地震じしん前駆ぜんく現象げんしょう

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地震じしん前駆ぜんく現象げんしょう(じしんぜんくげんしょう)とは、だい規模きぼ地震じしんまえ発生はっせいする、地震じしん前触まえぶれとかんがえられる特徴とくちょうてき現象げんしょう総称そうしょうである。前駆ぜんく現象げんしょう地震じしん前駆ぜんく活動かつどう前駆ぜんく活動かつどうなどともばれ、名称めいしょうさだまっていない。

地震じしんまえこるとされるしょ現象げんしょう全体ぜんたいす。また、このうちおも地象ちしょう地面じめん現象げんしょう地質ちしつてき現象げんしょう)のみをしたり、民俗みんぞく民間みんかん地震じしん前触まえぶれとされるもの(ひろしかん異常いじょう現象げんしょう以外いがいしたりすることもある。

概要がいよう[編集へんしゅう]

地球ちきゅう表面ひょうめん構成こうせいする地殻ちかくには、プレート移動いどう断層だんそう運動うんどうなどによる圧力あつりょく応力おうりょく)がかかっているとかんがえられている。だい規模きぼ地震じしんこる直前ちょくぜん段階だんかい最大さいだい地震じしんすうじゅうねんまえ)では、次第しだいにその圧力あつりょく蓄積ちくせきされ、最終さいしゅうてきには限界げんかいたっするほどのおおきなものになっているとかんがえられている。

この圧力あつりょく蓄積ちくせきされる過程かていでは、ちからねつなどのエネルギー均質きんしつ(まばらでかたよりのある状態じょうたい)になってしまう。これが根本こんぽんてき要因よういんとなって、なんらかの力学りきがくてき電磁気でんじきてき物理ぶつりてき化学かがくてき現象げんしょう発生はっせいする。これが地震じしん前駆ぜんく現象げんしょうである。

さまざまな地震じしん前駆ぜんく現象げんしょうがあるが、そのすべてがだい地震じしん関係かんけいしているわけではない。しかし、にすることができるかかにかかわらず、どんな微細びさい現象げんしょうでもだい地震じしん発生はっせいがかりとなる可能かのうせいがあることから、地震じしん予知よち観点かんてんから注目ちゅうもくされている。

地震じしん前駆ぜんく現象げんしょうには、さまざまなものがある。地割じわれや岩石がんせき変形へんけいしょう地震じしん地震じしんくもといった典型てんけいてきなものもあれば、変位へんいけいなどの計器けいきもちいて解析かいせきおこなわなければからないようなものもある。

地質ちしつがくてき現象げんしょう[編集へんしゅう]

前駆ぜんくてき地震じしん活動かつどう[編集へんしゅう]

前駆ぜんくてき地震じしん活動かつどう(ぜんくてきじしんかつどう)とは、前駆ぜんくてき活動かつどう前駆ぜんく活動かつどう前駆ぜんく地震じしんともばれる、だい規模きぼ地震じしんまえ発生はっせいする特徴とくちょうてき地震じしんのことである。前震ぜんしんとはことなる。

厳密げんみつえば、地盤じばん応力おうりょく変化へんかたんなる地面じめん移動いどうなど、地震じしんともなわない活動かつどうは、前駆ぜんくてき地震じしん活動かつどうにはふくめない。

さまざまな周期しゅうき周期しゅうきてき活動かつどうしているかつ断層だんそう活動かつどうには、余震よしん活動かつどう静穏せいおん前駆ぜんくてき活動かつどうという3つの活動かつどうがあるとかんがえられている。そのなかで、前駆ぜんくてき活動かつどうこる地震じしん前駆ぜんくてき地震じしん活動かつどうである。この地震じしんは、蓄積ちくせきされていく断層だんそう周辺しゅうへんゆがみがだい地震じしんけて開放かいほうされはじめている、あるいは一定いっていのレベルをえてゆがみがえるかたちあらわはじめているために、発生はっせいする。

海溝かいこうがた地震じしん発生はっせいするような地震じしん活動かつどう地域ちいき場合ばあい、2つのプレート境界きょうかい部分ぶぶんには、プレートが密着みっちゃくしてつよ圧力あつりょくがかかっている固着こちゃくいき比較的ひかくてきスムーズにすべっている安定あんていすべりいき、その中間ちゅうかんたる遷移せんい領域りょういきの3種類しゅるいがあり(名称めいしょうには防災ぼうさい科学かがく技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ使用しようしている用語ようご使用しよう)、遷移せんい領域りょういき前駆ぜんくてき地震じしん活動かつどうこる。

なお、火山かざんにおいては、噴火ふんか火山かざん活動かつどう前触まえぶれとして特徴とくちょうてき火山かざんせい地震じしん発生はっせいすることがあり、これも前駆ぜんくてき地震じしん活動かつどうあるいは前駆ぜんく地震じしんばれる。噴火ふんか予知よち重要じゅうよう情報じょうほうげんの1つである。

前駆ぜんくてき地震じしん活動かつどう種類しゅるい

あらわれる前駆ぜんくてき地震じしんのタイプにはさまざまなものがある。しょう地震じしん急増きゅうぞうするもの、普段ふだんこっていた地震じしん急減きゅうげんするもの、突発とっぱつてき中規模ちゅうきぼ地震じしんなどがあるが、その種類しゅるい断層だんそうのタイプや地震じしん発生はっせいがたなどとの明確めいかく関連かんれんせい見出みいだされていない。

また、とく命名めいめいされている現象げんしょうには以下いかのものがある。

  • スロースリップ - おも遷移せんい領域りょういき発生はっせいする、低速ていそくすべり。との2種類しゅるいがある。
    • 「サイレント地震じしん地震じしんせいいスロースリップ。
      • 短期たんきてきスロースリップ - すう日間にちかんかけて発生はっせいするスロースリップ。
      • 長期ちょうきてきスロースリップ - 数ヶ月すうかげつすうねんかけて発生はっせいするスロースリップ。
    • 「スロー地震じしん地震じしんせいのあるスロースリップ。
    • アフタースリップ - 固着こちゃくいき遷移せんい領域りょういき発生はっせいするすべり。こうすべり、こう変動へんどうぶ。地震じしんせいるものといものの両方りょうほうがある。
  • プレスリップ - 固着こちゃくいき発生はっせいする、地震じしんまたはすべり。前駆ぜんくすべり、まえきざすべりともぶ。気象庁きしょうちょうなどが発表はっぴょうする「東海とうかい地震じしん関連かんれんする情報じょうほう」の重要じゅうよう基準きじゅんとなる要素ようそ

このほかに、前駆ぜんく破壊はかい前駆ぜんく微動びどうなどとばれる現象げんしょうがある。

地面じめん変化へんか[編集へんしゅう]

地割じわ段差だんさといった、地表ちひょうあらわれる発見はっけんしやすい現象げんしょうもあるが、ゆっくりとした隆起りゅうき沈降ちんこう水平すいへい移動いどうなどは体感たいかん発見はっけんすることはむずかしく、精密せいみつ機械きかいによる観測かんそく必要ひつようとなる。

プレートの境界きょうかいとく海溝かいこうでは、だい地震じしんからつぎだい地震じしんへとつづなが期間きかんおなじような地殻ちかく変位へんいられることが実測じっそくやシミュレーションからわかっている。東海とうかい地方ちほう四国しこく地方ちほうなどでは、地上ちじょう海底かいてい[よう出典しゅってん]設置せっちしたGPS変位へんいけいによって変位へんい観測かんそくしている。

岩石がんせき変性へんせい変成へんせい[編集へんしゅう]

地震じしん直前ちょくぜんにかかるたかあつりょくによって、地中ちちゅう岩石がんせき変形へんけいしたり変性へんせいしたりすることがあるとかんがえられている。

その地質ちしつがくてき現象げんしょう[編集へんしゅう]

ミクロスケールでの地殻ちかく破壊はかい変形へんけい地下水ちかすい水位すいい変化へんかなども発生はっせいし、学術がくじゅつてきには、地震じしんとのある程度ていど関連かんれんせいみとめられている。

地震じしんこす直前ちょくぜん断層だんそう周辺しゅうへんでは、長期間ちょうきかんにわたる破壊はかいかく震源しんげんかく形成けいせいのち、ゆっくりと前駆ぜんくてきすべりが進行しんこうし、だい地震じしん発生はっせいいたるというかんがえもある[1]が、破壊はかいかく震源しんげんかく形成けいせい地震じしん前駆ぜんく現象げんしょうふくめられる。

地質ちしつがくてき以外いがい現象げんしょう[編集へんしゅう]

地中ちちゅう大気たいきちゅう水中すいちゅうなどで、元素げんそイオン含有がんゆう割合わりあい同位どういたい変化へんかすることがある。また、おなじく地中ちちゅう大気たいきちゅう水中すいちゅうなどで、放電ほうでん帯電たいでん電気でんき伝導でんどうしるべでんりつ)の変化へんかなどがこることがある。学術がくじゅつてきに、地震じしんとの相関そうかんみとめられているものもあるものの、具体ぐたいてきにどのような因果いんがによるのかが解明かいめいできているものはすくない。

これらのうちの電磁でんじてき現象げんしょうが、いくつか報告ほうこくのある電離層でんりそう電波でんぱ伝播でんぱ異常いじょうや、生物せいぶつ異常いじょう地震じしんくもなどひろしかん異常いじょう現象げんしょう原因げんいんではないかとされることもあるが、同様どうよう解明かいめいされていない。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

ウェブ[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 防災ぼうさい科学かがく技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ だか感度かんど地震じしん観測かんそくもう 地震じしん基礎きそ知識ちしき 11.6 各種かくしゅ基礎きそ研究けんきゅう

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]