てんきゅう世界せかい永遠えいえん不変ふへんであるとかんがえていた。

関連かんれん項目こうもく

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新約しんやく聖書せいしょ

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ななじゅうにんやく聖書せいしょ』においてはκόσμος(kosmos)という言葉ことば以外いがいoikumeneという言葉ことばもちいられていた。キリストきょう神学しんがくにおいては、kosmosのかたりは、「この」の意味いみでも、つまり「あの」と対比たいひさせられる意味いみでももちいられていたという。

プトレマイオス

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アルマゲスト(George of Trebizond によるラテン語らてんごばん、1451ねんごろ

クラウディオス・プトレマイオス(2世紀せいきごろ)は『アルマゲスト』において、もっぱら天球てんきゅうにおける天体てんたい数学すうがくてき分析ぶんせき、すなわち太陽たいようつき惑星わくせいなどの天体てんたい軌道きどう計算けいさんほう整理せいりしてみせた。そしての『惑星わくせい仮説かせつ』において自然しぜんがくてき描写びょうしゃこころみ、同心どうしん天球てんきゅうてき世界せかいぞう、すなわち地球ちきゅう世界せかい中心ちゅうしんにあるとし、そのまわりを太陽たいようつき惑星わくせいまわっていることをしめそうとした。惑星わくせいじゅん伝統でんとうしたがい、地球ちきゅう(を中心ちゅうしんとして)、つき水星すいせい金星かなぼし太陽たいよう火星かせい木星もくせい土星どせいだとした。

イスラーム世界せかい

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イブン・スィーナーはアリストテレスのろん、プトレマイオスのろんネオプラトニズム混交こんこうしたせつべた。かれは、地球ちきゅう中心ちゅうしんとした9の天球てんきゅう同心円どうしんえんてき構造こうぞうしているとし、一番いちばん外側そとがわに「しょてんてん」、その内側うちがわに「ししたいてん天球てんきゅう」、土星どせいてん木星もくせいてん火星かせいてん太陽たいようてん金星かなぼしたかし水星すいせいてんつきてん、そしてその内側うちがわ月下げっかかい地球ちきゅう)がある、とした。「しょてんてん」からつきてんまでの9てんすべだい元素げんそであるエーテルから構成こうせいされており不変ふへんであり、それにたいして月下げっかかいよん元素げんそ結合けつごう分解ぶんかいによって生成せいせい消滅しょうめつかえしているとした。9てん地球ちきゅう中心ちゅうしん円運動えんうんどうおこなっている。そして、その動力どうりょくいんかく天球てんきゅうたましいである。たましいうえに、かく天球てんきゅうつかさどっている知性ちせいヌース)がある。いちしゃ唯一ゆいいつかみアッラー)からだいいち知性ちせい流出りゅうしゅつ放射ほうしゃ)し、だいいち知性ちせいからだい知性ちせいだいいち天球てんきゅうとそのたましい流出りゅうしゅつ放射ほうしゃ)する。その流出りゅうしゅつ放射ほうしゃ)は次々つぎつぎ下位かい知性ちせいでもかえされて、最後さいご月下げっかかい出現しゅつげんしたとする[9]

関連かんれん項目こうもく

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ヨーロッパ中世ちゅうせい

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ヨーロッパ中世ちゅうせいにおいておこなわれていたスコラ哲学すこらてつがくにおいては、アリストテレスのせつ採用さいようし、かれの『自然しぜんがく』およびよん元素げんそせつ継承けいしょうしていた。そして、月下げっかかい人間にんげんからて、つきよりもこちらがわりの世界せかい)はよん元素げんそ離散りさん集合しゅうごうによって生成せいせい消滅しょうめつきている世界せかいだが、天上てんじょうかいは(つきからあちらがわ世界せかいは)、地上ちじょう世界せかいとは根本こんぽんてきべつ世界せかいだと想定そうていされており、円運動えんうんどう[ちゅう 5]だけがゆるされる世界せかいで、永遠えいえんなま不滅ふめつ世界せかいであるとされていた[10][ちゅう 6]。そして、天上てんじょうかい固有こゆうだい元素げんそから構成こうせいされる、とされていた[10]

関連かんれん項目こうもく

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現代げんだい

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西欧せいおうでは、(19世紀せいき学者がくしゃもそうであったが)20世紀せいき初頭しょとう物理ぶつり学者がくしゃらも、宇宙うちゅうはじまりもわりもない完全かんぜん静的せいてきなものである、という見解けんかいっていた。

現代げんだいてき宇宙うちゅうろん研究けんきゅう観測かんそく理論りろん両輪りょうりんによって発展はってんした。

1915ねんアルベルト・アインシュタイン一般いっぱん相対性理論そうたいせいりろん構築こうちくした。アインシュタインは物質ぶっしつ存在そんざいする宇宙うちゅう静的せいてきになるように、自分じぶんみちびいたアインシュタイン方程式ほうていしき宇宙うちゅう定数ていすうくわえた。しかしこのいわゆる「アインシュタイン宇宙うちゅうモデル」は不安定ふあんていなモデルである。この宇宙うちゅうモデルは最終さいしゅうてきには膨張ぼうちょうもしくは収縮しゅうしゅくいたる。一般いっぱん相対そうたいろん宇宙うちゅうろんてきかいアレクサンドル・フリードマンによって発見はっけんされた。かれ方程式ほうていしきフリードマン・ロバートソン・ウォーカー計量けいりょうもとづく膨張ぼうちょう収縮しゅうしゅく宇宙うちゅう記述きじゅつしている。

1910年代ねんだいヴェスト・スライファーとややおくれてカール・ウィルヘルム・ヴィルツ渦巻うずまき星雲せいうんあか方偏かたへんうつりはそれらの天体てんたい地球ちきゅうからとおざかっていることをしめドップラーシフトであると解釈かいしゃくした。しかし天体てんたいまでの距離きょり決定けっていするのは非常ひじょう困難こんなんだった。すなわち、天体てんたいすみ直径ちょっけいはかることができたとしても、その実際じっさいおおきさや光度こうどることはできなかった。そのためかれらは、それらの天体てんたい実際じっさいには我々われわれそらかわ銀河ぎんがそとにある銀河ぎんがであることにづかず、自分じぶんたち観測かんそく結果けっか宇宙うちゅうろんてき意味いみについてもかんがえることはなかった。

1920ねん4がつ26にちアメリカ国立こくりつ科学かがくいんにおいてハーロー・シャプレーヒーバー・ダウスト・カーチスが、『宇宙うちゅうおおきさ』とだいする公開こうかい討論とうろんかいおこなった。一方いっぽうのシャプレーは、「我々われわれ銀河系ぎんがけいおおきさは直径ちょっけいやく30まん光年こうねん程度ていどで、渦巻うずまき星雲せいうん球状きゅうじょう星団せいだんおなじように銀河系ぎんがけいないにある」とのせつ展開てんかいし、たいするカーチスは、「銀河系ぎんがけいおおきさは直径ちょっけいやく2まん光年こうねん程度ていどで、渦巻うずまき星雲せいうんは、(この銀河系ぎんがけいにはふくまれない)独立どくりつしたべつ銀河ぎんがである」とのせつ展開てんかいした。この討論とうろん天文学てんもんがくしゃらにとって影響えいきょうおおきく、「The Great Debate」あるいは「シャプレー・カーチス論争ろんそう」とばれるようになった。

1927ねんにはベルギーのカトリック教会きょうかい司祭しさいであるジョルジュ・ルメートルがフリードマン・ルメートル・ロバートソン・ウォーカーのしき独立どくりつみちびき、渦巻うずまき星雲せいうんとおざかっているという観測かんそくもとづいて、宇宙うちゅうは「原始げんしてき原子げんし」の「爆発ばくはつ」からはじまった、とするせつ提唱ていしょうした。これはのちにビッグバンとばれるようになった。1929ねんエドウィン・ハッブルはルメートルの理論りろんたいする観測かんそくてき裏付うらづけをあたえた。ハッブルは渦巻うずまき星雲せいうん銀河ぎんがであることを証明しょうめいし、星雲せいうんふくまれるケフェイド変光星へんこうせい観測かんそくすることでこれらの天体てんたいまでの距離きょり測定そくていした。かれ銀河ぎんがあか方偏かたへんうつりとその光度こうどあいだ関係かんけい発見はっけんした。かれはこの結果けっかを、銀河ぎんがすべての方向ほうこうかってその距離きょり比例ひれいする速度そくど地球ちきゅうたいする相対そうたい速度そくど)で後退こうたいしていると解釈かいしゃくした。この事実じじつハッブルの法則ほうそくとしてられている。ただしこの距離きょり後退こうたい速度そくど関係かんけい正確せいかくには比較的ひかくてき近距離きんきょり銀河ぎんがについてのみたしかめられたものだった。観測かんそくした銀河ぎんが距離きょり最初さいしょやく10ばいにまでたっしたところでハッブルはこのった。

宇宙うちゅう原理げんり仮定かていしたでは、ハッブルの法則ほうそく宇宙うちゅう膨張ぼうちょうしていることをしめすことになる。このアイデアからはふたつのことなる可能かのうせいかんがえられる。ひとつは前述ぜんじゅつとおりルメートルが1927ねん発案はつあんし、さらにジョージ・ガモフ支持しじ発展はってんさせたビッグバン理論りろんである。もうひとつの可能かのうせいフレッド・ホイルが1948ねん提唱ていしょうした定常ていじょう宇宙うちゅうモデルである。定常ていじょう宇宙うちゅうろんでは銀河ぎんがたがいにとおざかるにつれてあたらしい物質ぶっしつされる。このモデルでは宇宙うちゅうはどの時刻じこくにおいてもほぼおな姿すがたとなる。長年ながねんにわたって、この両方りょうほうのモデルにたいする支持しじしゃかずはほぼ同数どうすうけられていた。

しかしその宇宙うちゅう高温こうおん高密度こうみつど状態じょうたいから進化しんかしてきたというせつ支持しじする観測かんそくてき証拠しょうこつかりはじめた。1965ねん宇宙うちゅうマイクロ背景はいけい放射ほうしゃ発見はっけん以来いらい、ビッグバン理論りろん宇宙うちゅう起源きげん進化しんか説明せつめいするもっと理論りろんなされるようになった。1960年代ねんだいわりよりもまえには、おおくの宇宙うちゅうろん研究けんきゅうしゃは、フリードマンの宇宙うちゅうモデルの初期しょき状態じょうたいあらわれる密度みつど無限むげんだい特異とくいてん数学すうがくてき観念かんねん結果けっかてくるものであって、実際じっさい宇宙うちゅう高温こうおん高密度こうみつど状態じょうたいまえには収縮しゅうしゅくしており、そのふたた膨張ぼうちょうするのだとかんがえていた。このようなモデルをリチャード・トールマン振動しんどう宇宙うちゅうろんぶ。1960年代ねんだいスティーヴン・ホーキングロジャー・ペンローズが、振動しんどう宇宙うちゅうろん実際じっさいにはうまくいかず、特異とくいてんはアインシュタインの重力じゅうりょく理論りろん本質ほんしつてき性質せいしつであることをしめした。

ビッグバン理論りろん

これによって宇宙うちゅうろん研究けんきゅうしゃだい部分ぶぶんは、宇宙うちゅう有限ゆうげん時間じかん過去かこからはじまったとするビッグバン理論りろんれるようになった[ちゅう 7]

ただし現在げんざいでも一部いちぶ研究けんきゅうしゃは、ビッグバン理論りろんのほころびを指摘してきし、定常ていじょう宇宙うちゅうろんプラズマ宇宙うちゅうろんなどの宇宙うちゅうろん支持しじしている。


関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 「cosmos」はもとはギリシャのκόσμοςコスモスであり、これは「秩序ちつじょ」という意味いみで「chaosカオス」(=無秩序むちつじょ)と対比たいひさせられていた。また「cosmos」は同時どうじに「すべての存在そんざい」を意味いみしていたと解説かいせつされることもある。
  2. ^ 「cosmology」というかたりは、cosmo - logyという構成こうせいになっている。logyの意味いみについては、-logyこう参照さんしょう
  3. ^ ニュートン自然しぜん哲学てつがくしゃ自認じにんしていた。
  4. ^ en:Peter Apian
  5. ^ 完全かんぜんせい具現ぐげんしている、とされた。
  6. ^ 大枠おおわくとして、スコラ哲学すこらてつがくでは「せいなる天界てんかい」と「ぞくなる地上ちじょうかい」とにけて世界せかい理解りかいしていたのである。
  7. ^ 宇宙うちゅうろん研究けんきゅうしゃだい多数たすう現在げんざいのところ、観測かんそく結果けっか説明せつめいするモデルとしてはビッグバン理論りろんもっと適切てきせつであろう、となしている。それを支持しじしている人々ひとびと中心ちゅうしんとして、ビッグバン理論りろんれた理論りろん体系たいけいを「標準ひょうじゅんてき宇宙うちゅうろん」というぶこともある。

出典しゅってん

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  1. ^ フジテレビトリビア普及ふきゅう委員いいんかい『トリビアのいずみ〜へぇのほん〜 5』講談社こうだんしゃ、2004ねん 
  2. ^ Sanz Fernández de Córdoba, S. (2004ねん6がつ21にち). “100km altitude boundary for astronautics”. www.fai.org. FAI. 2022ねん1がつ28にち閲覧えつらん
  3. ^ Sanz Fernández de Córdoba 2004, The Karman separation line: Scientific significance.
  4. ^ de Gouyon Matignon, Louis (2019ねん12月24にち). “Why does the FAA uses 50 miles for defining outer space?”. www.spacelegalissues.com. Space Legal Issues. 2022ねん1がつ28にち閲覧えつらん
  5. ^ Commercial Space Transportation Activities”. www.faa.gov. FAA (2020ねん6がつ19にち). 2022ねん1がつ28にち閲覧えつらん
  6. ^ Merriam-Webster, definition of cosmos.
  7. ^ 広辞苑こうじえんだいろくはん宇宙うちゅう
  8. ^ Merriam-Webster, definition of universe.
  9. ^ a b c d e f こうまつわたる岩波いわなみ哲学てつがく思想しそう事典じてん岩波書店いわなみしょてん、1998ねん、133ぺーじISBN 4000800892 
  10. ^ a b 岩波書店いわなみしょてん哲学てつがく思想しそう 事典じてん』、「だい元素げんそ」のこう

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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