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シダ植物しょくぶつ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
イワヒバしょう植物しょくぶつ (A, B) とイノモトソウ大葉おおばシダ植物しょくぶつ (C, D)。
A. Selaginella convoluta (Arn.) Spring
B. Selaginella sellowii Hieron.
C. Cheilanthes geraniifolia (Weath.) R.M.Tryon & A.F.Tryonエビガラシダぞく
D. Doryopteris collina (Raddi) J.Sm.フウロシダぞく

シダ植物しょくぶつ(シダしょくぶつ)は、以下いか意味いみ植物しょくぶつ一群いちぐんである。

  1. シダ植物しょくぶつ広義こうぎpteridophytes: 維管たば植物しょくぶつのうち、胞子ほうしによる繁殖はんしょくおこな段階だんかいにある植物しょくぶつ総称そうしょう[1][2]胞子ほうしによる繁殖はんしょくという共有きょうゆう原始げんし形質けいしつによりまとめられていたため、がわ系統けいとうぐんである[2]ほんこうべる。
  2. モニロファイツ(くびかざり植物しょくぶつmonilophytes: 維管たば植物しょくぶつのうち、原生げんせい木部きべ中原なかはらがたくびかざりじょうの維管たば配列はいれつたん系統けいとうぐん[3]上記じょうき広義こうぎのシダ植物しょくぶつのうち、狭義きょうぎしょう植物しょくぶつヒカゲノカズライワヒバミズニラ)および化石かせき植物しょくぶつであるぜん裸子植物らししょくぶつのぞいたグループとなる。このぐんして「シダ植物しょくぶつ」と[4][3]ことも「シダるい」と[1][5]こともある。くわしくは大葉おおばシダ植物しょくぶつ参照さんしょう

ほんこうにおけるシダ植物しょくぶつ(シダしょくぶつ、羊歯しだ植物しょくぶつ歯朶しだ植物しょくぶつえい: pteridophytes)はかつてはシダ植物しょくぶつもん division Pteridophytaもん階級かいきゅうかれていた[2][6]。シダ植物しょくぶつという言葉ことば現在げんざいでは学術がくじゅつてきでは使つかわれなくなっているが、進化しんか段階だんかい生活せいかつたまきうえ特性とくせいにおいていまもちいられることがある[1]。そういった文脈ぶんみゃくでは ferns and ferns alliesferns and lycophytesばれる[1]。これにぞくする植物しょくぶつ一般いっぱんてきシダ羊歯しだ歯朶しだ)とぶこともあるが[4]シダるいがわ系統けいとうぐん範囲はんい#系統けいとう関係かんけい参照さんしょう)をすこともおおい。シダ植物しょくぶつ種子しゅし維管たば植物しょくぶつ[4]種子しゅし維管たば植物しょくぶつ[6][7]ともいいかえられる。

ほんこうでは、おもにシダ植物しょくぶつ生活せいかつたまきおよび分類ぶんるい歴史れきしについて概説がいせつする。

系統けいとう関係かんけい

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Wickettら (2014)Puttickら (2018)による分子ぶんし系統けいとう解析かいせきから、つぎのような系統けいとうじゅられている[8]みどりわくかこんだ範囲はんいが「シダ植物しょくぶつ"Pteridophyta"系統けいとうてき位置いちしめ[8]

伝統でんとうてき分類ぶんるいでは、シダ植物しょくぶつマツバランるいるいヒカゲノカズラるいしょうるいトクサるいくさびるい、およびシダるい大葉おおばるいの4ぐんおおきく分類ぶんるいされていた[1][2][4][9]。このうちシダるい胞子ほうし胞子ほうしたい表層ひょうそう複数ふくすう細胞さいぼうからしょうじ、完成かんせいした胞子ほうし嚢が複数ふくすう細胞さいぼうそうかべ嚢シダるい(ハナヤスリるい + リュウビンタイるい)および胞子ほうし嚢は単一たんいつ細胞さいぼうからしょうじ、完成かんせいした胞子ほうし嚢は1そう細胞さいぼうそうかべうす嚢シダるいみとめられていた[2]

分子ぶんし系統けいとう解析かいせき結果けっかから「シダ植物しょくぶつ」はあきらかにがわ系統けいとうであり、従来じゅうらい独立どくりつしてあつかわれていたマツバランるいおよびトクサるいがシダるいおなじクレードにはいるようになった[9]。また、嚢シダるいばれていたリュウビンタイるいおよびハナヤスリるいも、ハナヤスリるいとマツバランるい姉妹しまいぐんをなすことでがわ系統けいとうとなった。つまり、従来じゅうらいかんがえられていた4ぐんではなくしょうるいおよび大葉おおばシダるい(トクサるい + マツバランるい + ハナヤスリるい + リュウビンタイるい + うす嚢シダるい)のおおきく2ぐんけられるようになった[9]

隔膜かくまく形成けいせいたい植物しょくぶつ

隔膜かくまく形成けいせいたい緑藻類りょくそうるい車軸しゃじく藻類そうるい+コレオケーテるい+接合せつごう藻類そうるい

陸上りくじょう植物しょくぶつ
コケ植物しょくぶつ

ツノゴケ植物しょくぶつもん

こけ植物しょくぶつもん

植物しょくぶつもん

維管たば植物しょくぶつ
しょう植物しょくぶつ

ヒカゲノカズラ Lycopodiales

イワヒバ Selaginellales

ミズニラ Isoetales

「シダ植物しょくぶつ
"Pteridophyta"
Lycophyta
大葉おおば植物しょくぶつ
大葉おおばシダ植物しょくぶつ

トクサ Equisetales

ハナヤスリつな

マツバラン Psilotales

ハナヤスリ Ophioglossales

Ophioglossidae

リュウビンタイ Marattiales

嚢シダるい
"Eusporangiopsida"
うす嚢シダるい

ウラボシ Polypodiales

ヘゴ Cytheales

サンショウモ Salviniales

フサシダ Schizaeales

コケシノブ Hymenophyllales

ウラジロ Gleicheniales

ゼンマイ Osmundales

Polypodiidae
Polypodiopsida
(Moniliformopses)
種子しゅし植物しょくぶつ

裸子植物らししょくぶつ Gymnospermae

被子植物ひししょくぶつ Angiospermae

Spermatophyta
Euphyllophyta

特徴とくちょう

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上記じょうきのようにほんこうべるシダ植物しょくぶつがわ系統けいとうぐんであるため、共有きょうゆう派生はせい形質けいしつ存在そんざいしないが、共通きょうつう性質せいしつはおおよそつぎのようなものである。

  1. 維管たばをもつ維管たば植物しょくぶつである[10][11]。(⇔コケ植物しょくぶつは維管たばをもたない)
  2. 陸上りくじょう植物しょくぶつ配偶はいぐうたい有性ゆうせい世代せだい)と胞子ほうしたい無性むしょう世代せだい)という2つの世代せだいのうち、大型おおがた複雑ふくざつ形態けいたい分化ぶんかする胞子ほうしたい生活せいかつ中心ちゅうしんめる[10][11]。(⇔コケ植物しょくぶつでは胞子ほうしたい配偶はいぐうたい寄生きせい
  3. 配偶はいぐうたいぜんたい)と胞子ほうしたい独立どくりつして生活せいかつしている[10][11]。(⇔コケ植物しょくぶつでは胞子ほうしたい配偶はいぐうたい寄生きせい種子しゅし植物しょくぶつでは微小びしょう配偶はいぐうたい胞子ほうしたい栄養えいようてき依存いぞん
  4. 胞子ほうしたい種子しゅし形成けいせいせず、胞子ほうし散布さんぷたいとしてはたら[10][11]。(⇔種子しゅし植物しょくぶつでは種子しゅし散布さんぷたいとしてはたらく)

生活せいかつたまき

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シダ植物しょくぶつ生活せいかつたまき世代せだい交代こうたい
diploid generation: ふくしょう世代せだい、haploid generation: たんしょう世代せだい、(developing/mature) sporophyte:(未熟みじゅくな/成熟せいじゅくした)胞子ほうしたい、meiosis: 減数げんすう分裂ぶんれつ、spores: 胞子ほうし、mitosis: ゆういと分裂ぶんれつ、prothallus (gametophyte): ぜんたい配偶はいぐうたい)、male/female gametes: ゆうせい/めすせい配偶はいぐう、fertilisation: 受精じゅせい
ぜんたい発芽はつがしたばかりの本体ほんたいコウヤワラビ

シダ植物しょくぶつ生活せいかつたまき典型てんけいてき単複たんぷく世代せだい交代こうたいがたであり、胞子ほうしたいぜんたいの2があり、それぞれが生活せいかついとなむ。胞子ほうしたい減数げんすう分裂ぶんれつおこなって胞子ほうしつくり、これを散布さんぷたいとするが、1種類しゅるい胞子ほうしつく同形どうけい胞子ほうしせいのものと2種類しゅるい胞子ほうしつく異形いぎょう胞子ほうしせいのものがある[4]同形どうけい胞子ほうしせい植物しょくぶつではぜんたい雌雄しゆう同体どうたいで、1つのからだみやつこたまごみやつこせい[4]異形いぎょう胞子ほうしせい植物しょくぶつではだい胞子ほうしからだい胞子ほうししょう胞子ほうしからしょう胞子ほうしつくられ、前者ぜんしゃたまご細胞さいぼうつくめすせい配偶はいぐうたいに、後者こうしゃ精子せいしをつくるゆうせい配偶はいぐうたいとなる[4]異形いぎょう胞子ほうしせい同形どうけい胞子ほうしせいから進化しんかしたとかんがえられており、大葉おおばシダ植物しょくぶつでは水生すいせいシダるいデンジソウサンショウモ)が、しょう植物しょくぶつではミズニラおよびイワヒバがそれぞれ異形いぎょう胞子ほうしせいである[4][3]

名称めいしょう 胞子ほうしたい
(もしくはみやつこ胞体)
ぜんたい
(もしくは配偶はいぐうたい
かくしょう ふくしょう (2n) たんしょう (n)
光合成こうごうせい する する
体制たいせい くき 一般いっぱんに0.5 - 2 cmのハートがた葉状ようじょうたいで、かり
(ヒカゲノカズラぞく・ハナワラビぞくでは塊状かいじょう[12]
生殖せいしょく 無性むしょう生殖せいしょくによって胞子ほうし (n) をつく 精子せいしたまご細胞さいぼうつくり)
有性ゆうせい生殖せいしょくによって受精卵じゅせいらん (2n) をつく
次世代じせだい 胞子ほうし発芽はつがしてぜんたいとなる 受精卵じゅせいらん成長せいちょうして胞子ほうしたいとなる

体制たいせい

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維管たば植物しょくぶつくき基本きほん器官きかんとしてつが[13]およびくきいただきいずれもしょう植物しょくぶつ大葉おおばシダ植物しょくぶつでそれぞれことなる構造こうぞう性質せいしつち、また化石かせき記録きろくから、独立どくりつして獲得かくとくしたものであるとかんがえられている(平行へいこう進化しんか[3]

しょう植物しょくぶつすきたず、葉脈ようみゃくが1ほんしょうを、大葉おおばシダ植物しょくぶつあと上側うわがわすきつく葉脈ようみゃく複数ふくすうある大葉おおば[3]。ただしこの大葉おおば種子しゅし植物しょくぶつ大葉おおば起源きげんことなり、独立どくりつ獲得かくとくしたとかんがえられている[3]。また、大葉おおばシダ植物しょくぶつのうちマツバランるいすきつくらず1ほんの維管たばびるしょう葉状ようじょう突起とっき[3]。トクサるいでは被子植物ひししょくぶつのものともことなる生葉いくはくさび)を[3]ハナヤスリるいでは栄養えいようたい栄養えいようtrophophore)と胞子ほうしたい胞子ほうしsporophyte)の基部きぶわさって担葉たい共通きょうつうがらcommon stalk)というじく形成けいせいする[14][15]
くきいただき
しょう植物しょくぶつのうちヒカゲノカズラおよびミズニラでは胞子ほうしたいくきいただき複数ふくすうみき細胞さいぼうくきいただき分裂ぶんれつ組織そしき)が形成けいせいされるのにたいし、イワヒバるいおよび大葉おおばシダ植物しょくぶつでは1個いっこみき細胞さいぼういただきはし細胞さいぼう)が形成けいせいされる[3]
化石かせきしょう植物しょくぶつアステロキシロン Asteroxylon mackiei大葉おおばシダ植物しょくぶつマツバランるいかんむりのあるたず地下茎ちかけい[3]。また、しょう植物しょくぶつのうちヒカゲノカズラヒカゲノカズラぞく Lycopodiumアスヒカズラぞく Diphasiastrumでは静止せいし中心ちゅうしんよう領域りょういき QC-like areaをはし分裂ぶんれつ組織そしき (Type I)を、コスギランぞく Huperziaヤチスギランぞく Lycopodiellaでは静止せいし中心ちゅうしんさま領域りょういきたずぜん表皮ひょうひ protoderm基本きほん分裂ぶんれつ組織そしき ground meristem別々べつべつそうからなるはし分裂ぶんれつ組織そしき (Type II)を、ミズニラではそれらがかんむり独立どくりつしたそうにならないはし分裂ぶんれつ組織そしき (Type III)、イワヒバでは大葉おおばシダ植物しょくぶつ同様どうよういただきはし細胞さいぼうち、それぞれおおきくことなったはし形質けいしつ[16]。これらのことから、しょうるいかくタイプおよび大葉おおばシダ植物しょくぶつ独立どくりつ獲得かくとくされた(すうかい起源きげんである)とかんがえられている[16]
イワヒバたずもっぱうちせい発生はっせいさせる担根たい rhizophoreち、これは地上ちじょうかんがえられたこともあったが、現在げんざいではくきでもでもない特有とくゆう器官きかんかんがえられている[17]
配偶はいぐうたい
普通ふつうシダるいでは配偶はいぐうたいぜんたいばれ、コケ植物しょくぶつすう mmで、1そう細胞さいぼうそうからなる[12]ぜんたいみどりたいつため独立どくりつ栄養えいようであるのにたいし、ヒカゲノカズラぞくしょう植物しょくぶつ)・ハナワラビぞくハナヤスリつな)では配偶はいぐうたい従属じゅうぞく栄養えいようで、塊状かいじょうみどりたいたずきんきん共生きょうせいする[12]

分類ぶんるい歴史れきし

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伝統でんとうてき分類ぶんるい

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分類ぶんるいがくちちばれるカール・フォン・リンネ(1753; 1754)植物しょくぶつはなもとづき24つなけたが、シダ植物しょくぶつはそのうちのだい24つな隠花植物いんかしょくぶつつな Cryptogamiaコケキノコ海藻かいそうなどとともふくめられていた[18][19]胞子ほうし嚢群(ソーラス)のかたちとその位置いちによりシダ植物しょくぶつ Filicesに16ぞく174しゅみとめた[20][19]ヒカゲノカズラぞく Lycopodiumはコケるい Musci として分類ぶんるいされていたが、トクサぞくおよびミズニラぞくはシダ植物しょくぶつふくめられていた[20]。リンネの分類ぶんるい人為じんい分類ぶんるいで、あきらかにはなれたたねむすけていた[19]

隠花植物いんかしょくぶつつな Cryptogamia
シダるい Filices

James E. Smith (1793)つつみまく特徴とくちょうもちいて20ぞくみとめた[19]。Swartzはその分類ぶんるい発展はってんさせ、胞子ほうし嚢群とつつみまく形質けいしつにより1801ねんには30ぞく670しゅを、1806ねんには38ぞく720しゅあつかった[19]。この分類ぶんるい体系たいけいでは人為じんいてき制限せいげんがあったが、30ねんちかくこれにわる分類ぶんるい形質けいしつ発見はっけんされなかった[19]。Desvaux (1827)は胞子ほうし嚢群の形質けいしつをより詳細しょうさい研究けんきゅうし、デンジソウ Marsilées、ヒカゲノカズラ Lycopodiées、ゼンマイ Osmondées、リュウビンタイ Marattiées、シダ Filicéesの579ぞく1666しゅけた[19]

チャールズ・ダーウィンによる進化しんかろん以降いこう以下いかのようなアウグスト・アイヒラー (1883)による分類ぶんるい体系たいけい有名ゆうめいである[18][21]

ぜん植物しょくぶつ網羅もうらした分類ぶんるい体系たいけいをつくったエングラープラントル (1902)はシダ植物しょくぶつシダるい Filicalesスフェノフィルムるい Sphenophyllales絶滅ぜつめつ)、トクサるい Equisetalesおよびしょうるい Lycopodialesの4ぐんけた[22]。そのVerdoorn (1938)田川たがわ岩槻いわつき (1972)Pichi Sermolli (1977)などでは、上記じょうきのうちしょうるいからマツバランるい分離ぶんりした4ぐん(スフェノフィルムるいはトクサるいともゆうふしるいとされた)にけられた[22]

Engler & Prantl (1902)[22] Verdoorn (1938)[22]

1920年代ねんだい以降いこうデボン化石かせきシダ植物しょくぶつ研究けんきゅうすすみ、シダ植物しょくぶつかくつなはシダるい裸子植物らししょくぶつよりもおおきいとかんがえられるようになった[10]Oswald Tippo (1942)分類ぶんるい体系たいけいはアメリカの一般いっぱんてき植物しょくぶつがく教科書きょうかしょにすぐにれられた[23]。この分類ぶんるい体系たいけいではシダ植物しょくぶつたん系統けいとうではなく、シダ植物しょくぶつ種子しゅし植物しょくぶつあいだ明確めいかく境界きょうかいはないとした[23]以下いかにそのがいがたしめ[23]

伊藤いとうひろし (1968; 1972)による伝統でんとうてき現生げんなまシダ植物しょくぶつ分類ぶんるい体系たいけい以下いかとおりであった[24][25][2]。このうちシダるい分類ぶんるいはコープランドのものにもとづき[24]日本にっぽんではながらくこの分類ぶんるい体系たいけいもちいられることとなる。ただし、つな学名がくめいは1つ伊藤いとうひろしほか (1972)、2つ邑田むらた米倉よねくら (2010)によるもの。()ない伊藤いとうひろしほか (1972)にはあるが邑田むらた米倉よねくら (2010)にはないもの。また、「羊歯しだ植物しょくぶつもん」およびシダつな以外いがいかく伊藤いとうひろしほか (1972)にはなく、邑田むらた米倉よねくら (2010)にはある。

羊歯しだ植物しょくぶつもん Pteridophyta

上記じょうきかくつなことなるもん分類ぶんるいされることもある。以下いか岩槻いわつき (1975)における化石かせき植物しょくぶつふくめたシダ植物しょくぶつ分類ぶんるいれいしめ[6]。これ以前いぜんかんがえでは、化石かせき植物しょくぶつであるリニアクックソニアなどなまマツバランつなふくまれ、マツバランるいはそののこりだとかんがえられていたが、このころのかんがえではその直接的ちょくせつてき系統けいとう関係かんけい否定ひていされていた(系統けいとうであるとかんがえられた)[6]。また、はだかくき植物しょくぶつ一群いちぐんからしょう植物しょくぶつゆうぶし植物しょくぶつ、シダるいがデボン初頭しょとうからことなったぐんとして分化ぶんかしてきたとかんがえられており、3ぐんはそれぞれ直接的ちょくせつてき系統けいとう関係かんけいがない独立どくりつぐんかんがえられた[6]。なお、このかくもん田川たがわ (1959)ではそれぞれもん格上かくあげされており、それぞれはだかくき植物しょくぶつもん Psilophyta、ヒカゲノカズラもん Lycophytaトクサもん Calamophytaシダもん Pterophytaばれていた。絶滅ぜつめつした分類ぶんるいぐんには†をした。

シダ植物しょくぶつもん Pteridophyta
はだかくき植物しょくぶつもん(マツバランるいPsilophytina
しょう植物しょくぶつもんうろこ植物しょくぶつ、ヒカゲノカズラるいLepidophytina (Microphyllophytina, Lycopodiinae, Lycophytina, Lycopsida)
ゆうぶし植物しょくぶつもん(トクサるいくさびるいSphenophytina (Articulatae, Equisetinae, Calamophytina)
シダるいもん Pterophytina (Filices, Filicinae, Filicopsida)

分子ぶんし系統けいとう解析かいせきによる分類ぶんるい体系たいけい

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分子ぶんし系統けいとう解析かいせきにより、系統けいとう関係かんけいあきらかになってくるにつれ、維管たば植物しょくぶつしょう植物しょくぶつ大葉おおば植物しょくぶつ大葉おおばシダ植物しょくぶつ + 種子しゅし植物しょくぶつ)というおおきなクレードかれることがかってきた[25][8]。シダ植物しょくぶつにおける分子ぶんし系統けいとうじゅもとづいた分類ぶんるい体系たいけい先駆さきがけはスミスら (2006)分類ぶんるい体系たいけいである[9]。スミスら (2006)の分類ぶんるい体系たいけいでは、大葉おおばシダ植物しょくぶつのみを Hasebe et al. (1995)Pryer et al. (2004)Schneider et al. (2004)Korall et al. (2006)などの分子ぶんし系統けいとう解析かいせきもとづき分類ぶんるいした[26]。そのChristenhuszとChase (2014)Schuettpelz and Pryer (2007)Lehtonen (2011)Rothfels et al. (2012)およびSchneider et al. (2013)分子ぶんし系統けいとう解析かいせきもとづき分類ぶんるいした[19]現在げんざいでは、しょう植物しょくぶつ大葉おおばシダ植物しょくぶつ包括ほうかつてきあつかった community-derived研究けんきゅうしゃのコミュニティでひろれられている分類ぶんるい整理せいりしたもの)のPPG I分類ぶんるい体系たいけい提案ていあんされている[27]

以下いか上記じょうきの3分類ぶんるい体系たいけいまでの比較ひかくしめす(Christenhusz & Chase (2014)ではまで)。和名わみょうおもに『岩波いわなみ生物せいぶつがく辞典じてん だい5はん』 (2013)、海老原えびはら (2016; 2017)にもとづく[28][29][30]。ただし、かく分類ぶんるいぐん対応たいおうさせるため Smith et al. (2006)ではトクサつなとマツバランつな順番じゅんばん実際じっさい論文ろんぶんぎゃくしめしている。

Smith et al. (2006)[26][31] Christenhusz & Chase (2014)[19][31] PPG I (2016)[27]
(なし) ヒカゲノカズラるい Lycopodiophyta ヒカゲノカズラつな Lycopodiopsida
(なし)
大葉おおばシダ植物しょくぶつ Moniliformopses シダるい Polypodiophyta ウラボシつな Polypodiopsida

脚注きゃくちゅう

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • 伊藤いとうひろし ほか共著きょうちょ『シダがく入門にゅうもんニュー・サイエンスしゃ、1972ねん8がつ20日はつか、165-169ぺーじ 
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  • いわけやき邦男くにお (1975), シダ植物しょくぶつもん . In:山岸やまぎしだか編集へんしゅう へん植物しょくぶつ分類ぶんるい基礎きそ』(2はん図鑑ずかんきたたかしかん、1975ねん5がつ15にち、157-193ぺーじ 
  • いわけやき邦男くにお大場おおば秀章ひであき清水しみずたてよし堀田ほったみつるギリアン・プランスピーター・レーヴン朝日あさひ百科ひゃっか 植物しょくぶつ世界せかい[12] シダ植物しょくぶつ・コケ植物しょくぶつ地衣ちいるい藻類そうるい植物しょくぶつ形態けいたい朝日新聞社あさひしんぶんしゃ、1997ねん10がつ1にち、1-93ぺーじ 
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  • 海老原えびはらあつし日本にっぽんシダのかい 企画きかく協力きょうりょく日本にっぽんさんシダ植物しょくぶつ標準ひょうじゅん図鑑ずかん2』学研がっけんプラス、2017ねん3がつ30にち、450ぺーじISBN 978-4-05-405357-1 
  • 加藤かとうまさあきら植物しょくぶつ進化しんか形態けいたいがく東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱんかい、1999ねん5がつ20日はつか、60-82ぺーじ 
  • 田川たがわはじめ原色げんしょく日本にっぽん羊歯しだ植物しょくぶつ図鑑ずかん保育ほいくしゃ保育ほいくしゃ原色げんしょく図鑑ずかん〉、1959ねん10がつ1にちISBN 4586300248 
  • 新村しんむらいずる広辞苑こうじえん だいろくはん』(だい6はん岩波書店いわなみしょてん、2008ねん1がつ11にち、1237ぺーじISBN 9784000801218 
  • 日本にっぽん植物しょくぶつ分類ぶんるい学会がっかい 監修かんしゅう戸部とべひろし田村たむらみのる 編著へんちょあたらしい植物しょくぶつ分類ぶんるいがくⅡ』講談社こうだんしゃ、2012ねん8がつ10日とおかISBN 978-4061534490 
    • 村上むらかみ哲明てつあき (2012), シダ植物しょくぶつ広義こうぎ, pp. 67-73 
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  • 長谷部はせべひかりやすし陸上りくじょう植物しょくぶつ形態けいたい進化しんかはなぼう、2020ねん7がつ1にち、1-4,124-173ぺーじISBN 978-4785358716 
  • はらじょう植物しょくぶつ形態けいたいがく朝倉書店あさくらしょてん、1994ねん7がつ10日とおか、5ぺーじISBN 978-4254170863 
  • 邑田むらたひとし監修かんしゅう米倉よねくら浩司こうじ高等こうとう植物しょくぶつ分類ぶんるいひょうきたたかしかん重版じゅうはん〉、2010ねん4がつ10日とおか 
  • 山田やまだ常雄つねお前川まえかわ文夫ふみお江上えがみ不二夫ふじお八杉やすぎ竜一りゅういち小関おぜき治男はるお古谷ふるや雅樹まさき日高ひだか敏隆としたか岩波いわなみ生物せいぶつがく辞典じてん だい3はん岩波書店いわなみしょてん、1983ねん3がつ10日とおか、524ぺーじISBN 4-00-080018-3 

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