地球ちきゅう大気たいき

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上空じょうくうから地球ちきゅう大気たいきそうくも
国際こくさい宇宙うちゅうステーション(ISS)から日没にちぼつどき地球ちきゅう大気たいき対流圏たいりゅうけん夕焼ゆうやのため黄色おうしょくやオレンジしょくえるが、高度こうどとともに青色あおいろちかくなり、さらにうえでは黒色こくしょくちかくなっていく。
MODIS可視かしした地球ちきゅう大気たいき衛星えいせい映像えいぞう
大気たいき各層かくそうしき縮尺しゅくしゃくただしくない)

(ちきゅうのたいき、えい: earth's atmosphere[1])とは、地球ちきゅう表面ひょうめん層状そうじょうおおっている気体きたいのこと[2]地球ちきゅう科学かがくしょ分野ぶんやで「地表ちひょうおお気体きたい」としての大気たいきあつか場合ばあいは「大気たいき」とぶが、一般いっぱんてきに「身近みぢか存在そんざいする大気たいき」や「一定いっていりょう大気たいきのまとまり」とうとしての大気たいきあつか場合ばあいは「空気くうき」とぶ。

大気たいき存在そんざいする範囲はんい(たいきけん)[3]、その外側そとがわ宇宙うちゅう空間くうかんという。大気圏たいきけん宇宙うちゅう空間くうかんとの学術がくじゅつてき境界きょうかいは、なに基準きじゅんかんがえるかによってはばがあるが、一般いっぱんてきには、大気たいきがほとんどくなる高度こうど100kmのカーマン・ラインより外側そとがわ宇宙うちゅう空間くうかんとする[4]国際こくさい航空こうくう連盟れんめいアメリカ航空こうくう宇宙うちゅうきょく (NASA) は、活動かつどう円滑えんかつすすめるために便宜べんぎてきにこの定義ていぎもちいている。

用法ようほう[編集へんしゅう]

地球ちきゅうおお気体きたいそうであることを強調きょうちょうする場合ばあいは「大気圏たいきけん」、その気体きたいそのものを場合ばあい地球ちきゅう科学かがくでは「大気たいき」、それ以外いがいでは「空気くうき」とい、使つかけられる[2][2]

英語えいごでは大気圏たいきけん大気たいき場合ばあいatmosphere[ちゅう 1]空気くうき場合ばあいは「air」と[5]

地球ちきゅう大気たいき区分くぶん[編集へんしゅう]

地球ちきゅう大気たいき鉛直えんちょく構造こうぞう[編集へんしゅう]

大気たいきは、温度おんど気温きおん変化へんか基準きじゅんにして、鉛直えんちょく方向ほうこうに4つのそう外気がいきけんふくめれば5つ)に区分くぶんされている[6]。これを「地球ちきゅう大気たいき鉛直えんちょく構造こうぞう」という。高度こうどたかくなるにつれ、鉛直えんちょく方向ほうこうでは気圧きあつ密度みつど単調たんちょう低下ていかするほか、大気たいきながれの性質せいしつ分子ぶんし組成そせいなどが変化へんかする。

対流圏たいりゅうけん[7]
0 - 9/17km高度こうどとともに気温きおん低下ていか。さまざまな気象きしょう現象げんしょうこる。上層じょうそうよりもみず水蒸気すいじょうき)の比率ひりつたかい。質量しつりょうでは大気たいき成分せいぶん半分はんぶん以上いじょう対流圏たいりゅうけん存在そんざいする。赤道せきどう付近ふきんでは17km程度ていどあつく、きょくでは9km程度ていどうすい。対流圏たいりゅうけんなかは、気流きりゅう地表ちひょう摩擦まさつ粘性ねんせい)の影響えいきょうける大気たいき境界きょうかいそうとほとんどけない自由じゆう大気たいきかれ、また大気たいき境界きょうかいそうなかはさらにいくつかに分類ぶんるいされている。成層圏せいそうけんとの境界きょうかい対流圏たいりゅうけん界面かいめん[8]ぶ。
成層圏せいそうけん[9]
9/17 - 50km高度こうどとともに気温きおん上昇じょうしょうオゾンそう存在そんざいする。中間なかまけんとの境界きょうかい成層圏せいそうけん界面かいめん[10]ぶ。
ちゅうあいだけん[11]
50 - 80km高度こうどとともに気温きおん低下ていかねつけんとの境界きょうかいちゅうあいだけん界面かいめん[12]ぶ。
ねつけん[13]
80 - やく800km高度こうどとともに気温きおん上昇じょうしょう外気がいきけんとの境界きょうかいねつけん界面かいめん[14]またそとけんそこ[15]ぶ。ねつけん外気がいきけんとの境界きょうかい定義ていぎむずかしく500 - 1,000kmとはばがある。

成層圏せいそうけん中間なかまけんは1つの大気たいき循環じゅんかん混合こんごうしているため、2つをあわせて中層ちゅうそう大気たいき[16]ぶことがある。

ねつけんのさらに上部じょうぶ外気がいきけん[17]をおく場合ばあいもある[6]

その鉛直えんちょく構造こうぞう区分くぶん[編集へんしゅう]

鉛直えんちょく構造こうぞうとはべつ視点してんから命名めいめいされているものもある。

電離層でんりそう[18]
大気たいきちゅう原子げんし分子ぶんしおも紫外線しがいせんけてひかり電離でんりし、イオン大量たいりょう存在そんざいしているそう中間なかまけんねつけんあいだにあたる60km - 500km付近ふきん存在そんざいする。
オゾンそう[19]
高度こうどやく10 - 50km成層圏せいそうけんなかにある。
磁気圏じきけん[20]
地球ちきゅう磁場じば太陽たいようふう圧力あつりょくがつり境界きょうかい内側うちがわ高度こうど1,000km以上いじょう太陽たいようがわ高度こうど6 - 7まんkm、太陽たいようとはぎゃくがわに100まんkm以上いじょうく。電離でんりけんとは磁力じりょくせんでつながる。
磁気圏じきけんなか地球ちきゅうちか内側うちがわ領域りょういきには太陽たいようからのこうエネルギー荷電かでん粒子りゅうし密度みつどたか領域りょういきがあり、これをヴァン・アレンたい[21]という。放射線ほうしゃせん放出ほうしゅつつよい。とく赤道あかみち上空じょうくう顕著けんちょ
プラズマけん[22]
低温ていおんプラズマがほぼ地球ちきゅう自転じてんとともに回転かいてんしている、赤道せきどう高度こうど2まんkm程度ていど以下いか領域りょういき
均質きんしつけん[23]
大気たいき成分せいぶん均質きんしつそう地表ちひょうから80 - 90km付近ふきんまで。この外側そとがわ均質きんしつけん[24]といい、高度こうどがるにつれて分子ぶんしりょうおおきい成分せいぶんからじゅんっていく。分子ぶんしりょうおうじてかく分子ぶんしスケールハイト対応たいおうして気体きたい分離ぶんりし、やく170km以上いじょうでは酸素さんそ主成分しゅせいぶんやく1,000km以上いじょうではヘリウム主成分しゅせいぶん、さらに外側そとがわすうせんkm以上いじょうでは水素すいそ主成分しゅせいぶんというふうに変遷へんせんしていく。2つの境界きょうかい均質きんしつけん界面かいめん[25]という。
らんりゅうけん[26]
らんりゅうによる分子ぶんし拡散かくさん分子ぶんし自身じしんねつ運動うんどうによる拡散かくさん上回うわまわっているそう地表ちひょうから100 - 110km付近ふきんまで。この外側そとがわ拡散かくさんけん[27]といい、ねつ運動うんどうによる拡散かくさん上回うわまわっている。2つの境界きょうかいみだれりゅうけん界面かいめん[28]という。

地球ちきゅう大気たいき水平すいへい構造こうぞう[編集へんしゅう]

地球ちきゅう大気たいきは、太陽たいよう放射ほうしゃりょうもっとおお赤道せきどうもっとすくないきょくとのあいだでのねつ輸送ゆそうになっており、これにより水平すいへい方向ほうこう循環じゅんかん構造こうぞうっている。おおきくけて、対流圏たいりゅうけん循環じゅんかん中層ちゅうそう大気たいき循環じゅんかんの2つがある。

対流圏たいりゅうけんだい規模きぼ循環じゅんかんは、3つのふうけい北半球きたはんきゅう南半球みなみはんきゅうに1セットずつのけい6つのふうけいからなる。赤道せきどうはさんだてい緯度いどには、地表ちひょう加熱かねつによる上昇じょうしょう気流きりゅう原動力げんどうりょくとしたハドレー循環じゅんかんがあり、地表ちひょうでは熱帯ねったい収束しゅうそくたいばれる上昇じょうしょう気流きりゅう中心ちゅうしんせんかう北東ほくとう南東なんとう貿易ぼうえきふうく。きょく中心ちゅうしんとした高緯度こういどには、地表ちひょう冷却れいきゃくによる下降かこう気流きりゅう原動力げんどうりょくとしたごく循環じゅんかんがあり、地表ちひょうではきょくだかあつたいから周囲しゅうい北東ほくとう南東なんとうごく東風こちく。ちゅう緯度いどには、間接かんせつ循環じゅんかんフェレル循環じゅんかん存在そんざいする。とし平均へいきん風向ふうこうると、熱帯ねったい収束しゅうそくたい上昇じょうしょうした空気くうき下降かこうしてくる亜熱帯あねったいだかあつたいから高緯度こういど低圧ていあつたいかってふういているようにえるが、実際じっさいには温帯おんたいてい気圧きあつ移動いどうせい高気圧こうきあつにより南北なんぼく風向ふうこう変化へんかおおきく、それよりも西にしりの偏西風へんせいふう特徴とくちょうてきである。ちゅう緯度いどでは、偏西風へんせいふう南北なんぼく蛇行だこうであるかたぶけあつ不安定ふあんていによりねつてい緯度いどから高緯度こういど輸送ゆそうされている。

対流圏たいりゅうけんではこれよりもちいさな循環じゅんかん存在そんざいする。赤道せきどう付近ふきんでは、太平洋たいへいよう西部せいぶ上昇じょうしょう気流きりゅうインド洋いんどよう大西洋たいせいよう太平洋たいへいよう東部とうぶ下降かこう気流きりゅうつよく、これをウォーカー循環じゅんかんという。また、大陸たいりく海洋かいようあいだで1ねん周期しゅうき風向ふうこう変化へんかする季節風きせつふう循環じゅんかん構造こうぞうっている。

中層ちゅうそう大気たいきでは、てい緯度いど上空じょうくうなつきょく上空じょうくう上昇じょうしょう気流きりゅうふゆきょく上空じょうくう下降かこう気流きりゅうつよく、これをブリューワー・ドブソン循環じゅんかんという。

成分せいぶん[編集へんしゅう]

地表ちひょう付近ふきん大気たいきおも成分せいぶんは、比率ひりつたかじゅんに、窒素ちっそが78.08%、酸素さんそが20.95%、アルゴンが0.93%、二酸化炭素にさんかたんそが0.03%(急激きゅうげき排出はいしゅつりょう増大ぞうだい現在げんざいは0.04%つよし)である。水蒸気すいじょうき最大さいだい4%程度ていどになるが1%を下回したまわることもあり、場所ばしょ時間じかんによっておおきく変動へんどうする。水蒸気すいじょうき影響えいきょうのぞくため、一般いっぱんてき地球ちきゅう大気たいき組成そせいは「乾燥かんそう大気たいき」での組成そせいあらわされる。

二酸化炭素にさんかたんそオゾンのほかいくつかの微量びりょう成分せいぶん濃度のうど場所ばしょ時間じかんによっておおきくことなる。地表ちひょうにそれらの気体きたい発生はっせいげん吸収きゅうしゅうげん存在そんざいするためで、たとえば二酸化炭素にさんかたんそは、空間くうかんてきには都市とし濃度のうどたかく、時間じかんてきには植物しょくぶつ活動かつどう活発かっぱつするなつ濃度のうど減少げんしょうする[ちゅう 2]。なお二酸化炭素にさんかたんそメタン一酸化いっさんか窒素ちっそろくフッ硫黄いおうフロンるいなどの温室おんしつ効果こうかガス濃度のうどは、20世紀せいき中盤ちゅうばん以降いこう増加ぞうかつづけていて、気候きこう変動へんどう研究けんきゅう目的もくてき監視かんしつづけられている[29]。また、排気はいきガスなどにふくまれ大気たいき汚染おせんこす二酸化にさんか硫黄いおう窒素ちっそ酸化さんかぶつ一酸化いっさんか炭素たんそ炭化たんか水素すいそなどいくつかの気体きたい成分せいぶんは、固体こたい浮遊ふゆう粒子りゅうしじょう物質ぶっしつなどとともに常時じょうじ測定そくていおこなわれており[30]日本にっぽんではこう濃度のうどになったさい都道府県とどうふけん大気たいき汚染おせん注意報ちゅういほう発表はっぴょうして排出はいしゅつ制限せいげん住民じゅうみんへの注意ちゅういけをおこなう。

なお、水蒸気すいじょうき二酸化炭素にさんかたんそ、オゾンは地表ちひょう付近ふきん発生はっせいげんがあるため、鉛直えんちょく方向ほうこうでも比率ひりつおおきく変化へんかする。これら以外いがい主成分しゅせいぶんは、高度こうど上昇じょうしょうとともに気圧きあつがっても比率ひりつ一定いっていで、中間なかまけん界面かいめんうえ高度こうど90km付近ふきんまではほとんど変化へんかしない。

ひょう1: 乾燥かんそう大気たいき主要しゅよう成分せいぶん[31]
成分せいぶん 化学かがくしき 体積たいせき(%)
窒素ちっそ N2 78.084
酸素さんそ O2 20.9476
アルゴン Ar 00.934
二酸化炭素にさんかたんそ CO2 00.032

大気たいきモデル[編集へんしゅう]

大気たいき鉛直えんちょく方向ほうこう温度おんど組成そせい分布ぶんぷは、緯度いどによってことなり、またぶし測定そくていごとことなる。しかし、科学かがくでは実験じっけん大気たいきについてろんじるとき、また産業さんぎょうめんでは工業こうぎょう航空こうくう大気たいき物性ぶっせい必要ひつようがあるときに、基準きじゅんとなるものが必要ひつようである。そのため、近代きんだいよりさまざまな標準ひょうじゅん大気たいきモデルがつくられている。

現在げんざい工業こうぎょう分野ぶんやでは、国際こくさい標準ひょうじゅん機構きこう (ISO) 標準ひょうじゅんであるISO 2533:1975の「国際こくさい標準ひょうじゅん大気たいき」を世界せかい標準ひょうじゅんとして、各国かっこく国内こくない基準きじゅんつくられている。また米国べいこく標準ひょうじゅん大気たいき(1976)(英語えいご)のほか、航空こうくうではICAO Doc 7488-CDのICAO標準ひょうじゅん大気たいき標準ひょうじゅんとしてもちいられている。宇宙うちゅう工学こうがくではNRLMSISE-00(英語えいご)もちいられる。

地球ちきゅう大気たいきの「進化しんか[編集へんしゅう]

過去かこ10おくねん大気たいきちゅう酸素さんそ濃度のうど変化へんか

地球ちきゅう大気たいき歴史れきしについては、確証かくしょうられていないが、以下いかのようなことがかんがえられている。

ほしあいだちゅうちりやガスから誕生たんじょうした46おくねんまえ地球ちきゅうでは、内部ないぶからの噴火ふんかによるだつガスにより揮発きはつ成分せいぶん大量たいりょう放出ほうしゅつされて(げんしたいき、えい: primordial atmosphere[32])を形成けいせいした。ほしあいだガスは、水素すいそヘリウム圧倒的あっとうてきおおく、いでCO一酸化いっさんか炭素たんそ)、H2Oみず)、NH3アンモニア)、HCHOホルムアルデヒド)、HCNシアン化水素しあんかすいそ)のじゅんおお[33]原始げんし大気たいきもこれにじゅんじた成分せいぶんで、高温こうおんだかあつだった。これは現在げんざい太陽たいよう大気たいき成分せいぶんである。水蒸気すいじょうきによる温室おんしつ効果こうか原始げんし地球ちきゅう高温こうおんだかあつたもっていたというせつもある。水素すいそおおいため、大気たいき還元かんげんてきだったとかんがえられる[34]。このうち水素すいそ、ヘリウムなどかる成分せいぶんは、原始げんし太陽たいよう強力きょうりょく太陽たいようふうによってすうせんまんねんのうちにほとんどが宇宙うちゅう空間くうかんばされてしまったとかんがえられている。

水素すいそうしなった大気たいきでは、一酸化いっさんか炭素たんそみずから酸素さんそうばって二酸化炭素にさんかたんそになり(太陽たいようちか地球ちきゅうではメタン大気たいき主成分しゅせいぶんにはならなかった)、高温こうおんによりアンモニアから窒素ちっそ分子ぶんし水素すいそ分子ぶんし生成せいせいされた[ちゅう 3]。こうしてあらたにしょうじた水素すいそ散逸さんいつし、原始げんし大気たいき主成分しゅせいぶん二酸化炭素にさんかたんそ水蒸気すいじょうき窒素ちっそとなった。やがて太陽たいようふう太陽たいよう成長せいちょうとともに次第しだいよわくなってくる[よう出典しゅってん]原始げんし大気たいきは100気圧きあつ程度ていどもあり、こう濃度のうど二酸化炭素にさんかたんそ温室おんしつ効果こうかにより地球ちきゅうえるのをふせいでいた。現在げんざい金星きんぼし大気たいきちかいものであったとかんがえられている。このころ大気たいき酸素さんそはほとんどふくまれない。太陽たいようからの紫外線しがいせんにより水蒸気すいじょうきひかり解離かいりして酸素さんそ形成けいせいした過程かていはあるものの、地殻ちかく構成こうせいするてつなどの金属きんぞくのほとんどは還元かんげん状態じょうたいにあり、酸素さんそ酸化さんか使つかわれすぐに消費しょうひされて大気たいきちゅうにはほとんどのこらなかったためである。

ふる変成岩へんせいがんふくまれる堆積岩たいせきがん痕跡こんせきなどから、43 - 40おくねんまえごろ海洋かいよう誕生たんじょうしたとみられる。この海洋かいようは、原始げんし大気たいきふくまれていた水蒸気すいじょうきが、火山かざんからの過剰かじょう噴出ふんしゅつ温度おんど低下ていかによって凝結ぎょうけつし、あめとしてそそいで形成けいせいされたものであった。初期しょき海洋かいようは、原始げんし大気たいきふくまれていた亜硫酸ありゅうさん塩酸えんさんかしこんでいたためつよ酸性さんせいとなった。強酸きょうさんせい原始げんし海水かいすい地殻ちかくふくまれるカルシウムマグネシウムてつなどの金属きんぞくイオン反応はんのうし、中和ちゅうわものしょうじて沈殿ちんでん海洋かいよう酸性さんせいげたとかんがえられている。酸性さんせいがった海洋かいよう二酸化炭素にさんかたんそ溶解ようかいできるようになり、これも金属きんぞくイオンと反応はんのうして方解石ほうかいせきはいがんひし鉄鉱てっこうなどをしょうじて沈殿ちんでんし、やがて海水かいすいにはナトリウム、カリウム、塩素えんそなどの水溶すいようせいのいわゆる「食塩しょくえん」の成分せいぶん相対そうたいてきおおのこることになった。こうして原始げんし大気たいき半分はんぶんとも推定すいていされる大量たいりょう二酸化炭素にさんかたんそ吸収きゅうしゅうして大気たいきあつ急降下きゅうこうかし、温室おんしつ効果こうかがって気温きおん低下ていかした。

やがて生命せいめい誕生たんじょうし、二酸化炭素にさんかたんそもちいて光合成こうごうせいおこな生物せいぶつ誕生たんじょうすると、それらはみず分解ぶんかいして酸素さんそ発生はっせいするようになる。さらに、二酸化炭素にさんかたんそ生物せいぶつ体内たいない炭素たんそとして蓄積ちくせきされるようになり(炭素たんそ固定こてい)、なが時間じかんをかけて過剰かじょう炭素たんそ化石かせき燃料ねんりょう生物せいぶつからからできる石灰岩せっかいがんなどの堆積岩たいせきがんといったかたち固定こていされる。植物しょくぶつあらわれて以降いこう酸素さんそいちじるしくえ、二酸化炭素にさんかたんそおおきく減少げんしょうする。大気たいきちゅう酸素さんそは、初期しょき生物せいぶつ大量たいりょう絶滅ぜつめつとさらなる進化しんかみちびいた。

また、酸素さんそ紫外線しがいせん反応はんのうしオゾンをつくった。酸素さんそ濃度のうどひくかったころは地表ちひょうにまでおよんでいたオゾンそうは、濃度のうど上昇じょうしょうとともに高度こうどたかくなり、現在げんざいおな成層圏せいそうけんまで移動いどうした。これにより地表ちひょうでは紫外線しがいせん減少げんしょうし、生物せいぶつ陸上りくじょうにあがる環境かんきょうととのえられた。

最初さいしょのうちは酸素さんそ濃度のうど上昇じょうしょうつづけたが、2おく8500まんねんまえのペルム後期こうきさかい酸素さんそ濃度のうど徐々じょじょ減少げんしょうはじめる。このころ酸素さんそ消費しょうひするさまざまなこう気性きしょう細菌さいきん誕生たんじょうし、木材もくざい腐朽ふきゅうきんなども発生はっせいして、のち石炭せきたんとなるかたちでそれまで地下ちかふうめられてきた植物しょくぶつしんまで分解ぶんかいするなどして徐々じょじょ炭素たんそ循環じゅんかんサイクルがわっていった。そして2おく6100まんねんまえだい大陸たいりくパンゲア出現しゅつげんし、すべての陸地りくちひとつの大陸たいりくとしてあつまっていたころ、プレートテクトニクスによる火山かざん活動かつどう活発かっぱつし、それにともないメタンや硫黄いおう化合かごうぶつなどがまきらされ、それらと化学かがく反応はんのうこして突然とつぜん酸素さんそ濃度のうど急降下きゅうこうかした影響えいきょう海洋かいよう酸素さんそ事変じへんが2000まんねんつづき、ペルムまつ大量たいりょう絶滅ぜつめつまね原因げんいんとなった。また、火山かざんガスが放出ほうしゅつされたことで水蒸気すいじょうき二酸化炭素にさんかたんそ、メタン、硫黄いおう化合かごうぶつなどといった温室おんしつ効果こうかガス大量たいりょうらされた。これによりメタンハイドレートが気化きか水蒸気すいじょうきとメタンがあいだらされるなどしてさらなる気温きおん上昇じょうしょうしょうじるというスパイラルが発生はっせい低温ていおんこう酸素さんそ環境かんきょうれた原生代げんせいだい生態せいたいけい致命ちめいてき影響えいきょうあたえた。

人類じんるい大気たいきなか酸素さんそ濃度のうどが18%を下回したまわると酸素さんそ欠乏症けつぼうしょうおちいるため[36]酸素さんそ濃度のうどが18%よりひくやく3.5おくねんよりまえ地球ちきゅう人類じんるいきられない環境かんきょうであったとかんがえられる[独自どくじ研究けんきゅう?]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ atmosphere」はギリシャ蒸気じょうき気体きたい意味いみする「ατομς」と、球体きゅうたいけん意味いみする「σφαιρα」に由来ゆらいする。
  2. ^ 気象庁きしょうちょうのページ二酸化炭素にさんかたんそ分布ぶんぷ情報じょうほうひとし参照さんしょう
  3. ^ 太陽系たいようけい大気たいきちゅう窒素ちっそ大量たいりょう存在そんざいするのは地球ちきゅう土星どせい衛星えいせいタイタンだけであり、窒素ちっそガスの形成けいせい同様どうよう過程かていかんがえられている。タイタンの場合ばあい高温こうおんとなった原因げんいん巨大きょだい隕石いんせきとの衝突しょうとつがあったとするせつ提唱ていしょうされている[35]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 文部省もんぶしょう日本にっぽん物理ぶつり学会がっかいへん学術がくじゅつ用語ようごしゅう 物理ぶつりがくへん培風館ばいふうかん、1990ねんISBN 4-563-02195-4 
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  6. ^ a b ちょう高層こうそう大気たいき 理科りか年表ねんぴょうオフィシャルサイト
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  8. ^ 英語えいご: tropopause
  9. ^ 英語えいご: stratosphere
  10. ^ 英語えいご: stratopause
  11. ^ 英語えいご: mesosphere
  12. ^ 英語えいご: mesopause
  13. ^ 英語えいご: thermosphere
  14. ^ 英語えいご: thermopause
  15. ^ 英語えいご: exobase
  16. ^ 英語えいご: middle atmosphere
  17. ^ 英語えいご: exosphere
  18. ^ 英語えいご: ionosphere
  19. ^ 英語えいご: ozonosphere
  20. ^ 英語えいご: Magnetosphere
  21. ^ 英語えいご: Van Allen radiation belts
  22. ^ 英語えいご: plasmasphere
  23. ^ 英語えいご: homosphere
  24. ^ 英語えいご: heterosphere
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  27. ^ 英語えいご: Diffusosphere
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  29. ^ 気象庁きしょうちょうWMO温室おんしつ効果こうかガス年報ねんぽう 気象庁きしょうちょうやく (PDF) 」2012ねん11月
  30. ^ 環境省かんきょうしょう 大気たいき汚染おせん物質ぶっしつ広域こういき監視かんしシステム(そらまめくん)「大気たいき汚染おせん物質ぶっしつ常時じょうじ監視かんし測定そくてい項目こうもく)について
  31. ^ kikakurui.com 「JIS W 0201:1990 標準ひょうじゅん大気たいき
  32. ^ 文部省もんぶしょう へん学術がくじゅつ用語ようごしゅう 地学ちがくへん日本にっぽん学術がくじゅつ振興しんこう、1984ねん、27ぺーじISBN 4-8181-8401-2 
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  35. ^ つめたいだい2の地球ちきゅう土星どせい衛星えいせいタイタンの窒素ちっそ大気たいき起源きげん解明かいめい”. 東京大学とうきょうだいがく大学院だいがくいんしん領域りょういき創成そうせい科学かがく研究けんきゅう. 2018ねん11月22にち閲覧えつらん
  36. ^ 酸素さんそ欠乏症けつぼうしょうとは”. Lab BRAINS. 2021ねん12月25にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]