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水平 すいへい 磁気 じき 記録 きろく 方式 ほうしき (上 うえ )と垂直 すいちょく 磁気 じき 記録 きろく 方式 ほうしき (下 した )
垂直 すいちょく 磁気 じき 記録 きろく 方式 ほうしき (すいちょくじききろくほうしき、英 えい : perpendicular magnetic recording )は、ハードディスク 等 ひとし の磁気 じき 記録 きろく において、磁化 じか 膜 まく (磁性 じせい 体 たい )を垂直 すいちょく 方向 ほうこう に磁化 じか する記録 きろく 方式 ほうしき 。1977年 ねん 当時 とうじ 、東北大学 とうほくだいがく 教授 きょうじゅ (現 げん 東北大学 とうほくだいがく 名誉 めいよ 教授 きょうじゅ 、東北工業大学 とうほくこうぎょうだいがく 学長 がくちょう ・理事 りじ 長 ちょう )の岩崎 いわさき 俊一 しゅんいち により、従来 じゅうらい の水平 すいへい 磁気 じき 記録 きろく 方式 ほうしき に対 たい する優位 ゆうい 性 せい が提唱 ていしょう された[ 1] 。
ハードディスクにおいては長 なが らく水平 すいへい 磁気 じき 記録 きろく 方式 ほうしき が使用 しよう され続 つづ けていたが、熱 ねつ 揺 ゆ らぎ問題 もんだい により、高密度 こうみつど 化 か することが困難 こんなん となっていた[ 2] 。
垂直 すいちょく 磁気 じき 記録 きろく 方式 ほうしき では、水平 すいへい 磁気 じき 記録 きろく 方式 ほうしき のような隣接 りんせつ した磁区 じく 同士 どうし の反発 はんぱつ がなく、なおかつ磁性 じせい 体内 たいない 部 ぶ に生 しょう じる減 げん 磁力 じりょく (反 はん 磁界 じかい (英語 えいご 版 ばん ) )も高密度 こうみつど 化 か するほど弱 よわ くなるため、この問題 もんだい を乗 の り越 こ えて高密度 こうみつど 化 か しやすい[ 3] 。
垂直 すいちょく 磁化 じか 記録 きろく 方式 ほうしき も知 し られてはいたものの、技術 ぎじゅつ 的 てき に実用 じつよう 化 か が難 むずか しいとされていた。六角 ろっかく 板 いた 状 じょう バリウムフェライトなどの磁性 じせい 体 たい を使 つか った垂直 すいちょく 磁気 じき 記録 きろく テープは1970年代 ねんだい 後半 こうはん に実用 じつよう 化 か された。また1980年代 ねんだい にはMO で採用 さいよう 、2004年 ねん 以降 いこう は磁気 じき ディスク 、特 とく にハードディスクドライブ にも採用 さいよう されている。
東芝 とうしば が2005年 ねん 、垂直 すいちょく 磁気 じき 記録 きろく 方式 ほうしき を採用 さいよう したハードディスク装置 そうち を世界 せかい で初 はじ めて商品 しょうひん 化 か し、大 だい 容量 ようりょう 化 か がますます加速 かそく した[ 4] 。
後述 こうじゅつ する単 たん 磁極 じきょく ヘッドにより、磁化 じか 膜 まく を上向 うわむ きもしくは下向 したむ きに磁化 じか する事 こと で、2つの状態 じょうたい を作 つく り出 だ す。それぞれの状態 じょうたい をバイナリ データに対応 たいおう させる事 こと で、デジタル 情報 じょうほう を記録 きろく する。
単 たん 磁極 じきょく ヘッドによる記録 きろく (下図 したず )。
垂直 すいちょく 磁気 じき 記録 きろく 方式 ほうしき では、磁化 じか 膜 まく の深 ふか さ(垂直 すいちょく )方向 ほうこう に磁場 じば を発生 はっせい させる単 たん 磁極 じきょく (Single Pole Type : SPT)ヘッド が用 もち いられる[ 5] 。単 たん 磁極 じきょく ヘッドは、水平 すいへい 磁気 じき 記録 きろく 方式 ほうしき のリングヘッドと同様 どうよう に、軟質 なんしつ 磁性 じせい 体 たい で出来 でき たコアの周 まわ りに銅 どう 線 せん を巻 ま き付 つ け、そこに流 なが す電流 でんりゅう の方向 ほうこう を制御 せいぎょ することで磁化 じか 膜 まく の磁化 じか の向 む き制御 せいぎょ する(=データを記録 きろく する)。主 おも な相違 そうい 点 てん は、媒体 ばいたい 直上 ちょくじょう 部分 ぶぶん の構造 こうぞう で、リングヘッドがギャップ(コアにある僅 わず かな隙間 すきま )部分 ぶぶん から漏 も れ出 だ す磁束 じそく で記録 きろく するのに対 たい して、単 たん 磁極 じきょく ヘッドでは、コアにより媒体 ばいたい 直上 ちょくじょう まで導 みちび かれた磁束 じそく が、磁化 じか 膜 まく を通 とお り抜 ぬ けて 、反対 はんたい 側 がわ の磁極 じきょく に流 なが れ込 こ むように設計 せっけい される事 こと である[ 3] 。
ただ単 たん にギャップのない単 たん 磁極 じきょく ヘッドを用意 ようい しただけでは、磁化 じか 膜 まく を垂直 すいちょく 方向 ほうこう に磁化 じか するのは困難 こんなん である。これはヘッドの磁束 じそく が磁化 じか 膜 まく を通 とお り抜 ぬ けないためである。そこで、垂直 すいちょく 磁気 じき 記録 きろく 方式 ほうしき では、この磁束 じそく の通 とお り道 みち を作 つく るために、磁化 じか 膜 まく の下 した に軟質 なんしつ 磁性 じせい 体 たい で出来 でき た「裏打 うらう ち層 そう 」を用意 ようい する[ 6] 。これにより、あたかも2つの磁気 じき ヘッドで磁化 じか 膜 まく を挟 はさ み込 こ み、そのギャップ内 ない で記録 きろく していると表現 ひょうげん しても良 よ い程 ほど 、安定 あんてい した磁束 じそく の回路 かいろ を作 つく ることが出来 でき る[ 7] 。
その一方 いっぽう で、この裏打 うらう ち層 そう の磁区 じく に起因 きいん するスパイクノイズが再生 さいせい 信号 しんごう に重畳 ちょうじょう する事 こと が問題 もんだい となった。これは裏打 うらう ち層 そう の2層 そう 構造 こうぞう により解消 かいしょう された[ 2] 。このように、水平 すいへい 磁気 じき 記録 きろく 方式 ほうしき に対 たい して、そのヘッド及 およ びメディアの構造 こうぞう は複雑 ふくざつ になる。
媒体 ばいたい の磁化 じか 膜 まく には垂直 すいちょく 方向 ほうこう に磁化 じか しやすい特性 とくせい を予 あらかじ め持 も たせておく(磁気 じき 異 あや 方 かた 性 せい が垂直 すいちょく になるよう磁性 じせい 体 たい を配置 はいち する)。