金星きんぼし大気たいき

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金星かなぼし
金星きんぼし大気たいき
アルベド 0.65
表面ひょうめん温度おんど
最低さいてい*平均へいきん最大さいだい
228 K737 K773 K
(*最低さいてい温度おんどくも上層じょうそうのみで観測かんそくされる)
大気たいきあつ 9321.9 kPa
二酸化炭素にさんかたんそ ~96.5%
窒素ちっそ ~3.5%
二酸化にさんか硫黄いおう0.015%
水蒸気すいじょうき0.002%
一酸化いっさんか炭素たんそ0.0017%
アルゴン0.007%
ヘリウム0.0012%
ネオン.0007%
硫化りゅうかカルボニル

塩化えんか水素すいそ

フッ水素すいそ
わずか

本稿ほんこうでは金星かなぼし大気たいき(きんせいのたいき)についてべる。

太陽系たいようけい太陽たいように2番目ばんめちか惑星わくせいである金星きんぼし大気たいきは、地球ちきゅう大気たいきおおきくことなっている。地球ちきゅう大気たいきくらべて金星きんぼし大気たいき密度みつど温度おんどたかく、よりたか高度こうどまでつづいている。その大気たいきかぶくもアルベド反射はんしゃのう)がたかく、レーダー手段しゅだん利用りようしないかぎ地表ちひょうることができない。そのため、1978ねんげられた探査たんさパイオニア・ヴィーナス1ごう到着とうちゃくしてレーダー探査たんさ実施じっしするまでは、金星きんぼし地表ちひょう調しらべられなかった。

概要がいよう[編集へんしゅう]

金星きんぼし大気たいきはほとんどが二酸化炭素にさんかたんそからっている。また、金星きんぼし地表ちひょう付近ふきん気圧きあつはとてもたかいため、温度おんど平均へいきん500℃にもたっする。このため、金星きんぼしおくられた探査たんさはほとんどが地表ちひょう到達とうたつするまえつぶされたり、地表ちひょう到達とうたつしてもわずか1あいだほどしか地球ちきゅう通信つうしんすることができなかった。しかし、高度こうどやく50kmから65kmでは気圧きあつ温度おんど地球ちきゅうとほとんどおなじであり、金星きんぼし大気たいきのこのそうは、太陽系たいようけいなかではもっと地球ちきゅうている環境かんきょうともえる。しかも、ひと呼吸こきゅうもちいている空気くうき窒素ちっそ78%、酸素さんそ21%)は地球ちきゅうじょうでのヘリウムのように金星きんぼしでは自然しぜん上昇じょうしょうするガスなので、これを利用りようして金星きんぼし大気たいきのこのそう植民しょくみんおこなおうというこえもある[1]金星きんぼし植民しょくみん)。

2006ねん4がつ金星きんぼし到着とうちゃくした欧州おうしゅう宇宙うちゅう機関きかん探査たんさビーナス・エクスプレスは、金星きんぼしひるである地域ちいきでは密度みつどたかくも高度こうど20kmにあり、より一般いっぱんてきくもは65kmまでつづくが、よるである地域ちいきではくも高度こうど95kmまでつづくという事実じじつ発見はっけんした[2]金星きんぼし公転こうてん周期しゅうきは 224.701 にち自転じてん周期しゅうきは 243.0187 にち逆行ぎゃっこう)、太陽たいようたいする自転じてん周期しゅうきは 116.7506 にちおそく、金星きんぼしよるやく58にちつづく。くも影響えいきょう温度おんどひるよるもほとんどおなじであるが、太陽たいよう影響えいきょうすくないよる地域ちいきでは、くもがよりたかくまでつづいているようである。

マゼラン地球ちきゅうおくった情報じょうほうによると、金星かなぼし高度こうど50km以上いじょうからは気圧きあつ気温きおん地球ちきゅうてくる。高度こうど52.5kmと54kmのあいだでの気温きおんは37と20で、高度こうど49.5kmでは気圧きあつ地球ちきゅう海抜かいばつ0mとおなじである[3]地球ちきゅうでも海抜かいばつによって気圧きあつわる。たとえば、ボリビア首都しゅとであるラパス気圧きあつ海抜かいばつ0mとくらべ61%しかない。さら世界せかいトップクラスの標高ひょうこうたかまちであるペルーラ・リンコナダウェンジャンというチベットにあるまちは、いずれも海抜かいばつ5100mになるにもかかわらずひとんでいる。そのくらいの気圧きあつとなる金星きんぼしのこの高度こうどでは、気圧きあつめんではひとむのに問題もんだいはないといえる。金星きんぼし重力じゅうりょく地球ちきゅうの90%で、ほとんどおなじという長所ちょうしょもある。

ふう[編集へんしゅう]

高度こうど
(km)
気温きおん
(°C)
気圧きあつ (地球ちきゅう=1)
0 462 92.10
5 424 66.65
10 385 47.39
15 348 33.04
20 306 22.52
25 264 14.93
30 222 9.851
35 180 5.917
40 143 3.501
45 110 1.979
50 75 1.066
55 27 0.5314
60 -10 0.2357
65 -30 0.09765
70 -43 0.03690
80 -76 0.004760
90 -104 0.0003736
100 -112 0.00002660

金星きんぼしふう速度そくどは、高度こうどによっておおきくことなる。地表ちひょうでは大気たいき密度みつどたかいためにふうおそく、平均へいきん秒速びょうそく0.3mから1.0mにしかならない[4]。しかし、たかくもでは風速ふうそく秒速びょうそく100mにもなる。これは金星きんぼし自転じてん速度そくどをはるかに上回うわまわり、自転じてん(ローテーション)よりはやふうという意味いみで「スーパーローテーション英語えいごばん」(ちょう回転かいてん)とばれる。また、この風速ふうそくでは4にち金星きんぼし一周いっしゅうする計算けいさんになるため、「四日よっか循環じゅんかん」という別名べつめいもある[5]

金星きんぼしのスーパーローテーションが発見はっけんされるまでは惑星わくせい大気たいき自転じてん速度そくどおおきく上回うわまわ速度そくど循環じゅんかんしょうじることはないとかんがえられており、2020ねんまでスーパーローテーションを完全かんぜん説明せつめいできる仮説かせつ存在そんざいしなかったが、日本にっぽん金星きんぼし探査たんさあかつき」の観測かんそくデータの分析ぶんせきにより、この加速かそく機構きこうになうのが「ねつ潮汐ちょうせき」であることがあきらかになった[6]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  1. ^ Colonization of Venus (pdf), Geoffrey A. Landis, Conference on Human Space Exploration, Space Technology & Applications International Forum,Albuquerque NM, Feb. 2-6 2003.
  2. ^ Flying over the cloudy world – science updates from Venus Express, Venus Today, Wednesday, July 12, 2006.
  3. ^ Venus Atmosphere Temperature and Pressure Profiles - Shade Tree Physics
  4. ^ Venus, atmosphere - The Encyclopedia of Astrobiology, Astronomy and Spaceflight
  5. ^ 宮本みやもと 英昭ひであき平田ひらた しげる杉田すぎた きよしたちばな 省吾しょうご惑星わくせい地質ちしつがく東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱんかい、2008ねん、78~88ページぺーじ 
  6. ^ Horinouchi, Takeshi; Hayashi, Yoshi-Yuki; Watanabe, Shigeto; Yamada, Manabu; Yamazaki, Atsushi; Kouyama, Toru; Taguchi, Makoto; Fukuhara, Tetsuya et al. (2020-04-24). “How waves and turbulence maintain the super-rotation of Venus’ atmosphere” (英語えいご). Science 368 (6489): 405–409. doi:10.1126/science.aaz4439. ISSN 0036-8075. PMID 32327594. https://science.sciencemag.org/content/368/6489/405. 
2004ねん6がつ8にちこった金星きんぼし太陽たいようめん通過つうか太陽たいようめん通過つうか利用りよう地球ちきゅうからも金星きんぼし大気たいき調しらべることができる。次回じかい(2013ねん以降いこう)の太陽たいようめん通過つうかは2117ねん