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光学こうがく顕微鏡けんびきょう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
研究けんきゅう実習じっしゅうよう光学こうがく顕微鏡けんびきょうれい 1:接眼せつがんレンズ、2:レボルバ、3:対物たいぶつレンズ、4:どうハンドル、5:微動びどうハンドル、6:ステージ、7:かがみ、8:コンデンサ、9:プレパラート微動びどう装置そうち
1900年代ねんだい初頭しょとうもちいられていた顕微鏡けんびきょうしき 1:接眼せつがんレンズ、2:レボルバ、3:対物たいぶつレンズ、4:どうハンドル、5:微動びどうハンドル、6:ステージ、7:かがみ、8:しぼ
双眼そうがん実体じったい顕微鏡けんびきょう
(ズーム機構きこう写真しゃしん撮影さつえい対応たいおうきょうとうつき)
双眼そうがん顕微鏡けんびきょう光学こうがくけい
A:対物たいぶつレンズ、B:ガリレオ望遠鏡ぼうえんきょう[1]、C:調整ちょうせいハンドル、D:内部ないぶ対物たいぶつレンズ、E:プリズム、F:リレーレンズ、G:もうせん、H:接眼せつがんレンズ

光学こうがく顕微鏡けんびきょう(こうがくけんびきょう)は、可視かし光線こうせんおよび近傍きんぼう波長はちょういきひかり利用りようする、顕微鏡けんびきょう一種いっしゅたん顕微鏡けんびきょう場合ばあい、これをす。

概要がいよう

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光学こうがく顕微鏡けんびきょうは、ふつう試料しりょうひかり照射しょうしゃして、透過とうかこう反射はんしゃこうあるいは蛍光けいこうなど試料しりょうはっするひかりレンズによってゆいぞうさせて観察かんさつする。観察かんさつ可能かのう倍率ばいりつ一般いっぱんすうじゅうばいからすうひゃくばい最高さいこうで2せんばい程度ていど

顕微鏡けんびきょう技術ぎじゅつのことを顕微鏡けんびきょうほうmicroscopy)、けんきょうほうという。また、試料しりょう顕微鏡けんびきょう観察かんさつできる状態じょうたいにしたものをプレパラートび、通常つうじょうスライドガラスけた試料しりょう適当てきとう屈折くっせつりつ封入ふうにゅうざいとともにカバーガラスしたふうじたものをもちいる。

顕微鏡けんびきょうなかでは最初さいしょ開発かいはつされたものであり、単一たんいつのレンズによる観察かんさつほう拡張かくちょうとして開発かいはつされた。1ぐんのレンズのみで構成こうせいされた顕微鏡けんびきょう単式たんしき顕微鏡けんびきょう(Simple optical microscope)、2ぐん以上いじょうのレンズで構成こうせいされた顕微鏡けんびきょう複式ふくしき顕微鏡けんびきょう(Compound optical microscope)とぶ。前者ぜんしゃではオランダのレーウェンフック自作じさく顕微鏡けんびきょう様々さまざま生物せいぶつがくてき発見はっけんをしたことでられる。以下いかではしゅとして後者こうしゃ複式ふくしき顕微鏡けんびきょうについてべる。

基本きほん構成こうせい

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鏡台きょうだいかがみはしら(ベース・アーム) (Base, Arm or Pillar)
顕微鏡けんびきょう骨格こっかくであり、かく要素ようそ正確せいかく位置いちささえる。
照明しょうめい装置そうち (Light Source)
観察かんさつのためのひかり供給きょうきゅうする。ランプや反射はんしゃきょう、コンデンサなど。
ステージ (Stage)
プレパラートを固定こていする。
対物たいぶつレンズ (Object Lenses)
プレパラートにめんするレンズで、中間なかま実像じつぞうむすぶ。
レボルバ (Rotating Nose Piece)
対物たいぶつレンズを複数ふくすうけてあり、これを回転かいてんさせることで使用しようする対物たいぶつレンズをえることができる。
かがみとう (Iris Diaphragm)
対物たいぶつレンズと接眼せつがんレンズとの正確せいかく位置決いちぎめをおこなひかり確保かくほする。
接眼せつがんレンズ (Binocular or Ocular Lens)
対物たいぶつレンズがむすんだなかあいだ実像じつぞう拡大かくだい観察かんさつできるようにする。
こげじゅん装置そうち (Light Dimmer)
プレパラートと対物たいぶつレンズとの距離きょり変化へんかさせピントをわせる。

顕微鏡けんびきょう光学こうがくけいは17世紀せいき発明はつめいされて以来いらいながらく経験けいけん試行錯誤しこうさくごもとづき設計せっけい制作せいさくされてきたが、19世紀せいき後半こうはんいたカール・ツァイスしゃエルンスト・アッベによって理論りろんてき基礎きそ確立かくりつされた。当時とうじカール・ツァイスしゃ製作せいさくされた顕微鏡けんびきょうのスタイルはひとつの標準ひょうじゅんとなり、世界中せかいじゅうのメーカーがそれにならった顕微鏡けんびきょう製作せいさくしたほか、その基本きほんてきなデザインは21世紀せいきいたっても学習がくしゅうよう顕微鏡けんびきょうなどにがれている。

ぞくにカール・ツァイスがたともばれる同社どうしゃで20世紀せいき初頭しょとう製作せいさくしていたタイプの顕微鏡けんびきょうでは、対物たいぶつレンズと接眼せつがんレンズがかがみとう上下じょうげ一直線いっちょくせん配置はいちされている。観察かんさつしやすくするために光学こうがくけい全体ぜんたいかたむけられるようになっているが、試料しりょう液体えきたいふうじた一時いちじプレパラートなどではかたむけることができない場合ばあいもある。

現在げんざいではプリズムをもちいてひかり屈曲くっきょくさせ、対物たいぶつレンズは垂直すいちょく(プレパラートは水平すいへい)をたもちつつ接眼せつがんレンズはななめとして観察かんさつしやすくしたものが一般いっぱんてき観察かんさつしゃのさらなる負担ふたん軽減けいげんのため、対物たいぶつレンズからはいったひかりをプリズムで分割ぶんかつして左右さゆう接眼せつがんレンズにけるタイプがおおい。このような顕微鏡けんびきょう双眼そうがん顕微鏡けんびきょう(binocular microscope)とばれることもあるが、業務ぎょうむ用途ようとではむしろ単眼たんがんほう特殊とくしゅである。撮影さつえい装置そうちようかがみとうをもつさんしきのものもあり、撮影さつえいにはひかり撮影さつえい装置そうちがわえる。

こげじゅん装置そうち(ピントわせ機構きこう)は、かつてはかがみばしらとそこに固定こていされたステージにたいしてかがみとう上下じょうげさせる構造こうぞうであったが、屈曲くっきょく光学こうがくけい採用さいようともない、かがみとうほうかがみばしら一体化いったいかしてステージおよびコンデンサを上下じょうげさせる構造こうぞう一般いっぱんした。この構造こうぞう光学こうがくてき付加ふか部品ぶひん撮影さつえい装置そうちなどのけに有利ゆうりである。

上記じょうき基本きほん構成こうせい有限ゆうげんとお補正ほせい光学こうがくけいばれ、対物たいぶつレンズと接眼せつがんレンズとの距離きょり固定こていされるなど設計せっけい自由じゆうひくく、またひかり路上ろじょうに落射照明しょうめい後述こうじゅつ)のためのハーフミラーなどを挿入そうにゅうするとぞう悪影響あくえいきょうた。これにたいし1990年代ねんだいから普及ふきゅうしてきた無限むげんとお補正ほせい光学こうがくけいにおいては、対物たいぶつレンズはちゅうあいだぞうむすばず平行へいこう光線こうせん射出しゃしゅつし、かがみとうないゆいぞうレンズ(チューブレンズ)でちゅうあいだぞうむすぶ。平行へいこう光線こうせんとなっている部分ぶぶんながさは自由じゆう変更へんこうでき、またハーフミラーなどを挿入そうにゅうしてもゴーストや収差しゅうさ発生はっせいすることがない。なお、有限ゆうげんけい無限むげんけい対物たいぶつレンズはその機能きのうまったことなるため、互換ごかんせいはない。

近年きんねん光学こうがく顕微鏡けんびきょう接眼せつがんCCDイメージセンサ液晶えきしょうディスプレイ設置せっちし、多人数たにんずうでの同時どうじ観察かんさつやデジタル撮影さつえい録画ろくが可能かのうにしたものがあり、しばしば「電子でんし顕微鏡けんびきょう」としょうしている場合ばあいがあるが、本来ほんらい電子でんし顕微鏡けんびきょうとはまったくの別物べつものである。

可視かし光線こうせん利点りてん制約せいやく

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光学こうがく顕微鏡けんびきょうは、観察かんさつしたい物体ぶったいひかり透過とうかりつなど、物体ぶったいひかりおよぼすさまざまな効果こうか利用りようするものである。可視かし光線こうせん使つか利点りてんは、電磁波でんじはよりも簡素かんそ光源こうげんもちいることができるてん、そして元々もともと可視かしてきであるために、観察かんさつしゃとどまえ可視かしこう変換へんかんする必要ひつようく、いろ情報じょうほう直接ちょくせつられるてんである。

しかし一方いっぽうで、光学こうがく顕微鏡けんびきょう性能せいのうひかり物理ぶつりてき性質せいしつ制約せいやくける。たとえば、光学こうがく顕微鏡けんびきょうにおける分解能ぶんかいのう限界げんかい可視かし光線こうせん波長はちょう部分ぶぶんおおきい。このような制約せいやくからのがれるために、より短波たんぱちょういきXせん透過とうか反射はんしゃ利用りようしたXせん顕微鏡けんびきょうや、電子でんしせん加速かそく電圧でんあつによって分解能ぶんかいのう制御せいぎょできる電子でんし顕微鏡けんびきょう開発かいはつされた。また、トンネル効果こうかもちいたトンネル顕微鏡けんびきょう原子げんしあいだりょくもちいた原子げんしあいだりょく顕微鏡けんびきょうなど、表面ひょうめん物理ぶつりがく応用おうようした顕微鏡けんびきょう実用じつようされている。

光学こうがく顕微鏡けんびきょう種類しゅるい

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普通ふつうの)顕微鏡けんびきょう

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金属きんぞく顕微鏡けんびきょう
金属きんぞく表面ひょうめん観察かんさつてきした顕微鏡けんびきょうで、対物たいぶつレンズがわからひかり試料しりょうにあてて反射はんしゃこう観察かんさつする落射照明しょうめいがた顕微鏡けんびきょうのこと。
生物せいぶつ顕微鏡けんびきょう
おも医学いがく生物せいぶつがく分野ぶんやもちいられる顕微鏡けんびきょうで、透過とうか観察かんさつがた顕微鏡けんびきょう(=あきら視野しや顕微鏡けんびきょう)のこと。
あかり視野しや顕微鏡けんびきょう
もっとも基本きほんてき光学こうがく顕微鏡けんびきょう試料しりょう均一きんいつ入射にゅうしゃこうらしたとき試料しりょうかく部分ぶぶんにおいてひかり吸収きゅうしゅうりつことなるため透過とうかこうぞうコントラストくことを利用りようする。吸収きゅうしゅうりつちいさい試料しりょうではコントラストがひく明瞭めいりょうぞうられないため染色せんしょくほどこすなどの必要ひつようがある。
くら視野しや顕微鏡けんびきょう
試料しりょうななめからひかりをあててしょうじた散乱さんらんひかり反射はんしゃこう観察かんさつする。この方法ほうほうではあかり視野しや顕微鏡けんびきょうとはぎゃくに、視野しや背景はいけいくろく、試料しりょうひかってえる。通常つうじょう光学こうがく顕微鏡けんびきょうくら視野しやコンデンサーを挿入そうにゅうするだけでこの方法ほうほう実現じつげんできる。または位相いそう顕微鏡けんびきょう調節ちょうせつすることでもくら視野しやほうによる観察かんさつ可能かのうである。物体ぶったい表面ひょうめん内部ないぶ微細びさい構造こうぞう観察かんさつには不向ふむきであるが、可視かしこう波長はちょうよりもちいさな物体ぶったい存在そんざいたかいコントラストで観察かんさつすることが可能かのうである。
双眼そうがん実体じったい顕微鏡けんびきょう
せいたて視野しやられる光学こうがくけいを2くみそなえた、比較的ひかくてきおおきな試料しりょう立体りったいてき観察かんさつするタイプの顕微鏡けんびきょう観察かんさつ倍率ばいりつ通常つうじょうすうばいすうじゅうばい比較的ひかくてきひくい。大型おおがた試料しりょう観察かんさつ顕微鏡けんびきょうでの作業さぎょう考慮こうりょ試料しりょう対物たいぶつレンズとの距離きょり(ワーキングディスタンス)が確保かくほされている(対物たいぶつレンズの焦点しょうてん距離きょりおおきい)のも特徴とくちょうである。製品せいひん検査けんさなどに利用りようされることもおおい。
倒立とうりつ顕微鏡けんびきょう
対物たいぶつレンズが観察かんさつ対象たいしょうぶつしたがわ位置いちする顕微鏡けんびきょう培養ばいよう細胞さいぼう培養ばいよう容器ようきごと観察かんさつしたり、マイクロマニピュレーションをおこなったりするのに利用りようされる。
測定そくてい顕微鏡けんびきょう
試料しりょう計測けいそく目的もくてきとした顕微鏡けんびきょう。ステージに測定機そくていき測定そくてい目盛めもりち、視野しやにもミクロメーターやテンプレートが表示ひょうじされる。観察かんさつ倍率ばいりつ正確せいかくせいともぞうゆがみを最小限さいしょうげんおさえること要求ようきゅうされる顕微鏡けんびきょうで、しゅ光線こうせんがレンズこうじくたいして平行へいこうとなるテレセントリック光学こうがくけい採用さいようするれいおおい。
解剖かいぼう顕微鏡けんびきょう
顕微鏡けんびきょうばれてはいるが、倍率ばいりつすうばい程度ていどで、ステージに虫眼鏡むしめがね固定こていしたような形態けいたいである。

位相いそう顕微鏡けんびきょう

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無色むしょく透明とうめいではあるが屈折くっせつりつことなる部分ぶぶんからなる試料しりょう観察かんさつするため顕微鏡けんびきょう屈折くっせつりつおおきな媒質ばいしつちゅうとおひかりは、屈折くっせつりつちいさい媒質ばいしつちゅうとおひかりよりもその位相いそうおくれる。この位相いそうかかわる回折かいせつひかり利用りようする顕微鏡けんびきょうである。コンデンサーと対物たいぶつレンズにより位相いそうのずれた回折かいせつこう同士どうし干渉かんしょうさせ、位相いそう明暗めいあんえて観察かんさつする。この方法ほうほうにより、ほとんど透明とうめい生物せいぶつ細胞さいぼう内部ないぶ構造こうぞう観察かんさつすることが可能かのうである。位相いそうコンデンサーと位相いそうよう対物たいぶつレンズを利用りようする。1934ねん[よう出典しゅってん]オランダのゼルニケ (Frits (Frederik) Zernike)が考案こうあん。1953ねんノーベル物理ぶつりがくしょう受賞じゅしょう

微分びぶん干渉かんしょう顕微鏡けんびきょう

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ひかりへんこうせい干渉かんしょうせい利用りようして、無色むしょく透明とうめい細胞さいぼう金属きんぞく表面ひょうめん段差だんさなどを観察かんさつする顕微鏡けんびきょうへんこう素子そしとウォラストンプリズム(ノマルスキープリズム)によって光線こうせん分離ぶんりして試料しりょうめん通過つうかさせ、試料しりょうしょうじるひかり微分びぶんぞうめんでコントラストにえる。試料しりょうめんでの光線こうせん分離ぶんりりょうをシアーりょうといい、分解能ぶんかいのうやコントラストに影響えいきょうする。現在げんざい顕微鏡けんびきょうでは、スミス・ノマルスキーがたという構成こうせいおおい。

へんこう顕微鏡けんびきょう

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物体ぶったい内部ないぶ構造こうぞう結晶けっしょう構造こうぞうによって、ひかり振動しんどう方向ほうこうえるへんこうせいゆうする。このへんこうせい観察かんさつする方法ほうほうである。光学こうがく顕微鏡けんびきょうのコンデンサーの場所ばしょにポラライザー(へんこういた)をき、対物たいぶつレンズのうしろに遅延ちえんばんとアナライザー(へんこういた)をき、試料しりょうへんこうせいふく屈折くっせつせい明暗めいあんいろちがいとして観察かんさつする。へんこういた回転かいてんおうじて、結晶けっしょうなどはあざやかないろ観察かんさつされる。岩石がんせきなどの結晶けっしょうや、生物せいぶつ試料しりょうふくまれる結晶けっしょうしつ物質ぶっしつ細胞さいぼうがいマトリックス異常いじょう沈着ちんちゃくぶつのそれぞれ一部いちぶなど)の観察かんさつもちいられる。

へんこう顕微鏡けんびきょう欠点けってんであるアナライザーの回転かいてんわずらわしさと、られた画像がぞうデータの解析かいせき処理しょり複雑ふくざつさを簡便かんべんにするシステムとして、近年きんねん LC-Polscope が発明はつめいされた。これは電子でんしてき制御せいぎょできるへんこういた画像がぞう解析かいせき装置そうちわせたもので、結晶けっしょう構造こうぞうへんこう方向ほうこう(slow axis orientation)とへんこうつよさ(retardation)がいち観察かんさつられる。染色せんしょくおかせかさね細胞さいぼう骨格こっかく観察かんさつできるため、人工じんこう授精じゅせいさせた家畜かちく受精卵じゅせいらん選別せんべつなどにもちいられている。

蛍光けいこう顕微鏡けんびきょう

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蛍光けいこう顕微鏡けんびきょうとは、試料しりょうからはっせられる蛍光けいこう観察かんさつする顕微鏡けんびきょうのこと。試料しりょう固有こゆう自発じはつ蛍光けいこう観察かんさつする場合ばあいほか蛍光けいこう色素しきそによる染色せんしょくおこなったうえ観察かんさつする場合ばあい、あるいは遺伝子いでんしえにより蛍光けいこうせいタンパク質たんぱくしつ発現はつげんさせる場合ばあいなどがある。

通常つうじょうあかり視野しや顕微鏡けんびきょうことなり、蛍光けいこう顕微鏡けんびきょうではある特定とくてい波長はちょうひかり励起れいきこう)だけを試料しりょう照射しょうしゃする。試料しりょうはっする蛍光けいこう波長はちょう励起れいきこうのものとはことなるので、フィルタなどで蛍光けいこうのみをすことができる。

光源こうげんとしてよくもちいられるのはこうあつ水銀すいぎんランプである。こうあつ水銀すいぎんランプがはっするひかりは、いくつかの特定とくてい波長はちょうひかりざったものである。これは水銀すいぎん放射ほうしゃスペクトルの波長はちょうで、254 nm、365 nm(紫外線しがいせん)、405 nm(青色あおいろこう)、546 nm(緑色みどりいろこう)などである。このひかりをフィルタやプリズムによって分割ぶんかつし、目的もくてき波長はちょうひかりだけを励起れいきこうとして照射しょうしゃする。

光源こうげんひかり顕微鏡けんびきょうかがみとう途中とちゅう接眼せつがんレンズと対物たいぶつレンズのあいだ)から波長はちょうフィルタをねたダイクロックミラー(dichroic mirror)で導入どうにゅうし、対物たいぶつレンズをとおして、試料しりょうなか観察かんさつだけに励起れいきこうて、おな対物たいぶつレンズをもちいて蛍光けいこう観察かんさつする落射しき蛍光けいこう顕微鏡けんびきょう一般いっぱんてきである。通常つうじょうあかり視野しや顕微鏡けんびきょう蛍光けいこう顕微鏡けんびきょうようのオプション機器ききけることで蛍光けいこう顕微鏡けんびきょうとして使つかえる場合ばあいおおい。

られるぞうは、くら視野しやなか蛍光けいこうはっする部分ぶぶんひかってえるものであり、通常つうじょうは迷光をふせぐため暗室あんしつ観察かんさつするか装置そうち一部いちぶ暗箱あんばこになっている。接眼せつがんレンズをとおしての肉眼にくがん観察かんさつくわえて、1990年代ねんだい以降いこうはCCDカメラをもちいた観察かんさつ装置そうち一般いっぱんしてきており、肉眼にくがんでは観察かんさつ不可能ふかのう微弱びじゃく蛍光けいこうを、冷却れいきゃくCCDなどのこう感度かんどCCDカメラをもちいて可視かしすることもおこなわれている。

CCDカメラを撮影さつえい利用りようすることのもう1つの利点りてんは、コンピュータをもちいた画像がぞう処理しょり容易よういになったことである。たんに「画像がぞうのコントラストの強調きょうちょう簡単かんたんになった」といった利点りてんのみではなく、『複数ふくすう画像がぞう比較ひかく計算けいさんすることにより、焦点しょうてんめん以外いがいからのひかりのぞく』といった処理しょり可能かのうになった[2]Deconvolution)。このような数学すうがくてき画像がぞう処理しょりによりきょう焦点しょうてんレーザー顕微鏡けんびきょうにせまる空間くうかん解像力かいぞうりょくることも可能かのうになっている。

きょう焦点しょうてんレーザー顕微鏡けんびきょう

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光源こうげんとしてガスレーザー半導体はんどうたいレーザー、そして白色はくしょく光源こうげん光源こうげんとしてもちいられる。レーザーを対物たいぶつレンズから走査そうさし、励起れいきされた試料しりょうから放出ほうしゅつされた蛍光けいこう(ないしは試料しりょうから反射はんしゃしたひかり)をピンホールとおしたのち検出けんしゅつ装置そうちもちいて検出けんしゅつ、コンピューターじょうにて画像がぞうさい構成こうせいする。ピンホールをもちいることによってどういち焦点しょうてんきょう焦点しょうてんめん以外いがいからの蛍光けいこうをシャットアウトすることができるので、開口かいこうすう依存いぞんしたあつさの光学こうがく切片せっぺんぞうることができる。たとえばArレーザー(波長はちょう488nm)で開口かいこうすう1.33のレンズをもちいたときにはあつやく200nmの光学こうがく切片せっぺんることとなり、透過とうかがた電子でんし顕微鏡けんびきょうにはおおきくおとるものの、従来じゅうらい光学こうがく顕微鏡けんびきょうよりもたか空間くうかん解像力かいぞうりょく容易よういることができる。透過とうかがた電子でんし顕微鏡けんびきょう場合ばあいくらべて、試料しりょう作成さくせい簡単かんたんであることも相俟あいまって、1990年代ねんだい以降いこう生物せいぶつがく分野ぶんやにて飛躍ひやくてき普及ふきゅうした。欠点けってん価格かかくたかいことである。

光学こうがくけいとしては、おも生物せいぶつよう使用しようされる蛍光けいこうようども焦点しょうてん顕微鏡けんびきょうと、おも工業こうぎょうよう使用しようされる反射はんしゃがたきょう焦点しょうてん顕微鏡けんびきょうの2種類しゅるいがある。生物せいぶつようは、細胞さいぼう組織そしき研究けんきゅうに、工業こうぎょうよう材料ざいりょう表面ひょうめん検査けんさ半導体はんどうたい検査けんさなどにもちいられている。

走査そうさ方式ほうしきは、試料しりょう固定こていした状態じょうたいでレーザーをミラーや回転かいてんディスクにより走査そうさするビーム走査そうさがたと、ひかりビームは固定こていして試料しりょう(スライドガラス)を縦横じゅうおう走査そうさする試料しりょう走査そうさがたがある。後者こうしゃDNAマイクロアレイ測定そくていなどに使用しようされている。

前項ぜんこう記述きじゅつのある、コンピューターを使つかった画像がぞう処理しょりによる画質がしつ分解能ぶんかいのう向上こうじょうは、きょう焦点しょうてんレーザー顕微鏡けんびきょうでも同様どうよう有効ゆうこうであり、光学こうがく限界げんかいせまる、あるいはそれをえる空間くうかん解像力かいぞうりょくることも可能かのうになってきている。

ぜん反射はんしゃ照明しょうめい蛍光けいこう顕微鏡けんびきょう

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蛍光けいこう顕微鏡けんびきょう照明しょうめいぜん反射はんしゃ利用りようする方法ほうほうこう屈折くっせつりつおおきい媒質ばいしつから屈折くっせつりつちいさい媒質ばいしつに、ある角度かくどよりおおきな角度かくど入射にゅうしゃすると、ぜん反射はんしゃこる。ぜん反射はんしゃさいには境界きょうかいめんひかりのしみし(エバネッセント)がある。プレパラートなどで、屈折くっせつりつおおきいスライドガラスと、それよりちいさいみず境界きょうかいめんでもこれらの現象げんしょうこるので、蛍光けいこう顕微鏡けんびきょうでガラスめんぜん反射はんしゃになるような照明しょうめいもちいると、ガラスめん近傍きんぼう試料しりょうのみ選択せんたくてき蛍光けいこう観察かんさつができる。蛍光けいこう検出けんしゅつりょく生体せいたい1分子ぶんしをも達成たっせいし、いち分子ぶんし細胞さいぼう生物せいぶつがく貢献こうけんしている。1990年代ねんだい日本にっぽんおおきく発展はってんした。

ラマン顕微鏡けんびきょう

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レーザーラマン顕微鏡けんびきょうともばれる。レーザーこう試料しりょう照射しょうしゃしたとき発生はっせいするラマン散乱さんらんひかり検出けんしゅつすることで画像がぞうる。ラマン散乱さんらんこう波長はちょう波長はちょうシフトりょう)は、試料しりょう存在そんざいする分子ぶんし結合けつごう結晶けっしょう格子こうしとう振動しんどうすう依存いぞんする物質ぶっしつ固有こゆうである。したがって試料しりょうのラマン散乱さんらんスペクトルから、その試料しりょうふくまれる物質ぶっしつ同定どうていし、同時どうじ分布ぶんぷることが可能かのうとなる。ラマン散乱さんらんこう微弱びじゃくであり、従来じゅうらいはその検出けんしゅつやイメージングにようする時間じかん現実げんじつてきなものではなかったが、光学こうがくけい工夫くふうとプロセッサの発達はったつともな演算えんざん時間じかん短縮たんしゅくにより、顕微鏡けんびきょうへの実装じっそう可能かのうとなった。きょう焦点しょうてん光学こうがくけいにより空間くうかん分解能ぶんかいのうるもの、せま帯域たいいき干渉かんしょうフィルタによりラマン散乱さんらんこう分離ぶんりするもの、非線形ひせんけいラマン効果こうか利用りようするものなどがある。物質ぶっしつ同定どうてい能力のうりょくとしては質量しつりょう分析ぶんせきXせん元素げんそ分析ぶんせきおよばないが、処理しょり対象たいしょうきたまま観察かんさつできるてんは、非常ひじょうおおきなアドバンテージである。

非線形ひせんけい光学こうがく顕微鏡けんびきょう

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非線形ひせんけい光学こうがく顕微鏡けんびきょうとはひかり高調こうちょう発生はっせいひかり混合こんごうひかりパラメトリック効果こうか光子こうし遷移せんい非線形ひせんけい屈折くっせつりつ変化へんか電場でんじょう依存いぞん屈折くっせつりつ変化へんかとう非線形ひせんけい光学こうがく現象げんしょう利用りようした顕微鏡けんびきょう

光学こうがく顕微鏡けんびきょう使用しよう方法ほうほう

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教育きょういくよう顕微鏡けんびきょう場合ばあいれいしめす。

  1. 顕微鏡けんびきょう直射ちょくしゃ日光にっこうたらない、あかるい場所ばしょく。
  2. どうハンドルをまわし、レボルバとステージとをとおざける。
  3. レンズをケースからす。対物たいぶつレンズはうえにして収納しゅうのうされているので、さかさにいてからケース本体ほんたいはずすようにし、からのほこり侵入しんにゅうふせぐ。
  4. 接眼せつがんレンズ、対物たいぶつレンズを、かがみとうないへのほこり侵入しんにゅうふせぐためこのじゅんける。レボルバを回転かいてんさせ、てい倍率ばいりつ対物たいぶつレンズを選択せんたくする。
  5. 接眼せつがんレンズをのぞきながら反射はんしゃきょううごかし、あかるさが均一きんいつになるようにする。危険きけんなのでけっして直射ちょくしゃ日光にっこうもちいてはならない。
  6. プレパラートをステージのうえき、観察かんさつ対象たいしょうぶつ対物たいぶつレンズの真下ましたになるように固定こていする。
  7. 顕微鏡けんびきょうよこからながら、どうハンドルをうごかして対物たいぶつレンズとプレパラートをちかづける。
  8. 接眼せつがんレンズをのぞきながら、どうハンドルで対物たいぶつレンズをステージからとおざける方向ほうこううごかしてピントをわせる。このとき、ぎゃくまわすとプレパラートと対物たいぶつレンズが接触せっしょくして両者りょうしゃ破損はそんする危険きけんがある。
  9. おおむねピントがったらプレパラートをうごかして観察かんさつしやすいぞうさがす。ぞう上下じょうげ左右さゆうぎゃくうつっているのでうごかす方向ほうこう注意ちゅういする。
  10. 必要ひつようおうじレボルバを回転かいてんさせこう倍率ばいりつ対物たいぶつレンズにえる。通常つうじょうどう焦点しょうてん設計せっけいになっており対物たいぶつレンズをえてもピントがずれないようになっているが、他社たしゃせいなど設計せっけいことなるレンズがざっているとうまくいかないこともある。
  11. しぼりで照明しょうめいを、微動びどうハンドルでピントを調節ちょうせつしつつ観察かんさつする。
  12. 使用しようほこりよごれをって収納しゅうのうする。ごく頻繁ひんぱん使用しようするのであればかならずしもレンズをはず必要ひつようはないが、通常つうじょうぎゃく順序じゅんじょはずし、収納しゅうのうする。まんいちレンズがよごれていたら説明せつめいしょしたがって清掃せいそうする。一般いっぱんてきにはカメラのレンズと同様どうようほこりはらってからレンズクリーニングペーパーでく。皮脂ひしなどのよごれには微量びりょうのエタノールなどで湿しめらせてもちいる。
  • しぼりの使つかかた教育きょういくよう顕微鏡けんびきょうではえんばんしぼりをそなえることがおおく、ステージの裏側うらがわ大小だいしょうあなひらいたえんばんけてある。これを回転かいてんさせて使用しようするあなえらび、照明しょうめいされる範囲はんい入射にゅうしゃ光線こうせん角度かくど範囲はんい調節ちょうせつする。あかるくしようと必要ひつよう以上いじょうおおきなあなもちいて観察かんさつりょう域外いきがいらしても迷光がえるなど有害ゆうがい無益むえきである。しぼりはぞうのコントラストや焦点しょうてん深度しんど(ピントが奥行おくゆき)にも関係かんけいし、ちいさくしぼったほうがいずれもおおきくなる。ただしちいさくしぼりすぎると解像度かいぞうどくらくなってかえってにくくなる。
  • ピント調節ちょうせつ手作業てさぎょううすった試料しりょう微生物びせいぶつみずふうじたようなプレパラートにはあつみがあり、とくこう倍率ばいりつでは全体ぜんたい一時いちじにピントをわせることはできない。そのためつねにピントを調節ちょうせつしながら観察かんさつする必要ひつようがあるが、このようなときはおおきくうごかすことはないので微動びどうハンドルをもちいる。
  • 外部がいぶ光源こうげん利用りよう照明しょうめい装置そうちとして反射はんしゃきょうのみをそなえる場合ばあい自然しぜんこう利用りようすると室内しつないでは特定とくてい方向ほうこうからしかれられないので、多人数たにんずうでいる場合ばあいなど全員ぜんいん利用りようできるとはかぎらない。天候てんこうにも左右さゆうされる。そのため、机上きじょうちょくかん蛍光けいこうとうたいらに光源こうげん装置そうちがあり、そのまえ顕微鏡けんびきょうならべて利用りようする。また、かがみわりにその固定こていけることのできる簡易かんい光源こうげんもある。

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 接眼せつがんがわおうレンズをもちいてせい立像りつぞう光学こうがくけい
  2. ^ ApoTome

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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