自動じどう体外たいがい式しき除じょ細ほそ動どう器き

AED（外観がいかん）

パッドを取とり出だしたところ

駅えきに設置せっちされているAED

自動じどう体外たいがい式しき除じょ細ほそ動どう器き（じどうたいがいしきじょさいどうき、英えい: Automated External Defibrillator, AED）は、心しん停止ていし（必かならずしも心しん静止せいしではない）の際さいに機器ききが自動的じどうてきに心電図しんでんずの解析かいせきを行おこない、心室しんしつ細ほそ動どうを検出けんしゅつした際さいは除じょ細ほそ動どうを行おこなう医療いりょう機器きき。除じょ細ほそ動どう器きの一ひとつであるが、動作どうさが自動じどう化かされているため施術しじゅつ者しゃが非ひ医療いりょう従事じゅうじ者しゃでも使用しようできる。

概要がいよう

心室しんしつ細ほそ動どうしていた心臓しんぞうは、AEDによる電気でんきショックで静止せいし状態じょうたいになるので、使用しよう後ごは速すみやかに胸骨きょうこつ圧迫あっぱくによって、拍はく動どうの回復かいふくを促うながす必要ひつようがある（および、技術ぎじゅつがあり可能かのうならば人工じんこう呼吸こきゅうを併用へいようすることが望のぞましい）。通常つうじょうであれば拍はく動どうは自発じはつ的てきに再開さいかいする。主おもに不ふ特定とくてい多数たすうの者ものが出入でいりする空港くうこうや航空機こうくうき内うち、ホテルなどの公共こうきょう施設しせつに広ひろく設置せっちされ、消火しょうか器きなどと同様どうように、万一まんいちの事態じたいが発生はっせいした際さいには、その場ばに居合いあわせた人ひと（バイスタンダー）が自由じゆうに使つかえるようになっている。

電気でんき除じょ細ほそ動どう器きは1950年代ねんだいに初はじめて開発かいはつされ、初期しょきの通電つうでん波形はけいは単たん相性あいしょうで、通電つうでんにより「心室しんしつ細ほそ動どう」が除じょ細ほそ動どうされることは驚おどろきをもって受うけ止とめられた。1980年代ねんだいになって二に相性あいしょう波形はけいのほうがより良よい効果こうかを示しめすことが明あきらかになると、低ていエネルギー通電つうでんも可能かのうな二に相性あいしょう通電つうでん波形はけいが採用さいようされるようになり、1995年ねんにAHA（米国べいこく心臓しんぞう協会きょうかい）のPAD勧告かんこくが公共こうきょうスペースでの市民しみんによる除じょ細ほそ動どうを推奨すいしょうしたことで自動じどう体外たいがい式しき除じょ細ほそ動どう器きが普及ふきゅうするきっかけになった。

日本にっぽんでは、救急きゅうきゅう車しゃが現場げんば到着とうちゃくするまで平均へいきんで約やく8分ふんを要ようするが、心室しんしつ細ほそ動どうが起おきると数すう秒びょうで意識いしきがなくなり約やく5分ふん後ごには不ふ可逆かぎゃく的てきな脳のう障害しょうがいが発生はっせいして死亡しぼうすることとなるため、一刻いっこくも早はやく電気でんき的てき除じょ細ほそ動どうを施行しこうすることが必要ひつようとされている。救急きゅうきゅう車しゃの到着とうちゃく以前いぜんにAEDを使用しようした場合ばあいには、救急きゅうきゅう隊員たいいんや医師いしが駆かけつけてからAEDを使用しようするよりも、救命きゅうめい率りつが数すう倍ばいも高たかいことが明あきらかになっている。

機器ききの使用しよう

使用しよう方法ほうほう

収納しゅうのうスタンドは、蓋ぶたを開あけるとサイレンやブザー鳴動めいどう・赤あかランプの点滅てんめつで緊急きんきゅう事態じたい発生はっせいを周囲しゅういに告つげる他ほか、使用しようされた事ことを示しめす信号しんごうが、当該とうがい施設しせつの防災ぼうさいセンターに送おくられるようになっているものもある（これにより防災ぼうさいセンターは、警備けいび員いんを現場げんばに向むかわせ対応たいおうする）。

電源でんげんを入いれると、電極でんきょくパッドを胸むねに貼はり付つけるように音声おんせい案内あんないが流ながれる。パッドを素肌すはだに直接ちょくせつ貼はり付つけることができていれば、ブラジャーは外はずす必要ひつようはなく、もし余裕よゆうがあれば、パッドを貼はった後のちに、上うえから上着うわぎやタオルなどを掛かければよい（電気でんきショックの時間じかんを遅おくらせないことが重要じゅうよう）。電極でんきょくパッドを胸むねに貼はり付つけると自動的じどうてきに心電図しんでんずの解析かいせきが始はじまり、電気でんきショックを与あたえるべきかの判断はんだんが行おこなわれる。

電気でんきショックが必要ひつようと判断はんだんされた場合ばあいには、放電ほうでんのボタンを押おすようにアナウンスが流ながれ、施術しじゅつ者しゃがボタンを押おすと電気でんきショックによる除じょ細ほそ動どうが行おこなわれる。

ショックボタンがない代かわりに自動じどうで電気でんきショックを実行じっこうするオートショックAED（フルオート機き）も存在そんざいする。従来じゅうらい機き（セミオート機き）だとショックボタンを押おすのを躊躇ためらってしまったり、操作そうさミス等とうでショックが適切てきせつに行おこなわれなかったという問題もんだいが調査ちょうさにより報告ほうこくされているが、フルオート機きではショックが必要ひつようと判断はんだんした場合ばあいは音声おんせいガイドかブザー音おんによる3カウント後ごに自動じどうでショックを実行じっこうするために確実かくじつに処置しょちを行おこなえ、同時どうじに救助きゅうじょ者しゃの精神せいしん的てき負担ふたんも抑おさえられるとしている 。しかし、ボタンがないことで救助きゅうじょ者しゃが困惑こんわくする可能かのう性せいがあったり実行じっこう前まえに救助きゅうじょ者しゃが患者かんじゃから離はなれるのが遅おくれてしまうと感電かんでんする可能かのう性せいがセミオート機きよりも高たかいといった相違そうい点てんに伴ともなう問題もんだいもあり、厚労省こうろうしょうからも注意ちゅういが呼よびかけられている。日本にっぽん国内こくないでは2021年ねんに初はじめて製造せいぞう販売はんばい承認しょうにんを取得しゅとくした製品せいひんが発売はつばいされたが、2022年ねん現在げんざい、販売はんばい条件じょうけんとして日本にっぽん救急きゅうきゅう医療いりょう財団ざいだんの指導しどうに基もとづいた設置せっち要件ようけんを満みたした場所ばしょへ設置せっちすること、そして使用しよう者しゃが適切てきせつな講習こうしゅう・訓練くんれんを受うけている必要ひつようがある。当該とうがい製品せいひんにはセミオート機きと区別くべつする為ためにJEITA(電子でんし情報じょうほう技術ぎじゅつ産業さんぎょう協会きょうかい)によって策定さくていされた共通きょうつうのロゴが製品せいひん本体ほんたいやキャリングケースに掲示けいじされている。

AEDの使用しよう方法ほうほうについては、製造せいぞうメーカーのホームページなどを参照さんしょうのこと。

使用しよう目的もくてきの誤解ごかい

メドトロニックのAEDトレーニングシステム。AEDは電気でんきショックの発生はっせい源げんとなる本体ほんたいと人体じんたいに装着そうちゃくする電極でんきょくパッドから構成こうせいされる。本体ほんたいは、電源でんげんスイッチの他ほかに心電図しんでんずの解析かいせきを行おこなう解析かいせきボタンと電気でんきショックを与あたえる通電つうでんボタンを備そなえている。

AEDとは「異常いじょうな拍はく動どうを繰くり返かえし、ポンプとしての役割やくわりを果はたしていない状態じょうたい（心室しんしつ細ほそ動どう）」の心臓しんぞうを、電気でんきショックによって一時いちじ静止せいしさせることにより正常せいじょうな拍はく動どうの再開さいかいを促うながすものであり、「静止せいしした心臓しんぞうを電気でんきショックで再さい起動きどうさせる」ものではない。

また、AED使用しようによって一時いちじ静止せいしさせられた心臓しんぞうは、本来ほんらいであれば自動的じどうてきに拍はく動どうを再開さいかいするが、酸さん欠かけ等とうの状態じょうたいにあると拍はく動どうが再開さいかいしにくいため、AED使用しよう後ごは、速すみやかに（人工じんこう呼吸こきゅうと）胸骨きょうこつ圧迫あっぱく（一般いっぱんに心臓しんぞうマッサージといわれるもの）を行おこない、拍はく動どうの再開さいかいを促うながす必要ひつようがある。AED機器ききが心室しんしつ細ほそ動どうではないと診断しんだんした場合ばあいは、除のぞき細ほそ動どうは行おこなわれず、胸骨きょうこつ圧迫あっぱくを行おこなうようアナウンスが流ながれる。

講習こうしゅう

救命きゅうめい講習こうしゅうの様子ようす

公的こうてき団体だんたい

日本にっぽんでは、各地かくちの消防しょうぼう本部ほんぶや日本赤十字社にほんせきじゅうじしゃの都道府県とどうふけん支部しぶが、心臓しんぞうマッサージやAEDの使用しよう方法ほうほうなどの救命きゅうめい講習こうしゅう会かいを開催かいさいしている。病院びょういんや保健所ほけんじょで独自どくじに行いっているところもある。

民間みんかん団体だんたい

アメリカ心臓しんぞう協会きょうかい (AHA: American Heart Association) 公認こうにん講習こうしゅうを開催かいさいする日本にっぽん蘇生そせい協議きょうぎ会かい所属しょぞくのNPO法人ほうじん愛宕あたご救急きゅうきゅう医療いりょう研究けんきゅう会かい、NPO大阪おおさかライフサポート協会きょうかい、日本にっぽんACLS協会きょうかいや、メディックファーストエイド社しゃ、国際こくさい救急きゅうきゅう救命きゅうめい協会きょうかい、日本にっぽん救急きゅうきゅう蘇生そせい普及ふきゅう協会きょうかい（財団ざいだん法人ほうじん日本にっぽん救急きゅうきゅう医療いりょう財団ざいだん指定してい事業じぎょう者しゃ）が非ひ医療いりょう従事じゅうじ者しゃ向むけにトレーニングを提供ていきょうしている。また、プロ野球やきゅう球団きゅうだんに入団にゅうだんしたばかりの新人しんじん選手せんしゅに対たいして救命きゅうめい講習こうしゅう会かいを行おこなった例れいがある。

設置せっちと保守ほしゅ

主おもな設置せっち場所ばしょ

2005年ねんのヨーロッパのガイドラインでは、空港くうこう、カジノ、スポーツ施設しせつなど少すくなくとも2年ねんに1件けん院外いんがい心しん停止ていしが発生はっせいする可能かのう性せいがある施設しせつへの設置せっちを推奨すいしょうしている。また、米国べいこくのガイドラインでは5年ねんに1件けん心こころ停止ていしが発生はっせいする場所ばしょへの設置せっちを推奨すいしょうしている。

交通こうつう機関きかん

• 空港くうこう、旅客機りょかくき内うち（旅客機りょかくきは、1990年代ねんだいから諸しょ外国がいこくの航空こうくう会社かいしゃがいち早はやく機内きないに搭載とうさいを開始かいしし、日本航空にほんこうくうも、2001年ねん10月がつに国際線こくさいせん機内きないに搭載とうさいを始はじめている）
• 鉄道てつどう駅えき構内こうない（大都市だいとし周辺しゅうへんや地方ちほう主要しゅよう都市としのJR駅えき、大手おおて私鉄してつ、地下鉄ちかてつ）、新幹線しんかんせん、特急とっきゅう列車れっしゃ内うち
• フェリーターミナル、フェリー内ない
• バス（主おもに観光かんこうバス）、バス営業えいぎょう所しょ等ひとし

• 
  中部ちゅうぶ国際こくさい空港くうこうに設置せっちされたAED
• 
  京橋きょうばし駅えき (大阪おおさか府ふ)に設置せっちされた緑色みどりいろのランプ付つきのタイプ（フィリップス製せい）
• 
  Osaka Metro難波なんば駅えきの千日前線せんにちまえせんと四よつ橋線ばしせんホームに設置せっち（日本光電にっぽんこうでん製せい）
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  JR西日本にしにほん、ひかりレールスター（700系けい7000番台ばんだい）6号車ごうしゃに設置せっち（フィリップス製せい）
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  JR九州きゅうしゅう、800系けい4号車ごうしゃに設置せっち
• 
  JR東日本ひがしにっぽん、E7系けい7号車ごうしゃデッキに設置せっち（日本光電にっぽんこうでん製せい）

医療いりょう機関きかん

龍谷大りゅうこくだい学がくに設置せっちされているAED搭載とうさいの自動じどう販売はんばい機き（AEDは日本光電にっぽんこうでん製せい）

• 病院びょういん（病棟びょうとう、ロビー）、診療しんりょう所しょ（歯科しか医院いいん含ふくむ）

公共こうきょう施設しせつ

• 市役所しやくしょ、学校がっこう（大学だいがく、幼稚園ようちえんや保育園ほいくえん含ふくむ）、図書館としょかん、市民しみん会館かいかん、大だい規模きぼな公園こうえんの管理かんり事務所じむしょ、コンベンションセンターなど人ひとの出入でいりの多おおい場所ばしょ

商業しょうぎょう施設しせつ、娯楽ごらく施設しせつ

• 大型おおがた量販りょうはん店てん、デパート、ホテル、大都市だいとしのオフィスビル、コンビニエンスストア、パチンコ店みせ、競技きょうぎ場じょう（野球やきゅう場じょう、サッカー場じょう、競馬けいば場じょう、競輪けいりん場じょう、競艇きょうてい場じょう、オートレース場じょう）、テーマパークなど

その他た

• 大だい規模きぼな工場こうじょう内ない、自衛隊じえいたい駐屯ちゅうとん地ち、救急きゅうきゅう車内しゃないなど

メンテナンスと寿命じゅみょう

バッテリ切きれのAED(インジゲーターが赤色あかいろになっていて、バッテリは0%を示しめしている)

電極でんきょくのパッドやバッテリーには使用しよう期限きげんがあるため、定期ていき的てきな点検てんけんと交換こうかんが必要ひつようとなる。毎日まいにち自動的じどうてきにセルフテストを行おこない、問題もんだいがなければインジゲーターが緑色みどりいろになりすぐに使つかえる状態じょうたいである。バッテリ切きれなどの異常いじょうが発生はっせいすると赤色あかいろ・バツ印しるしになり、アラームが鳴なる。バッテリーはリチウム電池でんちなどが用もちいられ、充電じゅうでんされた状態じょうたいで販売はんばいされている。購入こうにゅう者しゃ側がわで再さい充電じゅうでんや再さい使用しようすることは無なく、使つかい捨すてである。バッテリーの使用しよう期限きげんは未み使用しようの状態じょうたいで通常つうじょう3-5年ねんである。またAED本体ほんたいについても保証ほしょう期間きかんは5年ねん程度ていどで、耐用たいよう年数ねんすうは7年ねん程度ていどとされる。このため、AEDを設置せっちした施設しせつについては、未み使用しようであっても5-7年ねん毎ごとに機器ききの再さい購入こうにゅうが必要ひつようとなり、1台だいあたり30-40万まん円えんの費用ひよう負担ふたんが発生はっせいする。また、使用しようする状況じょうきょうになっても、バッテリー切きれで使つかえなかったという事例じれいがあり、実際じっさいにそれが原因げんいんで患者かんじゃを見殺みごろしにしてしまう事件じけんもある。

機器ききの普及ふきゅう

米国べいこくでの普及ふきゅう

1992年ねん、米国べいこく心臓しんぞう協会きょうかい（AHA）はガイドラインで心臓しんぞう突然とつぜん死しの救命きゅうめい率りつ向上こうじょうには現場げんばでの早期そうき除じょ細ほそ動どうが重要じゅうようとした。

2000年ねんには、米国べいこく心臓しんぞう協会きょうかい（AHA）のガイドラインで一般いっぱん市民しみんによるAED使用しようの有効ゆうこう性せいが明記めいきされ、連邦れんぽう法ほうにより連邦れんぽう施設しせつへの自動じどう体外たいがい式しき除じょ細ほそ動どう器き（AED）の設置せっちが義務付ぎむづけられた。

2001年ねん、連邦れんぽう航空局こうくうきょくは2004年ねん7月がつまでに航空機こうくうきへの自動じどう体外たいがい式しき除じょ細ほそ動どう器き（AED）の設置せっちを義務付ぎむづけた。

2003年ねんにはニューヨーク州法しゅうほうが学校がっこうへの自動じどう体外たいがい式しき除じょ細ほそ動どう器き（AED）の設置せっちを義務付ぎむづけている。

日本にっぽんでの普及ふきゅう

かつて日本にっぽんでは、医師いししか使用しようが認みとめられていなかったが、2003年ねんに救急きゅうきゅう救命きゅうめい士しに医師いしの指示しじがなくても使用しようすることが認みとめられ、さらに2004年ねん7月がつからは非ひ医療いりょう従事じゅうじ者しゃである民間みんかん人じんも使用しようできるようになり、空港くうこうや学校がっこう、球場きゅうじょう、駅えきなどの公共こうきょう施設しせつに設置せっちされることが多おおくなった。

2005年ねんに開催かいさいされた愛知あいち万博ばんぱくでは会場かいじょう内ないにAEDを多数たすう配置はいちした。また2006年ねんから2008年ねん頃ごろにかけて公共こうきょう交通こうつう機関きかんでのAED設置せっちが進すすんだ。2006年ねん7月がつ、都営地下鉄とえいちかてつ全ぜん101駅えきへのAED設置せっち完了かんりょうを皮切かわきりとして、2006年ねんにはJR東日本ひがしにっぽん新幹線しんかんせん全ぜん駅えき、JR東海とうかいも、東海道新幹線とうかいどうしんかんせん全ぜん駅えきと在来ざいらい線せん主要しゅよう駅えきに設置せっちされた。

この背景はいけいとして、皇族こうぞくの高円宮たかまどのみや憲仁のりひと親王しんのうが2002年ねん（平成へいせい14年ねん）11月21日にち、スカッシュの練習れんしゅうを行おこなっていた最中さいちゅうに心室しんしつ細ほそ動どうによる心不全しんふぜんにより急逝きゅうせいして以来いらい、心室しんしつ細ほそ動どうに対たいする対応たいおうが厚生こうせい労働省ろうどうしょうや消防庁しょうぼうちょうで取とり上あげられたことがあげられる。

製造せいぞうと販売はんばい

欧米おうべいで販売はんばいされている商品しょうひん

• フィリップスメディカル（米国べいこく）
• カルディアック・サイエンス（米国べいこく）
• フィジオコントロール（米国べいこく）
• ハートサインテクノロジーズリミテッド（英国えいこく）

日本にっぽんで販売はんばいされている商品しょうひん

出典しゅってん：日本にっぽん心臓しんぞう財団ざいだん

• ハートスタート（フィリップス、フクダ電子ふくだでんし、レールダル）
• ベネハートCシリーズ（フクダ電子ふくだでんし）
• カルジオライフ（日本光電にっぽんこうでん）
• ライフパック（フィジオコントロール、日本にっぽんストライカー）
• サマリタンパッド（ハートサインテクノロジーズ、日本にっぽんストライカー）
• CU-SP1（株式会社かぶしきがいしゃCU）
• ZOLL AED Plus、ZOLL AED 3（旭化成あさひかせいゾールメディカル）
• パワーハートG3、レスキューハート HDF-3500（オムロンヘルスケア）
• カーディアックレスキュー（日本にっぽんライフライン）

AEDをめぐる諸しょ課題かだい

使用しよう率りつの男女だんじょ差さ

倒たおれた人ひとが女性じょせいの場合ばあい、男性だんせいよりAEDが使つかわれにくい、という調査ちょうさ結果けっかを2019年ねんに京都きょうと大学だいがくなどの研究けんきゅうグループが発表はっぴょうした。この調査ちょうさは、2008年ねんから2015年ねんにおいて全国ぜんこくの学校がっこうの構内こうないで心しん停止ていしとなった子こども232人にんについて、救急きゅうきゅう隊たいが到着とうちゃくする前まえにAEDのパッドが装着そうちゃくされたかどうかを調しらべたものである。それによると、小学生しょうがくせいと中学生ちゅうがくせいでは男女だんじょに有意ゆういな差さはなかったが、高校生こうこうせいになると大おおきな男女だんじょ差さが出でていたという。高校生こうこうせい・高こう専せん生せいの場合ばあい、AEDのパッドが貼はられた割合わりあいが男子だんし生徒せいと83.2%、女子じょし生徒せいと55.6%と30ポイント近ちかい差さがあった。研究けんきゅうグループは、女子じょし高校生こうこうせいの場合ばあい、近ちかくにいた人ひとたちが素肌すはだを出だすことに一定いっていの抵抗ていこうがあったのではないかと分析ぶんせきしている。

同様どうようの調査ちょうさはフランスでも行おこなわれており、2011年ねんから2014年ねんにパリ周辺しゅうへんで心しん停止ていしとなったおよそ11,000人にんのうち、女性じょせいでAEDの使用しようや心臓しんぞうマッサージといった救命きゅうめい措置そちがとられたのは60%で、男性だんせいより10ポイント低ひくい結果けっかであった。

背景はいけいの1つとして訴訟そしょうを恐おそれる心理しんりが指摘してきされることがあるが、弁護士べんごしの小林こばやし義和よしかずは、救命きゅうめいの流ながれから逸脱いつだつしない限かぎりは、費用ひようや時間じかん、勝訴しょうそ見込みこみの観点かんてんから、訴訟そしょうが発生はっせいするケースは考かんがえにくいと述のべている。また、弁護士べんごしの天辰あまたつ悠ゆうは、「着衣ちゃくいを脱ぬがす行為こういは強制きょうせい猥褻わいせつ罪ざいに、衣類いるいをハサミで切断せつだんすることは器物きぶつ損壊そんかい罪ざいにあたるが、除のぞき細ほそ動どうの迅速じんそくな実施じっしのためにやむをえず行おこなった行為こういは、該当がいとう者しゃの死しを避さけるための緊急きんきゅう避難ひなん行為こういとして処罰しょばつの対象たいしょうとはならない」、「性的せいてき意図いとがなければ罪つみには問とわれない」という趣旨しゅしの主張しゅちょうをしている。なお、2019年ねん5月がつ時点じてんでAEDの使用しように伴ともなう痴漢ちかんやセクハラの類るいに関かんする訴訟そしょうは存在そんざいしない。

なお、フィリップスのつなぐヘルスケア編集へんしゅう部ぶがフェリップスメールマガジン読者どくしゃを対象たいしょうに行いったアンケートによると、医療いりょう従事じゅうじ者しゃ以外いがいの一般いっぱんの人ひとが救助きゅうじょにあたる場合ばあい、「AEDを使つかうために異性いせいに衣服いふくを脱ぬがされること」について、女性じょせいの合計ごうけい86%が不快ふかい感かん、もしくは抵抗ていこう感かんを感かんじるという回答かいとう結果けっかが得えられた。またプライバシー配慮はいりょについては「周まわりの人ひとから見みえないようにしてほしい」という要望ようぼうも寄よせられている。そのため、フィリップス・ジャパンの成川なりかわ憲司けんじは救護きゅうご者しゃで人垣ひとがきを作つくるのがベストだと述のべている。実際じっさいに一部いちぶの自治体じちたいや施設しせつには、プライバシーに配慮はいりょするため衝立ついたてが用意よういされていることがある。

旭化成あさひかせいゾールメディカル株式会社かぶしきがいしゃが、医療いりょう従事じゅうじ者しゃを除のぞく一般いっぱん市民しみん500人にんに対たいして実施じっしした「一いち次じ救命きゅうめい処置しょちおよびAED使用しように関かんする意識いしき調査ちょうさ」によると、「女性じょせいに対たいして救命きゅうめい処置しょちをしたいが抵抗ていこうがある」と回答かいとうした人ひとは37.9%であり、その男女だんじょ比ひは、男性だんせい58.0%、女性じょせい42.0%であった。また、「抵抗ていこうがある」「できない、したくない」「わからない」と回答かいとうした方ほうのうち60.1%は「衣服いふくを脱ぬがせたり、肌はだに触ふれることに抵抗ていこうがあるため」、33.4%は「セクシャルハラスメントで訴うったえられないか心配しんぱいなため」と回答かいとうしている。

実際じっさい、スポーツ大会たいかいで女性じょせいが倒たおれた際さい、「倒たおれていたのが女性じょせいで、駆かけつけたのが男性だんせいだった」ためにAEDが使つかわれなかった事例じれいが存在そんざいする。結果けっかとして女性じょせいには重おもい意識いしき障害しょうがいが残のこり、寝ねたきりの生活せいかつが続つづいているという。

デマの流布るふ

2017年ねん12月、「（架空かくうのアンケートにおいて）多おおくの女性じょせいがAEDを男性だんせいに使つかわれた場合ばあい「セクハラで訴うったえる」と答こたえた」などという内容ないようのデマがツイートされ、拡散かくさんされた。この件けんについて、発信はっしん源げんの男性だんせいは「人命じんめい・女性じょせいの尊厳そんげんを軽かるんじ、緊急きんきゅう時じの救助きゅうじょ活動かつどうを躊躇ちゅうちょさせる」として、「女性じょせいに対たいする侮辱ぶじょく、脅迫きょうはくする行為こういを行おこない、全すべての方ほうに多大ただいなるご迷惑めいわくをおかけした」とブログ上じょうで謝罪しゃざいした。なお、過去かこにもAEDに関係かんけいしたデマは、内容ないようの細部さいぶは異ことなりつつも（例たとえば、「AEDを使つかうために女性じょせいを裸はだかにしたら警察けいさつを呼よばれた」という内容ないよう）、インターネット上じょうで流布るふされたことがある。

使用しよう時じの法的ほうてき責任せきにんの問題もんだい

米国べいこく

米国べいこくでは州法しゅうほうなどで救助きゅうじょ行為こういを奨励しょうれいすることを目的もくてきとした責任せきにん軽減けいげんを定さだめる法ほうとして、善よきサマリア人じんの法ほう（Good Samaritan Law（Act））が制定せいていされている。ただし、州法しゅうほうによって善よきサマリア人じんの法ほうの内容ないようは様々さまざまで、約やく7割わりの州しゅうではすべての人ひとを対象たいしょうにしているが、残のこりの3割わりの州しゅうでは医療いりょう従事じゅうじ者しゃや消防しょうぼう隊員たいいん・警察官けいさつかんなどに対象たいしょうを限定げんていしており、すべての人ひとを対象たいしょうとしている場合ばあいでも明示めいじ的てきに医療いりょう従事じゅうじ者しゃを含ふくむと規定きていする場合ばあいが多おおい。

また、6割わり強きょうの州しゅうで「誠実せいじつに（in good faith）」という要件ようけん、約やく4割わりの州しゅうで「無償むしょうで（without compensation 又または gratuitously）」という要件ようけんを明記めいきしている。なお、ミネソタ州しゅうとバーモント州しゅうでは支援しえん義務ぎむを課かしている。

日本にっぽん

対象たいしょうの身体しんたいに対たいする「急迫きゅうはくの危害きがい」を回避かいひするための「救命きゅうめい処置しょち」であるAEDの利用りようにより、救命きゅうめい対象たいしょうを死亡しぼうさせた場合ばあい、あるいは怪我けがや障害しょうがいを与あたえた場合ばあいでも、使用しよう者しゃは悪意あくいまたは重過失じゅうかしつがなければ責任せきにんを問とわれない。さらに、AEDの使用しようにより症状しょうじょう悪化あっかが起おきることは滅多めったに無ないため、日本にっぽん救急きゅうきゅう医い学会がっかいは「此方こちらの問といかけに反応はんのうがなく、呼吸こきゅうがない場合ばあいに使用しよう」する機器ききだと述のべた上うえで、対象たいしょうの意識いしきや呼吸こきゅうの状態じょうたいが少すこしでも普通ふつうでは無ないと感かんじた場合ばあいにも試ためしに使用しようしてみることを推奨すいしょうしている。日本にっぽん救急きゅうきゅう医い学会がっかいの指導しどう医いによるとAEDを使用しようしないと死亡しぼうに至いたる死し戦せん期き呼吸こきゅうと普通ふつうの呼吸こきゅうの差さを見分みわけることが一般人いっぱんじんには難むずかしいことや、そもそも心室しんしつ細ほそ動どう時じの呼吸こきゅう状態じょうたいである死し戦せん期き呼吸こきゅうの認知にんち度どが低ひくいことも、即座そくざのAED利用りようをしない要因よういんの一ひとつと指摘してきしている。

先述せんじゅつの通とおり、AEDの使用しようによる救命きゅうめいに失敗しっぱいした場合ばあいでも、悪意あくいまたは重過失じゅうかしつがなければ、救助きゅうじょ者しゃが責任せきにんを問とわれることはない。しかし日本にっぽんには「善よきサマリア人じんの法ほう」がないため救助きゅうじょ者しゃが提訴ていそされる可能かのう性せいが存在そんざいするという指摘してきがある。日本にっぽんには善よきサマリア人じんの法ほうと似にた民法みんぽう698条じょうの「緊急きんきゅう事務じむ管理かんり規定きてい」があるものの、民法みんぽう698条じょうでは不十分ふじゅうぶんとする1999年ねんの消防庁しょうぼうちょう報告ほうこく書しょや、緊急きんきゅう時じにおける重過失じゅうかしつの線引せんひきが判例はんれいの積つみ立たても足たりず曖昧あいまいであるといった指摘してきがなされている。

実際じっさい、2016年ねんに千葉ちば県けんが訴訟そしょう費用ひようを貸かし付つける規定きていを盛もり込こんだ条例じょうれいを制定せいていしている。ただし、千葉ちば県けんはその趣旨しゅしで「AEDの使用しよう等とうが直ただちに訴訟そしょうに繋つながるものではなく、いたずらに『訴訟そしょう』という言葉ことばが先行せんこうして一般いっぱん県民けんみんの誤解ごかいと不安ふあん感かんを煽あおることがないように、特とくに丁寧ていねいな説明せつめいを行おこなうよう留意りゅういする必要ひつようがある」としている。

なお、1994年ねん総務庁そうむちょう報告ほうこく書しょは「現行げんこう法ほうの緊急きんきゅう事務じむ管理かんりによってほとんどのケースをカバーでき、免責めんせきの範囲はんいはかなり広ひろい」としつつ、将来しょうらい的てきな課題かだいとして引ひき続つづき慎重しんちょうに検討けんとうする必要ひつようがあるとしている。

使用しよう率りつの低ひくさ

2018年ねんの時点じてんで日本にっぽんには少すくなくとも50万まん台だい以上いじょうのAEDが設置せっちされていると推定すいていされているが、心肺しんぱい停止ていしによって倒たおれるところを目撃もくげきされた人ひとのうち、AEDによる電気でんきショックが行おこなわれる割合わりあいは4%程度ていどである。しかもそのうち約やく半数はんすうは医療いりょう従事じゅうじ者しゃであり、一般いっぱん市民しみんによる使用しよう率りつは低ひくい。そうした背景はいけいを受うけ、京都大学きょうとだいがくの石見いわみ教授きょうじゅは「AEDが素早すばやく心しん停止ていしの現場げんばに届とどく仕組しくみの構築こうちく」と「AEDを使つかった救命きゅうめい処置しょちを出来できる人ひとを増ふやすこと」が必要ひつようであるとしている。

関連かんれん文献ぶんけん

• 久保田くぼた博ひろし南みなみ『いのちを救すくう先端せんたん技術ぎじゅつ』PHP研究所けんきゅうじょ〈PHP新書しんしょ〉、2008年ねん。ISBN 4569701159。 

関連かんれん項目こうもく

• 心肺しんぱい蘇生そせい法ほう
• 一いち次じ救命きゅうめい処置しょち
• 心室しんしつ細ほそ動どう
• 除じょ細ほそ動どう
• 植うえ込こみ型がた除じょ細ほそ動どう器き (ICD)
• 国際こくさい蘇生そせい連絡れんらく協議きょうぎ会かい (ILCOR)
• 日本にっぽん蘇生そせい協議きょうぎ会かい (JRC)
• 減へらせ突然とつぜん死しプロジェクト
• プリティ長嶋ながしま - 中学生ちゅうがくせいの野球やきゅう大会たいかい中ちゅうに内野ないや手しゅが打球だきゅうを胸むねに当あて死亡しぼうした事故じこをきっかけに、AEDの普及ふきゅうを自身じしんの政策せいさくに掲かかげている。

外部がいぶリンク

• AEDで助たすかる命いのち - 日本にっぽん心臓しんぞう財団ざいだん
• 日本にっぽんAED財団ざいだん
• 減へらせ突然とつぜん死し AED プロジェクト
• 日本にっぽん救急きゅうきゅう医療いりょう財団ざいだん 全国ぜんこくAEDマップ - AED設置せっち情報じょうほうを提供ていきょう
• AEDを点検てんけんしましょう！ - 厚生こうせい労働省ろうどうしょう
• AEDの製品せいひん外観がいかん一覧いちらん - 厚生こうせい労働省ろうどうしょう
• 非ひ医療いりょう従事じゅうじ者しゃによる自動じどう体外たいがい式しき除じょ細ほそ動どう器き (AED) の使用しようのあり方かた検討けんとう会かい報告ほうこく書しょ - 厚生こうせい労働省ろうどうしょう
• 「体育たいいく活動かつどう時じ等とうにおける事故じこ対応たいおうテキスト〜ASUKAモデル〜」 さいたま市し教育きょういく委員いいん会かい 平成へいせい24年ねん9月がつ30日にち