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ランダム比較ひかく試験しけん

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証拠しょうこ科学かがくてき根拠こんきょまたはエビデンス)のつよさは、うえくほどつよくなる。うえけて蓄積ちくせきされていくので研究けんきゅういち研究けんきゅうひろいきれないラグこりうる。また効果こうかのみを評価ひょうか副作用ふくさよう考慮こうりょしていない場合ばあいもある。
  in vitro試験管しけんかん)など

(ニューヨーク州立しゅうりつ大学だいがく作成さくせい[1]

ランダム比較ひかく試験しけん(ランダムかひかくしけん、RCT:randomized controlled trial)とは、評価ひょうかのバイアス(かたより)をけ、客観きゃっかんてき治療ちりょう効果こうか評価ひょうかすることを目的もくてきとした研究けんきゅう試験しけん方法ほうほうである[2]根拠こんきょもとづく医療いりょう(EBM:evidence-based medicine)において、このランダム比較ひかく試験しけん複数ふくすうあつ解析かいせきしたメタアナリシスぐ、根拠こんきょしつたか研究けんきゅう手法しゅほうである[2]おも医療いりょう分野ぶんやもちいられているが、経済けいざいがくにおいてもれられている[注釈ちゅうしゃく 1][3]作為さくい比較ひかく試験しけん ともばれている[4]

改善かいぜんかんする主観しゅかんてき評価ひょうかけるための尺度しゃくどであるエンドポイントもちいる、効果こうか計測けいそくするための治療ちりょうしていない偽薬ぎやくなどをほどこしたぐん用意よういする、じゅうめくらけんほうによって研究けんきゅうしゃがどちらが治療ちりょうぐんかわからないようにし、治療ちりょうぐん対照たいしょうぐんをランダムにてるといった手法しゅほうをとる[2]

歴史れきし

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はつのランダム比較ひかく試験しけん(RCT)は、イギリスにおいて、結核けっかくやくストレプトマイシンくかどうかを調査ちょうさするために、医学いがく研究けんきゅう審議しんぎかい(MRC:Medical Research Council)を代表だいひょうしてオースティン・ブラッドフォード・ヒル英語えいごばんらによっておこなわれた[5]結果けっかは1948ねんに、英国えいこく医師いしかい雑誌ざっしBMJ:British Medical Journal)に掲載けいさいされた[6]りたい介入かいにゅう以外いがい介入かいにゅうひとしくなければ、因果いんが関係かんけいまさしくからないという[7]統計とうけい学者がくしゃロナルド・フィッシャーによる統計とうけい理論りろん適用てきようされた[5]

米国べいこくでは、1962ねん連邦れんぽう食品しょくひん医薬品いやくひん化粧けしょうひんほうにおいて薬剤やくざい有効ゆうこうせい概念がいねんもうけ、適切てきせつ十分じゅうぶん制御せいぎょされた2かい適切てきせつ対照たいしょういた臨床りんしょう試験しけんによって有効ゆうこうせいしめされれば、くすり承認しょうにんされることとなった[8]。1990年代ねんだい以降いこう普及ふきゅうした根拠こんきょもとづく医療いりょうにおけるかんがかたでは、RCTは、RCTを複数ふくすうあつ解析かいせきしたメタアナリシスぐ、根拠こんきょしつたか研究けんきゅう手法しゅほうである[2]

条件じょうけん

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ランダム比較ひかく試験しけんは、主観しゅかんてきあるいは恣意しいてき評価ひょうかのバイアス(かたより)をけるために、以下いかてんそろっている[2]

  • エンドポイント:改善かいぜんかんする尺度しゃくど改善かいぜんかんする主観しゅかんてき評価ひょうかける。
  • 比較ひかく対照たいしょう:治療ちりょうほどこしたぐんと、偽薬ぎやくあるいは比較ひかくのための治療ちりょうほどこした対照たいしょうぐん治療ちりょう介入かいにゅう効果こうか算出さんしゅつするため。対照たいしょうぐんがない場合ばあいなに要因よういんなのかはっきりしない。
  • ランダム:母集団ぼしゅうだんからのランダムな抽出ちゅうしゅつや、治療ちりょうぐん対照たいしょうぐんのランダムなてをおこなう。効果こうかそうな対照たいしょうえらぶことをける。
  • めくらけん:研究けんきゅうしゃ被験者ひけんしゃに、治療ちりょうぐん対照たいしょうぐんがどちらであるかをからないようにする。計測けいそく主観しゅかんはいらないようにする。

RCTによる効果こうか検証けんしょう効果こうか測定そくてい一般いっぱんおこなわれる以前いぜんでは、いくつかの不合理ふごうり治療ちりょう投薬とうやく存在そんざいしていた。ひろられているのは、心筋梗塞しんきんこうそく治療ちりょうに、予防よぼうてきリドカイン不整脈ふせいみゃくふせ効果こうかがある)の投薬とうやくおこなわれていた事例じれいである。しかし、心筋梗塞しんきんこうそくのリドカイン投薬とうやくぐん投薬とうやくぐん追跡ついせき調査ちょうさ結果けっか、リドカイン投与とうよぐんでむしろ死亡しぼうりつ増加ぞうかみとめられたため、以後いごはリドカインのルーチン投与とうよ推奨すいしょうされていない[9]

社会しゃかい科学かがくにおけるRCT

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政策せいさくてき課題かだいかいあたえるための研究けんきゅうおこなわれ、2000年代ねんだい以降いこう増加ぞうかしている。学校がっこう教育きょういく施策しさく学習がくしゅうおよぼす影響えいきょう農業のうぎょうにおけるしん技術ぎじゅつ影響えいきょう運転うんてん免許めんきょ行政ぎょうせい不正ふせい消費しょうひしゃ金融きんゆう市場いちばのモラルハザードの影響えいきょう経済けいざい学理がくりろん検証けんしょうなどに使つかわれている[10]

2019ねんには、バナジーとデュフロらのRCTをもちいた研究けんきゅうがノーベル経済けいざいがくしょう受賞じゅしょうしたことで話題わだいんだ。

RCTの限界げんかい

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臨床りんしょう試験しけんにおけるバイアス

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ランダム比較ひかく試験しけんだけでは、まだバイアスの可能かのうせいのこっている。

1999ねん公表こうひょうされた論説ろんせつにおいて、RCTにおけるいちれい紹介しょうかいされている。このれいのRCTでは、あるこう炎症えんしょうやく変形へんけいせいひざ関節かんせつしょうたいし、既存きそんやくくらべて一見いっけんすぐれた効果こうかつことがしめされていたが、よくてみると、投与とうよりょう新薬しんやくではおお対照たいしょうやくでは不十分ふじゅうぶんという条件じょうけん試験しけんされていた[11]

また、アメリカ食品しょくひん医薬品いやくひんきょく(FDA)の承認しょうにんるためには、2つの肯定こうていてき結果けっか試験しけん必要ひつようなだけであり、承認しょうにんされたくすりについて否定ひていてき結果けっか試験しけんがあったとしても、(提出ていしゅつはともかく)公開こうかいにはいたらないことがある。しかし、情報じょうほう公開こうかい法制ほうせいもとづきこれらのデータを結合けつごうしてメタアナリシスおこなうと否定ひていてき結果けっかしめされることもある[12]

ランダム関連かんれんするさまざまなバイアス

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りょうむかい(2020)[13]によれば、ある治療ちりょうけさせるように医師いし特定とくてい対象たいしょう選択せんたくす ることによってこされる選択せんたくバイアス(selection bias)や、めくらけんかかわる確認かくにんバイアス(ascertainment bias)、観測かんそくされないきょう変量へんりょうによってこされるバイアスは 偶然ぐうぜんバイアス(accidental bias)と経時きょうじてきバイアス、登録とうろく患者かんじゃ関連かんれんする特性とくせい分布ぶんぷ時間じかんとも変化へんかするときにしょうじる経時きょうじてきバイアス(chronological bias)、ランダムエラー(randomization error)など、さまざまなRCT実施じっしかかわるバイアスが報告ほうこくされている。

ランダムをめぐる倫理りんりてき課題かだい

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じゅうめくらけんおこなさいには,プラセボ実験じっけん必要ひつようとなり、とくに医療いりょう分野ぶんやにおけるRCT実施じっしさいしてはおおきな論点ろんてんとなっている。[14]

対照たいしょうぐん設定せってい不適切ふてきせつで、比較ひかく可能かのうせいとぼしいデータに、ただしい統計とうけい手法しゅほう適用てきようしてあやまった結論けつろんみちびくことのほうが倫理りんりじょう問題もんだいがある、とする意見いけんもある[15]

再現さいげんせい危機きき

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2019ねんのメタアナリシスでは、1990年代ねんだい以降いこう実施じっしされた生物せいぶつ医学いがく研究けんきゅうのRCTのやく59.3%が不適切ふてきせつ方法ほうほう実施じっしされていたことが判明はんめいしており、再現さいげんせい危機ききがある現状げんじょうかんがみ、研究けんきゅうしゃたちはこのままではまた再現さいげんせい危機ききにつながると警鐘けいしょうらしている[16]

関連かんれん項目こうもく

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出典しゅってん脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ たとえば、2019ねんノーベル経済けいざいがくしょうは、開発かいはつ経済けいざいがくにランダム比較ひかく試験しけんれた業績ぎょうせき評価ひょうかされて授与じゅよされている(Newsweek(2019ねん10がつ15にち)「ノーベル経済けいざいがくしょうべいだい教授きょうじゅ3に 貧困ひんこんそうどもたち支援しえんした実践じっせんてき評価ひょうか」)。

出典しゅってん

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  1. ^ SUNY Downstate EBM Tutorial”. library.downstate.edu. 2004ねん3がつ23にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2015ねん9がつ3にち閲覧えつらん
  2. ^ a b c d e 津谷つや喜一郎きいちろう正木まさきとも也 2006, pp. 9–12.
  3. ^ デュフロほか 2019.
  4. ^ コトバンク”. 2021ねん2がつ28にち閲覧えつらん
  5. ^ a b Yoshioka 1998.
  6. ^ Medical Research Council 1948.
  7. ^ 津谷つや喜一郎きいちろう 2011, p. 48.
  8. ^ Laurie Burke 1999.
  9. ^ Sadowski, Z. P.; Alexander, J. H.; Skrabucha, B.; Dyduszynski, A.; Kuch, J.; Nartowicz, E.; Swiatecka, G.; Kong, D. F. et al. (1999-05). “Multicenter randomized trial and a systematic overview of lidocaine in acute myocardial infarction”. American Heart Journal 137 (5): 792–798. doi:10.1016/s0002-8703(99)70401-1. ISSN 0002-8703. PMID 10220626. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10220626/. 
  10. ^ デュフロほか 2019, pp. だい1しょう.
  11. ^ Randal, J. (January 1999). “Randomized Controlled Trials Mark a Golden Anniversary”. JNCI Journal of the National Cancer Institute 91 (1): 10–12. doi:10.1093/jnci/91.1.10. PMID 9890163. http://jnci.oxfordjournals.org/content/91/1/10.full. 
  12. ^ Irving Kirsch (2010ねん1がつ29にち). “Antidepressants: The Emperor’s New Drugs?”. The Huffington Post. https://www.huffpost.com/entry/antidepressants-the-emper_b_442205 2012ねん3がつ1にち閲覧えつらん 
  13. ^ りょうむかいさとし (2020). “臨床りんしょう試験しけんにおけるランダム意義いぎ限界げんかい”. 計量けいりょう生物せいぶつがく 41(1): 37-54. 
  14. ^ 田代たしろこころざしもん研究けんきゅう倫理りんりとはなにか-臨床りんしょう医学いがく研究けんきゅう生命せいめい倫理りんり』勁草書房しょぼう、2011ねん 
  15. ^ 丹後たんご俊郎としお統計とうけいがくのセンス』朝倉書店あさくらしょてん、1998ねん  p21 ISBN 4254127510
  16. ^ Catillon, Maryaline (2019-09). “Trends and predictors of biomedical research quality, 1990–2015: a meta-research study” (英語えいご). BMJ Open 9 (9): e030342. doi:10.1136/bmjopen-2019-030342. ISSN 2044-6055. PMC PMC6731820. PMID 31481564. https://bmjopen.bmj.com/lookup/doi/10.1136/bmjopen-2019-030342. 

参考さんこう文献ぶんけん

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外部がいぶリンク

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