(Translated by https://www.hiragana.jp/)
中和 (化学) - Wikipedia コンテンツにスキップ

中和ちゅうわ (化学かがく)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
水酸化すいさんかナトリウムと塩酸えんさん中和ちゅうわ反応はんのう指示しじやくブロモチモールブルーである。

中和ちゅうわ反応はんのう(ちゅうわはんのう、英語えいご: neutralization reaction)は、さん塩基えんき(アルカリ)がしおみずなりする化学かがく反応はんのうである。ほとんどの場合ばあい同時どうじみず生成せいせいする。アレニウスさん塩基えんき中和ちゅうわは、かならみず金属きんぞくしお生成せいせいする。

おおくの場合ばあい中和ちゅうわ反応はんのう発熱はつねつ反応はんのうである。たとえば、水酸化すいさんかナトリウム塩酸えんさん反応はんのうである。しかし、炭酸たんさん水素すいそナトリウム酢酸さくさん中和ちゅうわのように吸熱反応はんのうとなる中和ちゅうわ反応はんのう存在そんざいする。

中和ちゅうわ反応はんのうは、その結果けっかかならpHが7になるというものではない[1]最終さいしゅうてきなpHは反応はんのうぶつさん塩基えんきつよさによってわる。

アレニウスのさん塩基えんき[編集へんしゅう]

定義ていぎ[編集へんしゅう]

アレニウスのさん水溶液すいようえきなか水素すいそイオン生成せいせいするものと定義ていぎされる。塩酸えんさん硫酸りゅうさんはアレニウスのさんれいとしてよくもちいられる。それは、それらのさんみず溶液ようえきなかつぎのように電離でんりする。

アレニウスの塩基えんき水溶液すいようえきちゅう水酸化物すいさんかぶつイオンを生成せいせいするものと定義ていぎされる。この定義ていぎてはまる塩基えんきは、化学かがくしきなかにOHをふくんでいなければならないためおおきく限定げんていされる。水酸化すいさんかナトリウム水酸化すいさんかカリウム水酸化すいさんかセシウムなどはそのような塩基えんき代表だいひょうれいである。塩基えんき水溶液すいようえきちゅう以下いかのように電離でんりする。

イオンの反応はんのう[編集へんしゅう]

さん等価とうか塩基えんき反応はんのうすると、中和ちゅうわ反応はんのうこる。H+OH混合こんごうするとたがいの性質せいしつしあい、pHが7にちかづく。アレニウスのさん塩基えんき中和ちゅうわでは、つねみず生成せいせいする。一般いっぱんてき反応はんのうしきしたのようになる。

YとXは、それぞれいちイオンかげイオンである。XYは生成せいせいしたしおである。このかたち反応はんのうれいは、水酸化すいさんかナトリウムと塩酸えんさんはんおうである。このときは、ナトリウムがY、塩素えんそがXとなり、

みず食塩しょくえん形成けいせいされる。

この反応はんのうは、イオン反応はんのうしきかんがえることもできる。

しかし、中和ちゅうわ反応はんのうにおいて、水溶液すいようえきちゅう実際じっさい水素すいそイオン(H+)がしょうじることはないため、この表現ひょうげん正確せいかくではない。そのわり実際じっさいは、下記かき反応はんのうヒドロニウムイオン()がしょうじる。

ヒドロニウムイオンをかんがえると、実際じっさいイオン反応はんのうしきつぎのようになる。

一般いっぱんてき中和ちゅうわ反応はんのう[編集へんしゅう]

中和ちゅうわ反応はんのうふく分解ぶんかい一種いっしゅである。中和ちゅうわ反応はんのうこると、みずほかしお生成せいせいする。その反応はんのうしき以下いかのようにあらわされる。

さん + 塩基えんきしお + みず

この反応はんのうちゅうカチオンアニオンわり、しおつくられる。

れいとして塩酸えんさん水酸化すいさんかナトリウムの中和ちゅうわ反応はんのうしきげるとつぎのようになる。

塩化えんかナトリウム一般いっぱんてきには食塩しょくえん)が生成せいせいしている。

にはつぎ反応はんのうげられる。

さんとアルカリ[編集へんしゅう]

さん-アルカリ反応はんのうは、さん-塩基えんき反応はんのう特別とくべつ場合ばあいかんがえられる中和ちゅうわ反応はんのうである。ここで、もちいられた塩基えんきアルカリ塩基えんきなかでもとくみずやすいものをアルカリとぶ)でもある。さんがアルカリと反応はんのうすると、金属きんぞくしおみず生成せいせいする。

一般いっぱんてきに、さん-アルカリ反応はんのうは、反応はんのう関与かんよしないイオンを省略しょうりゃくしてつぎのように単純たんじゅんされる。

さんは、一般いっぱんてき水素すいそイオン (H+) をふくむか、溶液ようえきちゅうしょうじる物質ぶっしつである。塩酸えんさん (HCl) や硫酸りゅうさん (H2SO4) とうがよくられている。水中すいちゅうでは、これらはつぎのようにイオン解離かいりする。

アルカリは、周期しゅうきひょうの1ぞくか2ぞく金属きんぞくアルカリ金属きんぞくアルカリるい金属きんぞく)をふく塩基えんきである。アルカリは、「水溶すいようせい塩基えんき」として定義ていぎされる。一般いっぱんてきに、塩基えんきは、水酸化物すいさんかぶつイオン (OH-) をふくむか、溶液ようえきちゅうしょうじる物質ぶっしつである。水酸化すいさんかナトリウム (NaOH) や水酸化すいさんかカリウム (KOH)、水酸化すいさんかマグネシウム (Mg(OH)2)、水酸化すいさんかカルシウム (Ca(OH)2) とうがよくられている。1ぞく金属きんぞくふくむアルカリは非常ひじょうみずけやすいが、2ぞく金属きんぞくふくむアルカリはあまりけない。アルカリるい金属きんぞく水酸化物すいさんかぶつ不溶性ふようせいであるとする文献ぶんけんもあるほどである[2]

水中すいちゅう水酸化物すいさんかぶつイオンを生成せいせいするために、アルカリはつぎのようにイオンに解離かいりする。

しかし、アルカリは、アルカリ金属きんぞくアンモニウムイオン アミン(NHxラジカル)とうイオンに炭酸たんさんしお 結合けつごうした物質ぶっしつふくむよりひろ定義ていぎもちいられることもある。このような定義ていぎ場合ばあいひとしもアルカリである。

非水ひすい反応はんのう[編集へんしゅう]

非水ひすい反応はんのうではみず生成せいせいしないが、プロトンのドナーはかなら存在そんざいする(ブレンステッド-ローリーのさん塩基えんき理論りろん参照さんしょう)。さん塩基えんき定義ていぎには様々さまざま種類しゅるいがあるため、様々さまざま反応はんのう中和ちゅうわ反応はんのうなすことができる。以下いか反応はんのうすべて、ことなった定義ていぎした中和ちゅうわ反応はんのうなせる。

生成せいせいぶつのpH[編集へんしゅう]

中和ちゅうわ反応はんのうでは、生成せいせいぶつのpHがかならず7になるとはかぎらない。強酸きょうさんつよし塩基えんき中和ちゅうわ反応はんのう場合ばあい生成せいせいぶつのpHは7になる。たとえば、強酸きょうさんHClとつよし塩基えんきNaOHは、反応はんのうしてしょく塩水えんすいしょうじる。

H3O+またはOH-濃度のうど正味しょうみ変化へんかがないので、最終さいしゅうてきなpHは7となる。

弱酸じゃくさんつよし塩基えんき中和ちゅうわ場合ばあい生成せいせいぶつのpHは7よりもおおきくなる。たとえば、弱酸じゃくさんつよ塩基えんきNaOHは、反応はんのうしてみずしょうじる。

Na+反応はんのう関与かんよしないイオンである。しかし、酢酸さくさんイオンはじゃく塩基えんきであり、みずからプロトンをうばってOH-イオンを生成せいせいする。

したがって、生成せいせいぶつ溶液ようえき塩基えんきせいとなる。

じゃく塩基えんき強酸きょうさん中和ちゅうわ場合ばあい生成せいせいぶつのpHは7よりもちいさくなる。たとえば、じゃく塩基えんきCN-強酸きょうさんHClは、反応はんのうしてCl-シアン化水素しあんかすいそさんHCNをしょうじる。

Cl-反応はんのう関与かんよしないイオンである。しかし、シアン化水素しあんかすいそさん弱酸じゃくさんであり、みずをプロトンしてH3O+イオンを生成せいせいする。

したがって、生成せいせいぶつ溶液ようえき酸性さんせいとなる。

弱酸じゃくさんじゃく塩基えんき中和ちゅうわ場合ばあい生成せいせいぶつのpHは、反応はんのうぶつさん塩基えんき相対そうたいつよさに依存いぞんする。たとえば、じゃく塩基えんき弱酸じゃくさんは、反応はんのうしてしょうじる。 (pKa=4.75) は、 (pKa=9.2) よりもつよさんであるため、平衡へいこうみぎにずれ、とうモルの弱酸じゃくさんじゃく塩基えんきしょうじる。

酢酸さくさんイオンはさらにみず反応はんのうし、酢酸さくさんとOH-イオンを生成せいせいする。

このれい場合ばあい生成せいせいした溶液ようえき塩基えんきせいである。しかし、これは、弱酸じゃくさんじゃく塩基えんき中和ちゅうわ反応はんのう一般いっぱんてき法則ほうそくではない。

計算けいさん[編集へんしゅう]

中和ちゅうわには、とうモルのさん塩基えんき必要ひつようである。すなわち、つぎ公式こうしきつ。

ここで、aは酸性さんせい水素すいそかず、bは塩基えんきれられるH3O+イオンのかずしめ定数ていすうである。[A]はさん濃度のうど、[B]は塩基えんき濃度のうどあらわす。Vaさん体積たいせき、Vb塩基えんき体積たいせきである。

応用おうよう[編集へんしゅう]

さん塩基えんき未知みち濃度のうど決定けっていするためには、しずくじょうおこなわれる。pHメーターpH指示しじやくは、いろ変化へんかによって中和ちゅうわてんしめす。モル濃度のうどおよ体積たいせき既知きち試薬しやくくわえて濃度のうど未知みち物質ぶっしつのモル濃度のうど計算けいさんするためには、化学かがくりょうろんもちいられる。

みず処理しょりでは、排水はいすい放出ほうしゅつされたさい環境かんきょうへの影響えいきょうおさえるため、しばしば中和ちゅうわおこなわれる。pHの調整ちょうせいには、炭酸たんさんカルシウム酸化さんかカルシウム水酸化すいさんかマグネシウム炭酸たんさん水素すいそナトリウムひとし物質ぶっしつもちいられる。

さんとアルカリの反応はんのうによる中和ちゅうわ反応はんのうは、非常ひじょうおおくの場面ばめんもちいられる。一般いっぱんてきなのは、せいさんやく錠剤じょうざいである。このくすりは、における胃酸いさん (HCl) の過剰かじょう分泌ぶんぴつ中和ちゅうわするためのものである。炭酸たんさん水素すいそナトリウム (NaHCO3)服用ふくようする場合ばあいもある。

消化しょうかかんにおいては、食物しょくもつからちょう移動いどうしたときにも中和ちゅうわ反応はんのうこる。栄養素えいようそちょうかべ吸収きゅうしゅうされるためには、アルカリ環境かんきょう必要ひつようであり、そのため膵臓すいぞう炭酸たんさん水素すいそしお分泌ぶんぴつして中和ちゅうわ反応はんのうしょうじさせる。

その利用りようとしては、肥料ひりょうによる土壌どじょうpH制御せいぎょがある。植物しょくぶつ生育せいいくてきさない酸性さんせい土壌どじょうには、消石灰しょうせっかい水酸化すいさんかカルシウム)や石灰岩せっかいがん炭酸たんさんカルシウム)がもちいられる[3]植物しょくぶつ生育せいいく促進そくしんする肥料ひりょうは、硫酸りゅうさん (H2SO4) または硝酸しょうさん (HNO3) をアンモニア(NH3) で、硫酸りゅうさんアンモニウム硝酸しょうさんアンモニウム中和ちゅうわして製造せいぞうする[4]

工業こうぎょうでは、石炭せきたん燃焼ねんしょうふく生成せいせいぶつである二酸化にさんか硫黄いおう大気たいきちゅう水蒸気すいじょうき結合けつごうして、酸性さんせいとしてる。二酸化にさんか硫黄いおう放出ほうしゅつ抑制よくせいするために、スクラバーという装置そうち煙突えんとつからるガスを収集しゅうしゅうする。この装置そうちは、最初さいしょ炭酸たんさんカルシウム燃焼ねんしょうしつおくり、ここで炭酸たんさんカルシウムは分解ぶんかいされ、酸化さんかカルシウム(石灰せっかい)と二酸化炭素にさんかたんそになる。生成せいせいした石灰せっかいは、その酸化さんか硫黄いおう反応はんのうし、亜硫酸ありゅうさんカルシウム生成せいせいする。石灰せっかいかかにごえきは、混合こんごうぶつまれてスラリーとなり、亜硫酸ありゅうさんカルシウムおよ反応はんのう二酸化にさんか硫黄いおう除去じょきょする[5]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ Lemke, T. L. (2003). Review of Organic Functional Groups: Introduction to Medicinal Organic Chemistry (4th ed.). Lippincott Williams & Wilkins. ISBN 0-7817-4381-8 
  2. ^ See for example: Group 2: Alkaline Earth Metals, scienceaid.co.uk
  3. ^ Neutralisation ? ‘curing acidity’ ? Acids, alkalis and salts ? Intermediate ? Experiments. Practical Chemistry. Retrieved on 2010-12-10.
  4. ^ Reversible Reactions, Chemical Equilibrium, Ammonia & Nitric acid, their Manufacture and Uses e.g. in Artificial Fertilisers
  5. ^ Zumdahl, 2000, pp. 226, 228[よう文献ぶんけん特定とくてい詳細しょうさい情報じょうほう]

関連かんれん文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Metcalf & Eddy. Wastewater Engineering, Treatment and Reuse. 4th ed. New York: McGraw-Hill, 2003. 526-532.

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]