セントロメア

セントロメア（Centromere) は染色せんしょく体たいの長ちょう腕うでと短たん腕うでが交差こうさする部位ぶい。染色せんしょく体たいのほぼ中央ちゅうおうに位置いちすることからこの名ながつけられている。細胞さいぼう分裂ぶんれつ時ときには一いち次じ狭窄きょうさくを形成けいせいし、紡錘ぼうすい体たいが結合けつごうする。染色せんしょく体たいの凝縮ぎょうしゅくに関係かんけいするCENP-AやINCENP、あるいは染色せんしょく体たいの移動いどうに関かんするMCAK、CENP-Eなどが集積しゅうせきし、動どう原げん体からだと呼よばれる構造こうぞうを形成けいせいする。凝集ぎょうしゅうしたクロマチン構造こうぞう、すなわちヘテロクロマチンになっており、遺伝子いでんし発現はつげんは構成こうせい的てきに抑制よくせいされている。DNA は独自どくじの繰くり返かえし配列はいれつをとっており、塩基えんき配列はいれつ決定けっていが困難こんなんである。C. elegans のようにセントロメアが染色せんしょく体たい全体ぜんたいに広ひろがる生物せいぶつ種しゅもある。

細胞さいぼう周期しゅうきと細胞さいぼう分裂ぶんれつ[編集へんしゅう]

減数げんすう分裂ぶんれつと有ゆう糸いと分裂ぶんれつを比較ひかくすると減数げんすう分裂ぶんれつでは中期ちゅうきⅠの終おわりにセントロメアが不ふ分離ぶんりで、有ゆう糸いと分裂ぶんれつでは後期こうきにセントロメアが分離ぶんりする。

位置いち[編集へんしゅう]

セントロメアの位置いちは、核かく型がた分析ぶんせきの際さいに、染色せんしょく体たいの大おおきさやバンドパターンの情報じょうほうなどと共ともに、各かく染色せんしょく体たいを区別くべつする際さいの指標しひょうとして利用りようされる。

メタセントリック[編集へんしゅう]

セントロメアが染色せんしょく体たいのほぼ中央ちゅうおうに位置いちしており、二に本ほんの腕うで（短たん腕うでと長ちょう腕うで）の長ながさがほぼ等ひとしい場合ばあい、それはメタセントリック染色せんしょく体たい（Metacentric chromosome）と呼よばれる。日本語にほんごでは中部ちゅうぶ着ぎ糸いと型がた染色せんしょく体たい（ちゅうぶちゃくしがた-）、中部ちゅうぶ動どう原げん体からだ染色せんしょく体たい（ちゅうぶどうげんたい-）とも呼よばれる。ヒトの場合ばあい、1番ばん、3番ばん、16番ばん、19番ばん、20番ばん、の5本ほんがメタセントリック染色せんしょく体たいに分類ぶんるいされる^[1]。

サブメタセントリック[編集へんしゅう]

セントロメアが染色せんしょく体たいの中央ちゅうおうからややズレた所ところに位置いちしており、短たん腕うでと長ちょう腕うでを容易よういに区別くべつできるが、短たん腕うでが極端きょくたんに短みじかくない場合ばあい、それはサブメタセントリック染色せんしょく体たい（Submetacentric chromosome）と呼よばれる。日本語にほんごでは次じ中部ちゅうぶ着ぎ糸いと型がた染色せんしょく体たい（じちゅうぶちゃくしがた-）、次じ中部ちゅうぶ動どう原げん体からだ染色せんしょく体たい（じちゅうぶどうげんたい-）とも呼よばれる。ヒトの場合ばあい、2番ばん、4番ばん、5番ばん、6番ばん、7番ばん、8番ばん、9番ばん、10番ばん、11番ばん、12番ばん、17番ばん、18番ばん、X、の13本ほんがサブメタセントリック染色せんしょく体たいに分類ぶんるいされる^[1]。

アクロセントリック[編集へんしゅう]

セントロメアが染色せんしょく体たいの端はしに寄よっており、短たん腕うでが極端きょくたんに短みじかい場合ばあい、それはアクロセントリック染色せんしょく体たい（Acrocentric chromosome）と呼よばれる。日本語にほんごでは端はし部ぶ着ぎ糸いと型がた染色せんしょく体たい（たんぶちゃくしがた-）、端はし部ぶ動どう原げん体からだ染色せんしょく体たい（たんぶどうげんたい-）とも呼よばれる。ヒトの場合ばあい、13番ばん、14番ばん、15番ばん、21番ばん、22番ばん、Y、の6本ほんがアクロセントリック染色せんしょく体たいに分類ぶんるいされる^[1]。

サブテロセントリック[編集へんしゅう]

セントロメアが染色せんしょく体たいの端はし部ぶのごく近ちかくに位置いちする場合ばあい、それはサブテロセントリック染色せんしょく体たい（Subtelocentric chromosome）と呼よばれる。ヒトはサブテロセントリックと分類ぶんるいされる染色せんしょく体たいは持もたない。

テロセントリック[編集へんしゅう]

セントロメアが染色せんしょく体たいの末端まったんに位置いちする場合ばあい、それはテロセントリック染色せんしょく体たい（Telocentric chromosome）と呼よばれる。たとえば一般いっぱん的てきなハツカネズミの染色せんしょく体たいはすべてテロセントリックである^[2]^[3]。ヒトはテロセントリックと分類ぶんるいされる染色せんしょく体たいは持もたない。

ホロセントリック[編集へんしゅう]

染色せんしょく体たい全体ぜんたいがセントロメアとして機能きのうする場合ばあい、それはホロセントリック染色せんしょく体たい（Holocentric chromosome）と呼よばれる。日本語にほんごでは分散ぶんさん型がた動どう原げん体からだ染色せんしょく体たい（ぶんさんがたどうげんたい-）とも呼よばれる。この特殊とくしゅなタイプの染色せんしょく体たいは、動物界どうぶつかい・植物しょくぶつ界かいの中なかの様々さまざまな生物せいぶつにおいて見みつかるが^[4]、一番いちばん有名ゆうめいな例れいは線せん虫ちゅうの一種いっしゅ C. elegans の染色せんしょく体たいである。ヒトはホロセントリックと分類ぶんるいされる染色せんしょく体たいは持もたない。

脚註きゃくちゅう[編集へんしゅう]

^ ^a ^b ^c Tom Strachan; Andrew Read (2 April 2010). Human Molecular Genetics. Garland Science. p. 45. ISBN 978-1-136-84407-2
^ Silver, Lee M. (1995). “Karyotypes, Chromosomes, and Translocations”. Mouse Genetics: Concepts and Applications. Oxford: Oxford University Press. pp. 83–92. ISBN 978-0-19-507554-0
^ Chinwalla, Asif T.; Cook, Lisa L.; Delehaunty, Kimberly D.; Fewell, Ginger A.; Fulton, Lucinda A.; Fulton, Robert S.; Graves, Tina A.; Hillier, Ladeana W. et al. (2002). “Initial sequencing and comparative analysis of the mouse genome”. Nature 420 (6915): 520–62. doi:10.1038/nature01262. PMID 12466850.
^ Dernburg, A. F. (2001). “Here, There, and Everywhere: Kinetochore Function on Holocentric Chromosomes”. The Journal of Cell Biology 153 (6): F33–8. doi:10.1083/jcb.153.6.F33. PMC 2192025. PMID 11402076.