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集成しゅうせいざい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
周囲しゅうい突板おおわれて、一見いっけん無垢むくざいのようにえるように装飾そうしょくされた集成しゅうせいざい

集成しゅうせいざい(しゅうせいざい、Laminated wood)とは、断面だんめん寸法すんぽうちいさい木材もくざい板材いたざい、Laminar、ラミナ)を接着せっちゃくざいさい構成こうせいしてつくられる木質もくしつ材料ざいりょうである。構造こうぞうよう造作ぞうさくよう分類ぶんるいされ、おも建材けんざいテーブルてんばんなどの家具かぐ素材そざいとしてもちいられる。強度きょうどたい水性すいせいについて厳格げんかく規格きかく検査けんさ基準きじゅんのもとで品質ひんしつ管理かんりされる構造こうぞうようのものと、家具かぐ内装ないそうなどに使つか造作ぞうさくよう強度きょうどかんする規格きかくはない)とでは、一見いっけんしたていても工学こうがくてき特性とくせいことなる。

近年きんねんだい断面だんめん集成しゅうせいざい学校がっこう建築けんちくぶつなどの大型おおがた公共こうきょう施設しせつはりなどにもちいられるようになった。また、木質もくしつ構造こうぞうでは従来じゅうらい困難こんなんとされていた曲線きょくせん部材ぶざいだいスパン構などが実現じつげん可能かのうとなり、木質もくしつドームなどがつくられるようになった。

歴史れきし

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集成しゅうせいざい製造せいぞう利用りようは、1930年代ねんだいアメリカはじまる。初期しょき集成しゅうせいざいカゼイン接着せっちゃくざいとしたもので、当時とうじ集成しゅうせいざい利用りようした建築けんちくぶつ2010年代ねんだいでもウィスコンシンしゅう図書館としょかんなどにのこっている。日本にっぽんでは1950年代ねんだいユリア樹脂じゅし接着せっちゃくざいとした集成しゅうせいざい三井みつい木材もくざい利用りようをしはじめたもの。すで完成かんせい50ねん - 70ねん建築けんちくぶつ存在そんざいする[1]

製造せいぞう工程こうてい

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フィンガージョイント(たて継ぎ)
フィンガージョイント(たてぎ)
  1. 断面だんめん寸法すんぽうちいさい木材もくざいラミナ)を人工じんこうてき乾燥かんそうする。
  2. ラミナ同士どうしフィンガージョイントばれる接合せつごう方法ほうほうたて方向ほうこうにつなぐ。フィンガージョイントの形状けいじょうは、構造こうぞうようでは接着せっちゃくざいもっと効果こうかてき作用さようするように、造作ぞうさくようではうつくしさをそこなわないように配慮はいりょされている。またフィンガー部分ぶぶんけずりだすカッターや、接着せっちゃくざい接着せっちゃく技術ぎじゅつは、よりちいさいフィンガーでも従来じゅうらい同等どうとう接合せつごう強度きょうどられるよう、年々ねんねん改良かいりょうすすめられており、木造もくぞう一般いっぱん住宅じゅうたく集成しゅうせいざいで8ミリ、家具かぐよう集成しゅうせいざいでは4ミリメートル程度ていどまでみじかくなっている。フィンガー小型こがたは、おがくずとしててられるざい減量げんりょう、および切削せっさく必要ひつよう電力でんりょく節約せつやくというメリットがある(木材もくざいにかぎらず一般いっぱん原則げんそくとして、切削せっさく加工かこう投入とうにゅうされたエネルギーのだい部分ぶぶんは、りくずのねつエネルギーとしててられる。当然とうぜんけずりくずになる部分ぶぶんすくないほうが、エネルギーのロスはすくない)。
  3. たて方向ほうこう接合はぎあわされたラミナのひろめん接着せっちゃくざい塗布とふする。接着せっちゃくざい塗布とふされたラミナをなんまいかさね、あるいはよこならべ、圧力あつりょくけてあわせる。

構造こうぞうよう集成しゅうせいざい製造せいぞうにおいては、集成しゅうせい接着せっちゃくされるまえにグレーディングマシンとばれる装置そうちもちい、ヤングりつによるラミナの等級とうきゅう区分くぶんおこなわれる。また、フィンガージョイント接合せつごうによりたてぎされたラミナは、プルーフローダ保証ほしょう荷重かじゅう試験しけん)とばれる装置そうちもちいた試験しけんおこない、強度きょうどひくいものは排除はいじょされる。ヤングりつたかいラミナは「等級とうきゅう対称たいしょう構成こうせい」の場合ばあい集成しゅうせいざい外層がいそう使つかわれる。

なお、フィンガージョイントが普及ふきゅうする以前いぜんには、たてぎをするざいどうしをななめにそぎとして接着せっちゃく面積めんせきやしたスカーフジョイントがもちいられていたが、フィンガージョイントと比較ひかくした場合ばあいてられるざいりょうおおく、また接着せっちゃくあつしめ手間てまがかかるので、現在げんざい構造こうぞうよう集成しゅうせいざいでスカーフジョイントが使つかわれることはない。スカーフジョイントは、家具かぐなどで曲線きょくせん部分ぶぶんたとえば、椅子いすあし)をつくるために使つかわれることはあるが、これは集成しゅうせいざいという汎用はんよう素材そざいつくるというわけではなく、最終さいしゅう製品せいひんとして曲線きょくせん曲面きょくめんるための意匠いしょうてき木材もくざい加工かこうれいるべきである。なお、大型おおがた木造もくぞう建築けんちくぶつ使つかわれる湾曲わんきょく集成しゅうせいざい汎用はんようひんではなく、個々ここ建築けんちくぶつのデザインにおうじたオーダーメードの製品せいひんであり、その形状けいじょうおうじてラミナをななめにけず場合ばあいもあるが、たてはフィンガージョイントである。

構造こうぞうよう集成しゅうせいざい造作ぞうさくよう集成しゅうせいざい構造こうぞうよう集成しゅうせいばんちが

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構造こうぞうよう集成しゅうせいざいグルード・ラミネイテッド・ウッドもしくはグルーラムともばれラミナを積層せきそうするが、造作ぞうさくよう集成しゅうせいざいしょう角材かくざい(ひきばん)を一方向いちほうこうならべたはばはぎ接着せっちゃくつくられる。そのためエッジ・ジョインテッド・ウッドともばれる。いずれも木材もくざい積層せきそう方向ほうこう平行へいこうであり、繊維せんい直交ちょっこうして3そう以上いじょう積層せきそうした構造こうぞうよう集成しゅうせいばんクロス・ラミネーティッド・ティンバー)とはことなっている[2]

特徴とくちょう

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メリット

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  • 構造こうぞうようのものについては、生産せいさん工程こうていにおいてラミナを強度きょうどなどによって選別せんべつ適正てきせい配分はいぶんすることによって、もとの木材もくざいよりも強度きょうどのばらつきをちいさくすることができる。そのため設計せっけい強度きょうどおおきくることができる。また規格きかくしなであるため数学すうがくてき構造こうぞう強度きょうど算定さんていすることが出来できる。
  • 通常つうじょう木材もくざいではられないおおきな断面だんめんのもの、湾曲わんきょくした形状けいじょうのものをつくることができる。
  • スギなどの間伐かんばつざいゆがみのやすいカラマツゴムごむなどを有効ゆうこう活用かつようできる。
  • 製造せいぞう段階だんかいでラミナを乾燥かんそうさせているので、施工しこう木材もくざい乾燥かんそうによる変形へんけいとうくるいがしょうじにくい。木材もくざい寸法すんぽう安定あんていさせるには適切てきせつ乾燥かんそうさせておく必要ひつようがあるが、乾燥かんそう必要ひつよう期間きかん木材もくざいおおきさによっておおきく変化へんかする。おおきな原木はらきちいさなラミナにすることによって、短期間たんきかん乾燥かんそうさせることができる。
  • おおきな断面だんめん木材もくざいつくさい普通ふつう製材せいざいだいみち使つか必要ひつようがあるが、集成しゅうせいざい小径しょうけい接着せっちゃくすることによりつくる。そのため、比較的ひかくてき伐採ばっさい期間きかんみじか管理かんりされた人工じんこうりん有効ゆうこう活用かつようできるため、地球ちきゅうの「生態せいたいけい保全ほぜん」とてんで、条件じょうけんおなじであれば、普通ふつう製材せいざいくらべて環境かんきょうやさしいとする。
  • 内装ないそう家具かぐよう製品せいひんにおいては、色合いろあいのことなる素材そざい積極せっきょくてき配列はいれつするなどして単一たんいつ素材そざいではられない装飾そうしょくてきうつくしいものをつくることができる。
  • 接着せっちゃくざい防腐ぼうふざいなどをぜることによって、シロアリ木材もくざい腐朽ふきゅうきんへのたいせい向上こうじょうさせることができる。

デメリット

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乾燥かんそうによって、こまかくれてしまった集成しゅうせいざい
  • 手間てまがかかるぶんだけ、無垢むく木材もくざいよりもコストだかである。接着せっちゃく加熱かねつされるので製造せいぞうおおくのエネルギーが消費しょうひされる。また材料ざいりょう木材もくざいも、なんでもいというものではなく、最終さいしゅう用途ようとおうじて選別せんべつ必要ひつようであり、無条件むじょうけんに「使つかわれなかった木材もくざい利用りようされるから環境かんきょうやさしい」ということはない。
  • 技術ぎじゅつてき未熟みじゅく製品せいひんでは接着せっちゃくめん剥離はくりし、隙間すきまができる場合ばあいがある。
  • 内装ないそう家具かぐようのものには、接着せっちゃくざいとして透明とうめいそこなわないユリア樹脂じゅし多用たようされてきたが、これは硬化こうかざいとして使つかわれるホルムアルデヒド放散ほうさんするためシックハウス原因げんいんとなる。ホルムアルデヒドを吸着きゅうちゃくするキャッチャーざい配合はいごうされているが、効果こうか完全かんぜんではない。近年きんねんは、ホルムアルデヒドと無縁むえん接着せっちゃくざい代替だいたいされつつあるがやや高価こうかである。一方いっぽう構造こうぞうよう集成しゅうせいざいでもっぱらもちいられるたい水性すいせいのあるフェノール樹脂じゅしもホルムアルデヒドを使用しようするが、こちらは化学かがくてき安定あんてい状態じょうたい保持ほじされるのでホルムアルデヒドの放出ほうしゅつすくない。しかし褐色かっしょく接着せっちゃくざいなのでわるい。
  • おおきくいがんだり、おおきくれたりすることはないが、乾燥かんそうによる木材もくざいストレスが開放かいほうされないため、こまかくれる傾向けいこうがある。内部ないぶこまかくれるため、断面だんめんないとそれが確認かくにんできない。

ハイブリッド集成しゅうせいざい

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木目もくめうつくしいアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくさんベイマツに、強度きょうどたか日本にっぽんさんスギわせるなどしたしゅ集成しゅうせいざいをハイブリッド集成しゅうせいざいという。ねばりのあるベイマツ上下じょうげはいし、そのあいだ国産こくさんすぎはさ構造こうぞうになっている。

材料ざいりょう国産こくさんざいかぎって集成しゅうせいざいつく場合ばあいでも、原木げんぼくのこきして乾燥かんそうさせたときラミナを時点じてんで、個々ここのラミナにたいしてラングりつ計測けいそくなどにもとづく推定すいてい強度きょうどごとに等級とうきゅうけし、応力おうりょくのかかる外側そとがわ丈夫じょうぶなものを配置はいち内側うちがわにはけい軟なものをもちいるというような工夫くふうは、一般いっぱんてきになされており、とくにだいだん面積めんせき集成しゅうせいざい場合ばあいには必須ひっすである。応力おうりょくのあまりかからない部分ぶぶんにまで強度きょうどのあるラミナを使用しようした場合ばあいたん原木げんぼくからの歩留ぶどまりちて経済けいざいになるというだけではなく、できあがった集成しゅうせいざいおもくなる。はりざいとしてつく場合ばあい通常つうじょう上下じょうげ対称たいしょう強度きょうど分布ぶんぷさせるが、湾曲わんきょく集成しゅうせいざいなど、ななめにちからがかかることが建築けんちくぶつ設計せっけい段階だんかいかっている場合ばあいには、ちからきにおうじて非対称ひたいしょう構成こうせいをとることもある。 なお、強度きょうど計測けいそく構造こうぞうよう集成しゅうせいざいには不適ふてき判断はんだんされたざいは、造作ぞうさくようなどべつ用途ようと転用てんようされる。

はばハギ集成しゅうせいパネル

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はばハギ集成しゅうせいパネルの1しゅである、トライウッドパネル
施工しこうされたトライウッドパネル

Solid Edged-glued Panel。すうセンチの棒状ぼうじょういたじょう無垢むくざいを、よこ方向ほうこうのみに接着せっちゃくすることでパネル形状けいじょうにしたものである。とくに、材料ざいりょうにパイン(まつ)やタモ、カリン、オークなどを使用しようしたものは、その意匠いしょうせいさからテーブルや家具かぐとう多用たようされる。パネルの垂直すいちょく方向ほうこうには接着せっちゃくざいそう存在そんざいせず、無垢むくざいおなとおる湿性しっせい調しらべ湿性しっせいられる。すぎ使つかったものはゆか天井てんじょうに、構造こうぞうよう合板ごうはんわりに使用しようできるが、サブロクサイズで1まんえん前後ぜんこう非常ひじょう高価こうかである。

日本にっぽん農林のうりん規格きかく(JAS)における「集成しゅうせいざい

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日本にっぽん農林のうりん規格きかく(JAS)では、「集成しゅうせいざい」を「ひきいたまたしょう角材かくざいとうをその繊維せんい方向ほうこうたがいにほぼ平行へいこうにして、あつさ、はばおよながさの方向ほうこう集成しゅうせい接着せっちゃくほどこした一般いっぱんざい」と定義ていぎし、製造せいぞう条件じょうけん試験しけん方法ほうほう規定きていしている[3]

  • 集成しゅうせいざい日本にっぽん農林のうりん規格きかく - 化粧けしょうようおも美観びかんあらわすものをあつか
    • 造作ぞうさくよう集成しゅうせいざい
    • 化粧けしょうばり造作ぞうさくよう集成しゅうせいざい
    • 化粧けしょうばり構造こうぞうよう集成しゅうせいばしら
  • 構造こうぞうよう集成しゅうせいざい日本にっぽん農林のうりん規格きかく - おも構造こうぞうぶつたいりょく要素ようそとする目的もくてきのもので、比較的ひかくてきだい断面だんめんのものをあつか
  • 英語えいごでは、日本にっぽんうところの集成しゅうせいざいはグルーラム(グルード・ラミネーティド・ティンバー)つまり接着せっちゃくされたラミナざいばれる。集成しゅうせいざい、OSB、パーティクルボード、LVL、Iジョイストなどをすべふくめ、製造せいぞう過程かていにおいて強度きょうどたい水性すいせいなどを管理かんりして製造せいぞうされたものを英語えいごではエンジニアードウッドあるいはエンジニアリングウッド、とんでいる。「エンジニアード」に対応たいおうする定着ていちゃくした日本語にほんごはまだないが、たんなる工業こうぎょう生産せいさんぶつという意味いみではなく、木材もくざい欠点けってん弱点じゃくてん工学こうがくてき手法しゅほう改善かいぜんし、所定しょてい規格きかくもとづいて品質ひんしつ保証ほしょうされていることがもとめられる。通常つうじょう木材もくざいであっても、強度きょうど検査けんさをして品質ひんしつ保証ほしょうしたものはエンジニアードウッドにふくめてよいし、また、構造こうぞうよう集成しゅうせいざい定義ていぎじょうエンジニアードウッドの一種いっしゅであるが、集成しゅうせいざいすべてがエンジニアードウッドというわけではない。

脚注きゃくちゅう

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • はやし知行ともゆきだい55 集成しゅうせいざいとCLT(直交ちょっこう集成しゅうせいばん)のちがい」『からウロコのはなし技報堂ぎほうどう出版しゅっぱん、2020ねん、190-193ぺーじISBN 978-4-7655-4489-4 

関連かんれん項目こうもく

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木材もくざい関連かんれん

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外部がいぶリンク

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