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故意こい

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故意こいはんから転送てんそう

故意こい(こい)とは、一般いっぱんてきにはある行為こうい意図いとてきなものであることをし、法律ほうりつうえ他人たにん権利けんり法益ほうえき侵害しんがいする結果けっか発生はっせいさせることを認識にんしきしながら、それを容認ようにんして行為こういすることをいう。

民事みんじ責任せきにんにおける故意こい

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故意こい過失かしつ債務さいむ不履行ふりこう責任せきにん不法ふほう行為こうい責任せきにん要件ようけんとなっている。不法ふほう行為こうい責任せきにんにおける故意こいとは、自己じこ行為こういによって他人たにん権利けんり侵害しんがいすることまたは違法いほう評価ひょうかされる結果けっか発生はっせいさせることを認識にんしきしながら、あえてその行為こういおこな心理しんり状態じょうたいをいう[1]

不法ふほう行為こうい責任せきにんでの故意こい意味いみについては意思いしせつ認識にんしきせつ認容にんようせつがある[1]

意思いしせつ
故意こいがあるというには加害かがい意思いしがあることを必要ひつようとするせつ
認識にんしきせつ
故意こいがあるというには権利けんり侵害しんがい違法いほう法益ほうえき侵害しんがいについての認識にんしきがあればりるとするせつ
認容にんようせつ
権利けんり侵害しんがい違法いほう法益ほうえき侵害しんがいについての認識にんしきくわえて、そのような結果けっか発生はっせいすることを認容にんようしていることをようするとするせつ

刑事けいじ責任せきにんにおける故意こい

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概説がいせつ

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刑事けいじ責任せきにんにおける故意こいつみおか意思いしであるが、その具体ぐたいてき意味いみ体系たいけいてき位置いちづけについてはあらそいがある。

故意こい過失かしつ行為こうい主観しゅかんてき要素ようそとして共通きょうつう基盤きばんをもっている[2]故意こい認定にんていされるときは過失かしつ問題もんだいとなることはない[2]犯罪はんざい故意こいはん処罰しょばつ原則げんそくとしており、過失かしつはん法律ほうりつとく規定きていもうけた場合ばあいかぎって例外れいがいてき処罰しょばつされるにすぎない[2]

犯罪はんざい構成こうせい要件ようけん該当がいとうする違法いほうかつゆうせめ行為こういである。故意こいはこのうちもっぱら責任せきにん要素ようそかんがえられていたが、違法いほう要素ようそ構成こうせい要件ようけん要素ようそとして理解りかいする立場たちば次第しだい有力ゆうりょくになっている[3]

  • 故意こい構成こうせい要件ようけん主観しゅかんてき要素ようそとして犯罪はんざい類型るいけいにとって重大じゅうだい役割やくわりになうものである(構成こうせい要件ようけんてき故意こい[4]
  • 故意こいはその違法いほう行為こうい性格せいかく決定けっていする(違法いほう故意こい[4]
  • 故意こい行為こういしゃはん規範きはんてき人格じんかく態度たいど積極せっきょくてきあらわれたものである(責任せきにん故意こい[4]

これらの故意こい体系たいけいてき位置いちについては、論者ろんしゃによりことなっており、故意こい構成こうせい要件ようけんてき故意こい責任せきにん故意こいける学説がくせつ故意こい構成こうせい要件ようけんてき故意こい違法いほう故意こい責任せきにん故意こいける学説がくせつ故意こいをもっぱら責任せきにん故意こいとしてあつか学説がくせつなどがある。

故意こい意義いぎ

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故意こい意義いぎについては、表象ひょうしょうせつ意思いしせつ認容にんようせつなどがある[5]

表象ひょうしょうせつ認識にんしき主義しゅぎ観念かんねん主義しゅぎ
故意こいがあるというには犯罪はんざい事実じじつ表象ひょうしょう存在そんざいしていることでりるとするせつとく行為こういしゃ犯罪はんざい事実じじつ実現じつげんについての蓋然性がいぜんせい相当そうとう高度こうど表象ひょうしょうしていた場合ばあい故意こいみとめる学説がくせつ蓋然性がいぜんせいせつという。
意思いしせつ意思いし主義しゅぎ
故意こいがあるというには犯罪はんざい事実じじつ表象ひょうしょうくわえて犯罪はんざい実現じつげんについての意思いし存在そんざいすることをようするとするせつ意思いしせつ代表だいひょうてき論者ろんしゃとしてビルクマイヤーやヒッペルがられている[5]
認容にんようせつ
故意こいとは行為こういしゃ犯罪はんざい実現じつげんについて認容にんようしていることをいうとみるせつ認容にんようせつ代表だいひょうてき論者ろんしゃとしてフランクやメッガーがられており、認容にんようせつ刑法けいほうがくじょう通説つうせつとなっている[5]

故意こい態様たいよう

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確定かくていてき故意こい確定かくていてき故意こい

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故意こいには確定かくていてき故意こい確定かくていてき故意こいがある。

確定かくていてき故意こい
確定かくていてき故意こいとは行為こういしゃ犯罪はんざい事実じじつ実現じつげんについて確定かくていてき表象ひょうしょうしている場合ばあいをいう[6]
確定かくていてき故意こい
確定かくていてき故意こいとは行為こういしゃ犯罪はんざい事実じじつ実現じつげんについて確定かくていなものとして表象ひょうしょうしている場合ばあいをいい、確定かくていてき故意こいには概括がいかつてき故意こい択一たくいつてき故意こい未必みひつてき故意こい未必みひつ故意こい)がある[7]
概括がいかつてき故意こい
一定いってい範囲はんいないのどれかの客体かくたい犯罪はんざいてき結果けっかしょうじることは確定かくていてきであるが、その個数こすう客体かくたい確定かくてい場合ばあい故意こい概括がいかつてき故意こいという[6]
択一たくいつてき故意こい
数個すうこ客体かくたいのどれかに犯罪はんざいてき結果けっかしょうじることは確定かくていてきであるが、それがどの客体かくたいしょうじるか確定かくてい場合ばあい故意こい択一たくいつてき故意こいという[8]
未必みひつてき故意こい未必みひつ故意こい
犯罪はんざいてき結果けっか発生はっせい自体じたい確実かくじつではないが、それが発生はっせいすることを表象ひょうしょうしながらも、それが発生はっせいするならば発生はっせいしてもかまわないものとして認容にんようしている場合ばあい故意こい未必みひつてき故意こい未必みひつ故意こい)という[8]

なお、「未必みひつ故意こいEventualvorsatz,dolus eventualis)」と「認識にんしきある過失かしつ(bewusste Fahrlässigkeit,luxuria)」の区別くべつは、いかなる場合ばあい故意こいとなり、また、過失かしつとなるのかという限界げんかい問題もんだいとなる。故意こいはん原則げんそくてき処罰しょばつされるのにたいして、過失かしつはんとく過失かしつはん規定きていがないかぎり処罰しょばつされないことから、故意こい過失かしつ区別くべつ刑法けいほうじょう重要じゅうよう問題もんだいのひとつである。

事前じぜん故意こい(ヴェーバーの概括がいかつてき故意こい)と事後じご故意こい

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事前じぜん故意こいヴェーバーの概括がいかつてき故意こい
行為こういしゃ故意こいをもってった行為こういだいいち行為こうい)ですで犯罪はんざいげたものと誤信ごしんし、行為こういしゃがその発覚はっかくふせぐためなど目的もくてきでさらにべつ行為こういだい行為こうい)をおこなったところ、そのだい行為こういによってさき予期よきした結果けっか発生はっせいさせた場合ばあい事前じぜん故意こい(ヴェーバーの概括がいかつてき故意こい)という[9]事前じぜん故意こい通常つうじょう因果いんが関係かんけい錯誤さくご問題もんだいとなる[9]
事後じご故意こい
行為こういしゃ犯罪はんざいてき結果けっかしょうじうる行為こうい故意こいなしにったのち、そこではじめて故意こいしょうじて事態じたいきにまかせたことから、その予期よきした犯罪はんざいてき結果けっか発生はっせいさせた場合ばあい事後じご故意こいという[9]事後じご故意こい作為さくいはん問題もんだいとなる[9]

脚注きゃくちゅう

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • 大塚おおつかひとし刑法けいほう概説がいせつ 総論そうろん だい4はん有斐閣ゆうひかく、2008ねん 
  • 篠塚しのづか昭次しょうじ前田まえだいたるあきらしん判例はんれいコンメンタール 9 不法ふほう行為こうい三省堂さんせいどう、1993ねん 

関連かんれん項目こうもく

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