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蛍光けいこう顕微鏡けんびきょう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
オリンパスせいの落射がた蛍光けいこう顕微鏡けんびきょうかがみとうじょうデジタルカメラ接続せつぞくされている。この蛍光けいこう顕微鏡けんびきょうには微分びぶん干渉かんしょう顕微鏡けんびきょうのユニットもまれている。
蛍光けいこう染色せんしょくおこなって蛍光けいこう顕微鏡けんびきょう観察かんさつしたリンパ管りんぱかん内皮ないひ細胞さいぼう

蛍光けいこう顕微鏡けんびきょう(けいこうけんびきょう、Fluorescence microscope, Epifluorescent microscope, MFM)は、生体せいたいまたは生体せいたい試料しりょうからの蛍光けいこう燐光りんこう現象げんしょう観察かんさつすることによって、対象たいしょう観察かんさつする顕微鏡けんびきょうである。反射はんしゃこう透過とうか光画こうがぞう同時どうじ観察かんさつすることもある。生物せいぶつがく医学いがくにおける研究けんきゅう臨床りんしょう検査けんさ浸透しんとうさがせきず検査けんさなどにもちいられる。

概要がいよう

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通常つうじょう光学こうがく顕微鏡けんびきょうはタングステンランプ・ハロゲンランプなどを光源こうげんとして観察かんさつおこなうが、蛍光けいこう顕微鏡けんびきょう蛍光けいこうせいをもった試料しりょう観察かんさつするためにちょう高圧こうあつ水銀すいぎんとうキセノンランプ紫外線しがいせんLEDレーザーこうなどをもちいて蛍光けいこう物質ぶっしつ励起れいき波長はちょうでの照明しょうめい可能かのうとしている。

励起れいきこうにはきん紫外線しがいせん(UV励起れいき・334/365nm)・青色あおいろこう(B励起れいき・405/435/490nm )・緑色みどりいろこう(G励起れいき・546nm)などがもちいられる。励起れいき光源こうげんにはちょう高圧こうあつ水銀すいぎんとうもちいることがおおい。これは、紫外線しがいせんでの励起れいきおこなうことがあるためである。ちょう高圧こうあつ水銀すいぎんとうはその動作どうさ原理げんりから専用せんようこうあつ電源でんげん装置そうち必要ひつようであり、定期ていきてき水銀すいぎん電球でんきゅう交換こうかん必要ひつようである。そのため、近年きんねん小型こがたとメンテナンスの容易たやすさをねらって紫外線しがいせんLEDをもちいた製品せいひん開発かいはつされている。

紫外線しがいせんもちいる場合ばあいには、被曝ひばくによって人体じんたいへの悪影響あくえいきょう発生はっせいする可能かのうせいがあるため、紫外線しがいせん散乱さんらんする部位ぶい周囲しゅういには紫外線しがいせんカットフィルタをもうけるなどして人体じんたい保護ほごおこなう。ちょう高圧こうあつ水銀すいぎんとうから発生はっせいするひかり人体じんたい有害ゆうがいせいとくおおきいUV-Cをふくむ。

構造こうぞうてきには透過とうかがた蛍光けいこう顕微鏡けんびきょうと落射がた蛍光けいこう顕微鏡けんびきょう大別たいべつされる。透過とうか蛍光けいこう顕微鏡けんびきょうほう構造こうぞう簡単かんたん歴史れきしふるいが、現在げんざいでは技術ぎじゅつ革新かくしん結果けっかから高性能こうせいのう余地よちおおきい落射がた蛍光けいこう顕微鏡けんびきょう中心ちゅうしんとなっている。

透過とうかがた蛍光けいこう顕微鏡けんびきょう

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  • 通常つうじょう光学こうがく顕微鏡けんびきょう生物せいぶつ顕微鏡けんびきょう)のように、下方かほうから励起れいきこう照射しょうしゃする。このとき光源こうげんにフィルタ(励起れいきフィルタ)をけ、励起れいきこう波長はちょうのみを照射しょうしゃする。
  • くら視野しやコンデンサをもちい、試料しりょうプレパラートに励起れいきこうてる
  • 試料しりょうから発生はっせいした蛍光けいこうと、試料しりょうによって散乱さんらんされた励起れいきこうのみが接眼せつがんかう
  • 目的もくてきとする蛍光けいこう波長はちょうのみを透過とうかするフィルタ(吸収きゅうしゅうフィルタ)をもちい、蛍光けいこうのみを
  • 蛍光けいこう観察かんさつする

落射がた蛍光けいこう顕微鏡けんびきょう

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落射がた蛍光けいこう顕微鏡けんびきょう原理げんり
  • みぎ光源こうげんからひかり虹色にじいろのライン)は励起れいきフィルタで励起れいき波長はちょうひかりのみに制限せいげんされて励起れいきこう紺色こんいろのライン)となる。
  • 励起れいきこうはダイクロイックミラーで反射はんしゃされ、対物たいぶつレンズをとおして試料しりょう照明しょうめいする。
  • 励起れいきされた試料しりょうから発生はっせいした蛍光けいこう緑色みどりいろのライン)は対物たいぶつレンズをとおして接眼せつがんかう。
  • 蛍光けいこうはダイクロイックミラーで反射はんしゃされず直進ちょくしんする。
  • 吸収きゅうしゅうフィルタでは蛍光けいこう以外いがい波長はちょうひかりのぞかれる。
  • 蛍光けいこう接眼せつがんとどき、肉眼にくがん観察かんさつ/カメラとう撮影さつえいされる
  • 落射照明しょうめい同軸どうじく照明しょうめい)で励起れいきこう照射しょうしゃする。落射照明しょうめい反射はんしゃきょうとしてダイクロイックミラーもちい(励起れいきフィルタを補助ほじょてきもちいることもある)、励起れいきこう波長はちょうのみを試料しりょう照射しょうしゃする。
  • 試料しりょうから発生はっせいした蛍光けいこうと、試料しりょうによって散乱さんらんされた励起れいきこうのみが接眼せつがんかう
  • 目的もくてきとする蛍光けいこう波長はちょうのみを透過とうかする吸収きゅうしゅうフィルタをもちい、蛍光けいこうのみを
  • 蛍光けいこう観察かんさつする

透過とうかがた蛍光けいこう顕微鏡けんびきょう構造こうぞう簡単かんたん安価あんかであったが、励起れいきこう強度きょうどげるのに限界げんかいがあること、位相いそう観察かんさつわせることができないこと・あつみのある試料しりょう接眼せつがんレンズがわ蛍光けいこう発生はっせいさせることがむずかしいことなどから関連かんれん光学こうがく技術ぎじゅつ革新かくしんすすんだ現在げんざいでは落射がた蛍光けいこう顕微鏡けんびきょう主流しゅりゅうである。なお、光源こうげんえによって透過とうか・落射の両方りょうほう観察かんさつほう対応たいおうしている顕微鏡けんびきょうもある。

ツァイスしゃのフルオール対物たいぶつレンズ

対物たいぶつレンズをとおして励起れいきこう照射しょうしゃするという原理げんりじょう紫外線しがいせんもちいた励起れいきおこなうには紫外線しがいせん透過とうかりつたかく、レンズ素材そざいによる蛍光けいこう発生はっせい自家じか蛍光けいこう後述こうじゅつ)のすくない対物たいぶつレンズ必要ひつようである。この目的もくてき開発かいはつされた対物たいぶつレンズはフルオール(Fluor/Fluar,ドイツぼたるせき意味いみする・FLともりゃくされる)とばれる。

ヘキスト染色せんしょくおこなって観察かんさつしたHeLa細胞さいぼう染色せんしょくたいのみが染色せんしょくされている。

蛍光けいこう観察かんさつにおける染色せんしょく

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蛍光けいこう観察かんさつのための特殊とくしゅ染色せんしょくほうとして、蛍光けいこう染色せんしょく化学かがくてき蛍光けいこう染色せんしょく抗体こうたい蛍光けいこう染色せんしょくなどがおこなわれる。

蛍光けいこう染色せんしょくではかく細胞さいぼうないしょう器官きかんpHイオンなどにたいして染色せんしょくせい特異とくいせいたか蛍光けいこう色素しきそもちい、蛍光けいこう染色せんしょくおこなわれる。場合ばあいによっては複数ふくすう蛍光けいこう色素しきそもちい、器官きかんごとにけること(多重たじゅう染色せんしょく)もおこなわれる。 蛍光けいこう色素しきそにはDAPIローダミンフルオレセインやその類縁るいえん化合かごうぶつなどがもちいられる。化学かがく物質ぶっしつほかに、つぶみちおうじて様々さまざま蛍光けいこう特性とくせい量子りょうしドット染色せんしょくもちいられる。

抗体こうたい蛍光けいこう染色せんしょくでは抗原こうげん抗体こうたい反応はんのう利用りようし、蛍光けいこう色素しきそ標識ひょうしき蛍光けいこうラベル)した抗体こうたい試料しりょうませて染色せんしょくおこなう。抗原こうげんとなる物質ぶっしつたいしてたか特異とくいせい染色せんしょくおこなえるため、臨床りんしょう検査けんさなどにもちいられる。

これらの蛍光けいこう色素しきそは、照射しょうしゃする励起れいきこう強度きょうどたかすぎると褪色たいしょくしてしまうことがある。そのため励起れいきこうつよさをしぼったり、褪色たいしょく防止ぼうしざいくわえるなどの対策たいさくおこなわれる。

化学かがくてき蛍光けいこう染色せんしょくでは、試料しりょう試薬しやく処理しょりして蛍光けいこうせい物質ぶっしつ転換てんかんさせ、蛍光けいこうせいとなった部位ぶい観察かんさつする手法しゅほうである。

に、緑色みどりいろ蛍光けいこうタンパク質たんぱくしつ (GFP) などの蛍光けいこうタンパク質たんぱくしつ誘導ゆうどうする遺伝子いでんし遺伝子いでんしによって導入どうにゅうし、観察かんさつする手法しゅほうもある。(これについてはレポーター遺伝子いでんし詳述しょうじゅつされている)

その

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試料しりょうから発生はっせいする蛍光けいこうは、一般いっぱんてき励起れいきこうたいしてきわめて微弱びじゃくであるため、S/N向上こうじょうさせるために観測かんそく場所ばしょ暗黒あんこく状態じょうたいにするなどの必要ひつようがある。近年きんねん冷却れいきゃくCCDカメラなどの観測かんそく装置そうちもちい、長時間ちょうじかん露出ろしゅつおこなってきわめて微弱びじゃく蛍光けいこうでも観察かんさつし、画像がぞう処理しょりによってたか解像度かいぞうど・コントラストをることができるようになった。

試料しりょうによっては、観察かんさつ対象たいしょうとなる部位ぶい以外いがいから蛍光けいこう発生はっせいし、これが背景はいけいノイズとなって観察かんさつ邪魔じゃまになることがある。この現象げんしょうを“自家じか蛍光けいこう”とぶ。生物せいぶつ試料しりょうとく問題もんだいになるのはクロロフィル bコラーゲンフィブリリンフラビン・インドールアミンるいNADHNADPHポリフェノールるいトリプトファンなどがげられる。この現象げんしょうをクリアするために、対象たいしょう物質ぶっしつ化学かがくてきのぞく、問題もんだいとなる物質ぶっしつ蛍光けいこうしない波長はちょう励起れいきおこなうなどの手法しゅほうがある。

また、試料しりょう混在こんざいする物質ぶっしつ以外いがいにも、スライドガラスカバーガラスあぶらひたようオイル・顕微鏡けんびきょう使用しようされているレンズざいなどが自家じか蛍光けいこうこすこともある。蛍光けいこう微弱びじゃくである試料しりょうあつか場合ばあいにはてい蛍光けいこうせいガラスをもちいたスライドガラス・カバーガラスを使用しようすることがもとめられる。

蛍光けいこう顕微鏡けんびきょう応用おうよう

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きょう焦点しょうてんレーザー顕微鏡けんびきょう励起れいき波長はちょうレーザー多段ただんスキャン照射しょうしゃおこない、られた蛍光けいこう合成ごうせいすることにより擬似ぎじてきうつしかい深度しんどきわめてふかくとることができる顕微鏡けんびきょうである。これにより試料しりょうの3次元じげん構造こうぞう観察かんさつ可能かのうである。

ぜん反射はんしゃ照明しょうめい蛍光けいこう顕微鏡けんびきょうエバネッセントじょう利用りようした局所きょくしょてき励起れいきおこない、きわめてうつしかい深度しんどあさくすることが可能かのうである。場合ばあいによってはいち分子ぶんし蛍光けいこう分子ぶんし挙動きょどう観測かんそくすることもでき、いち分子ぶんし細胞さいぼう生物せいぶつがく生理学せいりがく発展はってん貢献こうけんしている。

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Bradbury, S. and Evennett, P., Fluorescence microscopy., Contrast Techniques in Light Microscopy., BIOS Scientific Publishers, Ltd., Oxford, United Kingdom (1996).
  • Rost, F. and Oldfield, R., Fluorescence microscopy., Photography with a Microscope, Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom (2000).

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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