バックミンスターフラーレン

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バックミンスターフラーレン
識別しきべつ情報じょうほう
CAS登録とうろく番号ばんごう 99685-96-8 チェック
PubChem 123591
ChemSpider 110185 チェック
にち番号ばんごう J338.730E
特性とくせい
化学かがくしき C60
モル質量しつりょう 720.64 g mol−1
密度みつど 1.729 g/cm3(5 K、 理論りろん[1]
融点ゆうてん

1180 °C[1]

みずへの溶解ようかい 不溶ふよう
構造こうぞう
結晶けっしょう構造こうぞう めんこころ立方りっぽう格子こうし室温しつおん[2]
単純たんじゅん立方りっぽう格子こうし(< 249 K)[3]
空間くうかんぐん Pa3(T6
h
)
格子こうし定数ていすう (a, b, c) a = 14.041 Å,b = 14.041 Å,c = 14.041 Å
格子こうし定数ていすう (αあるふぁ, βべーた, γがんま) αあるふぁ = 90.00°, βべーた = 90.00°, γがんま = 90.00°
出典しゅってん
結晶けっしょう構造こうぞう[3]
特記とっきなき場合ばあい、データは常温じょうおん (25 °C)・つねあつ (100 kPa) におけるものである。

バックミンスターフラーレン(Buckminsterfullerene)は、分子ぶんししきC60球状きゅうじょう分子ぶんしである。1985ねん9月4にちに、ライス大学だいがくハロルド・クロトー、ジェームズ・ヒース (en)、ショーン・オブライエン、ロバート・カールリチャード・スモーリーによってはじめて調製ちょうせいされた[4]。クロトー、カール、スモーリーは、バックミンスターフラーレンおよび関連かんれん分子ぶんしフラーレンるい)の発見はっけん業績ぎょうせきにより1996ねんノーベル化学かがくしょう受賞じゅしょうした。この分子ぶんし名称めいしょうは、分子ぶんし構造こうぞう類似るいじしているジオデシック・ドーム考案こうあんしたリチャード・バックミンスター・フラー敬意けいいあらわしたものである。バックミンスターフラーレンは最初さいしょ発見はっけんされたフラーレン分子ぶんしであり、また天然てんねんにおいてもっと一般いっぱんてきなフラーレン分子ぶんしである(すすなか少量しょうりょういだされる)[5][6][7]。C60フラーレン、バッキーボール (Buckyball) ともばれる。

バックミンスターフラーレン分子ぶんしは、粒子りゅうし波動はどうじゅうせい実験じっけんてき観測かんそくされた最大さいだい粒子りゅうしである[8]

構造こうぞう[編集へんしゅう]

バックミンスターフラーレンの構造こうぞうは、20の六角形ろっかっけいと12の五角形ごかっけいからなるきりいただきじゅう面体めんていであり、それぞれの多角たかくがた頂点ちょうてん炭素たんそ原子げんし多角たかくがたあたり炭素たんそ-炭素たんそ結合けつごうである。C60分子ぶんしファンデルワールス直径ちょっけいやく1.01 nmである。C60分子ぶんしかくあいだ距離きょり炭素たんそ骨格こっかく直径ちょっけい)はやく0.71 nmである。C60分子ぶんしには2種類しゅるい結合けつごう距離きょりがある。6:6たまき結合けつごう(2つの六角形ろっかっけいあいだ)はじゅう結合けつごうかんがえることができ、6:5結合けつごう六角形ろっかっけい五角形ごかっけいあいだ)よりもみじかい。平均へいきん結合けつごう距離きょり1.2 Åである。C60構造こうぞうちゅう炭素たんそ原子げんしは、それぞれ3つの炭素たんそ原子げんし共有きょうゆう結合けつごうしている。炭素たんそ原子げんしは6電子でんしゆうしていることから、電子でんし構造こうぞうはu2,4である。安定あんていするためには、炭素たんそ原子げんしさいそとからに8電子でんし必要ひつようであり、3つの炭素たんそ原子げんしとの共有きょうゆう結合けつごうでは、さいそとから電子でんしは7にしかならない。このことは、ぜん炭素たんそ原子げんしじょう結合けつごう関与かんよしていない電子でんしが、分子ぶんし全体ぜんたいにわたって局在きょくざいしていることを意味いみしている。電子でんし電荷でんかっているため、この自由じゆう電子でんし運動うんどうはバックミンスターフラーレンが非常ひじょうによいしるべでんからだとなることを意味いみしている。このことにより、バックミンスターフラーレンは、そのおおきさのため、ナノテクノロジーにおいて非常ひじょう有用ゆうようとなっている。

バックミンスターフラーレンのベンゼン溶液ようえき
バックミンスターフラーレンの基底きてい状態じょうたい電子でんし密度みつどとう密度みつどめん密度みつどひろし関数かんすうほうによる計算けいさん

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b 村山むらやま英樹ひでき (Jan. 2003). “フラーレン量産りょうさん技術ぎじゅつ. 電子でんし材料ざいりょう: 34-37. http://www.plastics-net.com/topics/fcarbon/fullerenes.pdf?count=topics010. 
  2. ^ Fischer JE, Heiney PA, McGhie AR, Romanow WJ, Denenstein AM, McCauley JP Jr, Smith AB 3rd (1991). “Compressibility of solid C60”. Science 252 (5010): 1288-1290. doi:10.1126/science.252.5010.1288. PMID 17842953. 
  3. ^ a b William I. F. David, Richard M. Ibberson, Judy C. Matthewman, Kosmas Prassides, T. John S. Dennis, Jonathan P. Hare, Harold W. Kroto, Roger Taylor & David R. M. Walton (1991). “Crystal structure and bonding of ordered C60”. Nature 353: 147-149. doi:10.1038/353147a0. 
  4. ^ Kroto, H. W.; Heath, J. R.; O'Brien, S. C.; Curl, R. F.; Smalley, R. E. (1985). “C60: Buckminsterfullerene”. Nature 318: 162–163. doi:10.1038/318162a0. 
  5. ^ Howard JB, McKinnon JT, Makarovsky Y, Lafleur AL, Johnson ME (1991). “Fullerenes C60 and C70 in flames”. Nature 352 (6331): 139-141. doi:10.1038/352139a0. PMID 2067575. 
  6. ^ Howard JB, Lafleur AL, Makarovsky Y, Mitra S, Pope CJ, Yadav TK (1992). Carbon 30 (8): 1183-1201. doi:10.1016/0008-6223(92)90061-Z. 
  7. ^ Grieco WJ, Lafleur AL, Swallow KC, Richter H, Taghizadeh K, Howard JB (1998). Proc. Combust. Inst. 27: 1669. 
  8. ^ Arndt M, Nairz O, Vos-Andreae J, Keller C, van der Zouw G, Zeilinger A (1999). “Wave-particle duality of C60 molecules”. Nature 401 (6754): 680-682. doi:10.1038/44348. PMID 18494170. 

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]