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はい発生はっせい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
オランダの科学かがくしゃハルトゼーカー (Nicolas Hartsoeker) がとなえた精子せいし姿すがたなかにホムンクルスがはいっている

はい発生はっせい(はいはっせい、英語えいご: embryogenesis)または生物せいぶつがくにおける発生はっせい(はっせい)とは、細胞さいぼう生物せいぶつ受精卵じゅせいらんたんため発生はっせい場合ばあいもある)から成体せいたいになるまでの過程かていす。広義こうぎには老化ろうか再生さいせいふくまれる。発生はっせい生物せいぶつがくにおいて研究けんきゅうがなされる。

ぜんなりせつこうなりせつ

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ふるくは、たまごまたは精子せいしなかちいさなひとかたちをしたもの(これをホムンクルスという)があらかじめ存在そんざいし(つまり、受精卵じゅせいらんなかに、子孫しそん雛形ひながたがある)、発生はっせいはホムンクルスがおおきくなる過程かていであるというぜんなりせつとなえられた時代じだいがあった。研究けんきゅうで、そのようなものは存在そんざいしないことがあきらかとなった。他方たほう受精卵じゅせいらんなかには雛形ひながた相当そうとうするものはなにもなく、次第しだいかたちができてるというかんがかたこうなりせつという。

実際じっさいには顕微鏡けんびきょう使用しようして、細胞さいぼうレベルの観察かんさつおこなわれるようになって、具体ぐたいてき発生はっせい過程かてい観察かんさつできるようになった(もっとも、研究けんきゅう初期しょきには「顕微鏡けんびきょうとおしてホムンクルスが観察かんさつされた」といったような報告ほうこくがされたこともあった)。動物どうぶつ発生はっせいについてはおおくの研究けんきゅうがなされているが、植物しょくぶつについてはかなりおくれて研究けんきゅうがなされた。

動物どうぶつ発生はっせい過程かてい

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様々さまざま脊椎動物せきついどうぶつ発生はっせい過程かてい研究けんきゅうから、動物どうぶつ発生はっせいには、一定いってい共通きょうつうするかたがあるとかんがえられるようになった。

受精じゅせい哺乳ほにゅう動物どうぶつ卵子らんしたまごわり最初さいしょ段階だんかい図表ずひょうのz.p.は透明とうめいたい。p.gl.はen:Polar body:ごくからだ。aは2細胞さいぼう。bは4細胞さいぼう。cは8細胞さいぼう。d、eはくわじつはい

ぜんかく出現しゅつげん

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受精じゅせい成立せいりつすると、ぜんかく(prenuclear; PN)が出現しゅつげんする。精子せいし進入しんにゅうやく6あいだはじめ、やく20あいだえなくなる。ゆうせいぜんかく受精卵じゅせいらん形成けいせいされる精子せいし由来ゆらいかくめすせいぜんかく卵子らんし由来ゆらいかくである。ゆうせいぜんかくめすせいぜんかく融合ゆうごうにより、父親ちちおや母親ははおや遺伝いでん情報じょうほう保持ほじする子供こどもかくつくられる。

体外たいがい受精じゅせいでは受精じゅせい操作そうさ翌日よくじつ、PNの観察かんさつにより受精じゅせい確認かくにんおこなう。2PNは正常せいじょう受精卵じゅせいらん。1PNは2PNが融合ゆうごうえる途中とちゅう場合ばあい異常いじょう受精じゅせい場合ばあいがある。3PN以上いじょうは2つ以上いじょう精子せいしはいってしまった異常いじょう受精じゅせいである。0PNはすでにぜんかく消失しょうしつしてしまったか受精じゅせいしめす。

たまごわり

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細胞さいぼう動物どうぶつ発生はっせいは、受精卵じゅせいらん細胞さいぼう分裂ぶんれつ、いわゆるたまごわりからはじまる。たまごわり同調どうちょうてき分裂ぶんれつにより、細胞さいぼうすうを2の級数きゅうすうやす。通常つうじょうは2細胞さいぼう左右さゆうに、4細胞さいぼう前後ぜんごに、8細胞さいぼう腹背ふくはいかれる。卵黄らんおうおおたまごでは、このとき動物どうぶつきょくがわ卵黄らんおうすくない)のほう細胞さいぼうちいさくなる。

en:Blastulation:胞胚形成けいせい1 - en:Morula:くわじつはい2 - en:blastula:胞胚

胞胚

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ある程度ていど細胞さいぼうすうえると、おおくの場合ばあい内部ないぶ空洞くうどうができる。その外側そとがわ一層いっそう細胞さいぼうおおわれたかたちになる。この時期じき胞胚(ほうはい)ぶ。胞胚の内部ないぶ空洞くうどうたまごわり(らんかつこう)または、胞胚腔(ほうはいこう)とばれる。ウニたまご胞胚孵化ふかし、表面ひょうめん繊毛せんもうっておよぐ。

たまごわり腔がなく、内部ないぶまで細胞さいぼうたされるものもある。また、脊椎動物せきついどうぶつでは複数ふくすう細胞さいぼうそうしょうじる。

胚葉はいよう動物どうぶつはらちょうおちいにゅう:(1)胞胚から(2)はらちょうはい形成けいせいそと胚葉はいよう細胞さいぼう(オレンジ)の一部いちぶ内側うちがわ移動いどうしてうち胚葉はいようあか)を形成けいせいする。

はらちょう形成けいせい

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胞胚表面ひょうめん細胞さいぼうそう内部ないぶはいむ。これはおちいいれ(かんにゅう)とばれる。そして、ひとつのくちったふくろ内部ないぶ形成けいせいする。これが消化しょうかかんはじまりである。このふくろはらちょうばれ、その出入でいぐち原口はらぐちばれる。この時期じきはいを嚢胚(のうはい)またははらちょうはい(げんちょうはい)とよび、その形成けいせいはらちょうはい形成けいせい (Gastrulationという。

とげ動物どうぶつひらたがた動物どうぶつでは消化しょうかかんにはひとつしか出入でいぐちがない。その動物どうぶつでは消化しょうかかん管状かんじょうである。そのような動物どうぶつでは、原口はらぐち反対はんたいがわあらたにもうひと出入でいぐちができる。このとき、どちらがくちになるかは動物どうぶつもんによってことなる。軟体動物なんたいどうぶつ節足動物せっそくどうぶつたまきがた動物どうぶつなど、おおくの脊椎動物せきついどうぶつなど原口はらぐち動物どうぶつ先口せんくち動物どうぶつともいう)では原口はらぐちくちになるが、棘皮動物きょくひどうぶつ脊椎動物せきついどうぶつなど新口にのくち動物どうぶつ後口あとくち動物どうぶつともいう)では原口はらぐち肛門こうもんになる。

胚葉はいよう分化ぶんか

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はらちょうおちいいれしたことで、それまで平等びょうどうならんでいた細胞さいぼうが、内側うちがわ外側そとがわかれたことになる。そこで、そとのこった細胞さいぼうぐんそと胚葉はいよう(がいはいよう)、内側うちがわはいった細胞さいぼうぐんうち胚葉はいよう(ないはいよう)とぶ。そと胚葉はいようからはおも表皮ひょうひ神経しんけいが、うち胚葉はいようからは消化しょうかかん形成けいせいされる。とげ動物どうぶつは、このような構造こうぞうをほとんどそのままに成体せいたいになるので、胚葉はいようせい動物どうぶつわれる。

それ以外いがい動物どうぶつでは、そと胚葉はいよううち胚葉はいよう隙間すきま細胞さいぼうぐんはいみ、そこで発達はったつはじめる。この細胞さいぼうぐんちゅう胚葉はいよう(ちゅうはいよう)とよぶ。ちゅう胚葉はいようからは筋肉きんにく血管けっかんけいなどがつくられる。また、ちゅう胚葉はいようからは体腔たいこうつくられる。これらの動物どうぶつさん胚葉はいよう分類ぶんるいされる。

形態けいたい形成けいせい

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ここからのちかく器官きかん形成けいせいされる段階だんかいになる。これを形態けいたい形成けいせいという。

形成けいせいたい

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ドイツのハンス・シュペーマンはイモリはいでの移植いしょく実験じっけん1924ねん)から、原口はらぐちくちびる(げんこうはいしんぶ)に分化ぶんかこす作用さよう発見はっけんし、原口はらぐちくちびる形成けいせいたい(オーガナイザー)と名付なづけ、分化ぶんか細胞さいぼうぐん分化ぶんかうなが形成けいせいたい作用さよう誘導ゆうどうんだ。

また、ドイツのヴァルタ―・フォークトが、イモリのはい部分ぶぶんてき染色せんしょくする「局所きょくしょ生体せいたい染色せんしょくほう」を開発かいはつした。フォークトはこれにより染色せんしょくされたはいがどのように分化ぶんかするかの追跡ついせき調査ちょうさおこない、はい将来しょうらい形成けいせいするはらはじめ位置いちしめしたはらはじめ分布ぶんぷ予定よてい運命うんめい)を作成さくせいした(1929ねん)。

シュペーマンの実験じっけんにおいて、原口はらぐちくちびる誘導ゆうどうのち次々つぎつぎ組織そしき器官きかん形成けいせいされたことから、誘導ゆうどう連鎖れんさ推測すいそくされた。

誘導ゆうどう連鎖れんさ

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いちれいとして形成けいせい過程かてい以下いかしめす。

  1. はい原口はらぐちくちびるいち形成けいせいたい
    はいそと胚葉はいようはたらきかけ、神経しんけいかん誘導ゆうどうする。神経しんけいかんのう分化ぶんかする。
  2. のう両側りょうがわ形成けいせいされる胞(がんぽう)→はい(がんぱい。形成けいせいたい
    表皮ひょうひはたらきかけ、水晶すいしょうたい誘導ゆうどうする。はい自体じたい網膜もうまく分化ぶんかする。
  3. 水晶すいしょうたいさん形成けいせいたい
    表皮ひょうひ表層ひょうそうはたらきかけ角膜かくまく誘導ゆうどうする。
  • 原口はらぐちくちびるとは原口はらぐち上下じょうげにある細胞さいぼうぐんのうち、がわ動物どうぶつきょくがわ)にあるものをいう。原口はらぐちくちとすると、この部位ぶいくちびる位置いちたるため、このような名前なまえがつく。動物どうぶつきょくとは、たまごができる過程かていごくからだ放出ほうしゅつされるがわす(動物どうぶつきょく反対はんたいがわ植物しょくぶつきょくばれる)。ごくからだとは、細胞さいぼうかくつが細胞さいぼうしつたない細胞さいぼうで、減数げんすう分裂ぶんれつ途中とちゅう放出ほうしゅつされるが、後々あとあと退化たいかしてえてしまう細胞さいぼう

誘導ゆうどうのメカニズム

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誘導ゆうどう分泌ぶんぴつせい因子いんしかいした細胞さいぼうあいだ相互そうご作用さようによりおこなわれるとかんがえられるが、しばしば多数たすう因子いんし複雑ふくざつ制御せいぎょけい形成けいせいしており、分子ぶんしメカニズムが解明かいめいされていないこともおおい。たとえば、上記じょうき形成けいせいたい誘導ゆうどうにはWntシグナルけいばれるシグナル伝達でんたつけい重要じゅうようであることがられているが、そのさいにWntシグナルけいがどのようにして活性かっせいされるのかについては不明ふめいてんおおい。また、胞/はいによる誘導ゆうどうには神経しんけい成長せいちょう因子いんしおよびほね形成けいせい因子いんし関与かんよしているとかんがえられているが、その詳細しょうさいあきらかではない。

関連かんれん項目こうもく

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • 鈴木すずき孝仁たかひと; 本川ほんがわ達雄たつおしん生物せいぶつII』(しん課程かていかずけん出版しゅっぱんチャートしきシリーズ〉、2005ねん11月1にちISBN 4-410-11881-1 
  • へん太田おおた次郎じろう 本川ほんがわ達雄たつお 高等こうとう学校がっこう新編しんぺん生物せいぶつI 新興しんこう出版しゅっぱんしゃけいりんかん 平成へいせい17ねん12がつ10日とおか発行はっこう 平成へいせい14ねん3がつ10日とおか検定けんていずみ高等こうとう学校がっこう理科りかよう

外部がいぶリンク

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