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Th1細胞さいぼう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

Th1細胞さいぼう(-さいぼう、えい: Th1 Cell)は、CD4+T細胞さいぼう(いわゆるヘルパーT細胞さいぼう)のぐんであり、インターフェロン-γがんまインターロイキン-12(IL-12)の刺激しげきけることによりナイーブT細胞さいぼうとよばれる抗原こうげんタンパク質たんぱくしつとの接触せっしょく経歴けいれきたないT細胞さいぼうからの分化ぶんか誘導ゆうどうされる。T細胞さいぼうをはじめとした免疫めんえきけい細胞さいぼうサイトカインさんせいのうゆうしているがTh1細胞さいぼうによりさんされるインターフェロン-γがんま(IFN-γがんま)をはじめとしたサイトカインはとくTh1サイトカインばれ、マクロファージ細胞さいぼう障害しょうがいせいT細胞さいぼう(CTL)などの細胞さいぼう活性かっせいしてウイルス細胞さいぼうない抗原こうげん除去じょきょ自己じこ免疫めんえき疾患しっかん発症はっしょうこう腫瘍しゅよう免疫めんえきにな細胞さいぼうせい免疫めんえきなどに関与かんよしていることがられている。同様どうようにナイーブT細胞さいぼうから分化ぶんかするTh2細胞さいぼうはIL-4などのいわゆるTh2サイトカインをさんし、Th1細胞さいぼうとTh2細胞さいぼうはサイトカインを放出ほうしゅつすることによりたがいの機能きのう抑制よくせいしあっている。

機能きのう[編集へんしゅう]

細胞さいぼうがい存在そんざいする細菌さいきん除去じょきょB細胞さいぼうから分化ぶんかした形質けいしつ細胞さいぼうさんせいする免疫めんえきグロブリンなどが中心ちゅうしんてき役割やくわりにな体液たいえきせい免疫めんえきによっておこなわれるが、結核けっかくきんMycobacterium tuberculosis)などの細胞さいぼうない寄生きせいきん除去じょきょにおいては細胞さいぼうせい免疫めんえき重要じゅうよう役割やくわりになっている。通常つうじょう細菌さいきんたいする免疫めんえき応答おうとうだい一線いっせんはマクロファージとうしょく細胞さいぼうによりおこなわれているが結核けっかくきんしょく細胞さいぼうないしょう胞において寄生きせいすることが可能かのうである。Th1細胞さいぼうはマクロファージへのMHCクラスII分子ぶんしかいした抗原こうげん提示ていじやCD40リガンド(CD40L)、IFN-γがんま分泌ぶんぴつにより活性かっせいこし、しょく胞内でのこきんころすことができる。結核けっかくきんへの感染かんせんには家族かぞく集積しゅうせきせいみとめられ、かく個人こじんにおけるTh1細胞さいぼう活性かっせい重要じゅうよう役割やくわりたしているとかんがえられている[1]。また、Th1細胞さいぼう由来ゆらいのサイトカインにより活性かっせいされたCTLは細胞さいぼう障害しょうがい活性かっせいしめし、感染かんせんこした細胞さいぼうアポトーシス自発じはつてき細胞さいぼう)を誘導ゆうどうすることによって破壊はかいすることがられている。CTLはがん細胞さいぼうたいしてもアポトーシスを誘導ゆうどうするが、がん患者かんじゃにおいてはT細胞さいぼう活性かっせい低下ていかしており、その機構きこうひとつとして腫瘍しゅよう細胞さいぼうから放出ほうしゅつされるTGF-βべーたによるTh1細胞さいぼうおよびCTLの活性かっせい抑制よくせい存在そんざいする。

また、Th1細胞さいぼう活動かつどうはインターフェロン-γがんまリンフォトキシン(TNF-βべーた)をはじめとした種々しゅじゅ炎症えんしょうせいサイトカインがさんせいこし、関節かんせつリウマチ実験じっけんてき自己じこ免疫めんえきせい脳炎のうえん(EAE)、多発たはつせい硬化こうかしょうインスリン依存いぞんせい糖尿とうにょうびょうなどの慢性まんせい炎症えんしょう自己じこ免疫めんえき疾患しっかんにも関与かんよしていることがしめされている。

さらに、Th1/Th2のバランスの破綻はたんはあるしゅ疾患しっかん原因げんいんとなることがられている。これまでこの平衡へいこうがTh1けいつよかたむくことによって過剰かじょうなTh1サイトカインがさんされ自己じこ免疫めんえき疾患しっかん発症はっしょうにつながるとかんがえられてきたが、最近さいきん動向どうこうでは自己じこ免疫めんえき疾患しっかん発症はっしょうにはIL-17さんせいのうゆうしたあたらしいT細胞さいぼうのサブセットであるTh17細胞さいぼう関与かんよしているというせつつよく、自己じこ免疫めんえき疾患しっかんがどちらの細胞さいぼうによってこされるものなのかははっきりしていない[2]近年きんねんではTh1細胞さいぼう分化ぶんかメカニズムやTh1/Th17バランスなどにたいして注目ちゅうもくあつまっている。

分化ぶんか誘導ゆうどう[編集へんしゅう]

胸腺きょうせん細胞さいぼうからヘルパーT細胞さいぼうへの分化ぶんか[編集へんしゅう]

T細胞さいぼう分化ぶんか機構きこう

T細胞さいぼう胸腺きょうせん由来ゆらいする細胞さいぼうである(T細胞さいぼうの"T"は胸腺きょうせん(Thymus)の頭文字かしらもじ由来ゆらい)。しかし、新生しんせいT細胞さいぼうCD4抗原こうげんCD8抗原こうげんもなければ(ダブルネガティブ、DN)T細胞さいぼう受容じゅようたい(TCR)もゆうしない未熟みじゅく細胞さいぼうである。DN細胞さいぼう分裂ぶんれつかえしによりCD8+シングルポジティブ(SP)細胞さいぼうてCD4+CD8+T細胞さいぼうへと分化ぶんかし、このなかでもTCRの発現はつげんたか細胞さいぼうにおいてポジティブセレクションおよびネガティブセレクションばれる現象げんしょうこる。ポジティブセレクションとはCD4+CD8+T細胞さいぼうなかから外来がいらいせい抗原こうげんたいして反応はんのうせいつTCRをゆうするものを選別せんべつする機構きこうであり、胸腺きょうせん皮質ひしつおこなわれる。一方いっぽう、ネガティブセレクションとは自己じこ抗原こうげんたいして反応はんのうせい細胞さいぼう選別せんべつするはんおうであり、ネガティブセレクションをけた細胞さいぼうはアポトーシスにみちびかれこの段階だんかい脱落だつらくする。また、これらの過程かていちゅうにおいてTCR遺伝子いでんしさい編成へんせいおこなわれ、TCRの多様たようせい形成けいせい関与かんよしている。ポジティブセレクションがおこなわれた細胞さいぼうはその、CD4+CD8lowT細胞さいぼうてCD4+CD8-T細胞さいぼう(ヘルパーT細胞さいぼう)へと分化ぶんか誘導ゆうどうおこなわれる。

Th1細胞さいぼうへの分化ぶんか[編集へんしゅう]

CD4+CD8-T細胞さいぼうからIFN-γさんせいのうゆうするTh1細胞さいぼうへの分化ぶんか誘導ゆうどうおもにIFN-γがんま刺激しげきによりおこなわれる(IL-12は現在げんざい否定ひていされつつある)。

Th1分化ぶんか過程かていにはじょう細胞さいぼうをはじめとした抗原こうげん提示ていじ細胞さいぼう重要じゅうよう役割やくわりになっている。じょう細胞さいぼうTollさま受容じゅようたいからの刺激しげきにより成熟せいじゅくすると、細胞さいぼう表面ひょうめんCD80などの分子ぶんし発現はつげんしてMHCクラスII分子ぶんしかいしたナイーブT細胞さいぼうへの抗原こうげん提示ていじにおけるきょう刺激しげき分子ぶんしとしてはたらき、T細胞さいぼう活性かっせいさせる。一方いっぽうじょう細胞さいぼうへの刺激しげきはIL-12のさんせい誘導ゆうどうすることがられており、活性かっせいT細胞さいぼう表面ひょうめん存在そんざいするIL-12受容じゅようたいかいして作用さようする。IL-12は転写てんしゃ因子いんしSTAT4をかいしてIFN-γがんまさんせい誘導ゆうどうする。

また、IFN-γがんま自身じしんによるIFNさんせい細胞さいぼう(Th1)への分化ぶんか誘導ゆうどう機構きこうられており、IL-12の作用さようたいして協調きょうちょうてきはたらく。IFN-γがんま下流かりゅうには転写てんしゃ因子いんしSTAT1が存在そんざいし、T-bet転写てんしゃ活性かっせいする。T-betタンパク質たんぱくしつもまたT-boxファミリーにぞくする転写てんしゃ因子いんしとして機能きのうし、IFN-γがんま遺伝子いでんし作用さようして凝集ぎょうしゅうしたクロマチン構造こうぞう部分ぶぶんてきゆるめて転写てんしゃ関与かんよする因子いんしDNA結合けつごうしやすい状態じょうたいすることによりIFN-γがんまさんせいをさらに亢進こうしんさせる[3]

そのにも、IL-18転写てんしゃ因子いんしNF-κかっぱBかいしてIFN-γがんまさんせい亢進こうしんさせる経路けいろなどが存在そんざいすることが報告ほうこくされている[4]一方いっぽう、Th2サイトカインであるIL-4の遺伝子いでんしはTh1分化ぶんかともな可逆かぎゃくてき抑制よくせいされTh1分化ぶんか完成かんせいさせるが、その過程かていはよくかっていない。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  1. ^ Lienhardt C, Azzurri A, Amedei A, Fielding K, Sillah J, Sow OY, Bah B, Benagiano M, Diallo A, Manetti R, Manneh K, Gustafson P, Bennett S, D'Elios MM, McAdam K and Del Prete G.(2002)"Active tuberculosis in Africa is associated with reduced Th1 and increased Th2 activity in vivo."Eur.J.Immunol. 32,1605-1613. PMID 12115643
  2. ^ 細胞さいぼう工学こうがく vol.27 No.2 加野かのらの稿こう ISBN 9784879624819
  3. ^ Mullen AC, High FA, Hutchins AS, Lee HW, Villarino AV, Livingston DM, Kung AL, Cereb N, Yao TP, Yang SY, Reiner SL.(2001)"Role of T-bet in commitment of TH1 cells before IL-12-dependent selection."Science. 292,1907-10. PMID 11397944
  4. ^ Yang J, Murphy TL, Ouyang W, Murphy KM.(1999)"Induction of interferon-gamma production in Th1 CD4+ T cells: evidence for two distinct pathways for promoter activation."Eur.J.Immunol. 29,548-55. PMID 10064070

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]