精神せいしん刺激しげきやく

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精神せいしん刺激しげきやく(せいしんしげきやく、えい: stimulant[1][2][3], えい: psychostimulant[1])とは、中枢ちゅうすう神経しんけいけい活動かつどう増加ぞうかさせる薬物やくぶつ総称そうしょうである[1]刺激しげきやく興奮こうふんざい[4]ともばれる。乱用らんようのため一定いってい規制きせいがあるが、医療いりょう研究けんきゅうじょう用途ようと認可にんかされているものもおおい。

デキストロアンフェタミンメタンフェタミンふくアンフェタミンるい[5]コカインカフェインキサンチンるいニコチンメチルフェニデートふくまれる[1]。ということは、日本にっぽんにおけるアンフェタミンるい覚醒剤かくせいざいふくむものである。a-PVP英語えいごばんのような新規しんきこう精神せいしんやく(NPDs)のデザイナードラッグふくむ。メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)は化学かがく構造こうぞうとしてアンフェタミンるい分類ぶんるいされる。しかし幻覚げんかく作用さようゆう特性とくせいことなる[6]

関連かんれん障害しょうがい単位たんいとしては、世界せかい保健ほけん機関きかんはコカインと、それ以外いがいのものに[1]ているがタバコの分類ぶんるいもある[7]アメリカ精神せいしん学会がっかいは、アンフェタミンさま作用さようつものと、コカイン、またニコチンとカフェインに分類ぶんるいしている[8]ともにMDMAは、幻覚げんかくざい分類ぶんるいされる[1][9]

定義ていぎ[編集へんしゅう]

訳語やくご問題もんだい[編集へんしゅう]

つぎ訳語やくご問題もんだいがあり、訳語やくご一定いっていしていない。おなじような薬物やくぶつあらわすstimulantという単語たんごたいして興奮こうふんざい覚醒剤かくせいざい刺激しげきやくといった訳語やくご混在こんざいしてきた。

Excitantica(analeptica, stimulanta) (1916ねん簡易かんい処方しょほうしゅうにおけるドイツ日本語にほんごやく)
のう興奮こうふんざい[10]。カフェインがふくまれている。

日本にっぽんにおける乱用らんよう問題もんだいとなってくることによって取締とりしまりほう制定せいていされる。

Stimulant Control Law(法務省ほうむしょう刑事けいじきょく日本語にほんごやく)
覚醒剤かくせいざい取締とりしまりほう[11]。1951ねん法律ほうりつである。しかし、国連こくれん薬物やくぶつ犯罪はんざい事務所じむしょ(UNDOC)での日本にっぽん厚生省こうせいしょう報告ほうこくでは、「覚醒剤かくせいざい(awakening drugs)」としてられる「興奮こうふんざいないし精神せいしん刺激しげきやく(Stimulant)」と報告ほうこく[12]覚醒かくせいアミンあるいはアンフェタミンるいである[13]
Analeptics and nervous system stimulants(総務そうむしょうによる1949ねん薬効やっこう分類ぶんるい翻訳ほんやく)
興奮こうふんざいかくせいざい[14]。1949ねん分類ぶんるいである。
central nervous system stimulants(総務そうむしょうによる1964ねんと1990ねん薬効やっこう分類ぶんるい翻訳ほんやく)
興奮こうふんざいかくせいざい[15][4]。1964ねん改定かいていと、1990ねん改定かいてい同一どういつのもの。Analepticsのかたりくなった。
stimulant drugs(医学いがくしょ『モーズレイ処方しょほうガイドライン』における翻訳ほんやく)
刺激しげきせい薬物やくぶつである。なお、コカインやアンフェタミンを説明せつめいしている[16]

『グッドマン・ギルマン薬理やくりしょだい12はんでは、英単語えいたんご見当みあたらないが、「興奮こうふんやく」にてコカインやアンフェタミン、カフェインに言及げんきゅうしている[17]

日本にっぽん法律ほうりつ[編集へんしゅう]

日本にっぽんでは、だい世界せかい大戦たいせんに、アンフェタミンととくにメタンフェタミンの注射ちゅうしゃざい乱用らんよう問題もんだいとなった。このため、1951ねん(昭和しょうわ26ねん)6がつ30にち覚醒剤かくせいざい取締とりしまりほう公布こうふされる。「日本にっぽん法律ほうりつじょう覚醒剤かくせいざい」が規定きていされている。

この法律ほうりつ日本語にほんごやくは、法務省ほうむしょう刑事けいじきょくの『法律ほうりつ用語ようご対訳たいやくしゅう』によれば、Stimulant Control Lawである[11]。しかし、国連こくれん薬物やくぶつ犯罪はんざい事務所じむしょ(UNDOC)における厚生省こうせいしょう報告ほうこくではAmphetamines Control Law[13][12]、UNDOCの認識にんしきユネスコでの厚生省こうせいしょう麻薬まやく報告ほうこくでは、Awakening Drug Control Lawである[18][19]

だいじょう この法律ほうりつで「かくせいざい」とは、ひだりかかげるものをいう。
いち フエニルアミノプロパン、フエニルメチルアミノプロパンおよかくその塩類えんるい
前号ぜんごうかかげるもの同種どうしゅかくせい作用さようゆうするものであつて政令せいれい指定していするもの

さん まえごうかかげるもののいずれかを含有がんゆうするもの — 覚醒剤かくせいざい取締とりしまりほう

だいさんじょう規定きていされるように、医療いりょうおよび研究けんきゅうじょう使用しようみとめられている。

なおコカインやMDMAは「日本にっぽん麻薬まやく取締とりしまりほうにおける麻薬まやく」である。

世界せかい保健ほけん機関きかん[編集へんしゅう]

1961ねん麻薬まやくかんする単一たんいつ条約じょうやくは、だい世界せかい大戦たいせんのち解体かいたいした国際こくさい連盟れんめいによる万国ばんこく阿片あへん条約じょうやくを、国際こくさい連合れんごうおよび世界せかい保健ほけん機関きかんいだことによって締結ていけつされた国際こくさい条約じょうやくである[20]。これはコカインなどの使用しよう制限せいげんしている[20]当時とうじ、コカインは飲料いんりょうコカ・コーラなどにもふくまれ乱用らんよう問題もんだいとなったためである。ただし、麻薬まやくかんする単一たんいつ条約じょうやくだい30じょう(b)(i)および(ii)は、個人こじん治療ちりょうかんして、処方箋しょほうせんようしてほどこせようするための規定きていである。「コカインは国際こくさい条約じょうやくじょう麻薬まやく」である。

しかし、麻薬まやくかんする単一たんいつ条約じょうやく公布こうふされる過程かていにおいても、1956ねんの「沈溺せい薬物やくぶつかんする世界せかい保健ほけん機関きかん専門せんもん委員いいんかい」は、日本にっぽんにおけるアンフェタミンの乱用らんよう問題もんだいげ、同時どうじ睡眠薬すいみんやくのようなトランキライザー国際こくさいてき乱用らんよう問題もんだいげた[21]。1963ねんには、「依存いぞんせい薬物やくぶつかんする世界せかい保健ほけん機関きかん専門せんもん委員いいんかい」とえた委員いいんかいは、中枢ちゅうすう神経しんけいけいたいして鎮静ちんせいあるいは覚醒かくせい作用さようのある鎮静ちんせいざい精神せいしん刺激しげきやく(stimulants)の乱用らんようが、麻薬まやく乱用らんようのような問題もんだいとなっていることを懸念けねんし、あらたな規制きせい条約じょうやくにつながっていった[22]

1971ねんこう精神せいしんやくかんする条約じょうやくにおいてあらたな規制きせい範囲はんいしめされた。条約じょうやく翻訳ほんやくぶんでは、stimulationに興奮こうふんをあてている。

1) A state of dependence, and
2) Central nervous system stimulation or depression, resulting in hallucinations or disturbances in motor function or thinking or behaviour or perception or mood, or
(i) (1)依存いぞん状態じょうたいおよ
(2)幻覚げんかくをもたらしまた運動うんどう機能きのう思考しこう行動こうどう知覚ちかくしくは感情かんじょう障害しょうがいこす中枢ちゅうすう神経しんけいけい興奮こうふんまた抑制よくせい

— こう精神せいしんやくかんする条約じょうやく (PDF) (外務省がいむしょう)

アンフェタミンやメタンフェタミン、メチルフェニデートなどがおなじスケジュールIIに指定していされ規制きせい管理かんりにある[23]の、1984ねん世界せかい保健ほけん機関きかん会議かいぎでは、乱用らんよう流行りゅうこうしていたMDMAは医療いりょう価値かちがないとしてスケジュールIに規定きていされた[24]どう条約じょうやくの1じょう(e)に定義ていぎされるように、これらは「国際こくさい条約じょうやくじょうこう精神せいしんやく」である。

疾病しっぺいおよ関連かんれん保健ほけん問題もんだい国際こくさい統計とうけい分類ぶんるいだい10はん(ICD-10)では、stimulantに精神せいしん刺激しげきやくかたりもちいている。

stimulants, including caffeine

カフェインおよび精神せいしん刺激しげきやく

— 『疾病しっぺいおよ関連かんれん保健ほけん問題もんだい国際こくさい統計とうけい分類ぶんるいだい10はん(ICD-10):DCR研究けんきゅうよう診断しんだん基準きじゅん[2]

For stimulant drugs such as cocaine and amfetamines[25]
コカインやアンフェタミンのような刺激しげきせい薬物やくぶつ場合ばあい[26]

— 『疾病しっぺいおよ関連かんれん保健ほけん問題もんだい国際こくさい統計とうけい分類ぶんるいだい10はん(ICD-10):臨床りんしょう記述きじゅつ診断しんだんガイドライン

世界せかい保健ほけん機関きかんの『アルコールと薬物やくぶつ用語ようごしゅう』においては、精神せいしん刺激しげきやく(Stimulant)とは、中枢ちゅうすう神経しんけいけい作用さようし、神経しんけい活動かつどう増加ぞうかさせ、主要しゅよう作用さよう刺激しげき作用さようである薬物やくぶつであり、アンフェタミンるい、コカイン、カフェインやキサンチンるい、ニコチン、メチルフェニデートフェンメトラジン英語えいごばんのようなものをげ、ICD-I0においてはコカインによるものと、カフェインをふくほか精神せいしん刺激しげきやくによるものにけているということである[1]。なおMDMAは幻覚げんかくざい分類ぶんるいされている[27]

最近さいきん世界せかい保健ほけん機関きかん文書ぶんしょでは、精神せいしん刺激しげきやく分類ぶんるいされる薬物やくぶつは、コカイン、ニコチン、カフェイン、アンフェタミン、メタンフェタミンといった中枢ちゅうすう神経しんけいけい活動かつどう増加ぞうかさせる薬物やくぶつである[6]。したがってメチルフェニデートふくまれる[28]MDMAは、精神せいしん刺激しげきやくぞくするが幻覚げんかく特性とくせいがあり[6]依存いぞんせいがないなどことなった特徴とくちょう[29]

アメリカ精神せいしん学会がっかい[編集へんしゅう]

精神せいしん障害しょうがい診断しんだん統計とうけいマニュアルだい4はん(DSM-IV)では、アンフェタミン(またはアンフェタミンさま)関連かんれん障害しょうがいに、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、メタンフェタミンのような置換ちかんされたフェニルアラニン構造こうぞうをもつものすべてと、メチルフェニデートのように構造こうぞうことなるが同様どうよう作用さようゆうする物質ぶっしつカートふくめ、作用さようがコカインにているがコカインのように局所きょくしょ麻酔ますい効果こうかのないものを想定そうていしている[30]。DSM-IVの日本語にほんご訳書やくしょでは、コカインやアンフェタミンをすのに精神せいしん刺激しげきやく興奮こうふんざいかたり両方りょうほうもちいられている。MDMAは、幻覚げんかくざい分類ぶんるいされる[9]

DSM-5においては、上位じょうい精神せいしん刺激しげきやく関連かんれん障害しょうがいぐん(Stimulant—Related Disorders)を用意よういし、この下位かいに、アンフェタミンがた、コカイン、のまたは特定とくてい不能ふのう精神せいしん刺激しげきやく分類ぶんるいされる[3]

化学かがく[編集へんしゅう]

アンフェタミン、デキストロアンフェタミンはその活性かっせいがたみぎ旋性異性いせいたいである[31]

メチルキサンチンるいは、カフェインやテオフィリンがふくまれる[31]

乱用らんよう[編集へんしゅう]

精神せいしん刺激しげきやくは、前述ぜんじゅつした規制きせい存在そんざいするように、乱用らんようされやすい薬物やくぶつであることがかっている。医学いがくてき薬物やくぶつ乱用らんようとは、薬物やくぶつ使用しようにより、身体しんたいへのがい使用しようによるトラブルなど、有害ゆうがい結果けっかしょうじている状態じょうたいである。

たいせい[編集へんしゅう]

たいせいとは、短時間たんじかん反復はんぷくてき薬物やくぶつ使用しようしたのちに、以前いぜんおな作用さようられなくなることである[32]。そうして、使用しようりょう増加ぞうかしていくことにつながることがある。またぎゃくによくアンフェタミンやコカインにて言及げんきゅうされていることは、間隔かんかくをある程度ていどあけて反復はんぷくてき使用しようした場合ばあいに、よりすくないりょうおな作用さようることがあり、これはかんさくあるいはぎゃくたいせいばれる[32]

オーバードーズ[編集へんしゅう]

こう精神せいしんやくでは、薬物やくぶつ過剰かじょう摂取せっしゅこりやすい。薬物やくぶつは、適切てきせつ使用しようりょうえると、有毒ゆうどくいきたっするため、様々さまざま副作用ふくさようしょうじ、もっと深刻しんこくなものは死亡しぼうである。

精神せいしん刺激しげきやく離脱りだつ症候群しょうこうぐん[編集へんしゅう]

慢性まんせいてき使用しようしたのちの、アンフェタミンやメタンフェタミン、コカイン、またニコチンやカフェインでは、アルコールからの離脱りだつによってきるせんせんもうのような身体しんたい依存いぞん形成けいせいされない。いのちにかかわるような症状しょうじょうていさないため、いきなり使用しよう中断ちゅうだんすることは可能かのうである。

しかし、これら精神せいしん刺激しげきやくからの離脱りだつによってはんとべ作用さよう(リバウンド)として、疲労ひろうかんそもそもうつ、ねむりしょう頭痛ずつうなどがしょうじる。離脱りだつ症状しょうじょう急性きゅうせいは、数日すうじつから2週間しゅうかん程度ていどであり、とく症状しょうじょうつよければ自殺じさつにも注意ちゅうい必要ひつようである。その急性きゅうせい離脱りだつ症状しょうじょうったのちに、急性きゅうせいよりもいくらかよわ離脱りだつ症状しょうじょうつづくこともある。

離脱りだつ症状しょうじょう一部いちぶは、統合とうごう失調しっちょうしょう陰性いんせい症状しょうじょうている[33]

依存いぞん[編集へんしゅう]

薬物やくぶつ依存いぞんしょうは、乱用らんようがすすみたいせい形成けいせいされ、使用しようりょう増加ぞうかし、使用しようたいする渇望かつぼうがあるといった診断しんだん基準きじゅんたした場合ばあい診断しんだんされうる。

たいせい回復かいふく[編集へんしゅう]

薬物やくぶつ定期ていきてき使用しようしていたときとはことなり、しばらく使用しよう中止ちゅうししていた場合ばあい薬物やくぶつたいするたいせい回復かいふくするため、以前いぜんおなりょう摂取せっしゅして過剰かじょう摂取せっしゅすることがある[34]とく解毒げどく施設しせつ薬物やくぶつ更生こうせい施設しせつ刑務所けいむしょから解放かいほうされたのちはリスクがたか[34]

不眠症ふみんしょう[編集へんしゅう]

精神せいしん刺激しげきやく慢性まんせいてき使用しようしていると、精神せいしん刺激しげき物質ぶっしつ誘発ゆうはつされた不眠症ふみんしょうおちいることがある。これは薬物やくぶつ減量げんりょうするか、中止ちゅうしすると改善かいぜんされる。しかし、上述じょうじゅつしたように、離脱りだつ症状しょうじょうとしてしばらく、にちちゅうにもねむいといった精神せいしん刺激しげき物質ぶっしつ離脱りだつ誘発ゆうはつされたねむりしょう傾向けいこうつづくことがある。

精神せいしん刺激しげきやく精神病せいしんびょう[編集へんしゅう]

精神病せいしんびょうばれる、ねらわれている、われているといった被害ひがい妄想もうそうともなった状態じょうたいいたることがある。通常つうじょう、アンフェタミン、メタンフェタミン、メチルフェニデート、コカインといった薬物やくぶつによってしょうじる。薬物やくぶつ使用しようしゃ自身じしんが、薬物やくぶつによってこされているのではと、いくらか洞察どうさつしている場合ばあいもある。これはすくない使用しよう状態じょうたいでもしょうじうるが、慢性まんせいてき使用しようした場合ばあいしょうじやすい。使用しよう中止ちゅうししたのち、しばらく持続じぞくすることがあるが、ながくて1かげつ前後ぜんこう目途もくととして、統合とうごう失調しっちょうしょう鑑別かんべつ診断しんだんされる。

とくにアンフェタミンやメタンフェタミンによるものは、覚醒剤かくせいざい精神病せいしんびょうばれる。中毒ちゅうどくばれることもあるかもしれないが、この用語ようごは、以前いぜんには依存いぞんしょうしてもちいられ、現行げんこうでは毒性どくせい作用さよう過剰かじょう状態じょうたいしているので、正確せいかく医学いがく用語ようごではない。

統合とうごう失調しっちょうしょう危険きけんせい増加ぞうか[編集へんしゅう]

コカインとアンフェタミンの使用しようりつたかくにでは、一般いっぱん集団しゅうだん比較ひかくして統合とうごう失調しっちょうしょう患者かんじゃにおいて、使用しようりつが2ばいから5ばいあいだたかく、いくつかの仮説かせつにつながっている[33]。ニコチンにおいても統合とうごう失調しっちょうしょう患者かんじゃでは喫煙きつえんりつたかいが、そのような仮説かせつ提唱ていしょうされていない[33]。しかし、ニコチンがかる精神せいしん刺激しげきやくであることをかんがえるとおどろくべきことではないと世界せかい保健ほけん機関きかん報告ほうこくしている[33]。また精神せいしん刺激しげきやく離脱りだつ症状しょうじょうは、統合とうごう失調しっちょうしょう陰性いんせい症状しょうじょうている[33]

アメリカ精神せいしん学会がっかいによる統合とうごう失調しっちょうしょう診療しんりょうガイドラインにおいては、統合とうごう失調しっちょうしょうにはニコチン依存いぞん併存へいそんしていることがおおいとされ、禁煙きんえん推奨すいしょうしている[35]

歴史れきし[編集へんしゅう]

コカインはコカのからいだされた成分せいぶんである[31]精神せいしんジークムント・フロイト患者かんじゃとその家族かぞくにコカインを投与とうよし、1884ねん論文ろんぶんきコカインを神経しんけい刺激しげきやくだとした[31]。そして、フロイトの同僚どうりょうのケラーがコカインの麻酔ますい作用さよう発見はっけんしている[31]

コカインの沈溺せい犯罪はんざいせい問題もんだいとなり、1903ねんにはコカ・コーラからコカインは除去じょきょされる[31]

メタンフェタミンは、1888ねん長井ながい長義ながよし麻黄まおうからエフェドリンを抽出ちゅうしゅつしたさい発見はっけんした[36]。それがときて、1938ねんにはドイツにてメタンフェタミンが臨床りんしょう応用おうようされ1954ねんまでにドイツ、スイス、チェコスロバキアにてその精神病せいしんびょうが20すうれい報告ほうこくされる[37]。アメリカでも陸軍りくぐん刑務所けいむしょ従業じゅうぎょういん受刑じゅけいしゃの264めい全体ぜんたいのうち24.4%が乱用らんようしゃとされた[38]

日本にっぽんでもこれらのアンフェタミンるい精神せいしん疾患しっかん治療ちりょうやくとして導入どうにゅうされ[12]、1941ねん昭和しょうわ16ねん)ごろから、精神せいしん方面ほうめんから仕事しごと能率のうりつたかめるなどと宣伝せんでんされた[36]だい世界せかい大戦たいせんちゅう(1939ねん~1945ねん)の日本にっぽんでは、夜戦やせん兵士へいし軍需ぐんじゅ工場こうじょう工員こういんなか強制きょうせいてきにヒロポン(メタンフェタミン製剤せいざい商品しょうひんめい)がもちいられた[39]戦後せんご在庫ざいこかかえた製薬せいやく会社かいしゃ市場いちばへの放出ほうしゅついそいだ[36]。そして国際こくさいてきにも著名ちょめい日本にっぽんにおけるアンフェタミンるい流行りゅうこうきることとなる[18]青少年せいしょうねんあいだかくせいざい中毒ちゅうどく蔓延まんえん[40]、1946ねんには東京大学とうきょうだいがく神経しんけい慢性まんせい中毒ちゅうどくしゃがはじめて入院にゅういん、1948ねんには劇薬げきやく指定してい翌年よくねん製造せいぞう自粛じしゅく、1950ねんにはよう処方しょほう医薬品いやくひんとし、1951ねんには覚醒剤かくせいざい取締とりしまりほう施行しこうした[41]。1954ねん昭和しょうわ29ねん)には20まんにん中毒ちゅうどく使用しようしゃ100まんにんわれた[40]坂口さかぐち安吾あんご田中たなか英光ひでみつ織田おだ作之助さくのすけといった作家さっか中毒ちゅうどくとなる[39]取締とりしまりほう制定せいていされ、中毒ちゅうどくしゃ治療ちりょう制度せいどつくられ、治療ちりょう患者かんじゃは1954ねんやく4,000にん、1955ねんが1,200にん、1956ねんが300にん、1957ねんが200にん減少げんしょう一途いっと辿たどった[12]。このような乱用らんよう流行りゅうこう世界せかい保健ほけん機関きかんにも報告ほうこくされ[21]のち条約じょうやくにつながることになる。

1950年代ねんだい後半こうはんには、医薬品いやくひんとして様々さまざま精神せいしん刺激しげきやく発売はつばいされることになる[39]ピプラドロールのように乱用らんようおそ販売はんばい中止ちゅうしにしたれいもある[39]以降いこう、イギリス、アメリカでアンフェタミン、スウェーデンではフェンメトラジン英語えいごばん流行りゅうこうする[42]

日本にっぽんでは1969ねんころから、取締とりしまりほうぎゃく暴力団ぼうりょくだん流通りゅうつうにぎらせ、国外こくがいルートのメタンフェタミンるい流行りゅうこう問題もんだいになってくる[42]

1971ねんにはこう精神せいしんやくかんする条約じょうやく制定せいていされる。しかし、日本にっぽん条約じょうやく批准ひじゅんしたのは19ねんおくれの1990ねんである[43]。1980年代ねんだいからMDMAやMDAといった、化学かがく構造こうぞうとしてはアンフェタミンるいだが、現行げんこう関連かんれん障害しょうがいにおいては幻覚げんかくざい分類ぶんるいされる薬物やくぶつ登場とうじょうした。心理しんり療法りょうほうなどでもちいられた。1984ねん条約じょうやくにより規制きせい物質ぶっしつ指定していされる。

日本にっぽんにおいて2000年代ねんだいなかばから、メチルフェニデートの精神せいしんによるらん処方しょほう問題もんだいとなった。2007ねんには厚生こうせい労働省ろうどうしょう適応症てきおうしょう削除さくじょする措置そちをとった[44]

2010ねんはいると、大麻たいま作用さようである新規しんきこう精神せいしんやくであるデザイナードラッグふく脱法だつほうハーブ国際こくさいてきひろ問題もんだいとなっていった[45][46]。その界隈かいわいからa-PVP英語えいごばんといった精神せいしん刺激しげきやく流行りゅうこうし、日本にっぽん麻薬まやくおよこう精神せいしんやく取締とりしまりほうにおける麻薬まやく指定していされるなどの措置そちられた。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d e f g 世界せかい保健ほけん機関きかん 1994, pp. 59–60.
  2. ^ a b 世界せかい保健ほけん機関きかん 2008, p. 63.
  3. ^ a b アメリカ精神せいしん学会がっかい『DSM-5 精神せいしん疾患しっかん診断しんだん統計とうけいマニュアル』日本にっぽん精神せいしん神経しんけい学会がっかい日本語にほんごばん用語ようご監修かんしゅう高橋たかはし三郎さぶろう大野おおのひろし監訳かんやくしみ俊幸としゆき神庭かみにわ重信しげのぶ尾崎おざき紀夫のりお三村みつむらすすむ村井むらい俊哉としやわけ医学書院いがくしょいん、2014ねん6がつ30にちISBN 978-4260019071 
  4. ^ a b ちゅう分類ぶんるい87医薬品いやくひんおよ関連かんれん製品せいひん だいかい改定かいてい(pdf)(総務そうむしょう)
  5. ^ 世界せかい保健ほけん機関きかん 1994, p. 15.
  6. ^ a b c 世界せかい保健ほけん機関きかん 2009, p. 3.
  7. ^ 世界せかい保健ほけん機関きかん 2005, p. 81.
  8. ^ アメリカ精神せいしん学会がっかい 2004, pp. 220-221、228、259.
  9. ^ a b アメリカ精神せいしん学会がっかい 2004, p. 246.
  10. ^ 栗林くりばやしけいえい(へん)『簡易かんい処方しょほうしゅう-かずどく対訳たいやく南山みなみやまどう書店しょてん、1916ねん、103ぺーじ 
  11. ^ a b 法務省ほうむしょう刑事けいじきょく法律ほうりつ用語ようご対訳たいやくしゅう-英語えいごへん』(改訂かいていばん商事しょうじ法務ほうむ研究けんきゅうかい、1995ねん、12ぺーじISBN 4785707135 
  12. ^ a b c d Masamutsu Nagahama (1968). “A review of drug abuse and counter measures in Japan since World War II”. U.N. Bulletin on Narcotics 20 (3): 19-24. https://www.unodc.org/unodc/en/data-and-analysis/bulletin/bulletin_1968-01-01_3_page004.html. 
  13. ^ a b Kiyoshi Morimoto (1957). “The problem of the abuse of amphetamines in Japan”. U.N. Bulletin on Narcotics 9 (3): 8-12. https://www.unodc.org/unodc/en/data-and-analysis/bulletin/bulletin_1957-01-01_3_page003.html. 
  14. ^ ちゅう分類ぶんるい34医薬品いやくひんおよび関連かんれん製品せいひん だいいち改定かいてい(pdf)(総務そうむしょう)
  15. ^ ちゅう分類ぶんるい34医薬品いやくひんおよび関連かんれん製品せいひん だいさん改定かいてい(pdf)(総務そうむしょう)
  16. ^ David Taylor, Carol Paton, Shitij Kapur『モーズレイ処方しょほうガイドライン』(だい10はん)アルタ出版しゅっぱん、2011ねん、323ぺーじISBN 978-4-901694-45-2 、The Maudsley Prescribing Guideline 10th Edition, 2009
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  18. ^ a b Smart RG (1976). “Effects of legal restraint on the use of drugs:a review of empirical studies”. U.N. Bulletin on Narcotics 28 (1): 55–65. PMID 1046373. http://www.unodc.org/unodc/en/data-and-analysis/bulletin/bulletin_1976-01-01_1_page006.html. 
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  20. ^ a b 松下まつした正明まさあき(そう編集へんしゅう) 1999, pp. 109–110.
  21. ^ a b 世界せかい保健ほけん機関きかん (1957). WHO Expert Committee on Addiction-Producing Drugs - Seventh Report / WHO Technical Report Series 116 (pdf) (Report). World Health Organization. pp. 9–10. 記述きじゅつはabuse of amphetmineである。
  22. ^ 世界せかい保健ほけん機関きかん (1965). WHO Expert Committee on Dependence-Producing Drugs - Fourteenth Report / WHO Technical Report Series 312 (pdf) (Report). World Health Organization. pp. 9–10. 記述きじゅつは"sedatives" and "stimulants"である。
  23. ^ 松下まつした正明まさあき(そう編集へんしゅう) 1999, p. 114.
  24. ^ 世界せかい保健ほけん機関きかん (1985). WHO Expert Committee on Drug Dependence - Twenty-second Report / WHO Technical Report Series 729 (pdf) (Report). World Health Organization. p. 25. ISBN 92-4-120729-9
  25. ^ 世界せかい保健ほけん機関きかん 1992, p. 73.
  26. ^ 世界せかい保健ほけん機関きかん 2005, p. 90.
  27. ^ 世界せかい保健ほけん機関きかん 1994, p. 39.
  28. ^ 世界せかい保健ほけん機関きかん 2004, pp. 2.
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参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]