オガ炭ずみ

オガ炭ずみ（オガたん, 大鋸おが炭ずみ）とは、製材せいざい時じに発生はっせいする大鋸屑おがくず（オガクズ）を圧縮あっしゅく加熱かねつ成形せいけいして製造せいぞうするオガライト（成形せいけい薪たきぎ）を主おもな原料げんりょうとした木炭もくたんである。製法せいほうや炭すみとしての性質せいしつは白炭しろずみに似にている。中国ちゅうごく語ごではオガ炭ずみを含ふくめた成形せいけい木炭もくたん類るいは一律いちりつに「原子げんし炭ずみ」または「機き製せい炭すみ」（机つくえ制せい炭すみ）と呼よんでいる。炭火すみび焼しょうの飲食いんしょく店てんで多用たようされているものの、一般いっぱんへの知名度ちめいどが低ひくく、形状けいじょうの印象いんしょうから石炭せきたん製せいの練炭れんたんと誤解ごかいされている場合ばあいもある。

概要がいよう[編集へんしゅう]

材木ざいもくの製材せいざい時じ、その工程こうていにより材木ざいもくの7％がオガクズとなるため、これを扱あつかい易やすい燃料ねんりょうとして再さい活用かつようする為ために「オガライト」の原型げんけいが1925年ねんに研究けんきゅう開発かいはつされた。その後ご1950年代ねんだいの高度こうど成長せいちょう期きに伴ともなって建築けんちく製材せいざいで大量たいりょうに発生はっせいしたオガクズを利用りようしてオガライトの大だい規模きぼな大量たいりょう生産せいさんが開始かいしされた。そのオガライトを原料げんりょうとして製造せいぞうされた燃料ねんりょうが「オガ炭ずみ」である。

現在げんざい流通りゅうつうしているオガ炭ずみの多おおくは中国ちゅうごくや東南とうなんアジア諸国しょこくなどのオガクズを原料げんりょうとし、製材せいざいの副産物ふくさんぶつとして現地げんちで産廃さんぱいとして廃棄はいきされていた大量たいりょうのオガクズを、日本にっぽん企業きぎょうの現地げんち法人ほうじんや合弁ごうべん企業きぎょう、日本にっぽんの技術ぎじゅつ指導しどうを受うけた現地げんち企業きぎょうがオガ炭ずみに加工かこう、生産せいさんしていたが、インドネシア産さんのオガ炭ずみは現在げんざい、森林しんりん保護ほごの為ため、密集みっしゅう化かする立木たちきを間引まびく過程かていで発生はっせいする天然てんねんの木材もくざい、間伐かんばつ材ざいを使用しようしている。ひとつの工場こうじょうで月間げっかん1000トンを超こえるオガ炭ずみ製造せいぞうを行おこなっている場合ばあいもある。

一般いっぱん的てきには、熱処理ねつしょり成型せいけいした木質もくしつのオガライトから製造せいぞうされた木炭もくたんが「オガ炭ずみ」と呼よばれている。タイやベトナムなどの東南とうなんアジアでは現地げんちで豊富ほうふにあるパームヤシ殻からを炭焼すみやきにし、これを破砕はさい機きで粉末ふんまつにしたうえでタピオカ澱粉でんぷんなどでオガ炭すみ状じょうに固かためて成型せいけいし、乾燥かんそう炉ろと天てん日干ひぼしを経へて加工かこうされた成形せいけい木炭もくたん（ヤシガラ炭ずみ）が「オガ炭ずみ」という名称めいしょうで日本にっぽん向むけに出荷しゅっかされているが、こちらはオガクズを固かためた原料げんりょうを炭焼すみやきしたものでは無ないため、オガ炭ずみとは全まったく異ことなる性質せいしつであるので注意ちゅういが必要ひつようである。（これらの多おおくは英えい: Briquette charcoalとしてオーストラリアや韓国かんこくへも輸出ゆしゅつされている）。

オガ炭ずみの性質せいしつ[編集へんしゅう]

オガ炭ずみは構造こうぞう上じょう、爆ばく跳とべがほとんど起おきない

オガ炭ずみはオガクズを圧縮あっしゅく加熱かねつ成形せいけいして作つくられた「オガライト」を原料げんりょうとして炭化たんかさせた物ものであるため、形状けいじょうは均一きんいつである。また、オガライトの製法せいほう上じょう、内部ないぶがちくわのように中空なかぞらとなっている。

オガライトの構造こうぞう上じょう、炭すみ内ないに密閉みっぺいした部分ぶぶんが少すくなく、爆ばく跳とべ（炭すみがはぜること）がほとんどない。燃もえた後のちの灰はいは一般いっぱん的てきに少すくないと言いわれているが、原料げんりょうとなる木材もくざいと使用しようされている木きの部位ぶいによっては灰はいが多おおい場合ばあいもある（灰はいの量りょうは原料げんりょう材ざいに含ふくまれるシリカ分ぶんの量りょうに拠よる。木質もくしつペレットと同様どうよう、原料げんりょう部位ぶいが外縁がいえんであるほど灰はいが多おおい）。オガライトの原料げんりょうとして近年きんねんの日本にっぽん国内産こくないさんではカシワなど木炭もくたんに向むく木材もくざい原料げんりょうに絞しぼって製造せいぞうしている傾向けいこうがある。中国ちゅうごく産さんの安価あんかなものではスギやマツを原料げんりょうとしたものがあり、火付ひつけしやすく火力かりょくは強つよいが燃焼ねんしょう継続けいぞく時間じかんは短みじかい。その他たの東南とうなんアジア産さんのものはマングローブや、南洋なんよう材ざいの原料げんりょうが多おおい。

オガ炭ずみは密閉みっぺいした炭窯すみがまを1200℃近ちかくまで上あげ熟成じゅくせいさせたあと、仕上しあげの最後さいごに、一気いっきに空気くうきを入いれて（または炉ろ外がいに出だして）未み炭化たんか成分せいぶんを焼やき飛とばし、急冷きゅうれいさせ焼やき締しめる（この精錬せいれん工程こうていを「ネラす」と表現ひょうげんする）。この製法せいほうは白炭しろずみに近ちかく、性質せいしつも白炭しろずみに似にる。大だい規模きぼ生産せいさん工場こうじょうでは、この一連いちれんの作業さぎょうをオートメーション化かしている場合ばあいも多おおい。備長炭ずみに似にた性質せいしつでもある為ため、商品しょうひん名称めいしょうに「オガ備長炭ずみ」「備長炭ずみ（オガ炭ずみ）」といった感かんじで併記へいきしている場合ばあいも多おおい。

着火ちゃっかに関かんしても白炭しろずみに似にて、黒炭こくたんなどより手間てまを要ようし、非常ひじょうに火ひ熾おこししにくい性質せいしつのため、着火ちゃっか加工かこうされたヤシガラ炭ずみや、既すでに熾おこっている木炭もくたんを種たね火ひとしてオガ炭ずみに着火ちゃっかさせる方法ほうほうが確実かくじつである。→「火ひ熾おこし（火ひおこし）方法ほうほう」を参照さんしょう しかしその反面はんめんオガ炭ずみは火持ひもちは良よく、上質じょうしつな製品せいひんでは1000℃前後ぜんこうという高たかい燃焼ねんしょう温度おんどが長時間ちょうじかん得えられ、たとえばバーベキューパーティーが4〜5時じ間あいだほどに及およぶ場合ばあいは、炭すみの継つぎ足たしも必要ひつようなく好都合こうつごうである。また、灰はいに埋うめた場合ばあいは12時間じかん以上いじょうも燃焼ねんしょうが継続けいぞくする。

オガ炭ずみはグレードごとの形状けいじょうと品質ひんしつが均一きんいつで、品質ひんしつの割わりに比較的ひかくてき安価あんかであり、長時間ちょうじかんの高温こうおん燃焼ねんしょうが持続じぞくし、燃焼ねんしょう臭しゅうや煙けむりも目立めだたず、構造こうぞう上じょう爆ばく跳とべの危険きけん性せいがほとんど無ないので飲食いんしょく店てんなどでの利用りようが多おおい。

オガ炭ずみの用途ようと[編集へんしゅう]

オガ炭ずみは、上述じょうじゅつのように安価あんかで長時間ちょうじかん（3〜5時じ間あいだ）安定あんていした無臭むしゅうの高こう火力かりょくが得えられることから、焼やき鳥とり・焼やき肉にくなど炭焼すみやき料理りょうりが中心ちゅうしんの飲食いんしょく店てんで調理ちょうり用ようの燃料ねんりょうとして多用たようされている。業務ぎょうむ用途ようとでの需要じゅようが多おおいことから10kg単位たんいで販売はんばいする業者ぎょうしゃが多おおく、30kg以上いじょうから注文ちゅうもんを受うけ付つける販売はんばい店てんも多おおい。オガ炭ずみの値段ねだんは様々さまざまであるが、全般ぜんぱん的てきに品質ひんしつと価格かかくは比例ひれいしていると見みてよい。

オガ炭ずみの形状けいじょう[編集へんしゅう]

円筒えんとう形がた、六角形ろっかっけい、四角形しかっけいなどがある。インドネシア産さんで六角形ろっかっけいのもの、中国ちゅうごく産さんで四角形しかっけいのものが流通りゅうつうしている。備長炭ずみに近ちかく非常ひじょうに硬質こうしつな品質ひんしつ、形状けいじょうが揃そろっていることから、箱はこに隙間すきま無なく並なべて詰つめてコンパクトに梱包こんぽう・保管ほかんすることが出来でき、運送うんそう保管ほかん時じのスペースと、欠かけや崩くずれが、少すくないというメリットもある。また製造せいぞう時じ、窯かまの中心ちゅうしんで焼やかれた金属きんぞく音おんに近ちかい音おとのする高こう品質ひんしつの部分ぶぶんのみを検品けんぴんしたものが流通りゅうつうしている。

最近さいきんは見みばえをより木炭もくたんに近ちかづけるためと、安定あんていした長時間ちょうじかんの燃焼ねんしょう効果こうかを得えるため中心ちゅうしんが中空ちゅうくうでない円筒えんとう形がた（穴あななし）『文化ぶんか炭ずみ』『平成へいせい炭すみ』というものもある。成型せいけい時じにガス抜ぬきとなる中空なかぞら部分ぶぶんが無ない形状けいじょうは、製造せいぞうが難むずかしい。

注意ちゅうい点てん[編集へんしゅう]

オガ炭ずみは性質せいしつ的てきには白炭しろずみに近ちかいことから黒炭こくたんより燃焼ねんしょう継続けいぞく時間じかんが長ながく、バーベキューに利用りようした場合ばあい、3〜4時じ間あいだは高温こうおんで燃もえ続つづけている場合ばあいもあるので、短時間たんじかんのバーベキューの場合ばあいは火消ひけし処理しょり等とうで注意ちゅういが必要ひつようである。

燃焼ねんしょうガス[編集へんしゅう]

木炭もくたん・オガ炭ずみは練炭れんたんや豆炭まめたんとは異ことなり硫黄いおうや鉱物こうぶつ臭しゅうはしないものの、同様どうように一酸化いっさんか炭素たんそなど有害ゆうがいな燃焼ねんしょうガスを多量たりょうに発生はっせいするので、室内しつないでの七なな輪りんや囲炉裏いろりなど、換気かんきが十分じゅうぶんでない屋内おくないでの使用しようには注意ちゅういを払はらう必要ひつようがある^[1]^[2]。

業界ぎょうかい団体だんたい[編集へんしゅう]

生産せいさん者しゃ団体だんたいの全国ぜんこくオガライト協同きょうどう組合くみあい（後のちに日本にっぽん木質もくしつ成形せいけい燃料ねんりょう協同きょうどう組合くみあいに改編かいへん）は、最盛さいせい期きの昭和しょうわ40年代ねんだいから50年代ねんだいにかけては正規せいき加盟かめい業者ぎょうしゃが900社しゃに迫せまるほどであったが、石油せきゆやガスに燃料ねんりょう需要じゅようが推移すいいしたため解散かいさんした。しかし2003年ねん（平成へいせい15年ねん）以降いこうに始はじまった中国ちゅうごく産さん炭すみの輸出ゆしゅつ規制きせいや、近年きんねんの焼やき肉にくチェーン店てんでの旺盛おうせいなオガ炭ずみ需要じゅようを受うけ、日本にっぽんオガ炭ずみ生産せいさん者しゃ協議きょうぎ会かい（現在げんざい加盟かめい社しゃは13社しゃほど）として、その後ご再さい結成けっせいされている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

[1] 「いろり座ざ卓たく使用しよう時じの一酸化いっさんか炭素たんそ中毒ちゅうどくに注意ちゅうい！」国民こくみん生活せいかつセンター

[2] 東京とうきょう都と飲食いんしょく業ぎょう生活せいかつ衛生えいせい同業どうぎょう組合くみあい「炭火すみび焼しょう飲食いんしょく店てんにおける一酸化いっさんか炭素たんそ中毒ちゅうどく事故じこの防止ぼうしについて」

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