夏井なつい睦あつし

なつい まこと 夏井なつい 睦あつし
生誕せいたん	(1957-05-04) 1957年ねん5月4日にち（67歳さい） 日本にっぽん 秋田あきた県けん
出身しゅっしん校こう	東北大学とうほくだいがく
職業しょくぎょう	医師いし
著名ちょめいな実績じっせき	湿潤しつじゅん療法りょうほうの普及ふきゅう
代表だいひょう作さく	『傷きずはぜったい消毒しょうどくするな』『炭水化物たんすいかぶつは人類じんるいを滅ほろぼす』
公式こうしきサイト	新あたらしい創傷そうしょう治療ちりょう

夏井なつい 睦あつし（なつい まこと、1957年ねん5月4日にち - ）は、日本にっぽんの医師いしである。専せん門もんは形成けいせい外科げか。「創傷そうしょう・熱傷ねっしょうの湿潤しつじゅん療法りょうほう」を提唱ていしょうしており、2001年ねんより開設かいせつしたホームページや、著作ちょさく、講演こうえん会かいなどで普及ふきゅうに努つとめている。東京とうきょう、なついキズとやけどのクリニック院長いんちょう。白色はくしょくワセリンを塗ぬって覆おおうことで、痛いたみも少すくなく、早はやく治なおるという方法ほうほうである。外科げかでの手術しゅじゅつの研修けんしゅうを経へて形成けいせい外科げか医いとなり湿潤しつじゅん療法りょうほうに出会であった。子供こどもの頃ころより、なおピアノを嗜たしなんでおり、音楽家おんがくかのホロヴィッツを神かみとしている。またコンピュータと情報じょうほう共有きょうゆうの思想しそうとの相乗そうじょう作用さようを起おこし、湿潤しつじゅん療法りょうほうや貴重きちょうな楽譜がくふの普及ふきゅうにつながった。

2009年ねんの新書しんしょ『傷きずはぜったい消毒しょうどくするな』は、Amazon.co.jpの新書しんしょ文庫ぶんこ部門ぶもんでも8月がつ25日にち付づけで第だい3位い。江部えべ康二こうじを師匠ししょうとして、2011年ねんより実践じっせんしている糖とう質しつ制限せいげんについての思想しそうに関かんする著作ちょさくも、2014年ねん5月がつの新書しんしょ・ノンフィクション週間しゅうかんランキングの3位いとなった。

ピアノにのめりこんだ少年しょうねん時代じだい

1957年ねん、秋田あきた県けんにて、数学すうがく教師きょうしの父ちちと、国語こくご教師きょうしの母ははとの間あいだに長男ちょうなんとして生誕せいたんする。

7歳さいよりピアノを習ならい、小学生しょうがくせいの頃ころにはショパンの「幻想げんそう即興そっきょう曲きょく」を弾ひくようになった。中学ちゅうがく2年生ねんせいのある夜よる、ラジオからウラディミール・ホロヴィッツの奏かなでる「星条旗せいじょうきよ永遠えいえんなれ」が流ながれ出だし、その技巧ぎこうと繊細せんさいな感覚かんかくに神かみの啓示けいじだと感かんじた。衝撃しょうげきが走はしったのである。後のちに夏井なついは「その時とき、ホロヴィッツは私わたしの神かみとなった」と記しるしている。高校生こうこうせいまで毎日まいにち3時じ間あいだ練習れんしゅうし音大おんだい生せいが弾ひくような曲きょくにも手てを伸のばしていた。同時どうじに、様々さまざまな曲きょくを弾ひきたいという自己じこ洞察どうさつによって、もう少すこし狭せまく曲きょくの練習れんしゅうを追求ついきゅうしていく音大おんだいには向むいていないのではという自分じぶんの適性てきせいにも気きづいた。成績せいせきが良よかったので医者いしゃとなったという。しかし、高校こうこう2年生ねんせいとなりピアノの先生せんせいに進路しんろを伝つたえたところ、アマチュアだからと手てを抜ぬいて曲きょくと向むかい合あってほしくはないと、みっちり鍛きたえられ、物事ものごとに取とり組くむ姿勢しせいを教おしえ込こまれた。

医師いしとして

1984年ねん、東北大学とうほくだいがく医学部いがくぶを卒業そつぎょうする。当時とうじの通例つうれいによって市中しちゅう病院びょういんの外科げかで研修けんしゅうし、手術しゅじゅつや術後じゅつご処置しょちを学まなんだ。その後ご、東北大学とうほくだいがく形成けいせい外科げかへ行いったが、傷きずを濡ぬらす・濡ぬらさないという点てんで外科げかの常識じょうしきが形成けいせい外科げかの非常識ひじょうしきであったという事態じたいに出会であった。形成けいせい外科げかの選択せんたくに深ふかい考かんがえはなかったが、怪我けが、やけどから手術しゅじゅつまで包括ほうかつ的てきに扱あつかえるようになった。

1996年ねんのこと。褥しとね瘡かさ（じょくそう、床とこずれなど）の治療ちりょうのために若わかい医師いしが、『ドレッシング』という著書ちょしょを手てに、最新さいしんの方法ほうほうであるドレッシング材ざい（創傷そうしょう被覆ひふく材ざい）による湿潤しつじゅん環境かんきょうを使つかった治療ちりょうを行おこないたいと申もうし出でた。その研修けんしゅう医いによる処置しょちの経過けいかを見みていたが、見違みちがえるような改善かいぜんではなかった。止血しけつ能力のうりょくのあるアルギン酸あるぎんさん塩しおのサンプルももらっていた。そこで夏井なついは、褥しとね瘡かさではなく怪我けがをした体力たいりょくのある人ひとにて実践じっせんすると、痛いたみもなく、早はやく治なおり、傷跡きずあとも残のこりにくいという結果けっかが得えられた。夏井なついは『ドレッシング』を読よみ学まなび直なおし、消毒しょうどくが無意味むいみだとも理論りろん的てきに書かかれていた。「褥しとね創そう」に対たいする「開放かいほう性せい湿潤しつじゅん療法りょうほう」は、内科ないか医いである鳥谷部とやべ俊一しゅんいちにより、ほぼ同どう時期じきに考案こうあんされた。夏井なついは日本にっぽん形成けいせい外科げか学会がっかいの専門医せんもんいの認定にんてい試験しけん問題もんだい作成さくせい委員いいん会かいを6年ねん務つとめ、火傷かしょうの知識ちしきは十分じゅうぶんであるが、その従来じゅうらいの知識ちしきが通用つうようしない新あたらしい治療ちりょう法ほうであった。

1984年ねんよりコンピューターを手てに入いれていた夏井なついは、1996年ねんより「超絶ちょうぜつ技巧ぎこう的てきピアノ編曲へんきょくの世界せかい 体育たいいく会かい系けいピアニズムの系譜けいふ」というホームページを作つくり、演奏えんそう会かい用ようパラフレーズの作品さくひんを解説かいせつするというマニアックなものであった。ホロヴィッツの編曲へんきょくした作品さくひんを楽譜がくふにするというプロジェクトを開始かいしし、これを通つうじて「星条旗せいじょうきよ永遠えいえんなれ」の楽譜がくふも手てに入いれた。所有しょゆうする楽譜がくふの一覧いちらんを公開こうかいし欲ほっする音楽家おんがくかに無料むりょうで送おくり、するとお礼れいとして貴重きちょうな楽譜がくふが返かえされということを繰くり返かえし、コレクションは増加ぞうかしていった。そこには「私蔵しぞうは死蔵しぞう」である「共有きょうゆうしよう」という思想しそうが働はたらいていた。

地方ちほうの学会がっかいで湿潤しつじゅん療法りょうほうについて発表はっぴょうするが、強つよい手てごたえは感かんじなかったため、その音楽おんがくサイトのエッセイに「傷きずは乾かわかしてはいけない」と書かくようになり、2001年ねんにはホームページ「新あたらしい創傷そうしょう治療ちりょう」を立たち上あげることになった。傷きずは消毒しょうどくしない、乾かわかしてはいけないというのは、従来じゅうらいの方法ほうほうの全ぜん否定ひていであり、そして当時とうじの状況じょうきょうでは、従来じゅうらいの方法ほうほうはあまりに多勢たぜいなため、ホームページを開設かいせつし賛同さんどう者しゃを募つのった。失敗しっぱいも含ふくめて全ぜんノウハウの公開こうかいである。普遍ふへん的てき事実じじつから理論りろんを構築こうちくし、実際じっさいの医療いりょう行為こういが正ただしいのか思考しこう実験じっけんするというが自身じしんのスタイルだといい、これは自身じしんの主張しゅちょうを文献ぶんけんによって裏付うらづけるという医学いがく界かいの主おもな手法しゅほうではないが、少数しょうすう派はであったためのそのような戦略せんりゃくを選えらんだ。自説じせつを裏付うらづける論文ろんぶんがなくても、医学いがくの上位じょういの学問がくもんである生物せいぶつ学がくから説明せつめいするということである。しかし、それほど時ときも経へず、2003年ねん5月がつに開催かいさいされた日本にっぽん皮膚ひふ科か学会がっかいでは治療ちりょう経過けいかを発表はっぴょうし、2003年ねん7月がつには医学いがく書しょの出版しゅっぱん社しゃである医学書院いがくしょいんから初はつの著作ちょさく『これからの創傷そうしょう治療ちりょう』を出版しゅっぱんすることになる。

権威けんいによる思考しこう放棄ほうきをしないことを信条しんじょうとしている。

従来じゅうらいからあった湿潤しつじゅん療法りょうほうの基本きほん概念がいねんを発展はってんさせ理論りろん構築こうちくし、実じつ臨床りんしょうに応用おうようし普及ふきゅうさせた。創傷そうしょう被覆ひふく材ざいは床とこずれでは使用しよう法ほうはある程度ていど確立かくりつされていたため、床とこずれの治療ちりょう用ようとしてしか認識にんしきされておらず、メーカーも傷きずに使つかった例れいがないといい、患者かんじゃの反応はんのうを見みながら治療ちりょう法ほうを確立かくりつしていった。治療ちりょう法ほうの確立かくりつまでに10年ねんかかったという。また、いくつかの企業きぎょうから、被覆ひふく材ざいの製品せいひん化かの提案ていあんが持もち掛かけられ、実際じっさいの治療ちりょうを見学けんがくしながら製品せいひん化かされた。

2009年ねんに新書しんしょの『傷きずはぜったい消毒しょうどくするな』を出版しゅっぱんする。序文じょぶんに書かかれているように、後半こうはん部分ぶぶんにてパラダイムシフトの概念がいねんを説明せつめいするなど、思想しそう的てきな側面そくめんも含ふくんでいる。Amazon.co.jpの新書しんしょ文庫ぶんこ部門ぶもんでも8月がつ25日にち付づけで第だい3位いであった

湿潤しつじゅん療法りょうほうを携たずさえて診療しんりょうの拠点きょてんは、秋田あきた県けんから、山形やまがた県けん、長野ながの県けんへと移うつっていき、この長野ながのでは全国ぜんこくから患者かんじゃも来くるようになったが交通こうつうアクセスがよくなかったため茨城いばらき、東京とうきょうへと拠点きょてんを移うつし、2012年ねん4月がつより東京とうきょうの練馬ねりま光ひかりが丘おか病院びょういんの傷きずの治療ちりょうセンター科か長ちょうとなった。2017年ねん60歳さいにして、ある外科げか医いとの出会であいをきっかけに東京とうきょうでの開業かいぎょうへと至いたった。

2011年ねんより、医師いしの江部えべ康二こうじが提唱ていしょうする糖とう質しつ制限せいげんも自みずからの身体しんたいを使つかって実験じっけん・実証じっしょうしている。江部えべはインターネットで知しった湿潤しつじゅん療法りょうほうについて夏井なついの名なを確認かくにんせずに実践じっせんしており、後のちに2011年ねん1月がつ、夏井なついに自身じしんの病院びょういんでの講演こうえんを依頼いらいし招まねくことになる。その際さい、大だい歓迎かんげいし長時間ちょうじかんの宴会えんかいを行おこなった。9月になり、日経にっけいメディカルオンラインの記事きじに江部えべの名なを発見はっけんした夏井なついは、講演こうえんの際さいに贈呈ぞうていされた江部えべの著書ちょしょを読よみ、メタボをどうにかしたいと考かんがえていたため実践じっせんし、11月には自身じしんのホームページにて取とり上あげ、連日れんじつのように話題わだいにするようになった。。

こうして2014年ねんには自身じしんの思想しそうをまとめた『炭水化物たんすいかぶつが人類じんるいを滅ほろぼす 糖とう質しつ制限せいげんからみた生命せいめいの科学かがく』を出版しゅっぱんする。この著作ちょさくは、様々さまざまな地域ちいきの週間しゅうかんランキングに名なが載のるようになった。『東京とうきょう新聞しんぶん』に掲載けいさいされた2014年ねん5月がつ13日にち付づけのトーハン調しらべでは新書しんしょ・ノンフィクションの第だい3位いであった。

後輩こうはいには患者かんじゃを泣なかせたらダメだと伝つたえ、子供こどもが笑わらって帰かえれるクリニックを心こころがけている。子供こどもと話はなすのが好すきで、クリニックにはおもちゃもあふれている。

開発かいはつに関与かんよした創傷そうしょう被覆ひふく材ざい

• 「プラスモイストW」・「プラスモイストV」
• 「プラスモイストP」
• 「プラスモイストTOP」
• 「プラスモイストDC」・「プラスモイストDCR」
• 「ズイコウパッド」

など。

略歴りゃくれき

• 1984年ねん3月がつ 東北大学とうほくだいがく医学部いがくぶ卒業そつぎょう
• 1992年ねん 形成けいせい外科げか専門医せんもんい 取得しゅとく（後のちに更新こうしんを中止ちゅうしし放棄ほうき）
• 2001年ねん10月がつ インターネット・サイト「新あたらしい創傷そうしょう治療ちりょう」を開設かいせつ
• 2003年ねん4月がつ 特定とくてい医療いりょう法人ほうじん慈泉会じせんかい 相澤あいざわ病院びょういん 傷きずの治療ちりょうセンター長ちょう
• 2007年ねん7月がつ 石岡いしおか第だい一いち病院びょういん 傷きずの治療ちりょうセンター長ちょう
• 2012年ねん4月がつ 練馬ねりま光ひかりが丘おか病院びょういん 傷きずの治療ちりょうセンター科か長ちょう
• 2017年ねん10月がつ なついキズとやけどのクリニック院長いんちょう

著書ちょしょ

医学いがく書しょ

• 『これからの創傷そうしょう治療ちりょう』医学書院いがくしょいん、2003年ねん7月がつ、ISBN 978-4260122535
• 『創傷そうしょう治療ちりょうの常識じょうしき非常識ひじょうしき―〈消毒しょうどくとガーゼ〉撲滅ぼくめつ宣言せんげん』三さん輪りん書店しょてん、2003年ねん12月、ISBN 978-4895902021
• 『創傷そうしょう治療ちりょうの常識じょうしき非常識ひじょうしき〈2〉熱傷ねっしょうと創そう感染かんせん』三さん輪りん書店しょてん、2006年ねん1月がつ、ISBN 978-4895902410
• 『ドクター夏井なついの外傷がいしょう治療ちりょう「裏うら」マニュアル―すぐに役立やくだつHints&Tips』三さん輪りん書店しょてん、2007年ねん5月がつ、 ISBN 978-4895902762
• 『ドクター夏井なついの熱傷ねっしょう治療ちりょう裏うらマニュアル』三さん輪りん書店しょてん、2011年ねん3月がつ、ISBN 978-4895903783
• 『創傷そうしょう治療ちりょうハンドブック』三さん輪りん書店しょてん、2021年ねん3月がつ、ISBN 978-4895907132

一般いっぱん書しょ

• 『さらば消毒しょうどくとガーゼ 「うるおい治療ちりょう」が傷きずを治なおす』春秋しゅんじゅう社しゃ、2005年ねん12月、ISBN 978-4393716175
• 『キズ・ヤケドは消毒しょうどくしてはいけない―痛いたくない!早はやく治なおる!「うるおい治療ちりょう」のすすめ』主婦しゅふの友とも、2008年ねん1月がつ、ISBN 978-4072562253
• 『傷きずはぜったい消毒しょうどくするな 生態せいたい系けいとしての皮膚ひふの科学かがく』光文社こうぶんしゃ新書しんしょ、2009年ねん6月がつ、ISBN 978-4334035136
• 江部えべ康二こうじと共著きょうちょ『医療いりょうの巨大きょだい転換てんかん（パラダイム・シフト）を加速かそくする』東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ、2013年ねん8月がつ、ISBN 978-4492045060
• 『炭水化物たんすいかぶつが人類じんるいを滅ほろぼす 糖とう質しつ制限せいげんからみた生命せいめいの科学かがく』光文社こうぶんしゃ新書しんしょ、2013年ねん10月がつ、ISBN 978-4334037666
• 『炭水化物たんすいかぶつが人類じんるいを滅ほろぼす【最終さいしゅう解答かいとう編へん】 植物しょくぶつvs.ヒトの全ぜん人類じんるい史し』光文社こうぶんしゃ新書しんしょ、2017年ねん10月がつ、ISBN 978-4334043179
• 『患者かんじゃよ、医者いしゃから逃にげろ その手術しゅじゅつ、本当ほんとうに必要ひつようですか?』光文社こうぶんしゃ新書しんしょ、2019年ねん10月がつ、ISBN 978-4334044381

外部がいぶリンク

• 新あたらしい創傷そうしょう治療ちりょう　「消毒しょうどくとガーゼ」の撲滅ぼくめつを目指めざして 公式こうしきサイト - 湿潤しつじゅん治療ちりょうの療法りょうほう、療例、等ひとし。
• なついキズとやけどのクリニック