瘢痕はんこん

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骨盤こつばんちょうこつにおける肥厚ひこうせい瘢痕はんこん
左上ひだりうえうでからかたにかけてけい38箇所かしょのこった予防よぼう接種せっしゅによる瘢痕はんこんかた前部ぜんぶ下部かぶおおきいもの種痘しゅとうあと。9正方形せいほうけいじょうならんだ4くみBCGあと
天然痘てんねんとうによってあばためんとなった塩田しおだ三郎さぶろう(1864ねん撮影さつえい
右肩みぎかた付近ふきん接種せっしゅされた種痘しゅとうあと肥厚ひこうせい瘢痕はんこんとなったもの

瘢痕はんこん(はんこん)は、潰瘍かいよう創傷そうしょう梗塞こうそくによる壊死えしなどによってしょうじた、様々さまざま器官きかん組織そしき欠損けっそんが、肉芽組織にくがそしき形成けいせいて、最終さいしゅうてき緻密ちみつにかわげん線維せんい結合けつごう組織そしきわることで修復しゅうふくされた状態じょうたいきずあとあばた痘痕いも(とうこん)ともいう。英語えいごではscarといい、これはギリシアのἐσχάρᾱ(eskhara、かさぶた)に由来ゆらいする。

皮膚ひふ瘢痕はんこんには、いわゆる傷痕きずあと成熟せいじゅく瘢痕はんこん)から、あかがる異常いじょう瘢痕はんこん肥厚ひこうせい瘢痕はんこん)や、肥厚ひこうせい瘢痕はんこん正常せいじょう皮膚ひふにもひろがっていく瘢痕はんこんケロイド)、さらにきつれたもの(瘢痕はんこんかかわちぢみ)などの状態じょうたいがある。瘢痕はんこん形成けいせい過程かてい瘢痕はんこんあるいは器質きしつぶ。

瘢痕はんこん性質せいしつ[編集へんしゅう]

熱傷ねっしょう創傷そうしょう治癒ちゆでできた瘢痕はんこんは、あぶらせん汗腺かんせんがないので、元々もともと組織そしき正常せいじょう皮膚ひふより機能きのうてきおとる。表面ひょうめんがつるりとして、やや光沢こうたくがある。また、関節かんせつちかくにあり瘢痕はんこんかかわちぢみすれば、運動うんどう障害しょうがいをきたす。また瘢痕はんこん種々しゅじゅ変形へんけい原因げんいんとなる。機能きのうてき異常いじょうがあれば、手術しゅじゅつ適応てきおうになる。

下部かぶほねなどがある頭部とうぶなど、摩擦まさつしやすい四肢しし末梢まっしょう切断せつだんはしなどには、瘢痕はんこん形成けいせいされてすうじゅうねんなど長期間ちょうきかん瘢痕はんこんがん形成けいせい可能かのうせいもある。 皮膚ひふ以外いがい瘢痕はんこん心筋梗塞しんきんこうそく組織そしきがある。どう収縮しゅうしゅくりょく正常せいじょう心筋しんきんよりおとる。

異常いじょう瘢痕はんこん[編集へんしゅう]

コラーゲン異常いじょうさんせいにより、肥厚ひこうせい瘢痕はんこんとケロイドができる。肥厚ひこうせい瘢痕はんこんがったかたまりであり、ケロイドは元々もともと創部そうぶして形成けいせいされたより高度こうど瘢痕はんこんである。肥厚ひこうせい瘢痕はんこん当初とうしょべにまだらがあるが、時期じきがたてば正常せいじょうしょくになる。ケロイドは腫瘍しゅようせいがり放置ほうちしても治癒ちゆ傾向けいこうはない。底部ていぶ胸骨きょうこつがあるぜん胸部きょうぶとか、周辺しゅうへんからきつられるかたとか、ピアスをいれたみみなどにこうはっする。創傷そうしょう治癒ちゆちから関係かんけいで、こうはつ部位ぶいがある。かゆみがある場合ばあいもある。

尋常じんじょうせい痤瘡(ニキビ)のあと瘢痕はんこんになる場合ばあいもある。天然痘てんねんとうあとふかしずんだ凹型の瘢痕はんこんとなる。自覚じかく症状しょうじょうがなければ放置ほうちしてもいいが、患者かんじゃ希望きぼうすれば治療ちりょう対象たいしょうになる。

予防よぼう[編集へんしゅう]

形成けいせい外科げか手術しゅじゅつのち、しばらくテープ圧迫あっぱくするのは瘢痕はんこん形成けいせい予防よぼうするためである。あたらしい瘢痕はんこんには圧迫あっぱくする種々しゅじゅ方法ほうほうで (pressure garments) 瘢痕はんこん形成けいせいおさえる。

治療ちりょう[編集へんしゅう]

保存ほぞんてき治療ちりょうほうとしてはステロイドテープや軟膏なんこうヘパリン類似るいじ物質ぶっしつ軟膏なんこう外用がいよう副腎ふくじん皮質ひしつホルモン局所きょくしょ注射ちゅうしゃトラニラスト内服ないふくシリコンシートなどによる圧迫あっぱく固定こてい電子でんしせん照射しょうしゃがあるが、ステロイドきょくちゅうは、瘢痕はんこん平坦へいたんさせるが、りょうおおいとぎゃくに凹形の萎縮いしゅくつくる。軟膏なんこうやトラニラスト内服ないふく単独たんどくでは充分じゅうぶん効果こうか期待きたいできないため、方法ほうほう併用へいようする。また、電子でんしせん照射しょうしゃ放射線ほうしゃせん被曝ひばく問題もんだいがある。瘢痕はんこんけず治療ちりょうほう (ダーマブレーション) や、レーザー治療ちりょうもあるが専門医せんもんいおこな必要ひつようがある。肥厚ひこうせい瘢痕はんこん場合ばあい手術しゅじゅつおこなわれるが、十分じゅうぶんその瘢痕はんこん再発さいはつ対策たいさく必要ひつようである。ケロイドは手術しゅじゅつすると通常つうじょう増悪ぞうあくする。凹部の瘢痕はんこんコラーゲン注射ちゅうしゃをする治療ちりょう液体えきたい窒素ちっそ使用しようした凍結とうけつ療法りょうほうこころみられる。

システマティックレビュー[編集へんしゅう]

2018ねんレビューではニキビの瘢痕はんこんについて、レーザーや高周波こうしゅうは治療ちりょうなどおおくの研究けんきゅうによって有効ゆうこうせい確認かくにんされているがしつたか証拠しょうこけており、フラクショナルレーザー、フラクショナル高周波こうしゅうはマイクロニードリングはリスクがひくく、通常つうじょう治療ちりょうほう併用へいようされたほう結果けっかくなる[1]。2017ねんのレビューではニキビの瘢痕はんこんたいする電力でんりょく使つかわない手法しゅほうでは、ケミカルピーリングにてトリクロロ酢酸さくさんやく73%の人々ひとびと改善かいぜんしグリコールさんでは25%のひとであり、マイクロニードリングではすべての患者かんじゃは31-62%のひろさで改善かいぜんしており、マイクロダーマブレーション英語えいごばんもっと結果けっかくなく、9.1%のひと良好りょうこう結果けっかであった[2]

2019ねんのレビューは、ニキビによる瘢痕はんこんたいしてマイクロニードリング血小板けっしょうばん血漿けっしょう (PRP)を使つかった研究けんきゅう4けん発見はっけんし、利用りよう可能かのう証拠しょうこかぎられているが効果こうかてきそうだと結論けつろんし、またさらなる研究けんきゅう必要ひつようであるとした[3]。90めいランダム比較ひかく試験しけん (RCT) でマイクロニードリング単独たんどくよりもPRP併用へいようほう有効ゆうこうであった[4]。50にんはんかお比較ひかく試験しけんおな結果けっか[5]。27めいはんかお比較ひかくで15%濃度のうどビタミンC併用へいようよりもPRP併用へいよう有効ゆうこうであった[6]。24めいのRCTはんかお比較ひかくでPRPの併用へいようよりも15%濃度のうどのトリクロロ酢酸さくさん併用へいようのほうが有効ゆうこうであった[7]。2017ねんのレビューは重複じゅうふくする2研究けんきゅうと、2011ねんはんかお比較ひかく試験しけん発見はっけんしており、比較ひかくした治療ちりょうほう結果けっか最初さいしょげた試験しけん (Ibrahim, 2017) とおな[8]

2017ねんのレビューで、熱傷ねっしょうによる肥厚ひこうせい瘢痕はんこんではレーザー治療ちりょう有効ゆうこうせい判断はんだんするには、ランダム比較ひかく試験しけん必要ひつようである[9]。2018ねんのレビューで熱傷ねっしょうによる肥厚ひこうせい瘢痕はんこんへのマッサージは、あつみや柔軟じゅうなんせいいたみ、かゆみなどを減少げんしょうさせる限定げんていてき証拠しょうこがあるが、証拠しょうこしつひく厳格げんかく試験しけん必要ひつようである[10]

研究けんきゅう
おなじん肥厚ひこうせい瘢痕はんこん半分はんぶんをシリコンゲル(ケロイドを圧迫あっぱくする)のみかマイクロニードリングのみ、あるいはその併用へいよう治療ちりょうにランダムであてて、それぞれ47%、52%、63-68%の改善かいぜんしめし、また安全あんぜんであることが確認かくにんされた[11]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Bhargava S, Cunha PR, Lee J, Kroumpouzos G (August 2018). “Acne Scarring Management: Systematic Review and Evaluation of the Evidence”. Am J Clin Dermatol (4): 459–477. doi:10.1007/s40257-018-0358-5. PMID 29744784. 
  2. ^ Kravvas G, Al-Niaimi F (2017). “A systematic review of treatments for acne scarring. Part 1: Non-energy-based techniques”. Scars Burn Heal: 2059513117695312. doi:10.1177/2059513117695312. PMC 5965325. PMID 29799567. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5965325/. 
  3. ^ Schoenberg E、O'Connor M、Wang JV et al (2019-5). “Microneedling and PRP for acne scars: A new tool in our arsenal”. Journal of cosmetic dermatology. doi:10.1111/jocd.12988. PMID 31070298. 
  4. ^ Ibrahim ZA、El-Ashmawy AA、Shora OA (2017-9). “Therapeutic effect of microneedling and autologous platelet-rich plasma in the treatment of atrophic scars: A randomized study”. Journal of cosmetic dermatology 16 (3): 388–399. doi:10.1111/jocd.12356. PMID 28504480. 
  5. ^ Asif M, Kanodia S, Singh K (2016-12). “Combined autologous platelet-rich plasma with microneedling verses microneedling with distilled water in the treatment of atrophic acne scars: a concurrent split-face study”. Journal of cosmetic dermatology 15 (4): 434–443. doi:10.1111/jocd.12207. PMID 26748836. 
  6. ^ Chawla S (2014). “Split Face Comparative Study of Microneedling with PRP Versus Microneedling with Vitamin C in Treating Atrophic Post Acne Scars”. Journal of cutaneous and aesthetic surgery 7 (4): 209–212. doi:10.4103/0974-2077.150742. PMC 4338464. PMID 25722599. https://doi.org/10.4103/0974-2077.150742. 
  7. ^ El-Domyati M, Abdel-Wahab H, Hossam A (2018-2). “Microneedling combined with platelet-rich plasma or trichloroacetic acid peeling for management of acne scarring: A split-face clinical and histologic comparison”. Journal of cosmetic dermatology 17 (1): 73–83. doi:10.1111/jocd.12459. PMID 29226630. 
  8. ^ Peter W. Hashim, Zachary Levy et al (2017-4). “Microneedling therapy with and without platelet-rich plasma”. Cutis 99 (4): 239–242. PMID 28492598. http://www.mdedge.com/cutis/article/134867/aesthetic-dermatology. 
  9. ^ Zuccaro J, Ziolkowski N, Fish J (2017-10). “A Systematic Review of the Effectiveness of Laser Therapy for Hypertrophic Burn Scars”. Clin Plast Surg (4): 767–779. doi:10.1016/j.cps.2017.05.008. PMID 28888302. 
  10. ^ Ault P, Plaza A, Paratz J (2018-2). “Scar massage for hypertrophic burns scarring-A systematic review”. Burns (1): 24–38. doi:10.1016/j.burns.2017.05.006. PMID 28669442. 
  11. ^ Fabbrocini G, Marasca C, Ammad S, et al. (September 2016). “Assessment of the Combined Efficacy of Needling and the Use of Silicone Gel in the Treatment of C-Section and Other Surgical Hypertrophic Scars and Keloids”. Adv Skin Wound Care (9): 408–11. doi:10.1097/01.ASW.0000490028.37994.14. PMID 27538108. 

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]