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責任せきにん能力のうりょく

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心神喪失しんしんそうしつから転送てんそう

責任せきにん能力のうりょく(せきにんのうりょく)とは、一般いっぱんてきみずからのおこなった行為こういについて責任せきにんうことのできる能力のうりょくをいう。

刑法けいほうにおいては、事物じぶつ是非ぜひ善悪ぜんあく弁別べんべつし、かつそれにしたがって行動こうどうする能力のうりょくをいう。また、民法みんぽうでは、不法ふほう行為こういうえ責任せきにん判断はんだんしうる能力のうりょくをいう。

歴史れきし

責任せきにん能力のうりょく認識にんしきかんして、日本にっぽん法制ほうせいうえ処遇しょぐうとして現在げんざい確認かくにんできる最古さいこ文献ぶんけんとして『養老ようろう律令りつりょう』(718ねん)がげられる。身体しんたい精神せいしん障碍しょうがいかるじゅんから「ざんやまし」「癈疾はいしつ」「あつやまし」のさん段階だんかいけ、それぞれの状態じょうたいおうじてぜい負担ふたん軽減けいげん減刑げんけい処置しょちさだめられていた。

ごくれい さんきゅう ねんはちじゅうじゅうさい。及癈やましふところ孕。侏儒しゅじゅこれるい。雖犯死罪しざいまたきん[ちゅう 1]。」(ごくれいさんきゅう 80さい以上いじょう、10さい以下いか癈疾はいしつもの懐妊かいにんちゅうもの侏儒しゅじゅ死罪しざいたるつみおかしても拘禁こうきんされなかった。)

ただ「癲狂」は免責めんせき対象たいしょうになる一方いっぽう職業しょくぎょうじょう制限せいげんもあったことがどう律令りつりょうしるされている[1]

江戸えど時代じだいにおいては『じょうしょひゃく箇条かじょう』78じょうに「乱心らんしんにてひところそうろうとも、下手人げしゅにんとなすべくこう しかれども乱心らんしん証拠しょうこたしかにこれうえころされそうろうものの主人しゅじんならびに親類しんるいとう下手人げしゅにん御免ごめんねがもうすにおいては詮議せんぎげ、そううかがうべきこと ただし、しゅころおやころしたりといえども、らん気紛きまぐきにおいては死罪しざい」とあり、当時とうじ刑事けいじ法制ほうせいでは心神喪失しんしんそうしつ触法しょくほう少年しょうねんたいしては減刑げんけい考慮こうりょされる可能かのうせいのみにまり、おやごろしなどの大罪だいざいについては一般いっぱん犯罪はんざいしゃ同様どうようただちに極刑きょっけいにされた(殺害さつがいされた被害ひがいしゃ乱心らんしん殺害さつがいしゃより身分みぶんひく場合ばあい被害ひがいしゃ主人しゅじん親類しんるいなど身内みうちゆるすと死刑しけいでなく一族いちぞくによりいえめられるめにされた[2]。また触法しょくほう少年しょうねんたいしては死刑しけい執行しっこうせずに15さいまで親戚しんせき監視かんしかれたのちに15さいになってから遠島えんとう処分しょぶん執行しっこうされ、入墨いれずみ以下いかけいについては年齢ねんれいわずにそのまま執行しっこうされた)とされる。これは、当時とうじにおいては今日きょう刑法けいほうがくでいうところの客観きゃっかん主義しゅぎ採用さいようして故意こい過失かしつわずに行為こうい存在そんざいのみで同一どういつ犯罪はんざい成立せいりつしたこと、縁座えんざ連座れんざ)に代表だいひょうされるように社会しゃかいてきせしめのために犯罪はんざいしゃ血縁けつえんしゃという理由りゆうのみで未成年みせいねんしゃへの刑罰けいばつおこなわれることもあった当時とうじにおいて、行為こういしゃ内面ないめん状況じょうきょう積極せっきょくてき評価ひょうかする意識いしきひくかったことによるものである。

明治めいじ時代じだい以後いごに、欧米おうべいてき近代きんだいほう制定せいていともない、刑法けいほう刑事けいじ訴訟そしょうほうひとしによって「責任せきにん能力のうりょく」という観点かんてん強調きょうちょうされていった。

刑法けいほうじょう責任せきにん能力のうりょく

刑法けいほうにおける責任せきにん能力のうりょくとは、刑法けいほうじょう責任せきにん能力のうりょくのことであり、事物じぶつ是非ぜひ善悪ぜんあく弁別べんべつし、かつそれにしたがって行動こうどうする能力のうりょくのことである。責任せきにん能力のうりょくのないものたいしてはその行為こうい非難ひなんすることができず(非難ひなんすることに意味いみがなく)、刑罰けいばつ意味いみけるとされている。

責任せきにん無能力むのうりょく限定げんてい責任せきにん能力のうりょく

責任せきにん能力のうりょく存在そんざいしない状態じょうたい責任せきにん無能力むのうりょく状態じょうたい)とび、責任せきにん能力のうりょくいちじるしく減退げんたいしている場合ばあい限定げんてい責任せきにん能力のうりょく状態じょうたい)とぶ。責任せきにん無能力むのうりょくとしては心神喪失しんしんそうしつや14さい未満みまんものが、限定げんてい責任せきにん能力のうりょくとしては心神耗弱しんしんこうじゃく(こうじゃく)がげられる。刑法けいほうは39じょうだい1こうにおいて心神喪失しんしんそうしつしゃ処罰しょばつを、41じょうにおいて14さい未満みまんもの処罰しょばつを、39じょう2こうにおいて心神耗弱しんしんこうじゃくしゃけいげんけいさだめている。

心神喪失しんしんそうしつ心神耗弱しんしんこうじゃく

心神喪失しんしんそうしつ
心神喪失しんしんそうしつとは、精神せいしん障害しょうがいとう事由じゆうによりこと是非ぜひ善悪ぜんあくわきまえ識する能力のうりょく事理じりべん識能りょくまたはそれにしたがって行動こうどうする能力のうりょく行動こうどう制御せいぎょ能力のうりょく)がうしなわれた状態じょうたいをいう。心神喪失しんしんそうしつ状態じょうたいにおいては、刑法けいほうじょうその責任せきにん追及ついきゅうすることができないために、刑事けいじ裁判さいばん心神喪失しんしんそうしつ認定にんていされると無罪むざい判決はんけつくだることになる。もっとも、心神喪失しんしんそうしつ認定にんていされるのはきわめてまれであり、裁判さいばん心神喪失しんしんそうしつとされたものかず平成へいせい16年度ねんど(2004年度ねんど以前いぜん10年間ねんかん平均へいきんで2.1めいである。同期どうきあいだにおけるぜん事件じけん裁判さいばん確定かくてい人員じんいん平均へいきんが99まん6456.4にんなので、やく50まんぶんの1の割合わりあいとなる(『平成へいせい17年版ねんばん 犯罪はんざい白書はくしょだい2へん/だい6しょう/だい6せつ/1)。
無罪むざい判決はんけつ場合ばあいは、検察官けんさつかん地方裁判所ちほうさいばんしょ審判しんぱんもうてをし、処遇しょぐう入院にゅういん通院つういん治療ちりょう不要ふよう)をめる鑑定かんていおこなわれるとともに、社会しゃかい復帰ふっき調整ちょうせいかんによる生活せいかつ環境かんきょう調査ちょうさおこなわれる(『医療いりょう観察かんさつ制度せいどのしおり』より)。
入院にゅういん決定けってい場合ばあいは6ヶ月かげつごとに入院にゅういん継続けいぞく確認かくにん決定けってい必要ひつようとされ、通院つういん決定けってい、あるいは退院たいいん許可きょか決定けっていけた場合ばあい原則げんそくとして3年間ねんかん指定してい通院つういん医療いりょう機関きかんによる治療ちりょうける。
心神耗弱しんしんこうじゃく
心神耗弱しんしんこうじゃくとは、精神せいしん障害しょうがいとう事由じゆうによりこと是非ぜひ善悪ぜんあくわきまえ識する能力のうりょく事理じりべん識能りょくまたはそれにしたがって行動こうどうする能力のうりょく行動こうどう制御せいぎょ能力のうりょく)がいちじるしく減退げんたいしている状態じょうたいをいう。心神耗弱しんしんこうじゃく状態じょうたいにおいては、刑法けいほうじょう責任せきにん軽減けいげんされるために、刑事けいじ裁判さいばん心神耗弱しんしんこうじゃく認定にんていされるとけいげんけいされることになる(必要ひつようてきげんけい)。心神耗弱しんしんこうじゃくとされるのしゃかず心神喪失しんしんそうしつよりもおおく、裁判さいばん心神耗弱しんしんこうじゃくとされたものかずは10年間ねんかん平均へいきんで80.4めいである(同上どうじょう犯罪はんざい白書はくしょ』)。
心神喪失しんしんそうしつおよび心神耗弱しんしんこうじゃくれい問題もんだい

心神喪失しんしんそうしつおよび心神耗弱しんしんこうじゃくれいとしては、精神せいしん障害しょうがい知的ちてき障害しょうがい発達はったつ障害しょうがいなどの病的びょうてき疾患しっかん麻薬まやくかくせいざいシンナーなどの使用しようによるもの、飲酒いんしゅによる酩酊めいていなどがげられる。ここにいう心神喪失しんしんそうしつ心神耗弱しんしんこうじゃくは、医学いがくじょうおよび心理しんりがくじょう判断はんだんもとに、最終さいしゅうてきには「そのものをばっするだけの責任せきにんみとるか」という裁判官さいばんかんによる規範きはんてき評価ひょうかによって判断はんだんされる。とくかくせいざい使用しようともな犯罪はんざいなどにかんしてはこのてん問題もんだいとなることがおおいが、判例はんれいではアルコール大量たいりょう摂取せっしゅ薬物やくぶつ麻薬まやくかくせいざい、シンナーなど)などで故意こい心神喪失しんしんそうしつ心神耗弱しんしんこうじゃくおちいった場合ばあい刑法けいほうだい39じょうだい1こうだい2こう適用てきようされない(「原因げんいんにおいて自由じゆう行為こういろん)としている[3]

また、殺人さつじんとう重犯じゅうはんざいおこなったものについては近年きんねん世論せろん変化へんか、すなわち厳罰げんばつつよのぞこえとく被害ひがいしゃやその遺族いぞくがわ)がある。心神耗弱しんしんこうじゃくとして認定にんていされることはすくなからずあっても[ちゅう 2]心神喪失しんしんそうしつとして認定にんていされることはきわめてまれである。とく複数ふくすう殺人さつじん強盗ごうとう殺人さつじんなどの複数ふくすうおもつみおかしたものについては通常つうじょう犯罪はんざいしゃ同様どうよう極刑きょっけい死刑しけいもしくは無期むき懲役ちょうえきがいいわたされる判例はんれいおおく、被告人ひこくにん弁護べんごがわ心神喪失しんしんそうしつ認定にんていもとめても、認定にんていしゃとするかかの判断はんだんけたり(精神せいしんめん発達はったつめん障害しょうがいなどを十分じゅうぶん考慮こうりょ重視じゅうしをせず)責任せきにん能力のうりょく完全かんぜん[ちゅう 3]みとめたうえ判決はんけつおこな傾向けいこうにある。また、「さきがない」「遺族いぞく厳罰げんばつのぞんでいる」として、あねころした発達はったつ障害しょうがいアスペルガー症候群しょうこうぐん)の男性だんせいたいして、求刑きゅうけい上回うわまわ懲役ちょうえきけいをいいわたしたれいもある(平野ひらの市営しえい住宅じゅうたく殺人さつじん事件じけん[ちゅう 4]心神喪失しんしんそうしつみとめられると、起訴きそになるか、起訴きそされても無罪むざいとなる、ということにかんしては、社会しゃかいてき抵抗ていこうかんいだきもある。2001ねん6月8にち大阪教育大学おおさかきょういくだいがく教育きょういく学部がくぶ附属ふぞく池田いけだ小学校しょうがっこうこった児童じどう殺傷さっしょう附属ふぞく池田いけだしょう事件じけん)の犯人はんにんが、過去かこべつ事件じけん精神分裂病せいしんぶんれつびょう[ちゅう 5]などの精神せいしん疾患しっかん理由りゆうとして10かい以上いじょうにわたって起訴きそ一部いちぶのぞく)となった経歴けいれきぬしであったことも報道ほうどうされた。

心神喪失しんしんそうしつしゃとう医療いりょう観察かんさつほう制定せいてい

この事件じけんをきっかけに、精神せいしん鑑定かんてい心神喪失しんしんそうしつみとめられたものたいする処遇しょぐうへの司法しほう関与かんよ必要ひつようとのかんがかた注目ちゅうもくされ、『心神喪失しんしんそうしつとう状態じょうたい重大じゅうだいがい行為こういおこなったもの医療いりょうおよ観察かんさつとうかんする法律ほうりつ』(心神喪失しんしんそうしつしゃとう医療いりょう観察かんさつほう)が制定せいていされ、2005ねん施行しこうされた[4]検察官けんさつかんもうてをけて、裁判官さいばんかん医師いし精神せいしん保健ほけん審判しんぱんいん)による審判しんぱんひらかれ、くに指定してい医療いりょう機関きかんへの入院にゅういん通院つういんなど処遇しょぐうめる[4]保護ほご観察かんさつしょ配置はいちされた社会しゃかい復帰ふっき調整ちょうせいかん精神せいしん保健ほけん福祉ふくし)を中心ちゅうしんに、医療いりょう観察かんさつおこな枠組わくぐみがつくられた。

厚生こうせい労働省ろうどうしょうによると、医療いりょう観察かんさつほう施行しこうから2019ねん12がつまでに5098にん審判しんぱんけ、入院にゅういんは3459にん通院つういん645にん医療いりょうおこなわないものが798にんだった[4]

国立こくりつ病院びょういん機構きこう久里浜くりはま医療いりょうセンター神奈川かながわけん横須賀よこすか)には医療いりょう観察かんさつほう病棟びょうとうもうけられている[5]

被害ひがいしゃ遺族いぞく苦悩くのう

日本にっぽんでは心神喪失しんしんそうしつ理由りゆうに、年間ねんかん400にん程度ていど犯罪はんざい容疑ようぎしゃ起訴きそになっている[4]。だが心神喪失しんしんそうしつ犯罪はんざいしゃ病状びょうじょう犯行はんこう動機どうき審判しんぱん処遇しょぐうについて、被害ひがいしゃやその遺族いぞく情報じょうほう開示かいじもとめても、検察けんさつ保護ほご観察かんさつしょはほとんど拒否きょひしており[4]つたえられるのは氏名しめい入院にゅういんしているかどうかなどきわめて限定げんていされる[6]刑事けいじ裁判さいばんへの被害ひがいしゃ参加さんか制度せいど心神喪失しんしんそうしつ犯罪はんざいしゃ審判しんぱんには適用てきようされない[4]ため、被害ひがいしゃ本人ほんにん遺族いぞく意見いけんべる機会きかいあたえられない[6]

このため、心神喪失しんしんそうしつしゃおっところされた女性じょせいが2021ねん6がつに「医療いりょう観察かんさつほう被害ひがいしゃかい(がじゅもりのかい[6]」を発足ほっそくさせ、審判しんぱんでの意見いけん陳述ちんじゅつ開示かいじ情報じょうほう拡充かくじゅうなどを同年どうねん7がつ法務大臣ほうむだいじん要望ようぼうした[4]。がじゅもりのかいは2022ねん6がつ15にちにシンポジウムをひらき、しん全国ぜんこく犯罪はんざい被害ひがいしゃかいしんあすのかい関係かんけいしゃらが参加さんかした[6]。シンポジウムで発言はつげんした久里浜くりはま医療いりょうセンター司法しほう病棟びょうとう部長ぶちょうによると、病状びょうじょう改善かいぜんした加害かがいしゃ被害ひがいしゃあやまりたいとおもうが、病院びょういん謝罪しゃざいみとめるのは家族かぞくない事件じけんだけという[6]

心神喪失しんしんそうしつ心神耗弱しんしんこうじゃく認定にんてい

被告人ひこくにん精神せいしん状態じょうたい刑法けいほう39じょうにいう心神喪失しんしんそうしつまた心神耗弱しんしんこうじゃく該当がいとうするかどうかは法律ほうりつ判断はんだんであってもっぱ裁判所さいばんしょゆだねられるべき問題もんだいであることはもとより、その前提ぜんていとなる生物せいぶつがくてき心理しんりがくてき要素ようそについても、上記じょうき法律ほうりつ判断はんだんとの関係かんけい究極きゅうきょくてきには裁判所さいばんしょ評価ひょうかゆだねられるべき問題もんだいであり、専門せんもん提出ていしゅつした鑑定かんていしょ裁判所さいばんしょ拘束こうそくされない(さいけつ昭和しょうわ58ねん9がつ13にち)。しかしながら、生物せいぶつがくてき要素ようそである精神せいしん障害しょうがい有無うむおよ程度ていどならびにこれが心理しんりがくてき要素ようそあたえた影響えいきょう有無うむおよ程度ていどについては、その診断しんだん臨床りんしょう精神せいしん医学いがく本分ほんぶんであることにかんがみれば、専門せんもんたる精神せいしん意見いけん鑑定かんていとうとして証拠しょうことなっている場合ばあいには、鑑定かんていじん公正こうせいさや能力のうりょくうたがいがしょうじたり、鑑定かんてい前提ぜんてい条件じょうけん問題もんだいがあったりするなど、これを採用さいようない合理ごうりてき事情じじょうみとめられるのでないかぎり、その意見いけん十分じゅうぶん尊重そんちょうして認定にんていすべきものである(さいはん平成へいせい20ねん4がつ25にち)。

被告人ひこくにん犯行はんこう当時とうじ統合とうごう失調しっちょうしょう罹患りかんしていたからといって、そのことだけでただちに被告人ひこくにん心神喪失しんしんそうしつ状態じょうたいにあったとされるものではなく、その責任せきにん能力のうりょく有無うむ程度ていどは、被告人ひこくにん犯行はんこう当時とうじ病状びょうじょう犯行はんこうまえ生活せいかつ状態じょうたい犯行はんこう動機どうき態様たいようとう総合そうごうして判定はんていすべきである(さいけつ昭和しょうわ59ねん7がつ3にち)。

14さいたないもの

刑法けいほうだい41じょうは14さいたないもの行為こうい処罰しょばつさだめている。これは14さい未満みまんもの一律いちりつ責任せきにん無能力むのうりょくしゃとすることにより、その処罰しょばつひかえるという政策せいさくてき意味いみつものとほぐされている。14さいたないもの刑罰けいばつ法令ほうれいれる行為こういをしたもの刑事けいじ法学ほうがくでは一般いっぱん触法しょくほう少年しょうねんぶ)は、少年しょうねんほうにより審判しんぱんされ(少年しょうねん保護ほご手続てつづき)、よう保護ほごせいおうじて保護ほご処分しょぶんけることになる。

刑事けいじ訴訟そしょうほうじょう心神喪失しんしんそうしつ

刑事けいじ訴訟そしょうほうじょう心神喪失しんしんそうしつ概念がいねんがあり、被告人ひこくにん心神喪失しんしんそうしつになった場合ばあい公判こうはん停止ていしされる(刑事けいじ訴訟そしょうほう314じょう本文ほんぶん)。被告人ひこくにん心神喪失しんしんそうしつ恒久こうきゅうてきなもので回復かいふく見込みこみがない場合ばあいは、公判こうはんることもできる(さいけつ平成へいせい7ねん2がつ28にちけいしゅう49かん2ごう481ぺーじ千種ちくさ秀夫ひでお裁判官さいばんかん補足ほそく意見いけん)。一方いっぽう判決はんけつ無罪むざい免訴めんそけい免除めんじょあるいは公訴こうそ棄却ききゃくであることがあきらかな場合ばあいにはその判決はんけつただちにくだすことが出来できる(刑事けいじ訴訟そしょうほう314じょう但書ただしがき)。

なお、ここにおける心神喪失しんしんそうしつ被告人ひこくにんとしての重要じゅうよう利害りがい弁別べんべつし、それにしたがって相当そうとう防御ぼうぎょをすることのできる能力のうりょく状態じょうたいをさすものであり(前記ぜんきさいけつ平成へいせい7ねん2がつ28にち)、その意味いみ内容ないよう刑法けいほうじょう心神喪失しんしんそうしつかならずしも同一どういつではない。会話かいわ文字もじ点字てんじ手話しゅわとうのコミュニケーション能力のうりょく一切いっさいもたないものは、刑法けいほうじょう心神喪失しんしんそうしつとなるわけではないが、刑事けいじ訴訟そしょうほうじょう心神喪失しんしんそうしつとなることがある。

民法みんぽうじょう責任せきにん能力のうりょく

民法みんぽうにおける責任せきにん能力のうりょくとは、すなわち不法ふほう行為こういかんする責任せきにん能力のうりょくであり、その行為こうい責任せきにんわきまえ識するにるべき知能ちのうそなえていることが要求ようきゅうされる(民法みんぽう712じょう)。責任せきにん能力のうりょくたないものにたいしては不法ふほう行為こうい責任せきにんみとめられず、損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうすることができない。

その場合ばあいには、これら責任せきにん無能力むのうりょくしゃ監督かんとく義務ぎむしゃとう原則げんそくとして責任せきにんうことになっている(民法みんぽう714じょう1こう本文ほんぶん・2こう)。

ただし、監督かんとく義務ぎむしゃとう監督かんとく義務ぎむおこたらなかったとき、またはその義務ぎむおこたらなくても損害そんがいしょうずべきであったときは、責任せきにんわない(民法みんぽう714じょう1こう但書ただしがき・2こう)。監督かんとく義務ぎむ範囲はんい不明ふめいかくとされていたが、2015ねん4がつ最高裁判所さいこうさいばんしょ危険きけん予想よそうできたなどの特別とくべつ事情じじょうがないかぎりは、監督かんとく義務ぎむくしていなかったとはえないとはじめて判断はんだんした[7]

なお、18さい未満みまん不法ふほう行為こういしゃ責任せきにん能力のうりょくがある場合ばあいには、そのもの不法ふほう行為こうい責任せきにんみとめられるが、そのもの資力しりょくである場合ばあいには事実じじつじょう損害そんがい賠償ばいしょうしてもらうことが困難こんなんになるという問題もんだいしょうじる。判例はんれい民法みんぽう714じょう規定きてい不法ふほう行為こういしゃ責任せきにん能力のうりょくみとめられる場合ばあいにおいて監督かんとく義務ぎむしゃにつき民法みんぽう709じょう一般いっぱん不法ふほう行為こうい併存へいそんてき成立せいりつすることをさまたげる趣旨しゅしではないとかいしており、監督かんとく義務ぎむしゃ監督かんとく義務ぎむ違反いはん未成年みせいねんしゃなど不法ふほう行為こういしゃ不法ふほう行為こういによってしょうじた結果けっかとのあいだ相当そうとう因果いんが関係かんけいみとめられる場合ばあいには監督かんとく義務ぎむしゃ民法みんぽう709じょう一般いっぱん不法ふほう行為こうい責任せきにんうものとしている(さいはん昭和しょうわ49ねん3がつ22にちみんしゅう28かん2ごう347ぺーじ)。

18さい未満みまん責任せきにん能力のうりょく

不法ふほう行為こういにおける18さい未満みまん責任せきにん能力のうりょくには、刑事けいじ事件じけんにおける刑法けいほうだい41じょうのような画一かくいつてき基準きじゅん存在そんざいしない。したがって、かく事例じれいにおいて行為こうい種類しゅるいおよび当該とうがい少年しょうねん成育せいいくなどを考慮こうりょして判断はんだんされることになる。11さい以上いじょう小学校しょうがっこう5年生ねんせい)を基準きじゅんとして責任せきにん能力のうりょく判断はんだんされるとわれている。

心神喪失しんしんそうしつしゃ責任せきにん能力のうりょく

民法みんぽう713じょうは、精神せいしんじょう障害しょうがいによって行為こうい責任せきにんわきまえ識する能力のうりょく状態じょうたいにあるものについて、その状態じょうたいにあるときにった不法ふほう行為こうい損害そんがい賠償ばいしょう責任せきにんわないむねさだめている。ただし、故意こいまたは過失かしつによって一時いちじてき心神喪失しんしんそうしつ状態じょうたいおちいったもの不法ふほう行為こうい責任せきにんまぬかれないとしている。

脚注きゃくちゅう

注釈ちゅうしゃく

  1. ^ きん」とはけいめんずるとの
  2. ^ その場合ばあいでも、刑期けいき大幅おおはばらされるれいすくない。
  3. ^ ただし、その場合ばあいでも障害しょうがい精神せいしんめんでの症状しょうじょう考慮こうりょされる場合ばあいまったくないわけではなく、なんらかのかたち減刑げんけいなどの措置そちをとる場合ばあいもある。また附属ふぞく池田いけだしょう事件じけん神戸こうべ連続れんぞく児童じどう殺傷さっしょう事件じけんように、事件じけんまえ精神せいしんでの診断しんだん精神せいしん鑑定かんていでの診断しんだんまったことなったり、事件じけんまえ病歴びょうれき考慮こうりょしなかったりするれい存在そんざいする。
  4. ^ 控訴こうそしんでは、発達はったつ障害しょうがい影響えいきょう考慮こうりょしたうえ減刑げんけい措置そちほどこした判決はんけつくだしている。
  5. ^ 事件じけん精神せいしん鑑定かんていでは、パーソナリティ障害しょうがいという診断しんだんがなされ、統合とうごう失調しっちょうしょうとは認定にんていされず、事件じけんにおける責任せきにん能力のうりょくはあるとされた。

出典しゅってん

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  3. ^ 最高裁判所さいこうさいばんしょだいさんしょう法廷ほうてい決定けってい 昭和しょうわ43ねん2がつ27にち(『けいしゅうだい22かん2ごう67ぺーじ
  4. ^ a b c d e f g 開示かいじされない心神喪失しんしんそうしつしゃ事件じけん情報じょうほう 遺族いぞく「なぜ」れぬ苦悩くのう 年間ねんかん400にん程度ていど起訴きそ毎日新聞まいにちしんぶん夕刊ゆうかん2022ねん6がつ14にち1めん(2022ねん6がつ25にち閲覧えつらん
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  6. ^ a b c d e 心神喪失しんしんそうしつ起訴きそ」の現状げんじょううったえ/被害ひがいしゃかい 千代田ちよだでシンポ/意見いけんえず 情報じょうほう限定げんてい制度せいど時代遅じだいおくれ」朝日新聞あさひしんぶん朝刊ちょうかん2022ねん6がつ17にち東京とうきょうめん)2022ねん6がつ29にち閲覧えつらん
  7. ^ 子供こどもったボールで事故じこおや責任せきにんみとめず 最高裁さいこうさい. 日本経済新聞にほんけいざいしんぶん. (2015ねん4がつ9にち). https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG09H81_Z00C15A4CC1000/ 2015ねん4がつ10日とおか閲覧えつらん 

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 松宮まつみや孝明たかあき刑事けいじ過失かしつろん研究けんきゅう成文せいぶんどう、1989ねん6がつISBN 4792311861
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  • 安田やすだたくじん刑事けいじ責任せきにん能力のうりょく本質ほんしつとその判断はんだん弘文こうぶんどう、2006ねん7がつISBN 433535374X
  • C・ロクシン(Claus Roxin)『刑法けいほうにおける責任せきにん予防よぼう成文せいぶんどう、1984ねん12月、ISBN 4792310563

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