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液体えきたい水素すいそ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
液体えきたい水素すいそようタンク

液体えきたい水素すいそ(えきたいすいそ)とは、液化えきかした水素すいそのこと。沸点ふってんは-252.6℃で融点ゆうてんは-259.2℃である(重水素じゅうすいそでは、沸点ふってん-249.4℃)。水素すいそ液化えきかは、1896ねんイギリスジェイムズ・デュワーはじめて成功せいこうした。

液体えきたい水素すいそ用途ようと

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ロケット燃料ねんりょう

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ロケットエンジンの推進すいしんざいとして利用りようされ、LH2(Liquid H2)と略称りゃくしょうされる。液体えきたい水素すいそ燃料ねんりょう液体えきたい酸素さんそ酸化さんかざいとしたロケットエンジン実用じつようされた化学かがく推進すいしんロケットとしてはもっとたか推力すいりょくほこる。液体えきたい水素すいそ非常ひじょうかる液体えきたいで、その密度みつどは70.8 キログラム/立方りっぽうメートル(20Kとき)と重量じゅうりょうエネルギー密度みつどもっとおおきい。したがってロケット燃料ねんりょうとしてはもっと効率こうりつてきである。

代替だいたいエネルギーとしての水素すいそ燃料ねんりょう

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現在げんざい水素すいそは、天然てんねんガスや石油せきゆ原料げんりょう安価あんか大量たいりょう生産せいさんされている。水素すいそ化石かせき燃料ねんりょうから生産せいさんされている以上いじょう、その水素すいそ使つか燃料ねんりょう電池でんちは、代替だいたいエネルギーではあっても再生さいせい可能かのうエネルギーではない。みず電気でんき分解ぶんかいして方法ほうほうもあるが、その電気でんきだい部分ぶぶん火力かりょく発電はつでん原子力げんしりょく発電はつでんまかなわれている。(なお、電気でんき分解ぶんかいによる大量たいりょう生産せいさん価格かかくめん問題もんだいおおきく実現じつげんしていない。)液体えきたい水素すいそ代替だいたいエネルギー水素すいそ燃料ねんりょうとして以下いか用途ようとでの使用しよう期待きたいされる。

燃料ねんりょう電池でんち

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水素すいそ酸素さんそむすびつくことでエネルギーとみずまれる。みず電気でんき分解ぶんかいぎゃく反応はんのうである。燃料ねんりょう電池でんちは、この反応はんのう利用りようして電気でんき装置そうちである。非常ひじょう高価こうかであり部品ぶひん消耗しょうもうひんおおい。なお、反応はんのう温度おんどが100℃をえるため、みずは、水蒸気すいじょうきとして排出はいしゅつされる。
現在げんざい家庭かていようとう燃料ねんりょう電池でんち天然てんねんガスから水蒸気すいじょうきあらためしつにより水素すいそし、それを利用りようする。
一方いっぽうで、自動車じどうしゃとうではガスボンベとうめた水素すいそ直接ちょくせつ利用りようする燃料ねんりょう電池でんち実用じつようされている。
炭化たんか水素すいそから直接ちょくせつ水素すいそすタイプの燃料ねんりょう電池でんち携帯けいたいがた電子でんし機器きき電源でんげんとしても期待きたいされているが実用じつよういたっていない。

内燃ないねん機関きかん燃料ねんりょう

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化石かせき燃料ねんりょう原料げんりょうにしてつくった水素すいそ燃料ねんりょうとしてガソリンエンジン同様どうようピストンシリンダーうち酸素さんそ反応はんのうさせて動力どうりょく水素すいそ燃料ねんりょうエンジン構想こうそうがあり、水素すいそ自動車じどうしゃ実用じつようされている。内燃ないねん機関きかんでは排気はいきちゅう窒素ちっそ酸化さんかぶつ過酸化水素かさんかすいそ有害ゆうがい物質ぶっしつまれるので、これらを除去じょきょしなければならない。また、ガソリンエンジンにくらべると出力しゅつりょくひく問題もんだいがある。

航空こうくう燃料ねんりょう

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近年きんねんではJAXAきゅうソ連それん諸国しょこく航空こうくう宇宙うちゅう企業きぎょう中心ちゅうしんとして、石油せきゆ代替だいたいとして液体えきたい水素すいそ燃料ねんりょうとする旅客機りょかくき研究けんきゅうすすめられている。液体えきたい水素すいそ燃料ねんりょうもちいた旅客機りょかくきは(液体えきたい水素すいそ製造せいぞう過程かていはともかく)旅客機りょかくき飛行ひこうちゅうには二酸化炭素にさんかたんそ排出はいしゅつせず環境かんきょう負荷ふかひくいとされている。

JAXAなどが研究けんきゅうすすめるマッハ5クラスのちょう音速おんそく輸送ゆそう搭載とうさいするためのエンジンとして、液体えきたい水素すいそ燃料ねんりょうとするターボジェットエンジン高温こうおんとなった空気くうき燃料ねんりょう液体えきたい水素すいそ冷却れいきゃくする機構きこう追加ついかしたひやターボジェットエンジン (Precooled jet engine) の研究けんきゅうおこなわれている[1][2]

前述ぜんじゅつのとおりきわめておおきな燃料ねんりょうタンクが必要ひつようとなるほか、飛行ひこうちゅう蒸発じょうはつごく低温ていおん燃料ねんりょうあつかい、燃料ねんりょう供給きょうきゅう体制たいせい構築こうちくなど解決かいけつすべき課題かだいおおい。

水素すいそ燃料ねんりょう課題かだい

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原料げんりょう
現在げんざい大量たいりょう生産せいさんされる水素すいそ原料げんりょう天然てんねんガスおよ石油せきゆである。現状げんじょうでは水素すいそ化石かせき燃料ねんりょうかたちえたものである。みずからの製造せいぞうにはアルミニウム同様どうよう安価あんか大量たいりょう電力でんりょく必要ひつようである。
製造せいぞう
水素すいそはもっともかる元素げんそであり、地上ちじょうにおいて水素すいそ単体たんたいかたちではほとんど存在そんざいしていない。このため、エネルギー資源しげんとして水素すいそ直接ちょくせつ採取さいしゅ利用りようすることはできず、必要ひつようりょうはすべて水素すいそ化合かごうぶつからエネルギーを使つかってさなければならない。もっと身近みぢか水素すいそ化合かごうぶつみずである。みず電気でんき分解ぶんかいすることで技術ぎじゅつてきには容易ようい水素すいそられるが、電気でんき分解ぶんかい消費しょうひされる電気でんきエネルギーはられた水素すいそ反応はんのうさせてふたたられる電気でんきエネルギーよりおおきいためにきではそんとなる。エタノール石油せきゆ精製せいせいひんから水素すいそ方法ほうほうもあるが、その手間てまとコストをかんがえれば、そのままエタノールや石油せきゆ精製せいせいひん燃料ねんりょうとして使用しようするほうが経済けいざいてきである。いまのところ水素すいそ天然てんねんガスみずより触媒しょくばいかいする水蒸気すいじょうきあらためしつつくされている。
保管ほかん
水素すいそ原子げんし水素すいそ分子ぶんし非常ひじょうちいさいことから、金属きんぞく内部ないぶ浸透しんとうして劣化れっかさせる水素すいそもろこす。そのためステンレスなどの一般いっぱんてき金属きんぞく容器ようきでは長期ちょうき保管ほかん困難こんなんである。そこで、水素すいそもろきない材料ざいりょう水素すいそを吸蔵する水素すいそ吸蔵合金ごうきんこうあつ水素すいそようCFRPボンベ、冷却れいきゃくして液化えきか水素すいそとして運搬うんぱん保管ほかんする方法ほうほうなどにかんする研究けんきゅう開発かいはつすすんでいる。
可燃かねんせい
水素すいそそのものは酸素さんそがなければ燃焼ねんしょうしないため、純度じゅんどたか単体たんたい状態じょうたいでは発火はっかしにくいが、酸素さんそとの混合こんごう気体きたいでは容易ようい発火はっかする。そのため、可燃かねんせいという観点かんてんではガソリン同様どうよう危険きけんである。燃料ねんりょうあらためただして生成せいせいした水素すいそ利用りようする場合ばあい、その燃料ねんりょうかんしても十分じゅうぶん安全あんぜん対策たいさく必要ひつようとされる。
流通りゅうつう
製造せいぞう流通りゅうつう消費しょうひかくステージでまったくあらたな設備せつび必要ひつようとされる。水素すいそ燃料ねんりょう対応たいおう自動車じどうしゃへの燃料ねんりょう供給きょうきゅうのため、2023ねん6がつ時点じてんでは、日本にっぽん全国ぜんこくで170箇所かしょ水素すいそステーションが運用うんようされている[3]。これらの水素すいそステーションには、ガス燃料ねんりょうから水素すいそステーションない水素すいそ製造せいぞうする方式ほうしきと、製油せいゆしょ化学かがく工場こうじょうとう製造せいぞうされた水素すいそ輸送ゆそうして水素すいそステーションで供給きょうきゅうする方式ほうしきの2種類しゅるいがある[4]

オルト水素すいそとパラ水素すいそ

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水素すいそ分子ぶんしは、それぞれの原子核げんしかくプロトン)のかくスピン配向はいこうにより、オルト(ortho)とパラ(para)の2種類しゅるい異性いせいたい存在そんざいする[5]

常温じょうおん以上いじょうでは、オルト水素すいそとパラ水素すいそ存在そんざいはおよそ3:1であるが、低温ていおんになるほどパラ水素すいそ存在そんざいし、絶対ぜったいれい付近ふきんではほぼ100パーセントパラ水素すいそとなる[5][6]。オルト水素すいそからパラ水素すいそへの変化へんかは523kJ/kgの発熱はつねつ反応はんのうであり、蒸発じょうはつ潜熱せんねつ446kJ/kgよりおおい。[7]またはんおうには数日すうじつかかるため、数日すうじつ保管ほかんしておくと反応はんのうねつ液化えきか水素すいそ気化きかしてしまう。これを水素すいそのボイル・オフ問題もんだいという。[8]これを防止ぼうしするには触媒しょくばいもちいて発熱はつねつ反応はんのうませておくとい。オルト‐パラ変換へんかんこす触媒しょくばいは、活性炭かっせいたんてつなどの金属きんぞく一部いちぶつね磁性じせい物質ぶっしつまたはイオンなどがある[5]

パラ水素すいそをオルト水素すいそもどすには、1週間しゅうかんちか常温じょうおん放置ほうちするか、触媒しょくばいもちいるか、800℃ ちかくに加熱かねつするとよい。[9]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 津江つえ中谷なかたに研究けんきゅうしつ研究けんきゅう紹介しょうかいひやターボジェットエンジン”. 2017ねん12月6にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2017ねん12月6にち閲覧えつらん
  2. ^ ごくちょう音速おんそく旅客機りょかくき技術ぎじゅつ | 航空こうくう新分野しんぶんや創造そうぞうプログラム(Sky Frontier) | JAXA航空こうくう技術ぎじゅつ部門ぶもん”. 2017ねん10がつ27にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2017ねん12月6にち閲覧えつらん
  3. ^ 水素すいそステーション一覧いちらんトヨタ自動車とよたじどうしゃWEBサイト
  4. ^ 次世代じせだい自動車じどうしゃ振興しんこうセンター 水素すいそステーション整備せいびじょうきょう
  5. ^ a b c Lee 1982, pp. 119–123, 3. 元素げんそ一般いっぱんてき性質せいしつ: 水素すいそ.
  6. ^ オルト水素すいそ、パラ水素すいそとは?液化えきか水素すいそプラントの設計せっけいっておくべき物性ぶっせいについて”. yuruyuru-plantengineer.com. 2023ねん2がつ28にち閲覧えつらん
  7. ^ 用語ようご解説かいせつ パラ水素すいそとオルソ水素すいそ”. rdreview.jaea.go.jp. 2023ねん2がつ28にち閲覧えつらん
  8. ^ 研究けんきゅうれい紹介しょうかい液化えきか水素すいそよう水素すいそ分子ぶんしかくスピン転換てんかん触媒しょくばい開発かいはつ”. 北海道大学ほっかいどうだいがく大学院だいがくいん工学こうがく研究けんきゅういん附属ふぞくエネルギーマテリアル融合ゆうごう領域りょういき研究けんきゅうセンター マルチスケール機能きのう集積しゅうせき研究けんきゅうしつ. 2020ねん6がつ10日とおか時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2020ねん6がつ10日とおか閲覧えつらん
  9. ^ オルソ水素すいそとパラ水素すいそ”. 川口かわぐち液化えきかケミカル株式会社かぶしきがいしゃ. 2023ねん2がつ28にち閲覧えつらん

出典しゅってん

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関連かんれん項目こうもく

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