パラゴムノキ

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パラゴムノキ
パラゴムノキのプランテーション
分類ぶんるい
さかい : 植物しょくぶつかい Plantae
階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ Angiosperms
階級かいきゅうなし : 真正しんしょうそう子葉しようるい Eudicots
階級かいきゅうなし : バラるい Rosids
: キントラノオ Malpighiales
: トウダイグサ Euphorbiaceae
ぞく : パラゴムノキぞく Hevea
たね : パラゴムノキ H. brasiliensis

パラゴムノキ (Para rubber tree、Hevea brasiliensis) は、トウダイグサパラゴムノキぞく常緑じょうりょく高木たかぎみききずつけてられる乳液にゅうえき (ラテックス、latex)は天然てんねんゴム原料げんりょうとなる。和名わみょう/英名えいめいの「パラ」は原産地げんさんちであるブラジル北部ほくぶしゅうパラしゅう)に由来ゆらいする。

原産地げんさんちアマゾン川あまぞんがわ流域りゅういきで、雨季うきには増水ぞうすいした河川かせんによって水没すいぼつするバルゼアばれる浸水しんすいりん生育せいいくする。種子しゅしみずき、雨季うき増水ぞうすいしたみずながれにって分散ぶんさんする。

パラゴムノキはもともとアマゾン川あまぞんがわ流域りゅういきにのみ生育せいいくしていたが、1839ねんほう発見はっけんによってゴム需要じゅよう増加ぞうかしたため、原産地げんさんち以外いがいでも栽培さいばいおこなわれるようになった。現在げんざいでは東南とうなんアジア熱帯ねったい地域ちいき中心ちゅうしんプランテーションでのだい規模きぼ栽培さいばいおこなわれている。1990ねん天然てんねんゴムの世界せかい生産せいさんりょうは494.8まんトンで、おも生産せいさんこくマレーシア (29%)、インドネシア (26%)、タイ (19%)である。

性質せいしつ[編集へんしゅう]

タイのゴムえん。ゴム採取さいしゅちゅうみきみが確認かくにんできる。(2011.8.7)

樹高きだかは30mにたっする。は3まいしょうからなる複葉ふくようみきには、樹皮じゅひふるいあいだ乳液にゅうえきかん地面じめんと30角度かくどみぎまわり螺旋らせんじょうのぼっており、ここからしろまたは黄色おうしょく乳液にゅうえきられる。樹齢じゅれいが5-6ねんになると乳液にゅうえき収集しゅうしゅうおこなわれる。乳液にゅうえきかん直交ちょっこうするように、生長せいちょう阻害そがいしない程度ていどふかさにみきみをれ、なが乳液にゅうえき容器ようきあつめる。年長ねんちょうほどおおくの乳液にゅうえきす。

採取さいしゅ[編集へんしゅう]

ラテックスの採取さいしゅ樹齢じゅれい5さいころからはじめる。みき周囲しゅういの1/4~1/2にわたってVがたまたは左上ひだりうえからみぎかう斜線しゃせんかわりつける。角度かくどやく45とし、下端かたん容器ようきき、ラテックスをける。毎日まいにちまたは隔日かくじつ早朝そうちょうに tapping knife で斜線しゃせん下面かめんを1mmけずる。採取さいしゅ雨季うきの2箇月かげつあいだ休止きゅうしをはさみ、1年間ねんかんりつけのあとは20~40cmになる。樹齢じゅれい15~18さい最盛さいせいであり、40さい以後いご激減げきげんする。乳液にゅうえきりょうは1にちやく30cc、ゴム含有がんゆうは30~40%、1ほん1ねんのゴム生産せいさんりょう最盛さいせいで3~3.5kgである。ラテックスは金網かなあみ濾過ろか異物いぶつのぞき、やく0.1%の酢酸さくさんまたは0.06%の蟻酸ぎさんくわえ、凝固ぎょうこさせる。これをローラーにけてみず洗浄せんじょうし、ローラーでシートじょうまたはクレープじょう仕上しあげ、日乾ひぼしまたは火力かりょく乾燥かんそうさせる。これがなまゴムとよばれるものである。

木材もくざいとしての用途ようと[編集へんしゅう]

収穫しゅうかくりょうった老木ろうぼくは、順次じゅんじ伐採ばっさいしてあたらしい若木わかぎえられる。伐採ばっさいしてられるざいは、製材せいざい乾燥かんそう過程かてい腐朽ふきゅうきんおかされやすいうえ乾燥かんそうによってしょうじる変形へんけいおおきいため、かつては商品しょうひん価値かちはないとみなされ、こまかくくだいてMDFパーティクルボード原料げんりょうとして使つかわれる程度ていどであり、だい部分ぶぶんはあまり利用りようされることなく廃棄はいきされていた。近年きんねんは、乾燥かんそう技術ぎじゅつ防腐ぼうふ技術ぎじゅつ進歩しんぽ、および乾燥かんそうちゅう変形へんけい見越みこしてあらかじめちいさなエレメントに寸断すんだんしておいてから乾燥かんそう集成しゅうせいざい加工かこうする、という利用りよう技術ぎじゅつ確立かくりつしている。パラゴムノキの集成しゅうせいざいは、木材もくざいとしてはややかためで塗装とそうせい着色ちゃくしょくせい良好りょうこうであるので、家具かぐフローリングなどの材料ざいりょうとしてひろ利用りようされるようになった。廃材はいざいさい利用りようであるため安価あんかである。木材もくざいとしての品質ひんしつ向上こうじょうのため、ラテックスの採取さいしゅをするときの、樹皮じゅひみをれる刃物はもの形状けいじょうみをれるときの気温きおん配慮はいりょし、リサイクル木材もくざいとしての品質ひんしつたかめにするような工夫くふうも、なされつつある。

 さらに、パラゴムノキは成長せいちょうはやいため、木材もくざいとしての利用りよう技術ぎじゅつ確立かくりつした近年きんねんでは、ラテックス採取さいしゅ目的もくてきとせず、最初さいしょから木材もくざいとして利用りようするために植樹しょくじゅされることもすくなくない。

歴史れきし[編集へんしゅう]

パラゴムノキの

パラゴムノキは重要じゅうよう産業さんぎょう資源しげんとして、ブラジル国外こくがいへのしは禁止きんしされていた。しかし、原産地げんさんち同様どうよう熱帯ねったい雨林うりん地帯ちたい植民しょくみんかかえるイギリスは、なんもひそかに植物しょくぶつ学者がくしゃアマゾン川あまぞんがわ流域りゅういき派遣はけんして種子しゅし採集さいしゅうさせ、みずからの植民しょくみんにおいて栽培さいばいおこなうことをこころみた。

まず1873ねんにブラジル国外こくがいでのゴム栽培さいばい計画けいかくされ、試行錯誤しこうさくご結果けっか、12ほん苗木なえぎキュー王立おうりつ植物しょくぶつえん生育せいいくはじめた。しかし、これらは栽培さいばいようインドおくられたものの、すべてれてしまった。

つぎ計画けいかく1875ねんおこなわれ、ヘンリー・ウィッカムにより7まん種子しゅしがキューにおくられた。このうち4%が発芽はつがし、1876ねんには2000かぶ苗木なえぎウォードばこれられてセイロンとうへ、22かぶシンガポール植物しょくぶつえんおくられた。いちど定着ていちゃくするとパラゴムノキは、イギリスの植民しょくみん各地かくち急速きゅうそくひろがった。1898ねんまでに、マレまれ半島はんとうにゴムのプランテーションがつくられた。

今日きょうではゴムのプランテーションはおおくが東南とうなんアジア一部いちぶ熱帯ねったいアフリカ存在そんざいしているが、原産地げんさんち南米なんべいでは嚢菌によるみなみアメリカ枯病(South American Leaf Blight、学名がくめいPseudocercospora ulei[1]きゅう学名がくめいMicrocyclus ulei)という病気びょうきのためあまり栽培さいばいされておらず(ヘンリー・フォードがアマゾンでの栽培さいばいこころみたが断念だんねんしている)、いまなお天然てんねん自生じせい樹木じゅもくからのゴムえき採取さいしゅおこなわれている。

乳液にゅうえき採取さいしゅ

シノニム[編集へんしゅう]

パラゴムノキぞくつぎ異名いみょうでもられる。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Erasing the Past: A New Identity for the Damoclean Pathogen Causing South American Leaf Blight of Rubber

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]