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みき細胞さいぼう

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マウスはいせいみき細胞さいぼうみどり部分ぶぶん小型こがたはいせいみき細胞さいぼう細胞さいぼうかたまりであり、まわりの細胞さいぼうはフィーダー細胞さいぼう

みき細胞さいぼう(かんさいぼう、stem cell)は、分裂ぶんれつして自分じぶんおな細胞さいぼうつくる(Self-renewal)能力のうりょく自己じこ複製ふくせいのう)と、べつ種類しゅるい細胞さいぼう分化ぶんかする能力のうりょくち、際限さいげんなく増殖ぞうしょくできる細胞さいぼう定義ていぎされている[1]発生はっせいにおける細胞さいぼう系譜けいふみき (stem) になることから名付なづけられた。みき細胞さいぼうからしょうじたふたつのむすめ細胞さいぼうのうち、すくなくとも一方いっぽうおなみき細胞さいぼうでありつづけることによって分化ぶんか細胞さいぼう供給きょうきゅうすることができる。このてん分化ぶんかした細胞さいぼうことなっており、発生はっせい過程かてい組織そしき器官きかん維持いじにおいて細胞さいぼう供給きょうきゅうする役割やくわりになっている。

みき細胞さいぼうでは分化ぶんか誘導ゆうどうする遺伝子いでんし発現はつげん抑制よくせいする機構きこうはたらいており、これは外部がいぶからのシグナルクロマチン構造こうぞう変換へんかんなどによっておこなわれる。普通ふつうからだ細胞さいぼうテロメラーゼいているため細胞さいぼう分裂ぶんれつたびテロメアみじかくなるがみき細胞さいぼうではテロメラーゼが発現はつげんしているため、テロメアのながさが維持いじされる。これは分裂ぶんれつかえみき細胞さいぼう必要ひつよう機能きのうである。みき細胞さいぼう性質せいしつ維持いじできなくなるとあらたな細胞さいぼう供給きょうきゅうされなくなり、早老そうろうしょうにんなどの原因げんいんとなる。

みき細胞さいぼう分裂ぶんれつ

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みき細胞さいぼう分裂ぶんれつによりしょうじたむすめ細胞さいぼうのうちすくなくとも一部いちぶはは細胞さいぼうおなみき細胞さいぼうまれることがみき細胞さいぼう特徴とくちょうである。このとき分裂ぶんれつによりしょうずる細胞さいぼう片方かたがた別種べっしゅ細胞さいぼう分化ぶんかする場合ばあいと、両方りょうほう細胞さいぼうみき細胞さいぼうであるが環境かんきょうおうじて一部いちぶ分化ぶんかする場合ばあいがある。前者ぜんしゃ方式ほうしきではみき細胞さいぼうすうえることができないため、みき細胞さいぼう損傷そんしょう修復しゅうふくできない。一方いっぽう後者こうしゃ方式ほうしきではみき細胞さいぼうすう調節ちょうせつ可能かのうである。また、細胞さいぼう集団しゅうだん全体ぜんたい半数はんすうみき細胞さいぼうまればみき細胞さいぼうすう維持いじできるため、単一たんいつ細胞さいぼう分裂ぶんれつについては両方りょうほうむすめ細胞さいぼう分化ぶんかすることもある。[1]

みき細胞さいぼうれい

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受精卵じゅせいらん全能ぜんのうせい)からつくられるはいせいみき細胞さいぼう(ES細胞さいぼう)は、胎盤たいばんなどのはい体外たいがい組織そしきのぞくすべての種類しゅるい細胞さいぼう分化ぶんかすることができる多能たのうせいゆうする。また生体せいたいうちかく組織そしきにも成体せいたいみき細胞さいぼう組織そしきみき細胞さいぼうからだせいみき細胞さいぼう)とばれる種々しゅじゅみき細胞さいぼうがあり、通常つうじょう分化ぶんかすることができる細胞さいぼう種類しゅるい限定げんていされている。たとえば骨髄こつづいなか造血ぞうけつみき細胞さいぼう血球けっきゅうのもととなり、神経しんけいみき細胞さいぼう神経しんけい細胞さいぼうおよびグリア細胞さいぼうへと分化ぶんかする。このほかにも肝臓かんぞうをつくるかんみき細胞さいぼう皮膚ひふ組織そしきになる皮膚ひふみき細胞さいぼう、また生殖せいしょく細胞さいぼうをつくり生殖せいしょくみき細胞さいぼうなどさまざまな種類しゅるいがあり医療いりょう分野ぶんやへの応用おうよう目指めざして再生さいせい医学いがくさかんに研究けんきゅうおこなわれている。再生さいせい医学いがくへの応用おうようとしては、従来じゅうらいからおこなわれている造血ぞうけつみき細胞さいぼう移植いしょくや、近年きんねんその実用じつよう注目ちゅうもくあつまっている脂肪しぼうみき細胞さいぼう移植いしょくなどがある。表皮ひょうひみき細胞さいぼうもうつつみバルジbulge領域りょういきあぶらせんのすぐ)にあるが、そとにもあるとかんがえられている。

分化ぶんか能力のうりょくによる分類ぶんるい

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みき細胞さいぼう分化ぶんか能力のうりょくちがいによって、以下いかのような分類ぶんるいがなされている。

分化ぶんか全能ぜんのうせい

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分化ぶんか全能ぜんのうせい(Totipotency)とは、胎盤たいばんなどのはい体外たいがい組織そしきふくむ、いち個体こたい形成けいせいするすべての細胞さいぼうしゅへと分化ぶんか可能かのう能力のうりょくす。受精卵じゅせいらん(および4~8かいたまごわりまで[2])だけがつ、細胞さいぼう系列けいれつ頂点ちょうてん分化ぶんか能力のうりょくである。

多能たのうせい

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多能たのうせい[3](Pluripotency)とは、個体こたい形成けいせいしないが、さん胚葉はいよううち胚葉はいようちゅう胚葉はいようそと胚葉はいよう)にぞくする細胞さいぼう系列けいれつすべてへ分化ぶんか能力のうりょくす。はいばん内部ないぶ細胞さいぼうかたまり[2]、そこから樹立じゅりつされたES細胞さいぼうなどが分化ぶんか能力のうりょくである。この能力のうりょくみき細胞さいぼう万能ばんのう細胞さいぼう呼称こしょうされることがある。

分化ぶんかのう

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分化ぶんかのう[4](Multipotency)とは、分化ぶんか可能かのう細胞さいぼう系列けいれつ限定げんていされているが、多様たよう細胞さいぼうしゅ分化ぶんか可能かのう能力のうりょくす。一般いっぱんてき胚葉はいようえた分化ぶんかおこなえないが、例外れいがいもある。からだせいみき細胞さいぼう組織そしきみき細胞さいぼう成体せいたいみき細胞さいぼうなどが分化ぶんか能力のうりょく。multipotencyは多能たのうせいやくされることもあり、多能たのうせい(pluripotency)と区別くべつするために分化ぶんかふくのうせいとする提案ていあんもある。

オリゴポテンシー

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オリゴポテンシー(Oligopotentcy)とは、前駆ぜんく細胞さいぼうすうしゅ細胞さいぼうしゅにのみ分化ぶんか可能かのう能力のうりょくす。

たん分化ぶんかのう

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たん分化ぶんかのう[6]またはたんのうせい[7](Unipotency)とは分化ぶんか可能かのう細胞さいぼうしゅいち種類しゅるい限定げんていされている分化ぶんか能力のうりょくす。前駆ぜんく細胞さいぼうばれることもある。みき細胞さいぼうとして分裂ぶんれつ増殖ぞうしょくするか、分化ぶんかしてべつの(みき細胞さいぼう以外いがいの)細胞さいぼうしゅ変化へんかすることができる。

有効ゆうこうせい

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みき細胞さいぼう治療ちりょう利用りようするには、すう週間しゅうかん培養ばいよう必要ひつようとなり、汚染おせんけるには経験けいけん技術ぎじゅつ必要ひつようとなる[8]血小板けっしょうばん血漿けっしょう (PRP) とはことなり、特定とくてい成長せいちょう因子いんしとサイトカインがさんされる[8]。しかし併用へいよう可能かのうである[8]

2016ねんのレビューは、みき細胞さいぼうもちいた化粧けしょうひんランダム比較ひかく試験しけん (RCT) による証拠しょうこけているとしている[9]

ほとんどの成長せいちょう因子いんしは2まんダルトンの分子ぶんしりょうがあり、分子ぶんしりょうが500ダルトンをえる場合ばあいには塗布とふしても角質かくしつそう通過つうかしないため、マイクロニードリング使つか浸透しんとうせいたかめられる[10]。25にんのRCTで、マイクロニードリングとヒトはいせいみき細胞さいぼう培養ばいようえき併用へいようはマイクロニードリングのみ(偽薬ぎやく生理せいりしょく塩水えんすい)よりも、シワと色素しきそ沈着ちんちゃく有意ゆうい改善かいぜん(10週間しゅうかん)し、培地ばいちには上皮じょうひ成長せいちょう因子いんし (EGF)、線維せんい細胞さいぼう成長せいちょう因子いんし-2 (FGF-2)、顆粒かりゅうだまマクロファージコロニー刺激しげき因子いんし (GM-CSF)、インターロイキン-6などがふくまれていた[10]同様どうように48にんのRCTで、ヒトひつじまくみき細胞さいぼう培養ばいようえき併用へいようしたほうが、シワと毛穴けあな改善かいぜんした(2かげつ[11]同様どうように10にんでのかお半面はんめん試験しけんでは、羊水ようすい由来ゆらいあいだけいみき細胞さいぼう美容びようえき併用へいようしたほうが、ニキビによる瘢痕はんこん改善かいぜんした(1かげつ[12]。15にんのRCTでフラクショナルRFとヒトみき細胞さいぼう培養ばいようえき併用へいようした場合ばあい、RFのみより保湿ほしつせい色素しきそのメラニン、あかみ、とく肌荒はだあれが改善かいぜんされた[13]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b Alberts, Bruce; Johnson, Alexander; Lewis, Julian; Raff, Martin; Roberts, Keith; Walter, Peter「専門せんもんした組織そしきみき細胞さいぼう組織そしき再生さいせい」『細胞さいぼう分子生物学ぶんしせいぶつがく』(5th)ニュートンプレス、2010ねん 
  2. ^ a b Scott F. Gilbert『ギルバート発生はっせい生物せいぶつがく阿形あがた清和きよかず高橋たかはし淑子としこ、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2015ねんISBN 978-4-89592-805-2 
  3. ^ 岩波いわなみ生物せいぶつがく辞典じてんだいはんでは、「(発生はっせいの)多能たのうせい」の訳語やくごが「Pluripotency」であるとされている。
  4. ^ ライフサイエンス辞書じしょオンラインサービス”. 2014ねん2がつ28にち閲覧えつらん
  5. ^ Jukes, J; Moth, S; Post, J; van Blitterswijk, C; Karperien, M; de Boer, J (2008), “Stem cells”, Tissue Engineering (1st ed.), Academic Press, pp. 3, ISBN 978-0-12-370869-4 
  6. ^ たん分化ぶんかのう 学術がくじゅつ用語ようご日本語にほんご英語えいご対応たいおう”. 2014ねん2がつ28にち閲覧えつらん
  7. ^ たんのうせい 学術がくじゅつ用語ようご日本語にほんご英語えいご対応たいおう”. 2014ねん2がつ28にち閲覧えつらん
  8. ^ a b c Shwetha Hulimavu Ramaswamy Reddy, Roopa Reddy, N. Chaitanya Babu, G. N. Ashok (2018). “Stem-cell therapy and platelet-rich plasma in regenerative medicines: A review on pros and cons of the technologies”. Journal of oral and maxillofacial pathology : JOMFP 22 (3): 367–374. doi:10.4103/jomfp.JOMFP_93_18. PMC 6306612. PMID 30651682. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6306612/. 
  9. ^ Lee CM (2016-12). “Fifty years of research and development of cosmeceuticals: a contemporary review”. Journal of cosmetic dermatology 15 (4): 527–539. doi:10.1111/jocd.12261. PMID 27496663. 
  10. ^ a b Lee, Hee Jung; Lee, Eo Gin; Kang, Sangjin; et al (2014). “Efficacy of Microneedling Plus Human Stem Cell Conditioned Medium for Skin Rejuvenation: A Randomized, Controlled, Blinded Split-Face Study”. Annals of Dermatology 26 (5): 584. doi:10.5021/ad.2014.26.5.584. PMC 4198585. PMID 25324650. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4198585/. 
  11. ^ Prakoeswa, Cita Rosita Sigit; Pratiwi, Febrina Dewi; Herwanto, Nanny; et al (2018). “The effects of amniotic membrane stem cell-conditioned medium on photoaging”. Journal of Dermatological Treatment 30 (5): 478–482. doi:10.1080/09546634.2018.1530438. PMID 30265171. 
  12. ^ El-Domyati, Moetaz; Moftah, Noha H.; Nasif, Ghada A.; et al (2019). “Amniotic fluid‐derived mesenchymal stem cell products combined with microneedling for acne scars: A split‐face clinical, histological, and histometric study”. Journal of Cosmetic Dermatology. doi:10.1111/jocd.13039. PMID 31173459. 
  13. ^ Seo, Kyu Young; Kim, Dong Hyun; Lee, Sang Eun; et al (2013). “Skin rejuvenation by microneedle fractional radiofrequency and a human stem cell conditioned medium in Asian skin: a randomized controlled investigator blinded split-face study”. Journal of Cosmetic and Laser Therapy 15 (1): 25–33. doi:10.3109/14764172.2012.748201. 

関連かんれんしょ

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  • アン・B. パーソン 渡会わたらい圭子けいこ谷口たにぐち英樹ひでき やくみき細胞さいぼうなぞく』 みすず書房しょぼう ISBN 4622071789
  • 日本にっぽん再生さいせい医療いりょう学会がっかい 山中やまなかしんわたる中内なかうちあきらこう編集へんしゅう 『みき細胞さいぼう』 2012 朝倉書店あさくらしょてん ISBN 978-4-254-36071-4

関連かんれん項目こうもく

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