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受精卵じゅせいらん

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受精卵じゅせいらん
Zygote
グレイ解剖かいぼうがく subject #5 45
にちよわい 0
形成けいせい くわじつはい
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受精卵じゅせいらん(じゅせいらん、えい: Zygote)は、かく生物せいぶつ有性ゆうせい生殖せいしょくさいに2つのいちばいたいせい細胞さいぼう配偶はいぐう[注釈ちゅうしゃく 1])の融合ゆうごうによって形成けいせいされるばいたい細胞さいぼうである。接合せつごうともばれる。

概要がいよう[編集へんしゅう]

かく生物せいぶつ配偶はいぐう結合けつごうし、2つの細胞さいぼうかく融合ゆうごうかく合体がったい英語えいごばん)することを受精じゅせいぶ。受精卵じゅせいらんゲノムは、かく配偶はいぐうDNAわせであり、あたらしい個々ここ生物せいぶつ形成けいせいするために必要ひつようなすべての遺伝いでん情報じょうほうふくんでいる。ほとんどの生物せいぶつでは、受精卵じゅせいらんふくすうかい細胞さいぼう分裂ぶんれつて、ばいたい生物せいぶつつくす。さらに分裂ぶんれつすすむと、おそかれはやかれ一部いちぶ細胞さいぼうにおいて減数げんすう分裂ぶんれつによるばいたいからいちばいたいへの移行いこうこり、最終さいしゅうてきふたた配偶はいぐう形成けいせいされる。細胞さいぼう生物せいぶつにおいて、受精卵じゅせいらんもっと初期しょき発生はっせい段階だんかいである。

ヒトの受精卵じゅせいらん (しき):透明とうめいたいによって、それ以上いじょう精子せいし侵入しんにゅうふせいでいる。
ヒトの受精卵じゅせいらん (実写じっしゃ):ゆうせいぜんかくめすせいぜんかくたがいにかって移動いどうしているが、遺伝いでん物質ぶっしつはまだ融合ゆうごうしていない。
精子せいしによるヒトのたまご細胞さいぼう受精じゅせいひだり)と受精卵じゅせいらん接合せつごう)の形成けいせいみぎ)。たまご細胞さいぼうは1つの精子せいしとしか受精じゅせいできない。したがって、受精卵じゅせいらんには2くみ母親ははおや父親ちちおや)の染色せんしょくたいふくまれている。これにより、はい発生はっせい英語えいごばん過程かていにおいて、そのゆういと分裂ぶんれつ調和ちょうわして進行しんこうできる。ミトコンドリアをふく精子せいし中央ちゅうおう部分ぶぶん通常つうじょう受精卵じゅせいらん侵入しんにゅうすることはなく、受精じゅせいまく固定こていされるか拒絶きょぜつされる。

発見はっけん[編集へんしゅう]

1820ねん、ドイツの動物どうぶつ学者がくしゃクリスチャン・ゴットフリート・エーレンベルクにより、はじめて接合せつごうたい形成けいせいカビなか観察かんさつされた[1]。19世紀せいき後半こうはんには、おなじくドイツの動物どうぶつ学者がくしゃオスカー・ヘルトヴィッヒ英語えいごばんリヒャルト・ヘルトヴィッヒ英語えいごばんが、動物どうぶつ接合せつごう形成けいせいかんする最初さいしょのいくつかの発見はっけんおこなった[2]

ヒトや動物どうぶつ[編集へんしゅう]

ヒトふく哺乳類ほにゅうるいにおいては、卵管らんかんうち受精卵じゅせいらん形成けいせいされる。受精じゅせいにより卵子らんし精子せいし細胞さいぼうかく一体いったいとなって、両親りょうしんかくDNAかくないDNA)ががれる。通常つうじょう精子せいし中央ちゅうおう部分ぶぶん細胞さいぼう通過つうかしないので、そのなか父親ちちおやミトコンドリアDNA(mtDNA)は子孫しそんがれないが、卵子らんしちゅう母親ははおやのmtDNAはがれる。最初さいしょはい受精卵じゅせいらんからはじまり(すなわち2細胞さいぼうと4細胞さいぼう)、そのくわじつはい胞胚じゅん発生はっせいすすみ(胞胚形成けいせい)、この発生はっせい過程かてい卵管らんかんとおって子宮しきゅうかって移動いどうする。そのはいばん子宮しきゅうなかゆかする。鳥類ちょうるい爬虫類はちゅうるい、ほとんどの有尾ありおるいにおいても交配こうはいのち子宮しきゅうない受精じゅせいするが、受精卵じゅせいらんたまごとして放出ほうしゅつされる。一方いっぽうカエルやほとんどの魚類ぎょるいでは、受精卵じゅせいらん産卵さんらん英語えいごばんとして水中すいちゅう放出ほうしゅつし、体外たいがい受精じゅせいによって受精卵じゅせいらん形成けいせいされる。同様どうように、脊椎動物せきついどうぶつにも内部ないぶ受精じゅせいをするもの(昆虫こんちゅう甲殻こうかくるい)と、外部がいぶ受精じゅせいをするもの(腔腸動物こうちょうどうぶつなど)がある。

植物しょくぶつ[編集へんしゅう]

種子しゅし植物しょくぶつでは、接合せつごう胚珠はいしゅなかにある。接合せつごうは、一倍いちばいたい花粉かふんつぶ受粉じゅふんのち花粉かふんかん形成けいせいして胚珠はいしゅまで伸長しんちょうし、そこでたまご細胞さいぼう受精じゅせいすることで発生はっせいする。その接合せつごう種子しゅし一部いちぶとなってはい成長せいちょうする。シダ植物しょくぶつ場合ばあいちいさな一倍いちばいたいぜんたい配偶はいぐうたい)にみやつこせい英語えいごばんみやつこたまご英語えいごばん形成けいせいされ、みやつこせいから放出ほうしゅつされた花粉かふん水中すいちゅうおよいでみやつこたまごなかふくまれる卵子らんし受粉じゅふんし、みやつこたまごなか接合せつごうたい発生はっせいしたのち、その接合せつごうたい実際じっさいのシダ植物しょくぶつす。コケるい場合ばあいは、いちばいからだせい細胞さいぼうであるうえ生殖せいしょく配偶はいぐう英語えいごばん)があり、シダるい同様どうよう卵子らんしふくみ、精子せいし放出ほうしゅつする。みやつこたまごなか受精じゅせいして受精卵じゅせいらん発生はっせいしたのち、この接合せつごうたいから比較的ひかくてきちいさなばいたい胞子ほうしたい発生はっせいし、(ばいたいのシダ植物しょくぶつ同様どうように)減数げんすう分裂ぶんれついちばいたい胞子ほうし形成けいせいし、これが生殖せいしょくもちいられる。

菌類きんるい[編集へんしゅう]

菌類きんるい多種たしゅ多様たよう状態じょうたいち、ときには生物せいぶつからかなりの逸脱いつだつしめす。たとえば食用しょくようキノコのおおくがぞくする担子きんもんは、せいふえ配偶はいぐう形成けいせいしない。そのなかで、糸状いとじょうきんいちばいたい菌糸きんしたい通常つうじょう細胞さいぼう融合ゆうごうして、細胞さいぼうかく最初さいしょ融合ゆうごうすることなく、かくむすめ細胞さいぼう形成けいせいする(かく合体がったい英語えいごばん)。そのかくかくせい段階だんかいなんねんつづくことがあり、そのあいだ菌糸きんしたい最終さいしゅうてき実体じったい(キノコ)が形成けいせいされるまで成長せいちょうつづける。このような場合ばあいのみ、核分裂かくぶんれつこる。その減数げんすう分裂ぶんれついちばいたい胞子ほうし形成けいせいされる。

実体じったい形成けいせいせず、多数たすうかくつが細胞さいぼうかべ分離ぶんりしていない多核たかく菌糸きんしたいとしてのみ存在そんざいする接合せつごうきんもんでは、多核たかく成長せいちょうたい融合ゆうごうして、おなじく多核たかく群生ぐんせい接合せつごうが21くみかく形成けいせいし、あつかべ形成けいせいして多核たかく接合せつごう胞子ほうしとなる。

原生動物げんせいどうぶつ糸状いとじょう藻類そうるい[編集へんしゅう]

糸状いとじょう緑藻りょくそうアオミドロ受精卵じゅせいらん (写真しゃしん中央ちゅうおう)

ほとんどの原生げんせい生物せいぶつ無性むしょう生殖せいしょくをするため、接合せつごう形成けいせいされない。例外れいがいおおくのむち毛虫けむしられる。単純たんじゅん組織そしきされた糸状いとじょう藻類そうるい場合ばあい糸状いとじょう個々ここ細胞さいぼう生殖せいしょく分化ぶんかし、接合せつごうはそれに対応たいおうして藻類そうるいフィラメントの細胞さいぼうになる。

生命せいめい倫理りんり[編集へんしゅう]

受精卵じゅせいらん生命せいめい萌芽ほうがであるとかんがえられている。あるいは個体こたいのスタートてんである。このため、ヒトの受精卵じゅせいらんをどうあつかうかは医学いがくなど科学かがく研究けんきゅう生命せいめい倫理りんりにおいて重要じゅうよう論点ろんてんである[3]。ヒトの受精卵じゅせいらんは14にちごろげんちょうおちいいれはじまり、細胞さいぼう分裂ぶんれつ身体しんたいのどの部位ぶい成長せいちょうするかかれはじめる。このため、日本にっぽんイギリスなどではヒトのはい培養ばいようは14にちまでと規制きせいしているが、国際こくさいみき細胞さいぼう学会がっかいは2021ねん5がつ指針ししん改定かいていして、14にちえる培養ばいよう解禁かいきんした[3]

宗教しゅうきょうめんでは、キリスト教きりすときょうカトリックなどでは人工じんこう妊娠にんしん中絶ちゅうぜつ容認ようにんせず、受精卵じゅせいらん時点じてん尊重そんちょうされるべき生命せいめいたいとみなしているため、そのあつかいにたいしてしばしば深刻しんこく価値かちかん対立たいりつ、すなわち倫理りんり問題もんだい発生はっせいする。受精卵じゅせいらん段階だんかい遺伝子いでんし解析かいせきし、将来しょうらいこりうるじゅうあつ病気びょうき障害しょうがい有無うむ診断しんだんするゆかぜん診断しんだん受精卵じゅせいらん診断しんだん)についておこなうことに人間にんげん場合ばあい生命せいめい選別せんべつ選民せんみん思想しそうなどの生命せいめい倫理りんりてき問題もんだいがあるとして、その是非ぜひについては意見いけんかれる。しかしながら、妊娠にんしんしたのちおこな羊水ようすい検査けんさなどの出生しゅっしょうぜん検査けんさ結果けっかもとづいて胎児たいじ人工じんこう妊娠にんしん中絶ちゅうぜつほとんなん制限せいげんもなく実施じっしされている日本にっぽんにおいては、妊娠にんしん成立せいりつするまえ実施じっしするちゃくゆかぜん診断しんだんほう倫理りんりてきこのましいというかんがえもある。また、受精卵じゅせいらん分裂ぶんれつ分化ぶんかする過程かていであらわれる万能ばんのう細胞さいぼう中絶ちゅうぜつ胎児たいじなどからして研究けんきゅうもちいることについて、やはり同様どうよう倫理りんりじょう問題もんだい指摘してきされている。そこには生命せいめい倫理りんり問題もんだいよこたわっている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 通常つうじょう運動うんどう能力のうりょくたまご細胞さいぼうと、運動うんどう能力のうりょくせい細胞さいぼうのことをす。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

  • 生物せいぶつがく百科ひゃっか事典じてん: Zygote
先代せんだい
卵子らんし + 精子せいし
ヒトの発生はっせい英語えいごばん
受精卵じゅせいらん
次代じだい
はい