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化学かがくしき

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
分子ぶんししきから転送てんそう
硫酸りゅうさんアルミニウム化学かがくしき
ブタン構造こうぞうしき

化学かがくにおいて、化学かがくしき(かがくしき、chemical formula)は、特定とくてい化合かごうぶつ分子ぶんし構成こうせいする原子げんし化学かがくてき比率ひりつかんする情報じょうほうあらわ方法ほうほうで、化学かがく元素げんそ記号きごう数字すうじくわえ、まる括弧かっこ、ダッシュ、かく括弧かっこ、コンマ、プラス (+) やマイナス (−) 記号きごうなどのほか記号きごう併用へいようされる。これらは、印刷いんさつじょうの1ぎょうおさまるよう制限せいげんされているが、した文字もじうえ文字もじ英語えいごばんふくむこともできる。ただし化学かがくしきは、単語たんごふくまないため、化学かがくめい英語えいごばんではない。また、化学かがくしき単純たんじゅん化学かがく構造こうぞう示唆しさすることもあるが、完全かんぜん化学かがく構造こうぞうしきとはことなる。化学かがくしきは、もっと単純たんじゅん分子ぶんし化学かがく物質ぶっしつ構造こうぞうのみを完全かんぜん特定とくていできるが、一般いっぱんてき化学かがくめい構造こうぞうしきよりも表現ひょうげんりょく制限せいげんされている。

もっと単純たんじゅん化学かがくしき実験じっけんしき(empirical formulae)とばれるもので、文字もじ数字すうじ使用しようして、原子げんし種類しゅるいごとの数値すうち比率ひりつあらわす。分子ぶんししき(molecular formulae)は、分子ぶんし構成こうせいする原子げんし種類しゅるいごとの単純たんじゅんかずしめすもので、構造こうぞうかんする情報じょうほうはない。たとえば、グルコース実験じっけんしきは CH
2
O (水素すいそ原子げんし炭素たんそ酸素さんその2ばい)だが、分子ぶんししきは C
6
H
12
O
6
水素すいそ原子げんし12炭素たんそ酸素さんそ原子げんし6)である。

化学かがくしきしめせせいしき(condensed formula)[注釈ちゅうしゃく 1]として記述きじゅつされる場合ばあい原子げんし化学かがくてき結合けつごうする固有こゆう方法ほうほう共有きょうゆう結合けつごうイオン結合けつごう、またはそのわせ)にかんする情報じょうほう追加ついかによって複雑ふくざつになることがある。これは、関連かんれんする結合けつごういち次元じげん簡単かんたん表現ひょうげんできるものであれば選択せんたく可能かのうである。たとえば、エタノールしめせせいしきは、CH
3
–CH
2
–OH、または CH
3
CH
2
OH である。しかしせいしきでも、原子げんしあいだ複雑ふくざつ結合けつごう関係かんけいとくに4つ以上いじょうことなる置換ちかんもととの結合けつごう原子げんし表現ひょうげんするにはどうしても限界げんかいがある。

化学かがくしき元素げんそ記号きごういちぎょう表現ひょうげんしなければならないため、化合かごうぶつちゅう原子げんしどうしの空間くうかんてき関係かんけいをグラフィックで表現ひょうげんした完全かんぜん構造こうぞうしきほどおおくの情報じょうほうりょうつたえられないことがおおい(たとえば、みぎのブタンの構造こうぞうしき化学かがくしき参照さんしょう)。分子ぶんし構造こうぞう複雑ふくざつさのため、あるしめせせいしきが、異性いせいたいばれるたがいにことなる分子ぶんし対応たいおうすることがある。たとえば、グルコースの分子ぶんししきは C
6
H
12
O
6
であるが、フルクトースガラクトースマンノースなどのことなるおおくの糖類とうるい共通きょうつうしている。複雑ふくざつ構造こうぞう一意いちい特定とくていできる線形せんけい等価とうか学名がくめい[訳語やくご疑問ぎもんてん]存在そんざいするが(化学かがく命名めいめいほう英語えいごばん参照さんしょう)、このような名前なまえには、化学かがくしき定義ていぎする単純たんじゅん元素げんそ記号きごう数字すうじ単純たんじゅん活版かっぱん印刷いんさつよう記号きごうだけではなく、おおくの用語ようご使用しようしなくてはならない。

化学かがくしきは、イオンせい化合かごうぶつ (en:英語えいごばん溶液ようえきへの溶解ようかいなど、化学かがく反応はんのうやその化学かがく転換てんかん記述きじゅつするために、化学かがく方程式ほうていしき(chemical equations、化学かがく反応はんのうしきとも)に使用しようされることがある。上述じょうじゅつのように化学かがくしきは、構造こうぞうしきのように原子げんしあいだでの化学かがくてきむすびつきをしめすことはできないが、化学かがく反応はんのうにおける原子げんしかず電荷でんかかず把握はあくするには十分じゅうぶんであり、化学かがく方程式ほうていしき収支しゅうしをとることで原子げんし電荷でんか保存ほぞんふく化学かがく問題もんだい利用りようすることができる。

概要がいよう[編集へんしゅう]

化学かがくしきは、化合かごうぶつ構成こうせいするかく元素げんそ化学かがく記号きごう識別しきべつし、かく元素げんそ原子げんしすう比率ひりつしめすものである。実験じっけんしき場合ばあい、これらの比率ひりつは、化合かごうぶつちゅう主要しゅよう元素げんそからはじまって、その元素げんそたいする比率ひりつ元素げんそ原子げんしすうてる。分子ぶんし化合かごうぶつ場合ばあい、これらの比率ひりつはすべて整数せいすうあらわすことができる。たとえば、エタノール実験じっけんしきは C
2
H
6
O と表記ひょうきされることがあるが、これはエタノールの分子ぶんしはすべて2炭素たんそ原子げんし、6水素すいそ原子げんし1個いっこ酸素さんそ原子げんしふくんでいるからである。しかし、イオンせい化合かごうぶつなかには、実験じっけんしきをすべて整数せいすう表現ひょうげんできないものもある。たとえば炭化たんかホウ素ほうそ場合ばあい、そのしき CB
n
は、n が 4-6.5 のあいだ可変かへん正数せいすうである。

化合かごうぶつ単純たんじゅん分子ぶんし構成こうせいされている場合ばあい化学かがくしき分子ぶんし構造こうぞう示唆しさする記述きじゅつほうをとることがおおい。このようなしきは、分子ぶんししきあるいはしめせせいしきとしてひろられている。分子ぶんししきは、分子ぶんしない原子げんしかず反映はんえいさせるために原子げんしすう列挙れっきょする。そのため、グルコース分子ぶんししきは C
6
H
12
O
6
となり、実験じっけんしきの CH
2
O とはことなる。しかし、非常ひじょう単純たんじゅん物質ぶっしつのぞいて、分子ぶんし化学かがくしき必要ひつよう構造こうぞう情報じょうほういていて、曖昧あいまいとなる。

単純たんじゅん分子ぶんし場合ばあいしめせせいしき(またははん構造こうぞうしき)は、ただしい構造こうぞう完全かんぜん示唆しさする可能かのうせいのある化学かがくしきひとつである。たとえば、エタノールは CH
3
CH
2
OH というしめせせいしきで、ジメチルエーテルは CH
3
OCH
3
というしめせせいしきあらわすことができる。この2つの分子ぶんしおな実験じっけんしき分子ぶんししき(C
2
H
6
O)をっているが、単純たんじゅん有機ゆうき化合かごうぶつ完全かんぜん構造こうぞうあらわすのに十分じゅうぶんしめせせいしきしめされることで、分子ぶんし区別くべつすることができる。

また、しめせせいしきイオンせい化合かごうぶつ表現ひょうげんすることができる。イオンせい化合かごうぶつ個別こべつ分子ぶんしとしては存在そんざいせず、その内部ないぶ共有きょうゆう結合けつごうしたクラスターをふくんでいる。これらの原子げんしイオンは、たとえば硫酸りゅうさんイオン [SO
4
]2-
のように、全体ぜんたいとしてイオン電荷でんかつ、共有きょうゆう結合けつごうした原子げんしのグループである。化合かごうぶつちゅうかく原子げんしイオンは、グループけを説明せつめいするために個別こべつ表記ひょうきされる。たとえば、ろく酸化さんか塩素えんそ英語えいごばんという化合かごうぶつは、実験じっけんしきは ClO
3
分子ぶんししきは Cl
2
O
6
あらわされるが、液体えきたい固体こたいではイオンしめせせいしき [ClO
2
]+
[ClO
4
]
あらわほうがより正確せいかくであり、この化合かごうぶつが [ClO
2
]+
イオンと [ClO
4
]
イオンから構成こうせいされることをしめしている。このような場合ばあいしめせせいしきかくイオンしゅすくなくとも1つをしめすのに十分じゅうぶん複雑ふくざつさであればよい。

ほん記事きじ説明せつめいする化学かがくしきは、化学かがく命名めいめいほう英語えいごばんのさまざまな体系たいけい使用しようされている非常ひじょう複雑ふくざつ化学かがく系統けいとうめいとはことなるものである。たとえば、グルコースの系統けいとうめいひとつに、(2R,3S,4R,5R)-2,3,4,5,6-pentahydroxyhexanal がある。この名前なまえはその背景はいけいにある規則きそくによって解釈かいしゃくされ、グルコースの構造こうぞう完全かんぜん特定とくていしているが、通常つうじょう意味いみでの化学かがくしきではなく、化学かがくしきではもちいられない用語ようご単語たんご使つかっている。このような名前なまえは、基本きほんしきとはちがって、グラフィックを使つかわなくても完全かんぜん構造こうぞうあらわすことができる可能かのうせいがある。

種類しゅるい[編集へんしゅう]

実験じっけんしき[編集へんしゅう]

化学かがくでは、化学かがく物質ぶっしつ実験じっけんしき(empirical formula)とは、化合かごう物質ぶっしつふくまれる原子げんし種類しゅるいごとの相対そうたいてきかず、または元素げんそ比率ひりつ簡単かんたんあらわしたものである。化学かがく物質ぶっしつ元素げんそ組成そせいしめすことから、元素げんそ組成そせいしき(compositional formula, nominal composition)、あるいはたん組成そせいしきぶこともある。CaCl
2
のようなイオンせい化合かごうぶつや、SiO
2
のような高分子こうぶんし化合かごうぶつでは、実験じっけんしき標準ひょうじゅんとなる。実験じっけんしきでは、異性いせい構造こうぞう原子げんし絶対ぜったいすうには言及げんきゅうしない。実験じっけん(empirical)という用語ようごは、元素げんそ分析ぶんせきのプロセスを意味いみしており、これは純粋じゅんすい化学かがく物質ぶっしつ元素げんそごとの相対そうたいてき組成そせい決定けっていするのに使つかわれる分析ぶんせき化学かがく技術ぎじゅつである。

たとえば、ヘキサン分子ぶんししきは C
6
H
14
で、n-ヘキサン(異性いせいたいひとつ)の構造こうぞうしきは CH
3
CH
2
CH
2
CH
2
CH
2
CH
3
であり、6炭素たんそ原子げんしと14水素すいそ原子げんしからなるちょくくさり構造こうぞうっていることを意味いみする。しかし、ヘキサンの実験じっけんしきは C
3
H
7
となる。同様どうように、過酸化水素かさんかすいそ H
2
O
2
実験じっけんしき単純たんじゅんに HO で、構成こうせい元素げんそが 1:1 の比率ひりつであることをあらわしている。ホルムアルデヒド酢酸さくさん実験じっけんしきおなじ CH
2
O である。これは、ホルムアルデヒドの実際じっさい化学かがくしきでもあるが、酢酸さくさんはこの2ばい原子げんしすうっている。

分子ぶんししき[編集へんしゅう]

イソブタン構造こうぞうしき
分子ぶんししき: C
4
H
10

しめせせいしき: (CH
3
)
3
CH
n-ブタン構造こうぞうしき
分子ぶんししき: C
4
H
10

しめせせいしき: CH
3
CH
2
CH
2
CH
3

分子ぶんししき(molecular formula)は、分子ぶんしせい物質ぶっしつの1分子ぶんしふくまれる原子げんし種類しゅるいごとのかず簡単かんたんしめしたものである。これは、特定とくてい種類しゅるい原子げんしを1つだけち、それ以外いがいはよりおおきなかず分子ぶんし実験じっけんしきおなじである。たとえば、グルコースの場合ばあい実験じっけんしきは CH
2
O (比率ひりつ 1:2:1)であるが、これにたいし、分子ぶんししきは C
6
H
12
O
6
原子げんしすう 6:12:6)で相違そういしている。みず場合ばあいはどちらのしきも H
2
O となる。分子ぶんししき実験じっけんしきよりも分子ぶんしかんする情報じょうほうをよりおお提供ていきょうしているが、確証かくしょうにはより困難こんなんさをともなう。

分子ぶんししき分子ぶんしふくまれる元素げんそかずしめし、それが二元にげん化合かごうぶつことなる2種類しゅるい元素げんそふくむ)か、さんもと化合かごうぶつか、四元よつもと化合かごうぶつか、さらにおおくの元素げんそつかどうかを決定けっていする。

構造こうぞうしき[編集へんしゅう]

構造こうぞうしき(こうぞうしき、structural formula)は、かく分子ぶんし原子げんしすうしめすだけでなく、原子げんし分子ぶんしをどのように構成こうせいしているか表現ひょうげんするとともに、原子げんしあいだ化学かがく結合けつごうしめす(または暗示あんじする)ものである。構造こうぞうしき通常つうじょう平面へいめんじょう構造こうぞうトポロジーてき関係かんけいだけを表現ひょうげんし、実際じっさい構造こうぞう反映はんえいするものではない。構造こうぞうしきには、分子ぶんし構造こうぞうのさまざまな側面そくめん着目ちゃくもくした、いくつかの種類しゅるいがある。みぎ掲載けいさいしたブタンの2つのは、おな分子ぶんししき C
4
H
10
でありながら構造こうぞうしきことなる構造こうぞう異性いせいたいである2つの分子ぶんし区別くべつしてしめしている。

分子ぶんし連結れんけつせい英語えいごばん は、しばしばその物理ぶつりてき性質せいしつ化学かがくてき性質せいしつ挙動きょどうつよ影響えいきょうあたえる。おなすうおな種類しゅるい原子げんしから構成こうせいされる2つの分子ぶんし(つまりいちつい異性いせいたい)は、原子げんし結合けつごうことなったり結合けつごう位置いちことなったりすると、化学かがくてきおよび物理ぶつりてきまったことなる性質せいしつつことがある。このような場合ばあい、どの原子げんしがどの原子げんし結合けつごうしているかをしめ構造こうぞうしきやくつ。また、連結れんけつせいから、おおよその分子ぶんし形状けいじょう推定すいていできることもおおい。

しめせせいしき[編集へんしゅう]

しめせせいしき(しせいしき、condensed formula、またははん構造こうぞうしき(semi-structural formula))は、図版ずはん使用しよう非常ひじょう制限せいげんされていた有機ゆうき化学かがく初期しょき出版しゅっぱんぶつで、有機ゆうき構造こうぞういちぎょう記述きじゅつする活版かっぱん印刷いんさつじょう体系たいけいとして登場とうじょうした。しめせせいしきは、単純たんじゅん化学かがく物質ぶっしつ結合けつごう種類しゅるい空間くうかんてき配置はいちあらわすことができるが、かならずしも異性いせいたい複雑ふくざつ構造こうぞう特定とくていできるわけではない。

たとえば、エタンたん結合けつごうした2炭素たんそ原子げんしから構成こうせいされ、かく炭素たんそ原子げんしには3水素すいそ原子げんし結合けつごうしていて、化学かがくしきは CH
3
CH
3
あらわされる。エチレンでは、炭素たんそ原子げんしあいだじゅう結合けつごうがあるため(つまりかく炭素たんそは2水素すいそしかたない)化学かがくしきは CH
2
CH
2
あらわされる。炭素たんそあいだじゅう結合けつごうがあることは、炭素たんそ原子げんしは4であることから暗黙あんもくてきしめされている。しかし、より明示めいじてき記述きじゅつは H
2
C=CH
2
であり、あまり一般いっぱんてきではないが H
2
C::CH
2
記述きじゅつすることもある。2ほんせん(または2ついてん)は、その両隣りょうどなり原子げんしじゅう結合けつごう連結れんけつしていることをしめす。三重みえ結合けつごうは3ほんせん HC≡CH または3ついてん(HC:::CH)であらわすことがあり、曖昧あいまい場合ばあいは、たん結合けつごうを1ほんせんまたは1ついてんしめすことがある。

おな官能かんのうもと複数ふくすう分子ぶんしは、かえされるもとまる括弧かっこかこんで表現ひょうげんすることができる。たとえば、イソブタンは (CH
3
)
3
CH とあらわすことがある。このしめせせいしきは、おな原子げんしおな割合わりあい使つかってできるほか分子ぶんし異性いせいたい)とはことなる連結れんけつせい意味いみしている。この (CH
3
)
3
CH というしきは、中心ちゅうしん炭素たんそ原子げんしが、1個いっこ水素すいそ原子げんしと3メチルもと(CH
3
)に接続せつぞくしていることを意味いみする。かく元素げんそ同数どうすう原子げんし水素すいそ10炭素たんそ4、つまり C
4
H
10
)があれば、ちょくくさり分子ぶんしである n-ブタン( CH
3
CH
2
CH
2
CH
3
)をつくることができる。

一定いってい組成そせい法則ほうそく[編集へんしゅう]

どのような化合かごうぶつでも、元素げんそつねおな割合わりあいたがいに結合けつごうしている。これが一定いってい組成そせい法則ほうそくてい比例ひれい法則ほうそくともぶ)である。一定いってい組成そせい法則ほうそくとは、どんな化合かごうぶつでも、その化合かごうぶつのすべてのサンプルは、おな元素げんそおな割合わりあい(または比率ひりつ)で構成こうせいされるというものである。たとえば、どの水分すいぶんでも、かならず2水素すいそ原子げんし1個いっこ酸素さんそ原子げんしから 2:1 の割合わりあい構成こうせいされている。みず分子ぶんしふくまれる酸素さんそ水素すいそ相対そうたいてき質量しつりょうると、水分すいぶん質量しつりょうの94%が酸素さんそめ、のこりの6%が水素すいそ質量しつりょうであることがわかる。この質量しつりょうは、どの水分すいぶんでもおなじである[1]

化学かがくしき制約せいやくたいする化学かがく命名めいめいほう[編集へんしゅう]

ブタ-2-エン(but-2-ene)というアルケンには、化学かがくしき CH
3
CH=CHCH
3
では識別しきべつできない2つの異性いせいたいがある。2つのメチルもと相対そうたいてき位置いちしめすためには表記ひょうき追加ついかして、メチルもとじゅう結合けつごうおながわcis または Z)にあるか、反対はんたいがわtrans または E)にあるかをしめ必要ひつようがある[2]

上述じょうじゅつのように、おおくの複雑ふくざつ有機ゆうきおよび無機むき化合かごうぶつ完全かんぜん構造こうぞうしき表現ひょうげんするためには、単純たんじゅんしめせせいしき利用りようできる手段しゅだんをはるかにえる化学かがく命名めいめいほう英語えいごばん必要ひつようとする場合ばあいがある。そのれいについては、IUPAC有機ゆうき化学かがく命名めいめいほう英語えいごばん(IUPAC nomenclature of organic chemistry)および、IUPAC無機むき化学かがく命名めいめいほう英語えいごばん2005(IUPAC nomenclature of inorganic chemistry 2005)を参照さんしょうのこと。また、国際こくさい化学かがく識別子しきべつし(InChI)のような線形せんけい命名めいめいシステムによって、コンピュータで構造こうぞうしき構築こうちくすることができ、簡易かんい分子ぶんし入力にゅうりょくライン入力にゅうりょくシステム(SMILES)では、人間にんげんがより理解りかいしやすいASCII入力にゅうりょくができる。しかし、これらの命名めいめい体系たいけいはいずれも化学かがくしき基準きじゅんえており、厳密げんみつにいえばしき体系たいけいではなく命名めいめいほうである[よう出典しゅってん]

ポリマーのしめせせいしき[編集へんしゅう]

ポリマーしめせせいしきは、かえ単位たんい括弧かっこかこんでいる。たとえば、CH
3
(CH
2
)
50
CH
3
表記ひょうきされる炭化たんか水素すいそ分子ぶんしは、50かえ単位たんい分子ぶんしである。かえ単位たんいかず不明ふめいまたは可変かへんである場合ばあい文字もじ n使用しようしてそのしき CH
3
(CH
2
)
n
CH
3
しめすことができる。

イオンのしめせせいしき[編集へんしゅう]

イオンの場合ばあい特定とくてい原子げんし電荷でんかを、右側みぎがわうえ文字もじあらわすことができる。たとえば、 Na+
や Cu2+ である。また、ヒドロニウム H
3
O+
硫酸りゅうさんイオン SO2−
4
のように、荷電かでん分子ぶんし原子げんしイオンのそう電荷でんかもこの方法ほうほうあらわすことができる。ここでは、+1 や -1 のわりに + と - が使用しようされている。

より複雑ふくざつなイオンの場合ばあいイオンしき(イオンしき、ionic formula)をかく括弧かっこ [ ]かこむことがよくあり、ドデカホウさんセシウム英語えいごばん Cs
2
[B
12
H
12
] などの化合かごうぶつで [B
12
H
12
]2− のようにられる。ヘキサアンミンコバルト(III)塩化えんかぶつ [Co(NH
3
)
6
]3+Cl
3
のように、かえ単位たんいしめすために、まる括弧かっこ ( )括弧かっこないにすることもできる。ここで、 (NH
3
)
6
はコバルトに結合けつごうした6アンミンもと英語えいごばん(NH
3
) をふくむことをしめし、[ ] は電荷でんか +3 のイオンしき全体ぜんたいかこんでいる

こうした表記ひょうき厳密げんみつには任意にんいである。化学かがくしきイオン化いおんか情報じょうほう有無うむにかかわらず有効ゆうこうであり、ヘキサアミンコバルト(III)塩化えんかぶつは [Co(NH
3
)
6
]3+Cl
3
または [Co(NH
3
)
6
]Cl
3
あらわすことができる。かく括弧かっこまる括弧かっこ同様どうように、数学すうがくおなじように化学かがくでも用語ようごをまとめる役割やくわりをもつが、とくイオン化いおんか状態じょうたいだけに使つかわれるものではない。後者こうしゃ場合ばあいかく括弧かっこは、すべおな形状けいじょうの6つのもとべつの1つのもと(コバルト原子げんし)に結合けつごうし、さらにその一群いちぐんが1つのもととして3つの塩素えんそ原子げんし結合けつごうしていることをしめしてる。前者ぜんしゃ場合ばあい塩素えんそをつなぐ結合けつごう共有きょうゆう結合けつごうではなく、イオン結合けつごうであることが明確めいかくになる。

同位どういたい[編集へんしゅう]

通常つうじょう元素げんそ天然てんねん組成そせい同位どういたい混合こんごうぶつ意味いみしている。同位どういたいかく化学かがく安定あんてい同位どういたい化学かがく関連かんれんするが、化学かがくしきではことなる同位どういたい明示めいじするために、左上ひだりうえ文字もじ質量しつりょうすうしめすことがある。たとえば、放射ほうしゃせいリン32をふくむリンさんイオンは [32
PO
4
]3-
である。また、安定あんてい同位どういからだかかわる研究けんきゅうでは、18
O16
O という分子ぶんし使つかうこともある。

左側ひだりがわした文字もじは、原子げんし番号ばんごうしめすために重複じゅうふくして使用しようされることがある。たとえば、
8
O
2
酸素さんそを、 16
8
O
2酸素さんそもっと豊富ほうふ同位どういからだしゅあらわす。これは、かく反応はんのうしきくときに、電荷でんか収支しゅうしをより明確めいかくしめすために便利べんりである。

重水素じゅうすいそさん重水素じゅうすいそでは、それぞれの頭文字かしらもじをとって D や T とあらわすことがある。

内包ないほう原子げんし[編集へんしゅう]

バックミンスターフラーレンさん次元じげん表現ひょうげん
従来じゅうらいしき:MC
60

@表記ひょうき:M@C
60

@記号きごう(アットマーク)は、ケージないめられているが、化学かがくてき結合けつごうしていない原子げんし分子ぶんししめす。たとえば、原子げんし M をバックミンスターフラーレン(C
60
)は、M が化学かがく結合けつごうせずにフラーレンない捕捉ほそくされているか、炭素たんそ原子げんしの1つと結合けつごうしてフラーレンがいにあるかにかかわらず、単純たんじゅんに MC
60
表記ひょうきされる。@記号きごう使用しようすると、M が炭素たんそネットワークの内側うちがわにある場合ばあいは M@C
60
表記ひょうきされる。フラーレン以外いがいれいとしては、 [As@Ni
12
As
20
]3− があげられる。このイオンは、1個いっこヒ素ひそ原子げんし(As)が、の32原子げんしによって形成けいせいされたケージないめられている。

この表記ひょうきほうは、1991ねん提案ていあんされたもので[3]Laなどの原子げんしめて La@C
60
や La@C
82
形成けいせいするフラーレンケージ(内包ないほうフラーレン)が発見はっけんされたことにともなうものである。この記号きごうえらんだ理由りゆうについて著者ちょしゃらは、印刷いんさつ電子でんし送信そうしん容易よういであること[注釈ちゅうしゃく 2]視覚しかくてき内包ないほうフラーレンの構造こうぞう示唆しさするものであると説明せつめいしている。

不定ふてい化学かがくしき[編集へんしゅう]

化学かがくしきでは通常つうじょうかく元素げんそかず整数せいすう表記ひょうきする。しかし、ちいさな整数せいすうではあらわせない不定ふてい化合かごうぶつ(または化学かがくりょうろんてき化合かごうぶつ)とばれる種類しゅるい化合かごうぶつ存在そんざいする。このようなしきは、Fe
0.95
O のように小数しょうすうあらわされることもあれば、Fe
1-x
O のように文字もじによる可変かへんふくむこともある。

有機ゆうき化合かごうぶつ一般いっぱんしき[編集へんしゅう]

一定いってい単位たんいたがいにことなる一連いちれん化合かごうぶつあらわ化学かがくしきを、一般いっぱんしき(general formula)とぶ。これは、同族どうぞくれつ英語えいごばん化学かがくしき生成せいせいする。たとえば、アルコールは C
n
H
2n + 1
OH (n ≥ 1) という一般いっぱんしきあらわすことができ、1 ≤ n ≤ 3 でメタノールエタノールプロパノールという同族どうぞくたいることができる。

また、任意にんい金属きんぞく元素げんそしめす M やハロゲン元素げんそしめす X など、元素げんそ記号きごう一般いっぱんしてあらわすこともある。

ヒルシステム[編集へんしゅう]

ヒルシステム(Hill system、またはヒル表記ひょうきほう(Hill notation))は、実験じっけんしき分子ぶんし化学かがくしきしめせせいしき構成こうせい元素げんそ表記ひょうき方法ほうほうであり、分子ぶんしうち炭素たんそ原子げんしかず最初さいしょあらわし、つぎ水素すいそ原子げんしかずあらわし、そののすべての化学かがく元素げんそかず元素げんそ記号きごうアルファベットじゅん記述きじゅつする。炭素たんそしきふくまれない場合ばあいは、水素すいそふくむすべての元素げんそをアルファベットじゅん列挙れっきょする。

このような規則きそくしたがって化学かがくしきかく元素げんそ原子げんしすうによってならえ、まえ元素げんそ数値すうちちがいは元素げんそ数値すうちちがいよりも重要じゅうようなものとしてあつかうことで、テキスト文字もじれつ辞書じしょじゅんならべるのと同様どうように、化学かがくしきをヒルシステム順序じゅんじょ(Hill system order)とばれるものに対照たいしょう (en:英語えいごばんすることができる。

ヒルシステムは、1900ねんに、米国べいこく特許とっきょ商標しょうひょうちょうの Edwin A. Hill が発表はっぴょうしたものである[4]。これは、化学かがくデータベースや印刷いんさつされた索引さくいん化合かごうぶつのリストを分類ぶんるいするために、もっともよく使つかわれる方式ほうしきである[5]

ヒルシステム順序じゅんじょによるしき一覧いちらんでは、上記じょうきのようにアルファベットじゅん配列はいれつされ、記号きごうおな文字もじはじまる場合ばあいは、1文字もじ元素げんそが2文字もじ元素げんそよりもまえるようになっている(つまり「B」は「Be」のまえに、「Be」は「Br」のまえ[5])。

つぎれいしめしき配列はいれつはヒルシステムを使用しようしてかれ、ヒルシステム順序じゅんじょならんでいる。

  • BrI
  • BrClH2Si
  • CCl4
  • CH3I
  • C2H5Br
  • H2O4S

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注記ちゅうき[編集へんしゅう]

  1. ^ しめせせい分子ぶんししき(condensed molecular formula)やはん構造こうぞうしき(semi-structural formula)ともばれることもある
  2. ^ 記号きごうは、現代げんだい使つかわれている大半たいはん文字もじ符号ふごう方式ほうしき基礎きそをなすASCIIふくまれている

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ Law of Constant Composition”. Everything Math and Science. SIYAVULA. 2016ねん3がつ31にち閲覧えつらん This material is available under a Creative Commons Attribution-Share Alike 3.0 license.
  2. ^ Burrows, Andrew. (2013-03-21). Chemistry³ : introducing inorganic, organic and physical chemistry (Second ed.). Oxford. ISBN 978-0-19-969185-2. OCLC 818450212 
  3. ^ Chai, Yan; Guo, Ting; Jin, Changming; Haufler, Robert E.; Chibante, L. P. Felipe; Fure, Jan; Wang, Lihong; Alford, J. Michael et al. (1991). “Fullerenes wlth Metals Inside”. Journal of Physical Chemistry 95 (20): 7564–7568. doi:10.1021/j100173a002. 
  4. ^ Edwin A. Hill (1900). “On a system of indexing chemical literature; Adopted by the Classification Division of the U.S. Patent Office”. J. Am. Chem. Soc. 22 (8): 478–494. doi:10.1021/ja02046a005. hdl:2027/uiug.30112063986233. https://zenodo.org/record/1428916. 
  5. ^ a b Wiggins, Gary. (1991). Chemical Information Sources. New York: McGraw Hill. p. 120.

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

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