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聴診ちょうしん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
リットマン聴診ちょうしん
汎用はんよう聴診ちょうしん

聴診ちょうしん(ちょうしんき、英語えいご: stethoscope英語えいご発音はつおん: [ˈsteθしーたəˌskoup])は、物体ぶったい表面ひょうめん接触せっしょくさせ、内部ないぶから発生はっせいする可聴かちょういき振動しんどう伝導でんどうおと)をチューブでみちびいて道具どうぐ医療いりょうにおける聴診ちょうしん道具どうぐの1つとして発達はったつし、臨床りんしょう医療いりょう現場げんば医師いし看護かんご心臓しんぞうはい血管けっかんひとし発生はっせいするおとくのにもちいられる。医療いりょう現場げんばでは「ステート」とばれることもおおい。戦前せんぜん医学いがく用語ようごがドイツもとづいてもちいられていた時代じだいは「スト」と(どく:Stethoskop [ʃtetoskóːp])と長音ちょうおん記号きごうふくまない発音はつおんにおいて呼称こしょうされていた[注釈ちゅうしゃく 1]

歴史れきし

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チェストピースを左右さゆうにわけ、左右さゆうみみ別々べつべつおとく「ステレオ聴診ちょうしん
ラエンネックが所有しょゆうしていた初期しょきがた聴診ちょうしん
トラウベがた聴診ちょうしん象牙ぞうげせい

1816ねんフランス医師いしルネ・ラエンネックが、どもがぼうはしみみをあててあそんでいるのをて、聴診ちょうしんメカニズムおもいつき、発明はつめいした[1]。それまでは、直接ちょくせつ皮膚ひふみみてておといたり、触診しょくしん打診だしんによって心臓しんぞう疾患しっかんなどの病状びょうじょう直接的ちょくせつてき診察しんさつしていた。これにたいして、ラエンネックは、聴診ちょうしんによる聴診ちょうしんを「間接かんせつ聴診ちょうしんほう」と名付なづけ、その精度せいど従来じゅうらい診察しんさつほうよりはるかに確実かくじつであったことから、おおきな反響はんきょうぶこととなった。ただし、当初とうしょ聴診ちょうしんは1ほんつつがたでできた単純たんじゅんなものであった。フランス語ふらんすごのstéthoscopeは、ギリシャのstétho=むね、scope=検査けんさからラエンネックが名付なづけた。

そのドイツひと医師いしトラウベがよりおとおおきくくために患者かんじゃにあてる部分ぶぶんおおきくしたじょうろがた聴診ちょうしん開発かいはつし、1829ねんには胴体どうたい部分ぶぶんがゴムかんとなった[1]1855ねんには米国べいこく医師いしジョージ・カマンがそうみみがた聴診ちょうしん発明はつめいして精度せいどおおいに改善かいぜんした[2]。そのそうみみがた聴診ちょうしんまたた世界せかいひろがり、医師いしのトレードマークてき存在そんざいとなるまでに普及ふきゅうした。

1926ねん米国べいこく医師いしであるラパポートとスプラーグが呼吸こきゅうおんきやすいめん心音しんおんきやすいめん両面りょうめんえて使つかえるダブルの聴診ちょうしん発明はつめい[1]1967ねんにドイツ出身しゅっしん医師いしハーバード大学だいがく医学部いがくぶ教授きょうじゅデイビッド・リットマンによりスプラーグがた聴診ちょうしん小型こがた軽量けいりょう今日きょうもっと医師いしもちいられている聴診ちょうしん開発かいはつされた[1]

日本にっぽんでは1960年代ねんだいまではチェストピースが象牙ぞうげでできており、ゴムかんなが聴診ちょうしん主流しゅりゅうであったが、1970ねん以降いこうはチェストピースがダイヤフラムとベルわかれ、ゴムかんみじか聴診ちょうしんわっていった。

なお、この聴診ちょうしん発明はつめいは、人間にんげん機械きかいになぞらえ(患者かんじゃっていることよりも)客観きゃっかんてき数値すうちによって診断しんだんおこなうという、近代きんだいの「医学いがくモデル」をすすめるいち要因よういんとなったとされている[3]

また近年きんねんでも聴診ちょうしん開発かいはつつづき、日本にっぽん医師いし風間かざましげるにより1991ねん開発かいはつされたチェストピース(皮膚ひふ直接ちょくせつあてる部分ぶぶん)を左右さゆうにわけ、左右さゆうみみ別々べつべつおとく「ステレオ聴診ちょうしん[1]電子でんし技術ぎじゅつ発展はってんによりアンプによりおとを10ばい程度ていど増幅ぞうふくし、不要ふようおとをカットしこえをくし、なお聴診ちょうしんおん記録きろく可能かのうにした「デジタル聴診ちょうしん」、さらにはイヤーピースをはいしてスピーカーでもけるようにして遠隔えんかく診療しんりょうにも活用かつよう可能かのう聴診ちょうしん[4]など聴診ちょうしん進化しんかつづけている。

構造こうぞう種類しゅるい

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色々いろいろ聴診ちょうしん

聴診ちょうしん基本きほんてき仕組しくみは、皮膚ひふ直接ちょくせつあてる部分ぶぶん(チェストピース)でおとひろい、そのおと分岐ぶんきしたゴムかんつうじてりょうみみつたえるというものである。近年きんねんでは、あつめられたおと電気でんきてき増幅ぞうふくする聴診ちょうしん開発かいはつされている。以下いかは、聴診ちょうしん構成こうせいするかく部分ぶぶん名称めいしょう機能きのうである。

チェストピース
皮膚ひふてる部分ぶぶん最近さいきんは2分割ぶんかつされたステレオしきのものがある。通常つうじょうのダイヤフラムは直径ちょっけい45 mmないし50 mmだが、もっとちいさい小児しょうにようのものがある。
ベル
ラッパじょうになったしゅうおん部分ぶぶん聴診ちょうしんかたち原点げんてんすべての周波数しゅうはすうおとこえるので心音しんおん過剰かじょう心音しんおんこころ雑音ざつおん血管けっかんおんなどの低音ていおんくのにてきする。皮膚ひふ接触せっしょくするさいつめたくないように、ゴムのリングが金属きんぞくせい円形えんけいかこんでいるものがおおい。
ダイアフラム
しゅうおんのためにチェストピースにられたまく。ダイヤフラムがてい音域おんいきをカットするので、こう音域おんいきがよくこえるようになっている。呼吸こきゅうおん心音しんおんこころ雑音ざつおん血管けっかん雑音ざつおんなど、高調こうちょうおんくのにてきする。チェストピースをさえるあつ調節ちょうせつすることで、高調こうちょうおん低調ていちょうおんをききわける機能きのうをもたせたダイアフラムもある。
ゴムかん
チェストピースとみみかんをつなぐかん。チェストピースから左右さゆうみみかん分岐ぶんきするまでのあいだが、1ほんかんのもの、1ほんかん内部ないぶ隔壁かくへきがあるもの、2ほんかんのものがある。塩化えんかビニールせいのものがおおい。うちばねしきでは分岐ぶんき付近ふきんにばねが内蔵ないぞうされている。
みみかん
左右さゆうみみてる屈曲くっきょくした金属きんぞくかんみみかんそとばね、ゴムかん一体化いったいかしているものがおおく、「バイノーラル」とばれる。
イヤピース
みみかん先端せんたんみみ挿入そうにゅうする部分ぶぶんはずして洗浄せんじょう可能かのう各種かくしゅのサイズやかたさのものがある。

以上いじょうのうち、シングルタイプはダイアフラムめんのみで、ダブルタイプはダイアフラムめんとベルめんがリバーシブルになっている。チューブのなかにばねがはいっているものが「うちばねしき」、スプリングがそとけのものが「そとばねしき」とばれており、一般いっぱんにはそとばねしき旧式きゅうしきのもの、あるいは廉価れんかなものによくられる。

循環じゅんかん呼吸こきゅう専門せんもんとする医師いし診断しんだんもちいる高級こうきゅう機種きしゅはベルの材質ざいしつ硬質こうしつであり、チューブはふとにくあつみじかく、よりかすかなおとがよりこえるように音響おんきょう性能せいのう調節ちょうせつされているが、普及ふきゅうひんくらべて絶対ぜったいてき性能せいのう格段かくだんすぐれているわけではなく、あくまで医師いし技量ぎりょう重要じゅうようである。

医療いりょう以外いがいでの使用しよう

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聴診ちょうしんおもなブランド/メーカー

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血圧けつあつ測定そくていさいコロトコフおん確認かくにんすればよいだけの目的もくてき使つかわれるナース・スコープは2・3せんえん購入こうにゅう可能かのうであるが、微妙びみょう振動しんどうおんちがいから様々さまざま疾患しっかん推定すいていすることがもとめられる、医師いし診察しんさつさいもちいるドクター・スコープは3まんえんから15まんえんほどする。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 熊井くまいあきら1986『うみ毒薬どくやく』(原作げんさく遠藤えんどう周作しゅうさく)においてはだい世界せかい大戦たいせん病院びょういんでの用法ようほうについて「スト」と長音ちょうおん記号きごうれない発音はつおん表現ひょうげんされている。

出典しゅってん

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  1. ^ a b c d e だい5かい 聴診ちょうしん. BS-TBS. https://bs.tbs.co.jp/alpha/archive/05.html 2012ねん1がつ3にち閲覧えつらん 
  2. ^ 3M US Littmann Stethoscopes - History, Dr. Littmann, Cardiosonics Inc
  3. ^ Postman (1992=1994: 132)
  4. ^ 聴診ちょうしんに200ねんぶりの革新かくしん、デジタル聴診ちょうしんデバイスを開発かいはつ日経にっけいクロストレンド2020ねん10がつ23にち配信はいしん 2022ねん1がつ29にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Postman, M. (1992). Technology. Alfred Knopf, Inc. ニール・ポストマン ちょ、GS研究けんきゅうかい やく技術ぎじゅつvs人間にんげん : ハイテク社会しゃかい危険きけん新樹あらきしゃ、1994ねんISBN 4-7875-8428-6 

外部がいぶリンク

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