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アンプ (音響おんきょう機器きき)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

音響おんきょう機器きき(オーディオ機器きき)におけるアンプえい: amplifier)とは、音響おんきょう表現ひょうげんした電気でんき信号しんごう増幅ぞうふくする機器ききである。日本語にほんごでは慣例かんれいてきに、英語えいごめいamplifier(アンプリファイア)を短縮たんしゅくさせ「アンプ」とばれることがおおい。

SOUND WARRIOR SW-10 真空しんくうかんアンプ

概要がいよう

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1920年代ねんだい真空しんくうかんアンプ

さまざまある増幅器ぞうふくき一種いっしゅである。用途ようと出力しゅつりょくおおきさ、付加ふか機能きのうによりいくつかの種類しゅるいがある。

初期しょき音響おんきょう機器ききはアンプをたず、微小びしょう電気でんき信号しんごうであっても反応はんのうせいのよいスピーカー内蔵ないぞうすることませていた(ただし、あまりおおきなおとなかった)。

真空しんくうかんアンプの登場とうじょう

真空しんくうかん発明はつめいされると、電気でんき信号しんごう増幅ぞうふく、ひいては音声おんせい音響おんきょう)を表現ひょうげんした電気でんき信号しんごう増幅ぞうふく可能かのうとなり、通信つうしんラジオ電気でんき蓄音機ちくおんきなどの音響おんきょう機器ききまれた。これがアンプの発祥はっしょうである(真空しんくうかんアンプ)。のち音響おんきょう機器きき種類しゅるいえると、それぞれの音響おんきょう機器ききにアンプを内蔵ないぞうするのでなく、アンプ(とスピーカー)を筐体きょうたいとして独立どくりつさせ、それに複数ふくすう音響おんきょう機器きき接続せつぞくするようになった。エレクトロニクスの技術ぎじゅつしゃなどは、世界中せかいじゅうで、アンプは購入こうにゅうしたりせず、さかんに自作じさくした。なお、真空しんくうかんアンプはアナログ信号しんごうをアナログのまま増幅ぞうふくする。

トランジスタアンプの登場とうじょう真空しんくうかんアンプの存続そんぞく

トランジスタ登場とうじょうし、1950年代ねんだい以降いこうにトランジスタのアンプももちいられるようになった(トランジスタアンプ)。ラジオなどではトランジスタアンプがさかんに使つかわれるようになっても、オーディオ観賞かんしょう分野ぶんやでは、真空しんくうかんアンプはトランジスタアンプとならび、依然いぜんとして使つかわれつづけた現在げんざいでも製造せいぞうされ、使つかわれつづけている)。真空しんくうかんとトランジスタの増幅ぞうふく特性とくせい増幅ぞうふく波形はけい変化へんか)がわずかにことなり、真空しんくうかんアンプのおとが「やわらい」「あたたかみがある」おとこえるのにたいして、トランジスタアンプのおとは「かたい」「つめたい」などと、一部いちぶのオーディオリスナーや評論ひょうろんたちが評価ひょうかしたからである。

とはえ、トランジスタアンプによっててい価格かかく可能かのうになり、真空しんくうかんのようにいたんで(ある程度ていど期間きかんで)交換こうかんする必要ひつようがあり、スイッチをれてからあたたまるまでたなければならなかったのにくらべて、トランジスタは交換こうかん必要ひつようがなく、スイッチをれるとすぐに使つかえ、おまけに小型こがたであるなど、さまざまなてん便利べんりではあったので、一般人いっぱんじんけには次第しだい販売はんばいされる割合わりあいえてゆき、てい価格かかくたいのオーディオ機器ききでは、ほぼすべてがトランジスタアンプになっていった。が、それでも高級こうきゅう音響おんきょう機器ききこう価格かかくたい)では真空しんくうかんアンプがもちいられつづけたのである(2018ねん現在げんざいでも真空しんくうかんアンプは販売はんばいされつづけている。たとえばアンプひとつの価格かかくすうじゅうまんえん以上いじょう、ものによってはひゃくまんえん以上いじょうするようなものもある。)

アンプICの登場とうじょう

60年代ねんだい以降いこうには、真空しんくうかんアンプおよびトランジスタアンプにくわえ、ICひとし使つかわれるようになった。

現在げんざい状況じょうきょう

おおくの電気でんき機器ききでは、内部ないぶ回路かいろはほとんどがトランジスタ、さらにはICへと移行いこうすすみ、真空しんくうかん増幅器ぞうふくきえてしまった。しかし音響おんきょう機器ききのファンのなかでもとく熱狂ねっきょうてきなファンというのは、おとこえかたのわずかなちがいに徹底的てっていてきにこだわるので、そしてしばしばおとのためならば、価格かかく機器ききおおきさのことは度外視どがいしするので、独特どくとくおと質感しつかんをもたらす真空しんくうかんアンプがいまでものこっているのである。たとえ真空しんくうかんアンプの音質おんしつたか評価ひょうかし、購入こうにゅうする人数にんずうが、ぜん人口じんこうたいして非常ひじょうちいさくても、熱狂ねっきょうてきなファンは ひとりあたりとてもおおきな金額きんがくけたがいくつもちがうほどに、とてもおおきい金額きんがく)を支払しはらうので、真空しんくうかんアンプの市場いちばマーケット)がそう金額きんがくとしてはそれなりにおおきくなり、市場いちばとして立派りっぱ成立せいりつし、メーカーとしても製造せいぞうしつづけることができるのである。

詳細しょうさい後述こうじゅつ参照さんしょう

種類しゅるい

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レコードプレーヤーCDプレーヤーチューナーカセットプレーヤーなどの音響おんきょう機器ききからのライン出力しゅつりょくけ、またセレクタやトーンコントロールなどを内蔵ないぞうし、しゅとして電圧でんあつ増幅ぞうふくし、つぎのパワーアンプを駆動くどうする増幅器ぞうふくきコントロールアンプあるいはつぎのメインアンプと対置たいちしてプリアンプぶ。コントロールアンプからの出力しゅつりょくけ、しゅとして電流でんりゅう(ないし電力でんりょく)を増幅ぞうふくし、スピーカーなどを駆動くどうする増幅器ぞうふくきパワーアンプあるいはプリアンプと対置たいちしてメインアンプぶ。これらを別々べつべつのコンポーネントにすることがひろおこなわれたのでそれぞれを「プリアンプ」「メインアンプ」と区別くべつするようになり、さらにはそれらを一体化いったいかしたものとしてプリメインアンプインテグレーテッドアンプ(総合そうごうアンプ)という呼称こしょうまれた。プリメインアンプのなかには、プリとメインはなして使つかえるものもあった。

コントロールアンプ(プリアンプ)

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コントロールアンプ(プリアンプ)はちいさな(しゅとしてラインレベルの)入力にゅうりょく信号しんごう増幅ぞうふくするだけでなく、おとこまかく調整ちょうせいしたり、入力にゅうりょくえたりする機能きのうそなえており、そのためにこう音域おんいきちゅう音域おんいきてい音域おんいき音量おんりょう個別こべつ調整ちょうせいする「トーン・コントロールつまみ」(=イコライザー (音響おんきょう機器きき))や、ステレオの左右さゆう音量おんりょう調整ちょうせいする「バランス調整ちょうせいつまみ」、入力にゅうりょく選択せんたくする「入力にゅうりょく切替きりかえスイッチ」(入力にゅうりょくセレクタ・スイッチ)などをそなえている。

レコード主力しゅりょく媒体ばいたいだった時代じだいには、レコードばん表面ひょうめんみぞのわずかなうごきをひろって電気でんき信号しんごうえるピックアップ・カートリッジの微小びしょう出力しゅつりょく増幅ぞうふくする専用せんようのアンプがプリアンプにそなわっていることが一般いっぱんてきであった。とくに、単純たんじゅん増幅ぞうふくだけではなく、MCカートリッジの非常ひじょう微小びしょう出力しゅつりょく増幅ぞうふくしたり(ヘッドアンプ。これは特殊とくしゅで、信号しんごうまわしたくないことなどもあり、レコードプレーヤーがわそなえることもおおい)、レコードに記録きろくされた信号しんごうの「RIAA特性とくせい」とばれる周波数しゅうはすう特性とくせいを、ぎゃく特性とくせいのフィルターをとおしてもどイコライザアンプ必要ひつようであった。プリアンプ内蔵ないぞうではなく独立どくりつさせた「フォノアンプ」もあった。1980年代ねんだいごろからはおもなメディアがCD移行いこうしたため、フォノイコライザをたない機種きしゅおおくなっており、近年きんねんはこれらはすべてレコードプレーヤーのがわそなえるのがもっぱらとなっている。

一般いっぱん音響おんきょう機器ききライン出力しゅつりょく出力しゅつりょくレベルは2Vrms程度ていどあるので、500mW程度ていど駆動くどうするのであれば、プリアンプの必要ひつようせいい。

パワーアンプ(メインアンプ)

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パワーアンプ(メインアンプ)はプリアンプからの出力しゅつりょくけて電力でんりょく増幅ぞうふくおこない、スピーカーなどを駆動くどうする。

電力でんりょく増幅ぞうふくするだけであるため、入力にゅうりょく制限せいげんようまたは出力しゅつりょく調整ちょうせいようの「ボリュームつまみ」がいているだけ、というものが一般いっぱんてきであり、プリアンプがわにメインボリュームがあることを前提ぜんていとして[1] ボリュームがいものもすくなくない。だい出力しゅつりょくのものは発熱はつねつおおきいので放熱ほうねつ注意ちゅういしなければならない。

インテグレーテッドアンプ(プリメインアンプ)

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コントロールアンプ(プリアンプ)とパワーアンプ(メインアンプ)を一体化いったいかしたものをインテグレーテッドアンプ(プリメインアンプ)という(これにたいしコントロールアンプやパワーアンプをセパレートアンプとぶことがある)。

操作そうさパネルはコントロールアンプとほぼおなじで、パワーアンプを内蔵ないぞうしているのでスピーカ端子たんしがある。

コントロールアンプとパワーアンプを一体化いったいかしたといっても、内部ないぶでコントロールアンプ回路かいろとパワーアンプ回路かいろけてんでいるものと、回路かいろてき融合ゆうごうさせてしまっているものとがある。前者ぜんしゃ構成こうせいではコントロールアンプ出力しゅつりょく端子たんしとパワーアンプ入力にゅうりょく端子たんしもうけられていることがあり、この場合ばあいひとつの筐体きょうたいおさまったコントロールアンプとパワーアンプとして別々べつべつ使つかうことができる。すなわち、コントロールアンプ出力しゅつりょく端子たんしべつのパワーアンプ入力にゅうりょく接続せつぞくしたり、ぎゃくべつのコントロールアンプ出力しゅつりょくをパワーアンプ入力にゅうりょく端子たんし接続せつぞくして使つかうことができる。後者こうしゃ構成こうせいでは完全かんぜんおなじことはできないが、 AUえーゆーX 入力にゅうりょくなどのラインけい入力にゅうりょく端子たんし使つかってパワーアンプとして使つかうことはできる。

2010ねんごろからは USB DAC を搭載とうさいした製品せいひんや、アンプ同士どうし連動れんどう機能きのうによってチャンネルすう拡張かくちょうできる機種きしゅ開発かいはつされ、 PC オーディオや AV アンプとの垣根かきねがなくなりつつある。

レシーバー

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インテグレーテッドアンプにラジオチューナー内蔵ないぞうしたものをレシーバーという。スピーカーをつなぐだけでラジオ放送ほうそうくことができ小形こがたおさまる。

さらレコードプレーヤー一体化いったいかしたものもあったが、レコードプレーヤーは本質ほんしつてきには機械きかい部品ぶひんであり、また構造こうぞう大掛おおがかりになるので、セパレートがたステレオやモジュラーがたステレオの一部いちぶとしてはともかく、アンプとしては日本にっぽんでは流行はやらなかった。しかしコンパクトディスク (CD) プレーヤーやミニディスク (MD) プレーヤーなどは内蔵ないぞう容易よういであり、ラジオチューナーと CD プレーヤーを内蔵ないぞうしたものは CD レシーバーなどとばれる。

また、最近さいきんではラジオチューナーを内蔵ないぞうしていなくても、インターネットラジオがけるものをネットワークレシーバーとぶことがある。

デジタルアンプ

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きゅうべつとしてDきゅうとされることもある。

デジタルアンプとはPWMPDM電力でんりょく増幅ぞうふく利用りようするアンプである。アナログ入力にゅうりょくの(すなわちアナログだんつ)製品せいひんもあるが、デジタル入力にゅうりょくから出力しゅつりょくスイッチング素子そしまでアナログ回路かいろ経由けいゆしない「フルデジタル」などとばれている製品せいひんもある[2](ただし出力しゅつりょくスイッチング素子そし以降いこうにアナログ回路かいろであるローパスフィルタかなら存在そんざいするため、厳密げんみつには「フルデジタル」なアンプなど存在そんざいしない)。デジタルアンプでは入力にゅうりょく音声おんせい信号しんごうにより変調へんちょうされたパルスデューティまたは頻度ひんど制御せいぎょするため、最終さいしゅう出力しゅつりょくだんトランジスタはONかOFFかの単純たんじゅんなスイッチング動作どうさとなり、アナログアンプにくら電力でんりょく効率こうりつ飛躍ひやくてきたかいことが最大さいだい特長とくちょうである。基本きほんてき原理げんりは、電圧でんあつ可変かへんスイッチング電源でんげん出力しゅつりょく電圧でんあつ入力にゅうりょく音声おんせい信号しんごうおうじて変化へんかさせることと等価とうかである。

市販しはんのオーディオアンプでは、1977ねん発売はつばいされたソニーのTA-N88が非常ひじょう初期しょきのものである[3]。これは、発振はっしんがたのPWM変調へんちょう回路かいろにより入力にゅうりょく信号しんごうからアナログてきにPWM生成せいせいするものであるため、これを世界せかいはつのデジタルアンプとするかについては意見いけんかれるものの、今日きょうのデジタルアンプの原型げんけいとなるアンプである。

また、デジタルアンプはその電力でんりょく効率こうりつたかさからミニコンポカーオーディオ携帯けいたい音楽おんがくプレーヤーなどのアンプ、またチャンネルをあつかうAVアンプ(後述こうじゅつようとしてよくもちいられるほか、従来じゅうらいのアナログアンプにない特長とくちょうかしたとしょうしている、いわゆる「高級こうきゅうオーディオ」もある。 なかでも、1999ねん8がつシャープ発売はつばいしたΔでるたΣしぐま1bitデジタルアンプ SM-SX100は有名ゆうめいであり、これは同社どうしゃ高級こうきゅうオーディオアンプ(標準ひょうじゅん価格かかく100まんえん)としてじゅうすうねんぶりに発売はつばいしたものである。なお、デジタルアンプ技術ぎじゅつとしては、ソニーS-MasterS-Master PROオンキヨーのVL Digital、JVCケンウッド(JVCブランド。きゅう日本にほんビクター)のDEUS、パイオニアげんオンキヨー&パイオニア Pioneerブランド)のDirect Power FETなど、オーディオ機器ききメーカー各社かくしゃにより独自どくじ開発かいはつすすめられている。

かつてCDが登場とうじょうしたころにデジタルアンプとばれた製品せいひんは、DAコンバータ内蔵ないぞうしデジタル入力にゅうりょくつアンプのことでこれとはことなる。またAVアンプについても「デジタルアンプ」とばれるものがおおいが、本節ほんぶしべたデジタルアンプとの差異さい詳細しょうさい後述こうじゅつする。

オーディオビジュアルアンプ。AVセンターともぶ。ホームシアターようのアンプである。AM/FMチューナーが搭載とうさいされているものはAVレシーバーと場合ばあいがある。

機能きのう
映像えいぞう信号しんごう入出力にゅうしゅつりょく端子たんしそなえ、AVセレクターとしての機能きのうことは、AVアンプを名乗なのるには必須ひっす機能きのうであり、特徴とくちょうである。初期しょきのAVアンプのおおくは、オーディオようアンプにAVセレクター機能きのう付加ふかしただけのものであった。2004ねんころからHDMI入出力にゅうしゅつりょくそなえたAVアンプが登場とうじょう。またHDMIの映像えいぞう信号しんごう中継ちゅうけいするだけでなくアナログ映像えいぞう入力にゅうりょくをデジタルないしアップコンバートして出力しゅつりょくできる製品せいひん存在そんざいする。
一方いっぽうでインテグレーテッドアンプにある、レコード再生さいせいのためのフォノイコライザーは、初期しょきのAVアンプには装備そうびされていたが、2019ねん現在げんざいではおも廉価れんかモデル中堅ちゅうけんモデルで装備そうびしていないものがだい部分ぶぶんめている。
2010ねんころからは、DLNAAirPlayによるネットワークオーディオ機能きのうBluetoothによるワイヤレスオーディオ機能きのう製品せいひん登場とうじょうしている。
音声おんせい信号しんごう
2chステレオ音声おんせいのみに対応たいおうしたものはAV アンプが登場とうじょうした初期しょき製品せいひんのみであり、ほとんどの製品せいひんサラウンド音声おんせい信号しんごうあつかう。2chのステレオ信号しんごう加工かこうして4chとした仮想かそうサラウンド機能きのうから、1980年代ねんだいなかばからドルビーサラウンド対応たいおうへと発展はってんした。1980年代ねんだい末期まっきにセンター信号しんごう方向ほうこう強調きょうちょう回路かいろ付加ふかし5chとしたドルビープロロジックが登場とうじょうする。
1990年代ねんだい後半こうはん以降いこうドルビーデジタル方式ほうしきおもDVD-Videoソフトの普及ふきゅうによって浸透しんとうすることとなる。一般いっぱんてきにフロント左右さゆう、サラウンド左右さゆう、センター、ウーハーの5.1chぶん(ウーハーは再生さいせいする音声おんせい信号しんごう低音ていおん成分せいぶんのみのせま音域おんいきのために、0.1chと表現ひょうげんされている)をあつかう。DVD-Video・デジタル放送ほうそう普及ふきゅうともなDTSAACにも対応たいおうした製品せいひんえた。最近さいきん[いつ?]では2chや2.1chで仮想かそうサラウンド再生さいせい可能かのう製品せいひんおおく、ドルビープロロジックⅡ、ドルビープロロジックⅡx、DTS-ESなどが搭載とうさいされた製品せいひん登場とうじょうしてからは、サラウンドバックなどをくわえた6.1ch、7.1ch、9.1ch音声おんせい出力しゅつりょくする製品せいひん存在そんざいするようになった。
BDソフトの登場とうじょうともなって、2007ねんころから従来じゅうらいS/PDIF端子たんしではあつかえないドルビーTrueHDDTS-HDマスターオーディオなどのハイレゾ音源おんげん対応たいおうてい価格かかく機種きしゅはTrueHD・DTS-HDとうのデコーダを省略しょうりゃくし、再生さいせいがわでデコードした圧縮あっしゅく音声おんせい再生さいせいのみ対応たいおうする場合ばあいがある)するようになった。
デジタルアンプ
AVアンプで「デジタルアンプ」をしょうする製品せいひんにはおおむね2系統けいとうあり、1980年代ねんだいられたものは、DSP(デジタルシグナルプロセッサないしデジタル信号しんごう処理しょり)による処理しょりをおこなっていること、ないしDACを内蔵ないぞうしデジタル入力にゅうりょくそなえていることを以ってデジタルとしょうしていた。一方いっぽう21世紀せいきはいって以降いこうのものは、パワーアンプが前節ぜんせつ説明せつめいしたような構成こうせいになっているデジタルアンプである。

ヘッドホンアンプ

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ポータブルヘッドホンアンプ(ソニー・PHA-1A)

ヘッドホン専用せんようのアンプ。ヘッドホン端子たんし製品せいひん接続せつぞくする目的もくてきや、より高音こうおんしつでヘッドホンリスニングするため使用しようされる。スピーカー駆動くどうもちいるプリメインアンプとうにもヘッドホン端子たんし存在そんざいするが、これらはスピーカーようおおきな出力しゅつりょくをヘッドホンよう減衰げんすいさせるために抵抗ていこう直列ちょくれつ挿入そうにゅうしているが、ヘッドホン専用せんようちいさな出力しゅつりょく構成こうせいされたヘッドホンアンプには、音質おんしつ向上こうじょう目的もくてきとして、この抵抗ていこうもちいていない。

複数ふくすうだいのヘッドホンの同時どうじ使用しよう可能かのう製品せいひん存在そんざいし、録音ろくおんスタジオけには複数ふくすうミュージシャンがヘッドフォンで同時どうじにモニターする用途ようと使つかわれる。ことなる音源おんげん個々ここのミュージシャンがこのみのバランスでモニターするために、簡単かんたんミキサー内蔵ないぞうしたものもある。音楽おんがくCD販売はんばいする店頭てんとうでは、新譜しんぷ試聴しちょうにヘッドホンを用意よういしていることがあり、1だいCDプレーヤーから複数ふくすう試聴しちょうしゃ音楽おんがく再生さいせいする用途ようと使つかわれる。

増幅ぞうふく素子そし回路かいろ

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さきべたとおり、おおくの電化でんか製品せいひん電気でんき製品せいひんにおいては、電気でんき信号しんごう増幅ぞうふく素子そし回路かいろとしては、技術ぎじゅつてきにそれが可能かのうであるなら、真空しんくうかんから、トランジスタ、ICへと移行いこうしていった。しかしながら音響おんきょう機器ききとしてのアンプにおいては、おとものこのみという観点かんてんから、例外れいがいおおい。

たとえば真空しんくうかんもちいたアンプのおとこのオーディオマニアおおく、現在げんざいいたるまで製造せいぞう販売はんばいつづいている。また真空しんくうかんアンプは回路かいろ構成こうせい単純たんじゅんであることから、オーディオマニアが自作じさくおこなれいおおい。日本にっぽん、アメリカ、西欧せいおうにおいて、真空しんくうかんおおくが製造せいぞう終了しゅうりょうとなったため、ロシアや東欧とうおう中国ちゅうごくつづ生産せいさんされていた真空しんくうかんもちいられるれいおおかった。しかし近年きんねんはそれら諸国しょこくでも真空しんくうかん製造せいぞう終了しゅうりょうする場合ばあいおおく、選択肢せんたくしかぎられている。そのため、あえてオーディオマニアけのニーズに対応たいおうして、米国べいこくウエスタンエレクトリックしゃでは真空しんくうかんさい生産せいさんはじめた。

また、集積しゅうせきしていない回路かいろ抵抗ていこう、コンデンサー、トランジスター、ダイオードなどたん機能きのう電子でんし部品ぶひんわせ)でおこなディスクリートアンプ(discrete:別々べつべつの)にも、根強ねづよ人気にんきがある。ディスクリートの利点りてんには、やすいトランジスタでも一般いっぱん普及ふきゅうひんICより雑音ざつおん特性とくせいいこと(普及ふきゅうひんICアンプでは最低さいてい音量おんりょう状態じょうたいでそれとわかる雑音ざつおんることがおおい)、部品ぶひん選定せんていすればより回路かいろめることなどがある。音質おんしつてき嗜好しこうから、電界でんかい効果こうかトランジスタ選択せんたくするれいおおい。

もちろん、一般いっぱん電気でんき機器きき同様どうように、ICを利用りようするアンプもある。ICをもちいる利点りてんには、部品ぶひん点数てんすうらして製造せいぞう価格かかくげられること、小型こがたできること、素子そし特性とくせい高度こうどそろっているためその必要ひつようがある回路かいろ有利ゆうりなことなどがある。とくAVアンプ場合ばあいは、機能きのうチャンネルに対応たいおうする回路かいろ筐体きょうたいないおさめる必要ひつようせいから、IC必須ひっす選択せんたくである。

基本きほんてきにはオーディオようアンプは電圧でんあつ増幅ぞうふくしている。主流しゅりゅうのスピーカーはムービング・コイルかたであり、電磁石でんじしゃくであるため電流でんりゅう制御せいぎょのほうが単純たんじゅんになるが、安定あんていしたてい電流でんりゅう回路かいろつくることは技術ぎじゅつてきむずかしいため、電圧でんあつ制御せいぎょ主流しゅりゅうとなっている。それにわせてスピーカーも電圧でんあつ制御せいぎょてきした設計せっけいのものが市販しはんされている。

また1980年代ねんだい中頃なかごろまではアナログ回路かいろ主流しゅりゅうであるが、1980年代ねんだい以降いこうからスイッチング電源でんげん原理げんり出力しゅつりょくだんだい電力でんりょく信号しんごう生成せいせいするデジタルアンプ実用じつようされている。信号しんごう処理しょり特性とくせいじょう雑音ざつおん特性とくせいにもすぐれることから、デジタルアンプはICをもちいるれいおおい。

きゅう

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ここではオーディオアンプ装置そうちとしてのきゅうについてべる。

アナログ回路かいろにおける増幅ぞうふく素子そし動作どうさてんには A きゅう・ B きゅう・ C きゅうがある(A きゅうと B きゅうなかあいだてきなものを AB きゅうという)。 D きゅうその動作どうさてんではなく方式ほうしき名前なまえである。

真空しんくうかんでグリッドに電流でんりゅうなが領域りょういき使つかわない場合ばあいきゅう名前なまえ数字すうじの 1 をえ(A1 きゅうなど)、グリッドに電流でんりゅうなが領域りょういきまで使用しようする場合ばあいきゅう名前なまえ数字すうじの 2 をえて(A2 きゅうなど)区別くべつすることがある。

オーディオようアナログアンプはひずみちいさくする必要ひつようがあるので C きゅうもちいられず、 A きゅうか B きゅう(AB きゅうも)がもちいられる。 A きゅうはシングル構成こうせいでもプッシュプル構成こうせいでも使つかえるが、 B きゅうや AB きゅうはプッシュプル構成こうせいでないと使つかえない(構成こうせいについては増幅ぞうふく回路かいろ#代表だいひょうてき構成こうせい方式ほうしき参照さんしょう)。つまりシングル構成こうせいでは A きゅうしか使つかえない。

オーディオようアナログアンプのしょう信号しんごう部分ぶぶん通常つうじょう A きゅうとする。しかし電力でんりょく効率こうりつわるいため、だい電力でんりょくあつかうパワーアンプ出力しゅつりょくだんまで A きゅうにすると発熱はつねつおおくなるので、半導体はんどうたいパワーアンプの出力しゅつりょくだんは B きゅうまたは AB きゅうとするのが普通ふつうである[4]。しかし出力しゅつりょくだんまで A きゅうとした半導体はんどうたいパワーアンプも存在そんざいする。つまりオーディオアンプでいうところの A きゅうアンプとか B きゅうアンプというのはパワーアンプ出力しゅつりょくだんについてのことをっている。

真空しんくうかんアンプは出力しゅつりょくがさほどおおきくないものがおおいこと、帰還きかんりょうすくなくひずみしにくいことから、出力しゅつりょくだんも A きゅうのものがおおい。

擬似ぎじ A きゅう

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古典こてんてきな A きゅういびつすくないが発熱はつねつおおく、パワーアンプ出力しゅつりょくだんもちいるとだい出力しゅつりょくのぞめなくなる。しかしこの発熱はつねつ問題もんだい解決かいけつしたとする A きゅうアンプが 1970 年代ねんだいまつごろから 1980 年代ねんだいにかけて流行りゅうこうし、だい出力しゅつりょくていひずみりつをアピールした[5]

プッシュプルでカットオフするがわ素子そしバイアスえたり波形はけい変形へんけいさせて、バイアス電流でんりゅうちいさくてもカットオフしないようにしたものである。バイアス電流でんりゅうちいさいので発熱はつねつすくなく、カットオフしないので定義ていぎにより A きゅうとなる。メーカーはしん A きゅうなどとんだが、ユーザーからは疑似ぎじ A きゅうとか、にせ A きゅうばれることすらあった。

擬似ぎじ A きゅう各社かくしゃ呼称こしょうれい

多数たすう

D きゅうその

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1970 年代ねんだい日立ひたち Lo-D が信号しんごうおおきさによって電源でんげん電圧でんあつえ、効率こうりつげる「Dynaharmony」方式ほうしきを「E きゅう」としょうしたことがあるが、一般いっぱんてき呼称こしょうではない。

デジタルアンプを D きゅうともいう。効率こうりつさが利点りてんであるがSACDDSD直接ちょくせつ再生さいせいするなどをはじめハイファイオーディオにもひろまっている。 E きゅう前述ぜんじゅつの Lo-D とは無関係むかんけい)・ F きゅうもデジタルベースの技術ぎじゅつだが高周波こうしゅうは応用おうようおもでオーディオとはいまのところ関係かんけいない。 G きゅう・ H きゅう技術ぎじゅつてきには前述ぜんじゅつ擬似ぎじ A きゅう類似るいじしたしょう電力でんりょく方式ほうしきで、もっぱらポータブルオーディオなどにおいて D きゅうつぎのトピックとなっている。

著名ちょめいなブランド

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参考さんこう文献ぶんけん出典しゅってん脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 機器きき出力しゅつりょくレベルとインピーダンスがラインにほぼ統一とういつされた現在げんざい、プリアンプによる音質おんしつ劣化れっかきらい、CDプレーヤーとう直接ちょくせつメインアンプに接続せつぞくする場合ばあいもある。ただしボリュームがいメインアンプではこういう使つかかたはできない。
  2. ^ たとえばTAS5709
  3. ^ トランジスタ技術ぎじゅつ』 2008ねん3がつごうCQ出版しゅっぱんしゃ
  4. ^ B きゅうといってもバイアス電流でんりゅう厳密げんみつに 0 ではなく、また AB きゅうといってもバイアス電流でんりゅうはさほどおおきくないので(おおきくすれば電力でんりょく効率こうりつ発熱はつねつおおくなる)、 B きゅう、 AB きゅうといっても大差たいさないことがおおい。
  5. ^ 実際じっさいにはどう時期じきいびつ技術ぎじゅつ流行りゅうこうしており、ていひずみりつなにによるものかは留意りゅういする必要ひつようがある。