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衛生えいせいへい

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だい世界せかい大戦たいせんどきアメリカぐん衛生えいせいへい

衛生えいせいへい(えいせいへい、えい: combat medic, medic)は、軍隊ぐんたいにおいて衛生えいせいはんぞくし、医療いりょうかんする業務ぎょうむおこな兵士へいし[1]戦闘せんとう支援しえん兵科へいか一種いっしゅである。その任務にんむ特殊とくしゅせい専門せんもんせいおよ人道じんどううえ理由りゆうから、戦時せんじ国際こくさいほううえにおける医療いりょう要員よういんとして、兵科へいか軍人ぐんじんとはことなる各種かくしゅ保護ほご資格しかくとうあたえられている[2]

なお、医療いりょう従事じゅうじしゃ免許めんきょ資格しかくくとも、軍隊ぐんたい衛生えいせい部隊ぶたい配属はいぞくされている軍人ぐんじん部隊ぶたい任務にんむおこなうのに必要ひつようとされる人員じんいん輸送ゆそう機器きき運転うんてんしゅ部隊ぶたい組織そしき管理かんり要員よういんなど)は国際こくさいほうじょう衛生えいせい要員よういんとしてあつかわれる[2]

概要がいよう[編集へんしゅう]

治療ちりょう訓練くんれんおこなノルウェーぐん衛生えいせいへい

衛生えいせいへい医療いりょうかかわる一般いっぱんてき業務ぎょうむ任務にんむとする。戦闘せんとうでの負傷ふしょうへいへの応急おうきゅう医療いりょうだけでなく、後方こうほうでの傷病しょうびょうへい看護かんごおよ治療ちりょう部隊ぶたい衛生えいせい状態じょうたい維持いじ担当たんとうする。また寒冷かんれい熱帯ねったいなどの疾病しっぺい地域ちいきにおいては、予防よぼう医学いがく指揮しきをとり(れい凍傷とうしょうマラリア予防よぼう教育きょういく予防よぼう措置そちとう)、また食物しょくもつみず衛生えいせい管理かんりなどの防疫ぼうえき業務ぎょうむなどをも担当たんとうする。一般いっぱんてき衛生えいせいへい師団しだんにおいて2%〜5%の程度ていど人員じんいんめ、かれらによって衛生えいせい大隊だいたい編成へんせいされるが、もちろんくに時代じだいによって部隊ぶたい編成へんせい規模きぼ差異さいにはかなりおおきなはばがある。

軍医ぐんいではないので訓練くんれんければだれでもなることが出来でき[よう説明せつめい]が、その性格せいかくじょう任務にんむ応急おうきゅう処置しょちまでにめられる。

ただし任務にんむ性格せいかくじょう負傷ふしょうしゃ後送こうそう迅速じんそくにできない特殊とくしゅ部隊ぶたい追従ついしょうする衛生えいせいへいや、孤立こりつした状況じょうきょうでの戦闘せんとう捜索そうさく救難きゅうなん従事じゅうじするアメリカ空軍くうぐんパラレスキューとうは、医師いし匹敵ひってきする知識ちしき技術ぎじゅつ応急おうきゅうてき手術しゅじゅつふくめ、現地げんちである程度ていど医療いりょう行為こうい完結かんけつ出来できるレベルの人員じんいんそなえている。

活動かつどう[編集へんしゅう]

アフガニスタン行動こうどうしているイタリア陸軍りくぐんアルピーニ画面がめんみぎおく衛生えいせいへい点滴てんてきをしている

一般いっぱんてき最前線さいぜんせん活動かつどうする衛生えいせいへいは、負傷ふしょうした兵士へいしたいして応急おうきゅう処置しょちほどこし、後方こうほう野戦やせん病院びょういん搬送はんそうすることを任務にんむとしている。 銃創じゅうそうおおきな裂傷れっしょうのような外傷がいしょうった兵士へいしたいして最前線さいぜんせんおこなえる応急おうきゅう処置しょち包帯ほうたいとガーゼ、止血しけつたいでの止血しけつ傷口きずぐち洗浄せんじょうとドレッシングざいによる被覆ひふく保護ほご気道きどう確保かくほ動脈どうみゃくなどからの出血しゅっけつひど場合ばあいは鉗子を使用しようした止血しけつリンゲル液りんげるえきの輸液をおこな場合ばあいもある。しかし 基本きほんてき出血しゅっけつ抑制よくせいし、モルヒネなどで苦痛くつう緩和かんわする処置しょちがほとんどであり、前線ぜんせんでそれ以上いじょう処置しょちおこなわれることはあまりい。あくまで衛生えいせいへい役目やくめは、軍医ぐんい安全あんぜん設備せつびととのった後方こうほう医療いりょう施設しせつへの後送こうそうまで、負傷ふしょうした兵士へいしいのちつなことである。

衛生えいせいへい国際こくさいほうじょう庇護ひご[編集へんしゅう]

1929ねんジュネーヴ傷病しょうびょうへい保護ほご条約じょうやくジュネーヴ条約じょうやく)がむすばれ、衛生えいせいへいなどは国際こくさい法規ほうきにより保護ほごされることとなった。だい6じょうからだい9じょうにかけて、保護ほご規定きていさだめられている。衛生えいせい部隊ぶたいおよびその施設しせつ交戦こうせんしゃによって保護ほごされる(だい6じょう)が、がいてき行為こうい保護ほご資格しかくうしなう(だい7じょう)。自己じこ防衛ぼうえい傷病しょうびょうしゃ保護ほごのために部隊ぶたい武装ぶそうしている場合ばあいだい8じょう1こう)、武装ぶそう衛生えいせい要員よういん不在ふざいに、衛生えいせい部隊ぶたいとう武装ぶそう部隊ぶたいによって警備けいびされている場合ばあいだい8じょう2こう)、傷病しょうびょうへいよりげた武器ぶき所轄しょかつ機関きかんいまわたされていない場合ばあいだい8じょう3こう)、獣医じゅうい機関きかん人員じんいんとう衛生えいせい施設しせつとう一部分いちぶぶん構成こうせいしないで施設しせつ設置せっちしている場合ばあいだい8じょう4こう)においても、衛生えいせい部隊ぶたい要員よういんとう保護ほごされるものとされる。だい9じょうにおいて、傷病しょうびょうしゃ収容しゅうよう輸送ゆそう治療ちりょう従事じゅうじする人員じんいんのみならず、事務じむ看護かんご宗教しゅうきょう要員よういん捕虜ほりょにはされないとされている。

これは、1949ねんジュネーヴしょ条約じょうやくおよび1977ねんジュネーヴしょ条約じょうやくだいいち追加ついか議定ぎていしょにも、同等どうとう規定きてい継承けいしょうされており、しょ条約じょうやくだい1条約じょうやくだい3しょうおよだい4しょうだいいち追加ついか議定ぎていしょだい8じょうからだい16じょうにかけて衛生えいせい要員よういん保護ほご規定きていされている。

一般いっぱんてき従軍じゅうぐんちゅうは、自衛じえいため武器ぶき、たとえばせいぜい拳銃けんじゅう1ちょう予備よびだん以外いがい必要ひつようかった。また衛生えいせいへいてきがわにも身分みぶんしめすように、おおくの場合ばあいヘルメット赤十字せきじゅうじのマークが(前後ぜんご左右さゆうに)表示ひょうじされており、くわえて“白地しろじ赤十字せきじゅうじあきらりの腕章わんしょうそうしていた。だい世界せかい大戦たいせんドイツ国防こくぼうぐんなどでは、衛生えいせいへいであることを強調きょうちょうするために非常ひじょう目立めだつ“白地しろじ赤十字せきじゅうじあきらゼッケン着用ちゃくようすることさえあった。

しかし、だい世界せかい大戦たいせん後半こうはんになると戦闘せんとうちゅう混乱こんらんとうから、衛生えいせいへいであっても攻撃こうげきけることがはじめた。また衛生えいせいへい高度こうど専門せんもん知識ちしきもとめられるゆえ補充ほじゅうきにくい兵科へいかであり、てきがわ衛生えいせいへいければてきがわ生存せいぞんりつがるため、あやましゃよそおって意図いとてき攻撃こうげきされることもおおかったともつたえられる。

こうした自己じこ防衛ぼうえい必要ひつようせいから、衛生えいせいへいであっても小銃しょうじゅうたん機関きかんじゅう手榴弾しゅりゅうだんなどの武器ぶき携帯けいたい従軍じゅうぐんする事例じれいもある。とはいえ、本来ほんらい任務にんむ傷病しょうびょうへい救護きゅうご治療ちりょうであり、医薬品いやくひん医療いりょう器具きぐ包帯ほうたいなどを大量たいりょう携帯けいたいしなければならず、専用せんようバックパックやポーチなども必要ひつようとなる。そのため、自衛じえい目的もくてき武装ぶそうする必要ひつようがあってもなお、軽量けいりょう拳銃けんじゅう余裕よゆうしか場合ばあいおおい。

自衛隊じえいたい衛生えいせい要員よういん[編集へんしゅう]

赤十字せきじゅうじしめぎあきら

自衛隊じえいたいでは、

ひとし条約じょうやく実施じっし必要ひつような、自衛隊じえいたいにおける赤十字せきじゅうじしめぎあきらおよ衛生えいせい要員よういんとう身分みぶん証明しょうめいしょかんする必要ひつよう事項じこうさだめるため、「赤十字せきじゅうじしめぎあきらおよ衛生えいせい要員よういんとう身分みぶん証明しょうめいしょかんする訓令くんれい」(昭和しょうわ39ねん9がつ8にち防衛庁ぼうえいちょう訓令くんれいだい32ごう/平成へいせい17ねん11月15にち防衛庁ぼうえいちょう訓令くんれいだい77ごう)がさだめられている。

衛生えいせい (陸上りくじょう自衛隊じえいたい)衛生えいせい腕章わんしょう
陸上りくじょうにおける衛生えいせい要員よういん腕章わんしょうだい1条約じょうやくだい40じょうだい1こう規定きていする腕章わんしょう
幕僚ばくりょう長又ながまたはその委任いにんけたものが、陸上りくじょう自衛隊じえいたい海上かいじょう自衛隊じえいたいまた航空こうくう自衛隊じえいたいにおいて傷者しょうしゃしくは病者びょうしゃ捜索そうさく収容しゅうよう輸送ゆそうしくは治療ちりょうまた疾病しっぺい予防よぼうもっぱ従事じゅうじするものとして指定していした隊員たいいんおよ衛生えいせい部隊ぶたいまた衛生えいせい施設しせつとして指定していしたものの管理かんりもっぱ従事じゅうじする隊員たいいんは、自衛隊じえいたいほう昭和しょうわ29ねん法律ほうりつだい165ごうだい6しょう行動こうどうさいしその職務しょくむ従事じゅうじしているときおよびそのための訓練くんれん従事じゅうじしているとき、その勤務きんむ性質せいしつじょう腕章わんしょう着用ちゃくようする必要ひつようがあるときは、どうこう腕章わんしょうをその左腕さわん着用ちゃくようする。
特別とくべつ要員よういん腕章わんしょうだい1条約じょうやくだい41じょうだい1こう規定きていする腕章わんしょう
幕僚ばくりょう長又ながまたはその委任いにんけたもの陸上りくじょう自衛隊じえいたい海上かいじょう自衛隊じえいたいまた航空こうくう自衛隊じえいたいにおいて補助ほじょ衛生えいせいいん補助ほじょ看護かんごいんまた補助ほじょ担架たんかしゅとして傷者しょうしゃおよ病者びょうしゃ収容しゅうよう輸送ゆそうまた治療ちりょうたるために特別とくべつ訓練くんれんけたものとして指定していされた隊員たいいんたいし、それを使用しようさせる必要ひつようしょうじた場合ばあいにおいて、発給はっきゅうし、着用ちゃくようさせる。
海上かいじょうにおける衛生えいせい要員よういんひとしならびに病院びょういんせん衛生えいせい要員よういんおよ乗組のりくみいん腕章わんしょうだい2条約じょうやくだい42じょう規定きていする腕章わんしょう
幕僚ばくりょう長又ながまたはその委任いにんけたものが、病院びょういんせん衛生えいせい要員よういんおよ看護かんごいんならびにその乗組のりくみいんである隊員たいいんならびに隊員たいいんそのだい2条約じょうやくだい13じょう各号かくごうかかげるもの海上かいじょうにあり、かつ、傷者しょうしゃ病者びょうしゃまた難船なんせんしゃであるものの衛生えいせいじょう看護かんご従事じゅうじする衛生えいせい要員よういんおよ看護かんごいんとして指定していした隊員たいいん着用ちゃくようする。
衛生えいせい要員よういんとう特別とくべつ身分みぶん証明しょうめいしょ
陸上りくじょうにおける衛生えいせい要員よういんならびに海上かいじょうにおける衛生えいせい要員よういんひとしおよ病院びょういんせん衛生えいせい要員よういんおよ乗組のりくみいん特別とくべつ身分みぶん証明しょうめいしょ交付こうふける。衛生えいせい要員よういんとうは、自衛隊じえいたいほうだい6しょう行動こうどうさいして、その職務しょくむ従事じゅうじしているときおよびそのための訓練くんれん従事じゅうじしているとき、その勤務きんむ性質せいしつじょう腕章わんしょう着用ちゃくようする必要ひつようがあるときは、身分みぶん証明しょうめいしょ携帯けいたいすることが義務付ぎむづけられている。この身分みぶん証明しょうめいしょには、衛生えいせい要員よういんとう氏名しめい生年月日せいねんがっぴ階級かいきゅう認識にんしき番号ばんごうおよ身体しんたい特徴とくちょうならびに資格しかく記載きさいし、そのもの写真しゃしんならびに署名しょめいおよ指紋しもんされる。この場合ばあいにおいて、資格しかくらんには、医師いし歯科しか医師いしその職務しょくむ名称めいしょう記入きにゅうし、医師いしにあってはさらにそのせんもん科目かもくあきらかにする。

きゅう日本にっぽん陸軍りくぐん衛生えいせいたい[編集へんしゅう]

太平洋戦争たいへいようせんそう当時とうじにアメリカぐん鹵獲ろかくし、情報じょうほう資料しりょう掲載けいさいした日本にっぽんぐん衛生えいせい材料ざいりょう内容ないようぶつ規格きかくされておらず、形状けいじょうがまちまちであると説明せつめいされている。
シンガポールで終戦しゅうせん撮影さつえいされた衛生えいせいへい中央ちゅうおう)。日本にっぽん陸軍りくぐん衛生えいせいへい腕章わんしょう憲兵けんぺい腕章わんしょうのような「うでく」ぶつではなく「うでる」四角よつかどがたぬのであり、被服ひふくけるひじあきらとなる。また、ひじしょう赤十字せきじゅうじ意匠いしょうは「細長ほそなが十字じゅうじ」である

衛生えいせい部員ぶいんは、おおきくたい衛生えいせい部員ぶいん衛生えいせいたい所属しょぞく衛生えいせい部員ぶいん野戦やせん病院びょういん所属しょぞく衛生えいせい部員ぶいんけられる。前者ぜんしゃ部隊ぶたい所属しょぞく後者こうしゃ病院びょういん所属しょぞくだった。両者りょうしゃ入営にゅうえい直後ちょくごから教育きょういく課程かていことなる。「病院びょういんづけ衛生えいせいへい」は陸軍りくぐん病院びょういん教育きょういく入営にゅうえいし、医学いがく講義こうぎと、実地じっち習練しゅうれんとしての病棟びょうとう勤務きんむせられる。すうげつごとの交代こうたい連隊れんたい聯隊れんたい)の医務いむしつ軍医ぐんい助手じょしゅつとめるが、基本きほんてき陸軍りくぐん病院びょういん勤務きんむ終始しゅうしする。それにたいして「たいづけ衛生えいせいへい」は一般いっぱん歩兵ほへい砲兵ほうへい騎兵きへい工兵こうへい輜重しちょうへい航空こうくうへいなかから選抜せんばつされる。入営にゅうえいから3かげつに、師団しだんちょうによるだいいち検閲けんえつおこなわれるが、その直後ちょくご上等じょうとうへい候補者こうほしゃとくぎょうへいじゅう工兵こうへいくつ工兵こうへいぬい工兵こうへい蹄鉄ていてつ工兵こうへいばとへい喇叭らっぱへいとう)とともに「たいづけ衛生えいせいへい」が指名しめいされる。それと同時どうじに「たいづけ衛生えいせいへい」に指名しめいされたもの兵科へいかへいから衛生えいせいへい所属しょぞくわり、たとえば歩兵ほへいであれば襟章えりしょうむねあきら兵科へいかあきら)のいろ兵科へいか緋色ひいろから衛生えいせい深緑しんりょくとなる。

しかし、居住きょじゅう場所ばしょはあいかわらず入営にゅうえい部隊ぶたい内務ないむはんであり、衛生えいせいへい教育きょういく連隊れんたい医務いむしつ陸軍りくぐん病院びょういんおこなわれた。かく連隊れんたいではしゅうに2かい演習えんしゅうがあり、「たいづけ衛生えいせいへい」はかならず繃帯ほうたい嚢をげて参加さんかしなければならなかった。このように「病院びょういんづけ衛生えいせいへい」と「たいづけ衛生えいせいへい」とでは、教育きょういく内容ないよう看護かんご能力のうりょくおおきくことなっていた。そのためか、「たいづけ衛生えいせいへい」は戦闘せんとう経験けいけんのないものたちからはヨーチン蔑称べっしょうされ、外用がいようやくとしてヨーチンを使つかうことしか医療いりょう技術ぎじゅつっていないものとされており、陸軍りくぐんでは「らく任務にんむ」として「いちにヨーチン、ラッパ」とわれていた[3]診断しんだんおよ治療ちりょう軍医ぐんい仕事しごとであり、衛生えいせいへい独断どくだん処置しょちできるのはちいさなキズ、行軍こうぐんちゅうにできるあしのマメ、インキンなど一部いちぶ皮膚ひふびょうくらいなもので、それこそヨーチン、つまり消毒しょうどくざいのヨードチンキで事足ことたりるからであった。しかし、「たいづけ衛生えいせいへい」の重要じゅうよう任務にんむに、戦場せんじょうてきだんたおれた兵士へいしたまうなか後方こうほう後退こうたいさせることがあった。戦地せんちにおいて将兵しょうへい勝手かって後退こうたいすることがゆるされず、戦友せんゆう相互そうごでの応急おうきゅう手当てあてには限度げんどがあった。また、負傷ふしょうした戦友せんゆういて前進ぜんしんすることもあったので、戦闘せんとうちゅう負傷ふしょうした兵士へいし衛生えいせいへいがくると一安心ひとあんしんであった。それゆえ実戦じっせん経験けいけんした兵士へいしたちは「ヨーチン」ではなく「衛生えいせいへい殿どの」と敬意けいいをこめてんでいたとされる。また、「衛生えいせいへい」という呼称こしょう1937ねん昭和しょうわ12ねん2がつ12にちみことのりれいだい13ごう陸軍りくぐんへい等級とうきゅうひょう改正かいせいともなってまれたあたらしい呼称こしょうであり、それ以前いぜんは「看護かんごへい」さらにそれ以前いぜんは「看護かんごそつ」とばれていた。そのために、昭和しょうわ初期しょきごろ衛生えいせいぞくするへいのことを「ごっさん」と愛称あいしょうしていたそうである。

たい衛生えいせい部員ぶいんは、中隊ちゅうたいに2めい衛生えいせいへい配属はいぞくされる。大隊だいたいには原則げんそくとして軍医ぐんい2めいきのえ軍医ぐんいおつ軍医ぐんい)それに衛生えいせい下士官かしかんが1めい配属はいぞくされる。かぶと軍医ぐんい衛生えいせい下士官かしかんとともに、かり包帯ほうたいしょかり繃帯ほうたいしょ)を設置せっちし、おつ軍医ぐんい最前線さいぜんせんめぐって、負傷ふしょうへい火線かせん救護きゅうごおこなう。しかし、ほとんどの場合ばあい軍医ぐんい実際じっさい定員ていいんは1めいでやっとなので、軍医ぐんい火線かせん救護きゅうごおこなうれいはほとんどない。連隊れんたい本部ほんぶには高級こうきゅう軍医ぐんい衛生えいせい下士官かしかん准尉じゅんい曹長そうちょうクラス)が野戦やせん救護きゅうごしょ設置せっちする。

衛生えいせいたいは、師団しだんごとに1たい編成へんせい配属はいぞくされた。車両しゃりょう編成へんせいのものは本部ほんぶ担架たんか中隊ちゅうたいおよび車両しゃりょう中隊ちゅうたいからなり、駄馬だうま編成へんせいのものは本部ほんぶおよび担架たんか中隊ちゅうたいからなった。ようするに3分割ぶんかつ、それぞれ独立どくりつして勤務きんむできた。衛生えいせい隊長たいちょう歩兵ほへいもしくは輜重しちょうへい大佐たいさ中佐ちゅうさであり、その軍医ぐんいちょうとして軍医ぐんい中佐ちゅうさ衛生えいせい業務ぎょうむ指揮しきをとった。その任務にんむ戦闘せんとうさい包帯ほうたいしょ開設かいせつしすみやかに傷者しょうしゃおさむ療、これを後送こうそうする。このほか行軍こうぐんちゅう患者かんじゃ輸送ゆそうし、野戦やせん病院びょういん補助ほじょ勤務きんむをなすなどのふく任務にんむがあった。

その携行けいこうする衛生えいせい材料ざいりょう患者かんじゃしゃ担架たんか衛生えいせいたいたい极、野戦やせん手術しゅじゅつだい野戦やせん滅菌めっきん機器きき手術しゅじゅつとう手術しゅじゅつよう天幕てんまくなどで、そのしょう行李こうり衛生えいせい材料ざいりょうのほか患者かんじゃ被服ひふく毛布もうふ蚊帳かや)、せんよう天幕てんまくを、だい行李こうりに炊具、糧秣りょうまつおさめした。

戦闘せんとうちゅう任務にんむ

  1. 前方ぜんぽう作業さぎょう - 戦線せんせん傷者しょうしゃ捜索そうさくし、必要ひつようであれば救急きゅうきゅう処置しょちほどこし、包帯ほうたいしょ輸送ゆそうしゅとして担架たんか中隊ちゅうたいがこれにふくした。
  2. 包帯ほうたいしょ作業さぎょう - 包帯ほうたいしょ収容しゅうよう治療ちりょう薬剤やくざい発送はっそうかれ、くるましょううまつなぎじょう炊事すいじじょうなどが附属ふぞくした。包帯ほうたいしょでの処置しょち救急きゅうきゅう包帯ほうたい副木ふくぼく装着そうちゃくなど輸送ゆそう程度ていどはつ療をおこない、必要ひつようであれば血管けっかん結紮けっさつ気管きかん切開せっかいそと尿道にょうどう切開せっかいおよび遷延せんえんすべからざる切断せつだんじゅつなどの救急きゅうきゅう手術しゅじゅつをもおこなうとされた。
  3. 後方こうほう作業さぎょう - 後方こうほう作業さぎょう包帯ほうたいしょ開設かいせつし、収容しゅうようした傷者しょうしゃ必要ひつようはつ療をほどこし、本部ほんぶ衛生えいせい部員ぶいんがこれにふくした。後方こうほう作業さぎょうはつ療をえた傷者しょうしゃ包帯ほうたいしょから野戦やせん病院びょういん後送こうそうし、車両しゃりょう中隊ちゅうたいがこれにふくした。

けられる。

野戦やせん病院びょういん1個いっこ師団しだんに3〜4箇程度ていど存在そんざいした。野戦やせん病院びょういんちょうは、軍医ぐんい中佐ちゅうさもしくは軍医ぐんい少佐しょうさである。1個いっこ野戦やせん病院びょういんで100めい程度ていど患者かんじゃ収容しゅうようできたが、自前じまえ兵站へいたん組織そしき輸送ゆそう手段しゅだんをもたないため、機動きどうてき活動かつどう自衛じえい戦闘せんとうもほとんど不可能ふかのうであった。

著名ちょめい経験けいけんしゃ[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]