詐いつわり病びょう

詐いつわり病びょう
概要がいよう
診療しんりょう科か	精神せいしん医学いがく, 心理しんり学がく
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
ICD-10	Z76.5
ICD-9-CM	V65.2
eMedicine	article/293206
MeSH	D008306

詐いつわり病びょう（さびょう、Malingering）とは、経済けいざい的てきまたは社会しゃかい的てきな利益りえきの享受きょうじゅなどを目的もくてきとして病気びょうきであるかのように偽いつわる詐偽さぎ行為こういである。 類義語るいぎごに仮病けびょう（けびょう）があるが、詐いつわり病びょうとはニュアンスが異ことなる。仮病けびょうは、欠席けっせきの理由りゆう付づけなど、その場ばしのぎに行おこなうものをいうことが多おおい。これに対たいして詐いつわり病びょうは、実利じつりを目的もくてきとするものをいうことが多おおく、どちらかというと虚偽きょぎ性せい障害しょうがい（きょぎせいしょうがい）に近ちかい。また、類似るいじの症例しょうれいとしてミュンヒハウゼン症候群しょうこうぐんがあるが、これは周囲しゅういの関心かんしんを引ひくために行おこなわれるという点てんで詐いつわり病びょうや仮病けびょうとは異ことなる。 DSM-5には「詐いつわり病びょうは個人こじん的てきな利益りえき（金銭きんせん、休暇きゅうか）などを得えるために意図いと的てきに病状びょうじょうを訴うったえるという点てんで作為さくい症しょうとは異ことなる。対照たいしょう的てきに、作為さくい症しょうの診断しんだんには明あきらかな報酬ほうしゅうの欠如けつじょが必要ひつようである。」と書かかれている。

詐いつわり病びょう・仮病けびょうという名称めいしょうは、いずれも偽いつわる行為こういをさす。

また人ひとが危機ききに面めんした時ときに心しん因いん性せいの病気びょうきを発はっし、危機ききを回避かいひしようとする自己じこ防衛ぼうえいが働はたらく、半はん仮病けびょうというものがある。

詐いつわり病びょうの目的もくてき

経済けいざい的てきな詐欺さぎ行為こうい

詐いつわり病びょうは保険ほけん金きんや社会しゃかい保障ほしょうなどを不正ふせい受給じゅきゅうする詐欺さぎ行為こういのために行おこなわれる。 また、完全かんぜんに嘘うそではないが怪我けがによる苦痛くつうや不利益ふりえきを過剰かじょう申告しんこくして保険ほけん金きんや補償ほしょうなどを余分よぶんに引ひき出だす行為こういも行おこなわれる。

病気びょうき療養りょうよう中ちゅうでも給与きゅうよの一部いちぶが支払しはらわれたり、共済きょうさい組合くみあいなどから給与きゅうよ相当そうとう分ぶんが支払しはらわれることを悪用あくようして、診断しんだん書しょなどを偽造ぎぞうして傷病しょうびょう手当てあてを得える行為こういがある。 公務員こうむいんがこれを利用りようして長期ちょうき欠勤けっきんのまま給与きゅうよを不正ふせい受給じゅきゅうし続つづけたことが問題もんだい化かしたことがある。

病気びょうきによる就労しゅうろう不能ふのうを理由りゆうとして生活せいかつ保護ほごを不正ふせい受給じゅきゅうする場合ばあいもある。 しかし、近年きんねんでは引びきこもりは一種いっしゅの精神病せいしんびょうや適応てきおう障害しょうがいであり、正当せいとうな病気びょうきによる就労しゅうろう不能ふのうであると主張しゅちょうする意見いけんもあり、これは詐欺さぎ行為こういとは言いえないといわれている。 実際じっさいに生活せいかつ保護ほごを受給じゅきゅうしている引びきこもりも存在そんざいする。

社会しゃかい的てきな義務ぎむの免除めんじょ

韓国かんこくなど兵役へいえき義務ぎむのある国くにでは、その免除めんじょのために詐いつわり病びょうを用もちいる場合ばあいもある。また、負まけが込こんで休場きゅうじょうする横綱よこづな、会談かいだんを急遽きゅうきょ欠席けっせきする要人ようじんなど「病気びょうきや怪我けがを理由りゆうにするのが慣習かんしゅうでありファンや会談かいだん相手あいてに対たいする礼儀れいぎ」というようなこともある。

犯罪はんざい行為こういの隠蔽いんぺいや減免げんめん

心神喪失しんしんそうしつ状態じょうたいなど精神せいしん障害しょうがい者しゃを装よそおう事例じれいは数多かずおおい。 また、障害しょうがい者しゃを装よそおって犯罪はんざいの実行じっこう能力のうりょくの欠如けつじょを示しめすことで容疑ようぎ者しゃから除外じょがいされるよう誤認ごにんさせる方法ほうほうもある。

詐いつわり病びょうに使つかわれる病気びょうき

• 主おもに患者かんじゃの自己じこ申告しんこくのみで症状しょうじょうが確定かくていするような病気びょうきが用もちいる場合ばあい。
  • 頸椎捻挫ねんざ（ムチウチ症しょう）
  • 弱視じゃくし・失明しつめい
  • 難聴なんちょう・失しつ聴
  • 精神病せいしんびょう（統合とうごう失調しっちょう症しょうなど）
• 尿にょう検査けんさなどで尿にょうに故意こいに薬品やくひんや異物いぶつを混入こんにゅうさせることで検査けんさ結果けっかを誤認ごにんさせる。
  • 韓国かんこくでは兵役へいえき逃のがれのために腎臓じんぞう疾患しっかんを偽造ぎぞうする薬品やくひんが闇取引やみとりひきされ社会しゃかい問題もんだい化かしている。
  • 糖分とうぶんを混入こんにゅうさせて糖尿とうにょう病びょうであるかのように検査けんさ結果けっかを誤認ごにんさせる。
• 極端きょくたんな量りょうの薬品やくひんや塩分えんぶん、糖分とうぶんなどを摂取せっしゅして血液けつえき検査けんさの検査けんさ結果けっかを誤認ごにんさせる。

逆ぎゃくに、線維せんい筋すじ痛つう症しょう、慢性まんせい疲労ひろう症候群しょうこうぐんなど、検査けんさで異常いじょうを見みつけることができない病気びょうきにかかっている患者かんじゃが詐いつわり病びょう扱あつかいされ、精神せいしん的てきに追おい込こまれるケースも存在そんざいする。

• 鼻血はなぢ

放射線ほうしゃせんによる健康けんこう被害ひがいを演出えんしゅつするためにしばしば用もちいられるが、直接ちょくせつ被曝ひばくが影響えいきょうしての出血しゅっけつは鼻はなのみならず全身ぜんしんに及およぶ上うえに3SV程度ていどの局所きょくしょ被曝ひばくが必要ひつようである為ため、1000000分ぶんの1未満みまんの空間くうかん線量せんりょうの福島ふくしま県内けんないで被曝ひばくが原因げんいんの鼻血はなぢはあり得えない（但ただし、放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつが鼻腔びこうの粘膜ねんまくに付着ふちゃくして出血しゅっけつする可能かのう性せいはある）。主おもに1970年代ねんだいのドラマの白血病はっけつびょうの演出えんしゅつに鼻血はなぢが濫用らんようされたために、放射線ほうしゃせんから白血病はっけつびょうにイメージが及および、鼻血はなぢの症状しょうじょうのみが放射線ほうしゃせんと結むすびつけられたと考かんがえられる。

詐いつわり病びょうを題材だいざいとした作品さくひん

詐いつわり病びょうを題材だいざいとした作品さくひんとしてはケン・キージーの小説しょうせつ『カッコーの巣すの上うえで』（1962年ねん）が非常ひじょうに有名ゆうめいであり、1975年ねんには映画えいが化かもされている。日本にっぽんでは映画えいが『39 刑法けいほう第だい三さん十じゅう九きゅう条じょう』（森田もりた芳光よしみつ監督かんとく、1999年ねん）がある。また、サスペンス作品さくひんの中なかには、どんでん返がえしとして詐いつわり病びょうが扱あつかわれているものもある。

文献ぶんけん

• 西山にしやま詮かい　「詐いつわり病びょうと精神せいしん鑑定かんてい」　2012年ねん 東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱん会かい ISBN 978-4130664080

関連かんれん項目こうもく

• 虚偽きょぎ性せい障害しょうがい
• 兵庫ひょうご県議会けんぎかい#政務せいむ活動かつどう費ひ不正ふせい使用しよう問題もんだい
• 佐さ村むら河内かわうち守まもる
• 附属ふぞく池田いけだ小しょう事件じけん - 事件じけんを起おこした男性だんせいは、統合とうごう失調しっちょう症しょうを理由りゆうに十じゅう数すう回かいに渡わたり刑罰けいばつを免除めんじょされていた（事件じけん後ごの精神せいしん鑑定かんていでは統合とうごう失調しっちょう症しょうの診断しんだんは否定ひていされている）。
• 麻原あさはら彰晃しょうこう - 詐いつわり病びょうか否ひか議論ぎろんがある。