適正てきせい農業のうぎょう規範きはん

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適正てきせい農業のうぎょう規範きはん (てきせいのうぎょうきはん、Good Agricultural Practices、GAP)または農業のうぎょう生産せいさん工程こうてい管理かんり (のうぎょうせいさんこうていかんり)とは、農業のうぎょうにおいてある一定いってい成果せいかることを目的もくてきとして実施じっしすべき手法しゅほう手順てじゅんなどをまとめた規範きはん、またはそれが適正てきせい運用うんようされていることを審査しんさ認証にんしょうする仕組しくみのことである。その定義ていぎ内容ないよう目的もくてきによって様々さまざま変化へんかするが、いずれの場合ばあいも、成果せいかがあがるかどうかは規範きはんをどれだけ忠実ちゅうじつ適用てきようするかにかかっているとっても過言かごんではない。

適正てきせい農業のうぎょう規範きはん』という訳語やくごは、このかんがかた日本にっぽんであまり定着ていちゃくしていなかった時期じき農林水産省のうりんすいさんしょう考案こうあんしたものだが、現在げんざい同省どうしょうのホームページないでも『農業のうぎょう生産せいさん工程こうてい管理かんり』という訳語やくご使用しようされることがおおい (以前いぜんに『適正てきせい農業のうぎょう規範きはん』という訳語やくご使用しようして記述きじゅつした箇所かしょとく修正しゅうせいされることなくそのままとなっている)。 また、実際じっさい生産せいさん現場げんばなどでは、GAP (「ギャップ」もしくは「ジーエーピー」)とばれることもおおい。

概要がいよう[編集へんしゅう]

従来じゅうらい生産せいさん現場げんばでは、結果けっか管理かんりという手法しゅほうおお採用さいようされてきた。 これは出来上できあがった産物さんぶつ検査けんさして問題もんだい発生はっせいしてから対処たいしょおこな方法ほうほうである。 たしかにこの方法ほうほう安全あんぜんせいたかいが、多額たがく検査けんさ費用ひようかるうえ、問題もんだい発生はっせいしたさいにどの工程こうてい問題もんだい発生はっせいしたかを判別はんべつしづらいという問題もんだいてんがあった[1]。 そこで適正てきせい農業のうぎょう規範きはんでは、工程こうてい管理かんりという手法しゅほう採用さいようされている。 これはあらかじめ問題もんだい発生はっせいする可能かのうせいたか要因よういんとその対処たいしょほうげ、問題もんだい発生はっせいするまえにその要因よういん排除はいじょする (または問題もんだい発生はっせいしたのちでも、排除はいじょしていなかった要因よういん原因げんいんである可能かのうせいたかいとかんがえられる)という方法ほうほうである[1]。 それにくわえて、グローバルGAPやJGAP (以下いか記述きじゅつ)などの危険きけん要因よういん排除はいじょ適正てきせいおこなわれているかどうかを審査しんさする制度せいど普及ふきゅうしてきている。 これにより、従来じゅうらい方法ほうほうくらべてていコストで柔軟じゅうなんせいたか危機きき管理かんり可能かのうとなった。

適正てきせい農業のうぎょう規範きはんにはかく生産せいさん段階だんかいごとにそれぞれまったステップが用意よういされているが、最終さいしゅうてき運用うんようほうりや決断けつだんをするのは生産せいさんしゃ自身じしんである。 これは全体ぜんたいとおしてこう品質ひんしつの、すなわち包括ほうかつてき管理かんり戦略せんりゃく確立かくりつすることが目的もくてきであり、運用うんようほうによって産物さんぶつ生産せいさん現場げんば状況じょうきょう様々さまざま変化へんかし、それに対応たいおうする能力のうりょく技術ぎじゅつ意図いとてき調整ちょうせいすることも可能かのうとなる。 このような管理かんり戦略せんりゃく実現じつげんにはかく段階だんかいごとの、『知覚ちかく』、『理解りかい』、『企画きかく』、『測定そくてい』、『観察かんさつ』そして『記録きろく保存ほぞん』が重要じゅうようである。 もちろん規範きはん運用うんようほうによってはよりたか生産せいさんせい獲得かくとくすることができる可能かのうせいもあるが、体制たいせい転換てんかんやマーケティングにはおおきな費用ひようがかかるうえ、結局けっきょくそれにより値段ねだんたか商品しょうひんわされるはめになるのは消費しょうひしゃである。 オーストラリア国際こくさい農業のうぎょう研究けんきゅうセンター英語えいごばん(Australian Centre for International Agricultural Research、ACIAR)が発表はっぴょうした、生産せいさん費用ひよう最低限さいていげんまでめかつ農作物のうさくもつ品質ひんしつ維持いじすることを目標もくひょうとした内容ないよう一連いちれんのインターネット刊行かんこうぶつおおくの農業のうぎょう関係かんけいしゃ支持しじている[2]

適正てきせい農業のうぎょう規範きはんには、主要しゅよう農業のうぎょう生態せいたい地理ちりがくてき地域ちいき (くわしくはエコリージョン参照さんしょう)ごと総合そうごう生産せいさん技術ぎじゅつかんするデータベース保守ほしゅ必要ひつよう要素ようそのひとつだ。つまりは地理ちりがくてき背景はいけいそくした適正てきせい規範きはんかんする情報じょうほうの『収集しゅうしゅう』、『分析ぶんせき』、『周知しゅうち』である。

ここ近年きんねん農業のうぎょう環境かんきょう急速きゅうそく変化へんかするのにともない、適正てきせい農業のうぎょう規範きはん内容ないよう変化へんかしていく傾向けいこうにある。具体ぐたいれいげるのであれば、世界せかい規模きぼでの貿易ぼうえき拡大かくだいうし海綿かいめんじょう脳症のうしょう (いわゆる『BSE問題もんだい』)などのしょく安全あんぜんたいする危機きき硝酸塩しょうさんえんによる水質すいしつ汚濁おだくなどの公害こうがい問題もんだい薬剤やくざい抵抗ていこうせい病害虫びょうがいちゅう出現しゅつげん土壌どじょう侵食しんしょく拡大かくだいなどである。

各国かっこく政府せいふにより適正てきせい農業のうぎょう規範きはん運用うんよう方法ほうほうについての研究けんきゅうおこなわれており、農業のうぎょう関係かんけいしゃ専門せんもんなどで組織そしきされた政府せいふ組織そしき民間みんかん組織そしきからのニーズもおおきいのだが、その運用うんよう方法ほうほうなか全体ぜんたいろん事前じぜん調整ちょうせいかんがかた尊重そんちょうされていることはごくまれである。

以下いかでは、各国かっこくかく地域ちいき実際じっさい提唱ていしょう実施じっしされている規範きはん具体ぐたいれい記述きじゅつする。

国際こくさい連合れんごう食糧しょくりょう農業のうぎょう機関きかん適正てきせい農業のうぎょう規範きはん[編集へんしゅう]

国際こくさい連合れんごう食糧しょくりょう農業のうぎょう機関きかん (Food and Agriculture Organization、FAO)提唱ていしょうしている適正てきせい農業のうぎょう規範きはんとは、実際じっさい農業のうぎょう現場げんば適用てきようされるべき原則げんそくをまとめたものである。 その目的もくてき安全あんぜん健康けんこうてきしょく食品しょくひん分野ぶんや農業のうぎょうまもり、同時どうじ経済けいざいてき利益りえき確保かくほすることで、社会しゃかいてきにも環境かんきょうてきにも持続じぞく可能かのう農業のうぎょうをつくりあげることにある。

元々もともとは、どう組織そしきが1970年代ねんだい農薬のうやく使用しよう関連かんれんした規範きはん作成さくせいしたのがはじまりで、これが適正てきせい農業のうぎょう規範きはん元祖がんそとされている[3]現在げんざい規範きはんはそれらの分析ぶんせき発展はってんかえして完成かんせいしたものである。

この規範きはん様々さまざま種類しゅるい規模きぼ農業のうぎょう現場げんば適用てきようされることが推奨すいしょうされており、持続じぞく可能かのう農業のうぎょう手法しゅほうとして、総合そうごうてき病害虫びょうがいちゅう管理かんり総合そうごうてき肥料ひりょう管理かんり (integrated fertilizer management)、保全ほぜん農業のうぎょう英語えいごばんなどが紹介しょうかいされている。これらは基本きほんてきつぎの4つの原則げんそくのっとったものである。

  • 利益りえきてきにも効率こうりつてきにも充分じゅうぶん収穫しゅうかくりょう実現じつげんし、安全あんぜん栄養えいようたか作物さくもつをつくる[4];
  • ゆたかな自然しぜん資源しげんさらなる強化きょうか維持いじつとめる;
  • 持続じぞく可能かのう農業のうぎょうとおして、持続じぞく可能かのう開発かいはつ労働ろうどうしゃ生計せいけい確立かくりつさせる;
  • 社会しゃかい文化ぶんかてき社会しゃかいてき需要じゅよう見合みあった農業のうぎょうおこなう。

土壌どじょう関連かんれんした適正てきせい農業のうぎょう規範きはんれい[編集へんしゅう]

農業のうぎょうかたじょうかせない要素ようそのひとつが土壌どじょうである。国際こくさい連合れんごう食糧しょくりょう農業のうぎょう機関きかん提唱ていしょうする適正てきせい農業のうぎょう規範きはんのうち、土壌どじょう関連かんれんする事項じこうとしてはおもつぎのようなものがげられる。

  • ふうみずによる土壌どじょう浸食しんしょくは、生垣いけがき水路すいろ整備せいびすることにより軽減けいげんさせる;
  • 肥料ひりょう適切てきせつ時期じき (作物さくもつにとって肥料ひりょう必要ひつよう不可欠ふかけつ時期じき)と適量てきりょうまもって使用しようすることにより表面ひょうめん流出りゅうしゅつ軽減けいげんさせる (窒素ちっそバランスはとく植物しょくぶつ成長せいちょうには重要じゅうよう);
  • 有機ゆうき肥料ひりょう使用しようや、放牧ほうぼく輪作りんさくなどをおこなうことにより、有機物ゆうきぶつおおふくんだよくな土壌どじょう保全ほぜんまたは回復かいふくさせる;
  • せてしまうのをふせぐ (じゅう機械きかい使用しようはなるべくけることがのぞましい);
  • 無理むり作付さくづけをおこなわず、適度てきどやすませることで、土壌どじょう構成こうせいバランスをたも[5];
  • 生育せいいくしたマメるいササゲホースグラムサンヘンプ英語えいごばんなど)を緑肥りょくひとしてきこむ。

みず関連かんれんした適性てきせい農業のうぎょう規範きはんれい[編集へんしゅう]

農業のうぎょうには土壌どじょうのみならず、みず必須ひっす要素ようそのひとつである。ゆえにこの適正てきせい農業のうぎょう規範きはんなかにはみず関係かんけいするものもおお存在そんざいする。

  • 植物しょくぶつ育成いくせいてきするような、計画けいかくてき灌がいおこなうことで、土壌どじょう水分すいぶん不足ふそくするのをふせぐ;
  • 土壌どじょう適度てきど水分すいぶん補給ほきゅうし、みず循環じゅんかんうながすことは、塩害えんがい防止ぼうしすることにもつながる;
  • 水不足みずぶそく収穫しゅうかくりょうひくかった地域ちいきでも収穫しゅうかくりょうびが期待きたいできる;
  • みず肥料ひりょう表面ひょうめん流出りゅうしゅつふせぐ;
  • 恒常こうじょうてき存在そんざいする土壌どじょう維持いじし、とく冬場ふゆば窒素ちっそ流出りゅうしゅつするのを防止ぼうしする;
  • みず厳重げんじゅう管理かんりすることでみず過剰かじょう使用しよう抑制よくせいする;
  • 湿原しつげん保存ほぞんまたはよみがえらせる効果こうか期待きたいできる (ぬま参照さんしょう);
  • 家畜かちくには水質すいしつみず必要ひつようである[6];
  • 使用しようされるみずは、地下水ちかすいったり、ダムをきずくことで確保かくほする。

動物どうぶつ活動かつどう動物どうぶつ健康けんこう福祉ふくし関連かんれんした適正てきせい農業のうぎょう規範きはんれい[編集へんしゅう]

公害こうがい家畜かちくかいして発生はっせいする疾患しっかん伝染でんせんびょうなどのしょくたいする安全あんぜんせい問題もんだい現場げんば日常にちじょうてきかえされている動物どうぶつ虐待ぎゃくたいまがいの行為こういなどが問題もんだいとなり、つぎのような事項じこう重要じゅうようされるようになってきた。

  • 動物どうぶつ生命せいめい活動かつどう尊重そんちょうする (飢餓きがかわきからの解放かいほう不快ふかいからの解放かいほういたみ・きずやまいからの解放かいほう不自由ふじゆうなく日常にちじょうごせる、恐怖きょうふくるしみからの解放かいほう);
  • 治療ちりょう目的もくてき以外いがいではなるべく動物どうぶつきずつけることはける (ドッキング英語えいごばん (意図いとてきみみ切断せつだんする行為こうい)や、ディビーキング英語えいごばん (鳥類ちょうるいのくちばしを切断せつだんする行為こうい)など);
  • 景観けいかん環境かんきょう健康けんこうにとってマイナスに影響えいきょうするようなことはける (とく家畜かちく作物さくもつみず空気くうき汚染おせんするような行為こうい);
  • システム構造こうぞう破綻はたんしないよう、商品しょうひん現物げんぶつ生産せいさん工程こうていにはつねくばる;
  • 化学かがく製品せいひん医療いりょう製品せいひん食物しょくもつ連鎖れんさ影響えいきょうあたえないように注意ちゅういする;
  • 医療いりょう目的もくてき以外いがいではなるべく抗生こうせい物質ぶっしつホルモン使用しよう極力きょくりょくける;
  • 動物どうぶつが、自他じたのものをわず動物どうぶつ内臓ないぞう排泄はいせつぶつべてしまわないように注意ちゅういする (悪性あくせいウイルス変質へんしつ遺伝子いでんしプリオン (とくにBSEの原因げんいん物質ぶっしつとなるもの)のリスクを軽減けいげんさせることができる);
  • きた動物どうぶつ輸送ゆそう最小限さいしょうげんめる (口蹄疫こうていえきなどに代表だいひょうされるような、伝染でんせんびょうのリスクを軽減けいげんさせる);
  • 廃棄はいきぶつ流出りゅうしゅつ (ぶた飼育しいくするじょう発生はっせいする硝酸塩しょうさんえんによる水質すいしつ汚濁おだくなど)・栄養素えいようそ流出りゅうしゅつ温室おんしつ効果こうかガス (うし飼育しいくするじょう発生はっせいするメタンガスなど)の排出はいしゅつける;
  • 設備せつび装置そうち操作そうさかんしては、安全あんぜん基準きじゅん徹底てっていさせる;
  • 消費しょうひしゃ安全あんぜんや、しょく安全あんぜんたいする危機ききへのそなえとして、生産せいさん工程こうてい (飼育しいく飼料しりょう医療いりょう処置しょちなど)全体ぜんたいとおしてトレーサビリティのプロセスを適用てきようする (ダイオキシンるいたいしてなど)[7]

健康けんこう管理かんり公衆こうしゅう衛生えいせい関連かんれんした適正てきせい農業のうぎょう規範きはんれい[編集へんしゅう]

日本にっぽん適正てきせい農業のうぎょう規範きはん[編集へんしゅう]

他国たこく (とく欧米おうべい諸国しょこく)にくらべて普及ふきゅうおくれをっていたが、近年きんねんのグローバル (食品しょくひん輸出入ゆしゅつにゅう増加ぞうかによる国際こくさい競争きょうそう激化げきか)やしょく安全あんぜんたいする問題もんだい、さらに2020ねん東京とうきょうオリンピックパラリンピック選手せんしゅむら納入のうにゅうする食材しょくざいのGAP認証にんしょう必須ひっす[10]などもあって、農林水産省のうりんすいさんしょう導入どうにゅう積極せっきょくてきうごきをせる[11] [12] [13] など、農業のうぎょう適正てきせい規範きはんかんがかた国内こくないでも徐々じょじょ浸透しんとうしてきている。

イオンなどの企業きぎょう独自どくじにグローバルGAP (くわしくは以下いか記述きじゅつ)に匹敵ひってきする基準きじゅん農家のうか監査かんさ制度せいど導入どうにゅうしている[14] (トップバリュ)ほか、一般いっぱん財団ざいだん法人ほうじん日本にっぽんGAP協会きょうかいJGAP (ジェイギャップ、Japan Good Agricultural Practice)の普及ふきゅう目指めざしている[3]。 しかし、そのほかにもかく地域ちいき自治体じちたい農業のうぎょう協同きょうどう組合くみあいなどが作成さくせいした規範きはん多数たすう存在そんざいしており[15]日本にっぽん国内こくないだけでも様々さまざまなGAPが乱立らんりつしてきたが、2016ねんから農林水産省のうりんすいさんしょう日本にっぽんはつ国際こくさいてき通用つうようするGAPとしてJGAP Advanceの推進すいしんすすめており、日系にっけい企業きぎょうのみならず外資がいしけい企業きぎょうもJGAPを利用りようはじめていることから、日本にっぽんのデファクトスタンダードGAP(事実じじつじょう標準ひょうじゅん)との位置いちづけになりつつある。

JGAPについて[編集へんしゅう]

日本にっぽんGAP協会きょうかい (きゅう JGAI協会きょうかい)が日本にっぽん国内こくない統一とういつ基準きじゅん確立かくりつする目的もくてきで2005ねんにスタートさせた農場のうじょう審査しんさ認証にんしょう制度せいどで、とく青果物せいかぶつ部門ぶもん[16]は、チェックリストの内容ないようにおいてグローバルGAPとの同等どうとうせい認証にんしょうゆうしていたが、現在げんざい同等どうとうせい認証にんしょうていない。近年きんねん日系にっけい小売こうりぎょう食品しょくひんメーカーのみならず、外資がいしけい企業きぎょうがJGAPを利用りようしており、グローバルGAPとの同等どうとうせい有無うむ実際じっさい取引とりひき現場げんばには影響えいきょうがほとんどない。

2015ねん7がつにJGAPを主宰しゅさいする日本にっぽんGAP協会きょうかい公益こうえき財団ざいだん法人ほうじん日本にっぽん適合てきごうせい認定にんてい協会きょうかい覚書おぼえがきわし国際こくさいてき認証にんしょうへの格上かくあげをはかっている。国際こくさいてき通用つうようする認証にんしょう制度せいど判断はんだん基準きじゅんとして、GFSI(Global Food Safety Initiative、世界せかい食品しょくひん安全あんぜんイニシアチブ)承認しょうにん有無うむ使つかうのがひとつの方法ほうほうだが、JGAPはGFSI承認しょうにん取得しゅとくする方針ほうしんであることを2014ねん発表はっぴょうし、そのための改版かいはんも2016ねんえている。JGAPには英語えいごばん中国ちゅうごくばん韓国かんこくばんもあり、海外かいがいにも認証にんしょう農場のうじょうえ、国際こくさいてきひろがりがてきている。

審査しんさ項目こうもくは、農場のうじょう農作物のうさくもつ管理かんり方法ほうほうから労働ろうどうしゃ安全あんぜん福祉ふくし農場のうじょう経営けいえい状態じょうたいいたるまで多岐たきにのぼっていて、ISO17065(製品せいひん認証にんしょう)にもとづくたか基準きじゅん審査しんさおこなわれている。審査しんさ日本にっぽんGAP協会きょうかいおよ日本にっぽん適合てきごうせい認定にんてい協会きょうかい承認しょうにんけた企業きぎょう団体だんたいによっておこなわれ、審査しんさ合格ごうかくすれば認証にんしょう農場のうじょう証明しょうめいしょ出荷しゅっかする産品さんぴん包装ほうそうに『JGAP認証にんしょう農場のうじょうマーク』を記載きさいする権利けんり (認証にんしょうけたのちさらなる手続てつづきが必要ひつよう)があたえられる。

ヨーロッパの適正てきせい農業のうぎょう規範きはん[編集へんしゅう]

一般いっぱんてきにはグローバルGAP (GLOBALGAP)またはユーレップGAP (EUREPGAP)とばれ、事実じじつじょう世界せかい基準きじゅんとなっている。 元々もともとは、1997ねんヨーロッパにあるいくつかのスーパーマーケットチェーンとその仕入しいれさき業者ぎょうしゃ連合れんごう (欧州おうしゅう小売こうりぎょう協会きょうかい (ユーレップ、EUREP))がユーレップGAPという名称めいしょうでこの制度せいどをスタートさせた[3]。 その目的もくてきは、小売こうり業者ぎょうしゃがわ多様たよう仕入しいれさき業者ぎょうしゃがわたいして活用かつようできる基準きじゅんもうけることにあったが、農家のうかたいする問題もんだい提起ていきという側面そくめんねていた。 とく法的ほうてき拘束こうそくりょくはないが、最近さいきんではヨーロッパのおおくの客層きゃくそう (おもには小売こうり卸売おろしう業者ぎょうしゃなど)が、その産品さんぴんがユーレップGAP認証にんしょうけているかどうかを重視じゅうしする傾向けいこうにあり、農業のうぎょうビジネスをかたじょうではかすことのできない要素ようそのひとつとなっている。 とくに2005ねん以降いこうは、欧州おうしゅう小売こうりぎょう協会きょうかい加盟かめいしている小売こうりてんではこの基準きじゅんをクリアした産品さんぴん以外いがい店頭てんとうならべない方針ほうしんした[3]ことから、制度せいど普及ふきゅう急激きゅうげきすすんだ。 この成功せいこうけ、この事例じれいをモデルにヨーロッパ諸国しょこく以外いがいでもGAP手法しゅほう導入どうにゅうするうごきが急激きゅうげきひろまった。

おもにこの規範きはんもとになっているのは、国際こくさい連合れんごう食糧しょくりょう農業のうぎょう機関きかん発表はっぴょうした危害きがい分析ぶんせき重要じゅうよう管理かんりてん(Hazard Analysis and Critical Control Point、HACCP)かんがかたで、ISO Guide 65が認証にんしょうおこなっている[よう出典しゅってん]。 この制度せいど対象たいしょうとなる産品さんぴん種類しゅるいは、野菜やさい果物くだもの穀物こくもつ畜産ちくさんぶつ養殖ようしょく食品しょくひんはな/観葉かんよう植物しょくぶつである[12]農場のうじょう認証にんしょう制度せいどとはことなり、この制度せいど生産せいさんしゃにとって非常ひじょう厳格げんかくであり、かく生産せいさん段階だんかいごとにそれぞれべつ第三者だいさんしゃ機関きかん審査しんさおこなっている。 審査しんさやくは、ユーレップGAP事務じむきょく承認しょうにんけた企業きぎょう団体だんたいつとめることになっており、審査しんさ合格ごうかくした場合ばあい証明しょうめいしょ交付こうふされる。 ただし、JGAPとちがい、包装ほうそう承認しょうにんけているむね記載きさいする行為こうい禁止きんしされている。GLOBALG.A.P.は農産物のうさんぶつのみならず水産すいさん養殖ようしょく認証にんしょうおこなうが、水産物すいさんぶつだけは商品しょうひんにGGNロゴとばれている消費しょうひしゃ認証にんしょうマークをることができる。おもにトレーサビリティを目的もくてきとし、ロゴにGLBOALG.A.P. Number(GGN)とばれるトレーサビリティコードを併記へいきして使つかう。

2007ねん9がつ、ユーレップGAPは正式せいしき名称めいしょうをグローバルGAPとあらためた。 これは、適正てきせい農業のうぎょう規範きはんかんがかたがヨーロッパにかぎらずおおくのくに地域ちいき小売こうり業者ぎょうしゃおよびその仕入しい業者ぎょうしゃ定着ていちゃくしてきており、今後こんごこのヨーロッパ基準きじゅん国際こくさいてき重要じゅうよう役割やくわりめることになるとかんがえられたためである。 この基準きじゅんはインターネットじょうでも公開こうかいされている[17]

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく適正てきせい農業のうぎょう規範きはん[編集へんしゅう]

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくについては、GAP/GHPプログラム(GAP/GHP Program)という制度せいど存在そんざいする。 これはアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく農務のうむしょう (United States Department of Agriculture、USDA)が、実際じっさいかく農場のうじょう適正てきせい農業のうぎょう規範きはんおよび適正てきせい運用うんよう規範きはん (Good Handling Practices、GHP)を適用てきようしているかを審査しんさ認証にんしょうする仕組しくみである。 このプログラムのガイドラインではしょく安全あんぜんせい重点じゅうてんかれており、国際こくさい連合れんごう食糧しょくりょう農業のうぎょう機関きかん提唱ていしょうされているような動物どうぶつ福祉ふくし生物せいぶつ多様たようせい維持いじ抗生こうせい物質ぶっしつホルモン使用しようかんしてはれられていない。 このプログラムはニュージャージーしゅう農務のうむしょうのGAPやGHPを監査かんさする制度せいど導入どうにゅうのぞこえけ、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく農務のうむしょう作成さくせいしたものである。 しかし、そのうらには、農家のうかたいして結果けっかもとめGAPやGHPに固執こしつしていた卸売おろしう業者ぎょうしゃたちの圧力あつりょくがあったともわれている。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく農務のうむしょうのガイドラインと原則げんそくは、アメリカ食品しょくひん医薬品いやくひんきょくが1998ねん発表はっぴょうした"Guide to Minimize Microbial Food Safety Hazards for Fresh Fruits and Vegetables." (『微生物びせいぶつによる生鮮せいせん青果物せいかぶつ食品しょくひん安全あんぜんせいへの危害きがい要因よういん最小限さいしょうげんにするための手引てびき。』)をもとにしている。

そのほかの適正てきせい農業のうぎょう規範きはん[編集へんしゅう]

そのほかの地域ちいき国々くにぐにでもGAP手法しゅほう導入どうにゅうするうごきがひろまっており、欧米おうべい諸国しょこく以外いがい地域ちいきでも欧州おうしゅうへの輸出ゆしゅつ作物さくもつ栽培さいばいしている農場のうじょう中心ちゅうしんにグローバルGAPの審査しんさける農場のうじょうえている。 また、グローバルGAP以外いがいのGAP手法しゅほうが、JGAPと同様どうようにグローバルGAPとの同等どうとうせい認証にんしょう許可きょかされた事例じれい存在そんざいする[18] ほか、じゅん会員かいいんというかたちでグローバルGAPに協力きょうりょくしている機関きかん多数たすう存在そんざいしている[19]

台湾たいわんGAPなどのように、グローバルGAPとの同等どうとうせい認証にんしょう取得しゅとく申請しんせいおこなわず、独自どくじ研究けんきゅう開発かいはつされたGAP手法しゅほう世界せかい各地かくち存在そんざいする。

グローバルGAPとの同等どうとうせい認証にんしょう取得しゅとくした事例じれい[編集へんしゅう]

ちゅう1:一部いちぶ部門ぶもんだけが認証にんしょうけているもの/かり認証にんしょう段階だんかいのものをふく
ちゅう2:ここにしめした情報じょうほうは2010ねん4がつ16にち現在げんざいのもの

グローバルGAPとの同等どうとうせい認証にんしょう取得しゅとく申請しんせいちゅう事例じれい[編集へんしゅう]

  • COLOMBIAGAP (コロンビア)
  • AT-GAP (韓国かんこく)
  • SalmonG.A.P. (チリ)
  • KFC SILVER STANDARD (ケニア)
  • THAIGAP (タイ)
ちゅう:ここにしめした情報じょうほうは2010ねん4がつ16にち現在げんざいのもの

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b 神奈川かながわけん. “(PDF)GAPで経営けいえい改善かいぜんを してみませんか?”. 2010ねん4がつ16にち閲覧えつらん
  2. ^ オーストラリア国際こくさい農業のうぎょう研究けんきゅうセンター. “Research that works for developing countries and Australia”. 2007ねん11月25にち閲覧えつらん
  3. ^ a b c d 独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん農業のうぎょう環境かんきょう技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ (2006ねん4がつ1にち). “農業のうぎょう環境かんきょう/国際こくさい情報じょうほう適正てきせい農業のうぎょう規範きはん(GAP)”. 2010ねん4がつ16にち閲覧えつらん
  4. ^ Johnson, G. I. et al. (2000ねん). “Quality Assurance in Agricultural Produce”. オーストラリア国際こくさい農業のうぎょう研究けんきゅうセンター. 2007ねん11月25にち閲覧えつらん
  5. ^ FAO : GAP : FAO GAP Principles : Soil
  6. ^ FAO : GAP : FAO GAP Principles : Water
  7. ^ FAO : GAP : FAO GAP Principles : Animal Health and Welfare
  8. ^ Máthé, A.; I. Máthé. “Quality assurance of cultivated and gathered medicinal plants”. 2009ねん5がつ23にち閲覧えつらん
  9. ^ 世界せかい保健ほけん機関きかん (2003ねん). “WHO guidelines on good agricultural and collection practices (GACP) for medicinal plants”. 2009ねん5がつ23にち閲覧えつらん
  10. ^ 選手せんしゅむらでの食材しょくざい提供ていきょうだけじゃない! GAP取得しゅとく重要じゅうようせい”. アグリジャーナル (2018ねん3がつ19にち). 2018ねん6がつ1にち閲覧えつらん
  11. ^ 農林水産省のうりんすいさんしょう. “農業のうぎょう生産せいさん工程こうてい管理かんり(GAP)にかんする情報じょうほう”. 2010ねん4がつ16にち閲覧えつらん
  12. ^ a b 北海道ほっかいどう. “(PDF)農業のうぎょう生産せいさんもとめられる「GAP (ギャップ)をるセミナー講演こうえん概要がいよう”. 2010ねん4がつ16にち閲覧えつらん
  13. ^ 農林水産省のうりんすいさんしょう 生産せいさんきょく農業のうぎょう環境かんきょう対策たいさく (2017ねん11月22にち). “国際こくさい水準すいじゅんGAPの推進すいしんについて” (pdf). 2018ねん6がつ1にち閲覧えつらん
  14. ^ ÆON. “(PDF)いま農業のうぎょう生産せいさん現場げんばもとめられていること”. 2010ねん4がつ16にち閲覧えつらん
  15. ^ 農林水産省のうりんすいさんしょう (2009ねん8がつ5にち). “(PDF)だい1かい農業のうぎょう生産せいさん工程こうてい管理かんり(GAP)の共通きょうつう基盤きばんづくりにかんする検討けんとうかい”. 2010ねん4がつ16にち閲覧えつらん
  16. ^ JGAP(農産物のうさんぶつ)について”. 日本にっぽんGAP協会きょうかい. 2020ねん6がつ5にち閲覧えつらん
  17. ^ グローバルGAP. “Integrated Farm Assurance Standards”. 2009ねん4がつ4にち閲覧えつらん
  18. ^ グローバルGAP. “Harmonisation via Benchmarking”. 2010ねん4がつ16にち閲覧えつらん
  19. ^ グローバルGAP. “Associate Members”. 2010ねん4がつ16にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Luning, edited by P. A.; Devlieghere, F.; Verhé, R. (2006ねん), Safety in the agri-food chain, Wageningen, The Netherlands: Wageningen Academic Publishers, ISBN 9076998779, OCLC 60375200 

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]