土ど客きゃく械闘

土ど客きゃく械闘（とかくかいとう）とは客きゃく家かと本地ほんじ人じんとの対立たいりつを指さす。広東かんとん省しょう・広西ひろせ省しょう・福建ふっけん省しょう・江西えにし省しょう・湖南こなん省しょう・台湾たいわんなどで発生はっせいした。類似るいじの対立たいりつ構造こうぞうは明あきら朝あさ中期ちゅうきから見受みうけられるが、衝突しょうとつの大だい部分ぶぶんは清きよし末すえに発生はっせいした。

客きゃく家人かじんは沿岸えんがん後背こうはい地ちの山岳さんがく部ぶから新あらたに進出しんしゅつしてきた移住いじゅう民みんであり、本地ほんじ人じんは土着どちゃくの方言ほうげんを話はなす漢かん民族みんぞくやチワン族ぞくなどの少数しょうすう民族みんぞくである。戦闘せんとうの原因げんいんは、本地ほんじ人じんからみると、客きゃく家かの人口じんこう増ぞうによって彼かれらの土地とちが浸食しんしょくされたことである。一方いっぽう、客きゃく家か側がわには、地域ちいき社会しゃかいから疎外そがいされ、険けわしい土地とちで耕作こうさくせざるを得えないことへの怒いかりがあった。

特とくに最大さいだい規模きぼだったのは清末きよすえの1855年ねんから1867年ねんにかけて広東かんとん省しょうで発生はっせいした械闘である。特とくに激はげしかったのは珠江たまえデルタ周辺しゅうへんにある五ご邑の台山だいやまであった。民みん国こく期きの客きゃく家か研究けんきゅうの第一人者だいいちにんしゃであった羅ら香かおり林りんによると、その戦闘せんとうの死者ししゃと難民なんみんは百ひゃく万まん人にんにのぼったとされる。

以下いか、この大だい械闘を中心ちゅうしんに述のべる。

背景はいけい

明あきら清しん王朝おうちょうの交替こうたい期き、倭やまと寇・海賊かいぞく勢力せいりょくを背景はいけいに持もつ鄭てい成功せいこうは台湾たいわんに拠より、清朝せいちょう支配しはいへの抵抗ていこうを続つづけた。これに対たいして清朝せいちょうは、南中なんちゅう国こくの海上かいじょうに勢力せいりょくを張はる鄭てい氏し政権せいけんの封ふうじ込こめ策さくとして遷界令れいを発令はつれいし、広東かんとん省しょうや福建ふっけん省しょうなどの沿岸えんがん部ぶに居住きょじゅうする住民じゅうみんを内陸ないりくへ30キロ近ちかく移住いじゅうするよう命めいじた。これにより沿岸えんがん部ぶには、一時いちじ的てきに広大こうだいな無人むじん地帯ちたいが広ひろがることになった。

台湾たいわん征服せいふくの成功せいこう後ご、清朝せいちょうは遷海令れいを撤回てっかいし、もともとの住民じゅうみん（＝本地ほんじ人じん）の帰還きかんがはじまる。しかし、遷海令れいの影響えいきょうで一時いちじ的てきに過疎かそ地ちとなった沿海えんかい部ぶには、本地ほんじ人じんだけではなく、福建ふっけん・広東かんとん・江西えにしなどの山岳さんがく地帯ちたいに居住きょじゅうしていた客きゃく家かのグループも流入りゅうにゅうすることになる。

結果けっか、沿海えんかい部ぶの人口じんこうは増加ぞうかしてゆき、やがて軋轢あつれきを生うむようになった。さらに時代じだいが下くだって清末きよすえの混乱こんらん期きを迎むかえると、政治せいじ・経済けいざいの激変げきへんにあたって住民じゅうみんの生活せいかつは厳きびしさを増まし、資源しげんをめぐって極度きょくどの緊張きんちょう状態じょうたいに陥おちいるようになった。

1851年ねん、客きゃく家人かじんの洪秀全こうしゅうぜんが指導しどうする太平たいへい天国てんごくの乱らんが広西ひろせ省しょうで発生はっせいして瞬またたく間まに広ひろがっていった。乱らんが発生はっせいすると、陳ちん開ひらく・李り文ぶん茂しげるに率ひきいられた広東かんとん省しょうの天地てんち会かいも1854年ねんに蜂起ほうきし、仏山ほとけやま・広州こうしゅうを攻撃こうげきした。この蜂起ほうきは後のちに広西ひろせ省しょうに移動いどうし、大成たいせい国こくを建たてた。

大だい械闘

珠江たまえデルタの客きゃく家人かじんたちは、清しん軍ぐんによる天地てんち会かい蜂起ほうきの鎮圧ちんあつに協力きょうりょくした。清しん軍ぐんは蜂起ほうきの参加さんか者しゃを完全かんぜんに掃討そうとうするため、本地ほんじ人じんの村むらを襲撃しゅうげきすることを決定けってい。これにより客きゃく家かと本地ほんじ人じんの対立たいりつは一層いっそう激化げきかし、本地ほんじ人じんたちは復讐ふくしゅうのために客きゃく家人かじんの村むらを襲撃しゅうげきした。

村むらは守まもりを強化きょうかし、男おとこたちは敵てきとの戦たたかいに集結しゅうけつした。戦闘せんとうは大だい規模きぼな紛争ふんそうに発展はってんした。本地ほんじ人じんの人口じんこうが客きゃく家かを圧倒あっとうしていたために、客きゃく家か側がわの被害ひがいは甚大じんだいであった。清きよしは矛盾むじゅんの解決かいけつのために客きゃく家かを分離ぶんりする政策せいさくを取とり、客きゃく家かを広西ひろせ省しょうに再さい移住いじゅうさせた。その結果けっか、五ご邑の客きゃく家かの割合わりあいは3％にまで落おち込こんだ。また敗北はいぼくした客きゃく家人かじんたちは、香港ほんこんとマカオを経由けいゆして南みなみアメリカやキューバに向むけた苦力くーりーとして人身じんしん売買ばいばいの対象たいしょうとなった。

客きゃく家かと本地ほんじ人じんの対立たいりつは、海外かいがいの華人かじん社会しゃかいでは20世紀せいき前半ぜんはんまで見受みうけることができた。

台湾たいわんの場合ばあい

詳細しょうさいは「分類ぶんるい械闘」を参照さんしょう

台湾たいわんでも同様どうようの械闘はみられ、福建ふっけん省しょう（略称りゃくしょう：閩）から移住いじゅうした河かわ洛らく人じんと広東かんとん省しょうから移住いじゅうした客きゃく家人かじんはしばしば械闘を起おこした。現在げんざいではかなり緩和かんわされたものの、いまだに対立たいりつは存在そんざいする。閩粤械闘（閩客械闘とも）を参照さんしょう。

関連かんれん項目こうもく

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