症例しょうれい対照たいしょう研究けんきゅう

証拠しょうこ（科学かがく的てき根拠こんきょまたはエビデンス）の強つよさは、上うえに行いくほど強つよくなる。上うえに向むけて蓄積ちくせきされていくので二に次じ研究けんきゅうが一いち次じ研究けんきゅうを拾ひろいきれないラグも起おこりうる。また効果こうかのみを評価ひょうかし副作用ふくさようを考慮こうりょしていない場合ばあいもある。

  診療しんりょうガイドライン

  メタアナリシス（システマティックレビュー）

  ランダム化か比較ひかく試験しけん (RCT)

  コホート研究けんきゅう

  症例しょうれい対照たいしょう研究けんきゅう

  症例しょうれい報告ほうこく

  in vitro（試験管しけんかん）など

(ニューヨーク州立しゅうりつ大学だいがく作成さくせい）

症例しょうれい対照たいしょう研究けんきゅう（しょうれいたいしょうけんきゅう、case-control study）とは、分析ぶんせき疫学えきがくにおける手法しゅほうの1つである。疾病しっぺいに罹患りかんした集団しゅうだんを対象たいしょうに、曝露ばくろ要因よういんを観察かんさつ調査ちょうさする。次つぎに、その対照たいしょうとして罹患りかんしていない集団しゅうだんについても同様どうように、特定とくていの要因よういんへの曝露ばくろ状じょう況きょうを調査ちょうさする。以上いじょうの2集団しゅうだんを比較ひかくすることで、要因よういんと疾病しっぺいの関連かんれんを評価ひょうかする研究けんきゅう手法しゅほう。ケースコントロール研究けんきゅう、患者かんじゃ対照たいしょう研究けんきゅう、結果けっか対照たいしょう研究けんきゅうとも訳やくされる。

利点りてんと欠点けってん

ケースコントロール研究けんきゅうは、すでに疾病しっぺいを発生はっせいしているケースが利用りようできるため、疾病しっぺいの発生はっせいを待まつ必要ひつようはなく、コホート研究けんきゅうに比くらべて時間じかんもコストもかからない。また、コホート研究けんきゅうが適てきさない稀まれな疾病しっぺい（稀まれな疾病しっぺいの場合ばあい、コホート研究けんきゅうでは膨大ぼうだいな時間じかんと費用ひようをかけて、コホートの大だい部分ぶぶんの人ひとが健康けんこうなままでいることを観察かんさつするだけとなる）に適てきしている。 対象たいしょうとしている疾病しっぺいの原因げんいんと考かんがえられる要因よういんを複数ふくすう調しらべることができるという利点りてんがある。その反面はんめん、リスク要因よういんに関かんする情報じょうほうを過去かこにさかのぼって調しらべなくてはいけないので情報じょうほうが不正ふせい確かくになりがちである。代表だいひょう的てきなものには、思おもい出だしバイアス（recall bias）が挙あげられ、ケースは「過去かこに原因げんいんとして考かんがえられている要因よういんの曝露ばくろを受うけたかどうか」をよく記憶きおくしているが、疾病しっぺいを発生はっせいしていないコントロールは同おなじ曝露ばくろを受うけていても記憶きおくしていないという偏かたよりがしばしば見みられる。また、研究けんきゅう対象たいしょう者しゃの選択せんたくにおいても、コントロールの適切てきせつな選択せんたくは難むずかしく、選択せんたくバイアス（selection bias）についての検討けんとうが充分じゅうぶんになされる必要ひつようがある。またケースコントロール研究けんきゅうは時間じかん軸じくを過去かこに限定げんていしがちであり、後うしろ向むき研究けんきゅう（retrospective study）とも称しょうされることがある。

例れい

以下いかの例れいはサリドマイドによる奇形きけい（フォコメリア phocomelia）を報告ほうこくしたレンツ博士はかせの例れいである。

	症例しょうれい 奇形きけい児じを生うんだ母親ははおや	対照たいしょう 奇形きけい児じを生うんでいない母親ははおや	計けい
サリドマイド服用ふくよう (要因よういん暴露ばくろあり)	90人にん	2人ふたり	92人にん
サリドマイド非ひ服用ふくよう (要因よういん暴露ばくろなし)	22人にん	186人にん	208人にん
	112人にん	188人にん	300人にん

この例れいは奇形きけいを生うんだ母親ははおや112人にんに質問しつもんし、過去かこにサリドマイドを服用ふくようした過去かこがあるかを調査ちょうさし、そののち奇形きけいでない出産しゅっさんをした母親ははおや188人にんに同様どうような質問しつもんをして作成さくせいした表ひょうである。

コホート研究けんきゅうと異ことなり、一般いっぱん的てきに罹患りかん率りつを直接ちょくせつ求もとめることはできない。これは対照たいしょう群ぐんの大おおきさは事後じごに任意にんいに決きめることができるからであり、上うえの表ひょうの188人にんは合計ごうけいを300人にんにするために選えらんできただけである、具体ぐたい的てきには縦たて方向ほうこうの比ひには意味いみがあるが、横よこ方向ほうこうの比ひには意味いみがないからである。

曝露ばくろ要因よういんと疾病しっぺいの関係かんけいは症例しょうれい群ぐんの曝露ばくろオッズと対照たいしょう群ぐんの曝露ばくろオッズを比較ひかくすることで評価ひょうかされる。評価ひょうかにはオッズの比ひをとるので（曝露ばくろ）オッズ比ひ（Odds Ratio)と呼よばれる指標しひょうで評価ひょうかする。この例れいでは以下いかのような高たかい値ねとなる。

${\frac {\frac {90}{22}}{\frac {2}{186}}}={\frac {90}{2}}\times {\frac {186}{22}}=380.45454...$

なお、曝露ばくろ群ぐんの形式けいしき的てきな症例しょうれいオッズと非ひ曝露ばくろ群ぐんの形式けいしき的てきな症例しょうれいオッズの比ひをとっても同おなじ値ちになる（形式けいしきと書かく理由りゆうは、2群ぐんの選択せんたく確かく率りつは実験じっけん者しゃの選択せんたくによるもので、本来ほんらいの無む作為さくいでのオッズとはならないからである。）。

${\frac {\frac {90}{2}}{\frac {22}{186}}}={\frac {90}{22}}\times {\frac {186}{2}}=380.45454...$

対象たいしょうとなる疾病しっぺいの発生はっせい頻度ひんどが稀まれであれば、オッズ比ひは相対そうたいリスク（罹患りかん率りつ比ひ）の良よい近似きんじとなり、「曝露ばくろを受うけることによって、疾病しっぺい発生はっせいのリスクが何なん倍ばいになるか」と解釈かいしゃくすることができる。

参考さんこう文献ぶんけん

• 青山あおやま英康ひでやす　監修かんしゅう「今日きょうの疫学えきがく」第だい2版はん、真ま興きょう社しゃ、2005年ねん、ISBN 4-260-10637-6
• ロバート H.　フレッチャーら著ちょ、福井ふくい次じ矢や　監訳かんやく「臨床りんしょう疫学えきがく　EBM実践じっせんのための必須ひっす知識ちしき」第だい2版はん、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2006年ねん、ISBN 4-89592-454-8

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