新生児しんせいじ蘇生そせい法ほう

新生児しんせいじ蘇生そせい法ほう（しんせいじそせいほう）は、出生しゅっしょう時じを中心ちゅうしんとした新生児しんせいじを対象たいしょうとする蘇生そせい法ほう。 日本にっぽんにおいては、「JRC蘇生そせいガイドライン2020」に基もとづく Neonatal Cardiopulmonary Resuscitation（NCPR）が用もちいられる。

各国かっこくの実情じつじょうに合あわせて策定さくていされており、例たとえば米国べいこくでは NCPR ではなく NRP（Neonatal Resuscitation Program）が用もちいられる。 以下いか、日本にっぽんにおける新生児しんせいじ蘇生そせい法ほうである NCPR について記載きさいする。

なお、対象たいしょうが新生児しんせいじ（日にち齢よわい28未満みまんの児こ）であっても病院びょういん前ぜん救護きゅうごや外来がいらい、小児科しょうにか病棟びょうとう、小児しょうに集中しゅうちゅう治療ちりょう部門ぶもんといった周しゅう産さん期き施設しせつ以外いがいの場面ばめんでは、乳児にゅうじに対たいする心肺しんぱい蘇生そせい法ほうを適用てきようしてよい。

概要がいよう

「蘇生そせいに立たち会あう医療いりょう従事じゅうじ者しゃが誰だれであっても遅延ちえんなき有効ゆうこうな人工じんこう呼吸こきゅうが実践じっせんでき、質しつの高たかい安全あんぜんな医療いりょうが担保たんぽされる」ことを基本きほん的てきなコンセプトとしている。 初期しょき処置しょちを施行しこうした上うえで「自発じはつ呼吸こきゅうなし」または　「心拍しんぱく100/分ぶん未満みまん（徐じょ脈みゃく）」のいずれかを満みたす症例しょうれいでは、出生しゅっしょう後ご60秒びょう以内いないにバッグ・ マスク換気かんきによる人工じんこう呼吸こきゅうを開始かいしすることが強調きょうちょうされている。

蘇生そせいの基本きほん的てきな流ながれ

蘇生そせいの基本きほん的てきな流ながれに関かんしては、アルゴリズム図ずが公開こうかいされており、これに基もとづいて行おこなう。

出生しゅっしょう直後ちょくごのチェックポイントとして、「早産そうざん児じ」「弱よわい呼吸こきゅう・啼泣」「筋すじ緊張きんちょう低下ていか」の3つを評価ひょうかする。 これらのうち、いずれか一ひとつでも満みたす場合ばあいには、初期しょき処置しょち（保温ほおん、体位たいい保持ほじ、気道きどう開通かいつう、皮膚ひふ乾燥かんそうと刺激しげき）を行おこなう。

しかるのちに「自発じはつ呼吸こきゅうなし」または「心拍しんぱく100/分ぶん未満みまん」を満みたす症例しょうれいでは、出生しゅっしょう後ご60秒びょう以内いないにバッグ・ マスク換気かんきによる人工じんこう呼吸こきゅうを開始かいしする。 人工じんこう呼吸こきゅう開始かいし後ごも徐じょ脈みゃくが続つづく場合ばあいには人工じんこう呼吸こきゅうを継続けいぞくするが、換気かんきが適切てきせつか必かならず確認かくにんする必要ひつようがある。 人工じんこう呼吸こきゅう開始かいし後ごも心拍しんぱく数すう60回かい/未満みまんである場合ばあい、人工じんこう呼吸こきゅう（＋酸素さんそ投与とうよ）と胸骨きょうこつ圧迫あっぱくを1:3の割合わりあいで開始かいしする。 その後ごも心拍しんぱく数すう60回かい/未満みまんが続つづく場合ばあい、アドレナリンの投与とうよを検討けんとうする。 これら、出生しゅっしょう後ご60秒びょう以内いないの人工じんこう呼吸こきゅうを要ようする症例しょうれいにおける蘇生そせいの流ながれを「救命きゅうめいの流ながれ」と呼よび、アルゴリズム図ずの左側ひだりがわ（直線ちょくせん的てきな流ながれ）に相当そうとうする。 なお、呼吸こきゅう様さま運動うんどうがあったとしても、それが あえぎ呼吸こきゅうであれば、「自発じはつ呼吸こきゅうなし」に準じゅんじて人工じんこう呼吸こきゅうを開始かいしする必要ひつようがある。

一方いっぽう、「自発じはつ呼吸こきゅうあり」かつ「心拍しんぱく100/分ぶん以上いじょう」の症例しょうれいでは、「努力どりょく呼吸こきゅう」と「チアノーゼ」のいずれかがみられる場合ばあいに、SpO2 モニタを装着そうちゃくの上うえ、必要ひつように応おうじてCPAPまたは酸素さんそ投与とうよを行おこなう。 その後ごも改善かいぜん傾向けいこうがみられない場合ばあいには、人工じんこう呼吸こきゅうを検討けんとうする。 酸素さんそ化か不良ふりょうのみが続つづく場合ばあいには、チアノーゼ性せい心こころ疾患しっかんを鑑別かんべつする。 これら、出生しゅっしょう後ご60秒びょう以内いないの人工じんこう呼吸こきゅうを要ようさない症例しょうれいにおける蘇生そせいの流ながれを「安定あんてい化かの流ながれ」と呼よび、アルゴリズム図ずの右側みぎがわ（への分岐ぶんき）に相当そうとうする。

出生しゅっしょう直後ちょくごのチェックポイントとして「早産そうざん児じ」「弱よわい呼吸こきゅう・啼泣」「筋すじ緊張きんちょう低下ていか」のいずれも満みたさない場合ばあいには、母親ははおやのそばでルーチンケア（保温ほおん・気道きどう開通かいつう・皮膚ひふ乾燥かんそう）を行おこない、さらなる評価ひょうかを継続けいぞくする。

目標もくひょうとする酸素さんそ飽和ほうわ度ど（SpO₂）

経過けいか時間じかん	SpO2
1分ふん	60%以上いじょう
3分ふん	70%以上いじょう
5分ふん	80%以上いじょう
10分ふん	90%以上いじょう

2020年版ねんばんアルゴリズムの変更へんこう点てん

2015年版ねんばんアルゴリズムから2020年版ねんばんアルゴリズムにかけての変更へんこう点てんとして、下記かきの内容ないようが挙あげられている。

1. 新生児しんせいじ蘇生そせい法ほうの本質ほんしつである救命きゅうめいの流ながれの強調きょうちょう（救命きゅうめいの流ながれを出生しゅっしょうから評価ひょうかと介入かいにゅうを直線ちょくせん的てきに配置はいちした）
2. 出生しゅっしょう前まえのステップとしてブリーフィングの表記ひょうきの追加ついか
3. 人工じんこう呼吸こきゅうに引ひき続つづく胸骨きょうこつ圧迫あっぱく時じの『＋酸素さんそ』の表記ひょうきの追加ついか（胸骨きょうこつ圧迫あっぱくを開始かいしすると共ともに酸素さんそ投与とうよが必要ひつようになることを明記めいき）
4. アドレナリン投与とうよの優先ゆうせん順位じゅんいから独立どくりつした表記ひょうきへ変更へんこう
5. 努力どりょく呼吸こきゅうまたはチアノーゼの『共ともにあり』から『どちらかあり』で安定あんてい化かの流ながれに進すすむように変更へんこう
6. 安定あんてい化かの流ながれでは最初さいしょの介入かいにゅうは直ただちに行おこなうのではなく、『SpO2モニタを装着そうちゃくし必要ひつよう時じCPAPまたは酸素さんそ投与とうよ』に変更へんこう
7. チアノーゼを『チアノーゼ(酸素さんそ化か不良ふりょう)』の表記ひょうきへ変更へんこう
8. CPAPまたはフリーフロー酸素さんそ投与とうよを開始かいしした後のち、新あらたな評価ひょうか基準きじゅんとして『改善かいぜん傾向けいこうあり』を追加ついか
9. 介入かいにゅう後ごの評価ひょうかで努力どりょく呼吸こきゅうとチアノーゼ(酸素さんそ化か不良ふりょう)に『改善かいぜん傾向けいこうなし』の場合ばあいは原因げんいん検索けんさくを行おこないながら対応たいおうを検討けんとうに変更へんこう
10. 蘇生そせい後ごのケアは『注意深ちゅういぶかく呼吸こきゅう観察かんさつを継続けいぞく』のみへ変更へんこう
11. 注釈ちゅうしゃく (a)、(b)、の簡略かんりゃく化か

参考さんこう文献ぶんけん

• 細野ほその茂春しげはる 編へん『日本にっぽん版ばん救急きゅうきゅう蘇生そせいガイドライン2020に基もとづく 新生児しんせいじ蘇生そせい法ほうテキスト』メジカルビュー社しゃ、2021年ねん3月がつ28日にち。ISBN 978-4758319980。 
• 細野ほその茂春しげはる 編へん『日本にっぽん版ばん救急きゅうきゅう蘇生そせいガイドライン2020に基もとづく 新生児しんせいじ蘇生そせい法ほうインストラクターマニュアル』メジカルビュー社しゃ、2021年ねん5月がつ15日にち。ISBN 978-4758321266。 

外部がいぶリンク

• 一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん 日本にっぽん周しゅう産さん期き・新生児しんせいじ医い学会がっかい 新生児しんせいじ蘇生そせい法ほう普及ふきゅう事業じぎょう