RS3PE

RS3PE（アールエススリーピーイー、Remitting Seronegative Symmetrical Synovitis with Pitting Edema）は、自己じこ免疫めんえき性せいの機き序じょを持もつ関節かんせつ炎えん疾患しっかんの一ひとつである。

病名びょうめいの確かくたる日本語にほんご訳やくはないが、「圧あつ痕こん性せい浮腫ふしゅを伴ともなう血清けっせい反応はんのう陰性いんせいの寛解かんかい性せい対称たいしょう性せい滑すべり膜まく炎えん」という意味いみ。「RS3PE症候群しょうこうぐん」とも呼よばれている。

歴史れきし

1985年ねんに、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくシカゴ大学だいがく・ウィスコンシン大学だいがく医学部いがくぶ教授きょうじゅのダニエル・J・マカーティ (Daniel J. McCarty) が、米国べいこく医師いし会かい雑誌ざっし (JAMA) に8人にんの男性だんせい高齢こうれい患者かんじゃと2人ふたりの女性じょせい高齢こうれい患者かんじゃの症例しょうれい報告ほうこくとして発表はっぴょうした (JAMA 1985; 254: 2763-2767)。彼かれらはこの症例しょうれいを表あらわすのに「RS3PE」と略称りゃくしょうされる表現ひょうげんを用もちいた^[1]。

1999年ねんに、イタリアのプラート保健所ほけんじょ (Azienda USL 4, Prato) のファブリツィオ・カンティーニ (Fabrizio Cantini) らによって、腫瘍しゅよう随伴ずいはん症候群しょうこうぐんとして出現しゅつげんすることが報告ほうこくされた (Clin. Exp. Rheumatol., 17: 741-744, 1999)。

2005年ねんに、長崎大学ながさきだいがく医学部いがくぶの有馬ありま和彦かずひこと折口おりぐち智樹ともきらによって、血管けっかん内皮ないひ細胞さいぼう増殖ぞうしょく因子いんし (VEGF) 高値たかねであることと、2012年ねんにマトリックスメタロプロテアーゼMMP-3高値たかねを示しめすことが報告ほうこくされた（臨床りんしょうリウマチ、24： 206-214, 2012）。

臨床りんしょう像ぞう

文字通もじどおり、寛解かんかい性せい、対称たいしょう性せいで、リウマチ因子いんしや抗こう核かく抗体こうたいは陰性いんせいであり、関節かんせつ痛つう部位ぶいに強つよい圧あつ痕こん性せい浮腫ふしゅを伴ともなう疾患しっかんで、患者かんじゃは通常つうじょう高齢こうれいである。急性きゅうせいの発症はっしょう経過けいかは特徴とくちょう的てきで、短期間たんきかんで完成かんせいする多発たはつ関節かんせつ炎えん症状しょうじょうはしばしば診断しんだんの糸口いとぐちとなる。治療ちりょうとしては、少量しょうりょうの経口けいこうステロイド投与とうよなどがおこなわれる。それらの臨床りんしょう像ぞうや治療ちりょう経過けいかから、リウマチ性せい多発たはつ筋すじ痛つう症しょうの一いち症状しょうじょうではないかとの考かんがえ方かたもある^[2]。一部いちぶの患者かんじゃではその後ご関節かんせつリウマチへと進行しんこうする。時ときに腫瘍しゅよう随伴ずいはん症候群しょうこうぐんとして出現しゅつげんすることがあり、全身ぜんしん検索けんさくを行おこない悪性あくせい腫瘍しゅようの存在そんざいを除外じょがいする必要ひつようがある。

高齢こうれい発症はっしょう、急性きゅうせい発症はっしょうが多おおい
両側りょうがわ性せいで対称たいしょう性せいの関節かんせつ炎えん・滑すべり膜まく炎えん
圧あつ痕こん性せい浮腫ふしゅを伴ともなう手て背せ・足あし背せの腫脹しゅちょう
リウマチ因子いんしおよび抗こう核かく抗体こうたい陰性いんせい
悪性あくせい腫瘍しゅようでは、前立腺ぜんりつせん癌がん、胃癌いがん、大腸だいちょう癌がん、乳癌にゅうがんの合併がっぺいが比較的ひかくてき多おおい。

検査けんさ

CRP, ESR：ともに高値たかねを示しめす。
リウマトイド因子いんし：陰性いんせい
手てのX線せん写真しゃしん：骨ほねびらんがない^[3]。

治療ちりょう

通常つうじょう、プレドニゾロン10-15 mg/日にちで治療ちりょうを開始かいしにて比較的ひかくてき反応はんのう良好りょうこうの報告ほうこくが多おおい。巨きょ細胞さいぼう性せい動脈どうみゃく炎えん合併がっぺい例れいでは20 mg/日にち以上いじょうで治療ちりょうを開始かいしすることが多おおい。悪性あくせい腫瘍しゅよう合併がっぺいの症例しょうれいでは、悪性あくせい腫瘍しゅようの治療ちりょうによって症状しょうじょう改善かいぜんの報告ほうこくが多おおい。

脚注きゃくちゅう

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

^ McCarty DJ, O'Duffy JD, Pearson L, Hunter JB (11 1985). “Remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema. RS3PE syndrome”. JAMA 254 (19): 2763–7. doi:10.1001/jama.254.19.2763. PMID 4057484.
^ 日本内科学会にほんないかがっかい雑誌ざっし 99: 2472-2477, 2010.
^ 日本にっぽん医事いじ新報しんぽう 2014 (4685): 64-66.

外部がいぶリンク

大阪大学おおさかだいがく免疫めんえきアレルギー内科ないかのRS3PEのページ

[pmid4057484-1] McCarty DJ, O'Duffy JD, Pearson L, Hunter JB (11 1985). “Remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema. RS3PE syndrome”. JAMA 254 (19): 2763–7. doi:10.1001/jama.254.19.2763. PMID 4057484.

[2] 日本内科学会にほんないかがっかい雑誌ざっし 99: 2472-2477, 2010.

[3] 日本にっぽん医事いじ新報しんぽう 2014 (4685): 64-66.

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