堀ほり貞さだ

堀ほり 貞さだ（ほり ただし、通称つうしょう：ほり てい 1872年ねん9月23日にち - 1927年ねん7月がつ27日にち）は、大正たいしょう時代じだいの経営けいえい者しゃ。真宗しんしゅう信徒しんと生命せいめい保険ほけん社長しゃちょう、共保きょうほ生命せいめい保険ほけん社長しゃちょう等とうを歴任れきにんした。

経歴けいれき

九州きゅうしゅうの柳川やながわ藩はん（福岡ふくおか県けん）の下級かきゅう武士ぶしだった堀ほり亨とおるが明治維新めいじいしんにより禄ろくを離はなれた後のち、その次男じなん（7人にん兄弟きょうだい姉妹しまいの4番目ばんめ）として旧きゅう城下町じょうかまちに明治めいじ5年ねん（1872）に生うまれた。城下じょうかを離はなれ、教職きょうしょくと片手間かたてまの農作業のうさぎょうで生計せいけいを立たてる経済けいざい的てきには厳きびしい家庭かていで育そだったが、学業がくぎょう成績せいせきを評価ひょうかした後援こうえん者しゃもあり、熊本くまもとの済々黌せいせいこうに進すすむ。苦学くがくする傍かたわら剣道けんどうにも打うち込こみ頭角とうかくをあらわした。折おりから熊本くまもとに設立せつりつされた第だい五ご高等こうとう中学校ちゅうがっこうの補充ほじゅう科かに入学にゅうがくし、補習ほしゅう講師こうしなどで経済けいざい難なんを凌しのぎながら柔やわら剣道けんどうなどにもいそしみ勉学べんがくに励はげみ第だい五ご高等こうとう学校がっこうに改称かいしょうされた年としに卒業そつぎょうする。明治めいじ27年ねん（1894）に帝国ていこく大学だいがくに入学にゅうがくし、明治めいじ31年ねん（1898）に法科ほうか政治せいじ科かを卒業そつぎょうする。

同年どうねん、大浦おおうら兼武かねたけ（当時とうじ警視総監けいしそうかん）の長女ちょうじょ兼子かねこと結婚けっこんし、翌よく明治めいじ32年ねん（1899）、住友すみともに雇やとい入いれとなる。住友銀行すみともぎんこうでは入社にゅうしゃ翌年よくねん、銀行ぎんこう支配人しはいにんの田辺たなべ理事りじに随行ずいこうし、半年はんとし間あいだ欧米おうべいを視察しさつする。入行にゅうこう4年ねん後ごに中之島なかのしま支店してんの支配人しはいにんとなったが、明治めいじ36年ねん（1903）、大浦おおうら兼武かねたけが逓信ていしん大臣だいじんとして桂かつら太郎たろう内閣ないかくに初はつ入閣にゅうかくしたのを機きに、大臣だいじん秘書官ひしょかんとなることを強つよく求もとめられ、住友銀行すみともぎんこうを辞職じしょくした。

逓信ていしん省しょうでは、日にち露ろ戦争せんそうの戦前せんぜん・戦中せんちゅう・戦後せんごを通つうじ、戦時せんじ体制たいせいの交通こうつう・通信つうしんの整備せいびなどが大おおきく前進ぜんしんしたが、激戦げきせん地ちの事前じぜん現地げんち調査ちょうさなどにも直接ちょくせつ携たずさわり兵站へいたん整備せいびに繋つなげたこともあり、勲くん五ご等とう双そう光こう旭日きょくじつ章しょうを授さづけられた。

明治めいじ39年ねん（1906）、大浦おおうら大臣だいじんの辞任じにんと共ともに、秘書官ひしょかんを辞やめ、大阪おおさかに移うつり、東洋とうよう木材もくざい防腐ぼうふ株式会社かぶしきがいしゃ（現げんケミプロ化成けみぷろかせい）、日本にっぽん火山灰かざんばい株式会社かぶしきがいしゃのそれぞれ専務せんむとして会社かいしゃを経営けいえいするが、明治めいじ41年ねん（1908）に大浦おおうら兼武かねたけが第だい2次じ桂かつら太郎たろう内閣ないかくの農のう商務しょうむ大臣だいじんとして入閣にゅうかくすると、再ふたたび大臣だいじん秘書官ひしょかんとしてサポートすることを求もとめられた。

産業さんぎょう振興しんこうを指揮しきする大浦おおうら農みのり商務しょうむ大臣だいじんの秘書官ひしょかんとして様々さまざまな業務ぎょうむに携たずさわるが、公害こうがい問題もんだいとして深刻しんこく化かしていた住友すみともの四よん坂さか島とう煙害えんがいの解決かいけつへの堀ほり貞さだの尽力じんりょくは被害ひがい者しゃ側がわからも高たかい評価ひょうかを得えた。また、ロンドンで開催かいさいされた日にち英えい博覧はくらん会かいには事務じむ官かんとして携たずさわるとともに、大浦おおうら日にち英えい博覧はくらん会かい総裁そうさいに随行ずいこうし、欧米おうべいを3ヶ月かげつに亘わたる産業さんぎょう視察しさつを行おこなった。明治めいじ44年ねん（1911）、第だい2次じ西園寺さいおんじ内閣ないかくの成立せいりつととも大浦おおうらが下野げやしたのに伴ともない、堀ほり貞さだは秘書官ひしょかんを辞じしたが、その直後ちょくごに妻つま兼子かねこが急逝きゅうせいする。子こはなかった。

京都きょうとに本社ほんしゃを置おく真宗しんしゅう信徒しんと生命せいめい保険ほけん株式会社かぶしきがいしゃの株式かぶしきの4割わりを持もつ西本願寺にしほんがんじの法主ほっしゅ・大谷おおや光瑞こうずい伯爵はくしゃくが、経営けいえいの乱みだれを心配しんぱいし、監督かんとく当局とうきょく者しゃである大浦おおうら農みのり商務しょうむ大臣だいじんに明治めいじ44年ねん（1911）に相談そうだんをしていたが、翌よく大正たいしょう元年がんねん（1912）8月がつに堀ほり貞さだは、西本願寺にしほんがんじからの経営けいえいの独立どくりつを条件じょうけんとした上うえで、同社どうしゃの社長しゃちょうに就任しゅうにんするに至いたった。堀ほり貞さだは、経営けいえい改革かいかくを進すすめ、大正たいしょう3年ねん（1914）、社名しゃめいを共保きょうほ生命せいめい保険ほけん株式会社かぶしきがいしゃと改称かいしょうし、また、大正たいしょう5年ねん（1916）には不安定ふあんていだった西本願寺にしほんがんじ所有しょゆうの株式かぶしきを、久原くはら房之助ふさのすけに肩代かたがわりしてもらうことにより経営けいえいの安定あんていを図はかった。大正たいしょう8年ねん（1919）、久原くはら房之助ふさのすけを社長しゃちょうとし、自みずからは副ふく社長しゃちょうに退しりぞいたが、経営けいえいはその後ごも堀ほり貞さだが指揮しきした。大正たいしょう11年ねん（1922）には、本社ほんしゃを東京とうきょうに移転いてんし社業しゃぎょうの一層いっそうの発展はってんを期きした（なお、共保きょうほ生命せいめい保険ほけん株式会社かぶしきがいしゃは、その後ご、野村のむら生命せいめい保険ほけん株式会社かぶしきがいしゃ、東京生命保険とうきょうせいめいほけん相互そうご会社かいしゃ、T&Dフィナンシャル生命せいめい保険ほけん株式会社かぶしきがいしゃと変遷へんせんしている）。

生命せいめい保険ほけん會社かいしゃ協會きょうかいの理事りじとしては、チルメル問題もんだいと留とめ萠めぐむ町まち債さい問題もんだいに尽力じんりょくしたことが、特記とっきされている。

この間あいだ大正たいしょう2年ねん（1913）に三高さんこう教授きょうじゅの林はやし和太郎わたろうの長女ちょうじょ綾子あやこと再婚さいこんし、二男じなん三さん女じょを儲もうける。

また、国策こくさく会社かいしゃの日本にっぽん染料せんりょう製造せいぞう（現げん住友すみとも化学かがく）は設立せつりつ当初とうしょから、久原くはら房之助ふさのすけ傘下さんかの日立製作所ひたちせいさくしょは設立せつりつの翌年よくねんからそれぞれ取締役とりしまりやくを務つとめた。

傍かたわら、幼少ようしょうより鍛錬たんれんしてきた剣道けんどうの振興しんこうにかかわり、大だい日本にっぽん武徳ぶとく会かいの常つね議員ぎいん・商議しょうぎ員いんとして、同どう会かいの運営うんえい・発展はってんに深ふかく貢献こうけんした。

政治せいじには関心かんしんは高たかく、議員ぎいんとして国政こくせいの参画さんかくを期待きたいする人ひとも少すくなくなかったが、大浦おおうらの七光ななひかりと言いわれることを嫌きらい結局けっきょく出馬しゅつばには至いたらなかった。

性格せいかくは質素しっそ、熱誠ねっせい、情誼じょうぎに厚あつく、細心さいしんと大胆だいたんが同居どうきょ。短たん體たい頑健がんけん、剣道けんどう、柔道じゅうどう、短艇たんていなど体力たいりょくに任まかせるところがあったが、それ以上いじょうに酒さけにまつわる逸話いつわが多おおい。号ごうは圖ず(斗と)南みなみ

昭和しょうわ2年ねん（1927）7月がつ27日にち逝去せいきょ。正せい五ご位いを追つい陞される。

栄典えいてん

外国がいこく勲章くんしょう佩用はいよう允許いんきょ

• 1905年ねん（明治めいじ38年ねん）6月27日にち - 大韓たいかん帝国ていこく勲くん三さん等とう八卦はっけ章あきら

著作ちょさく

• 小島こじま憲一郎けんいちろう編へん『堀ほり貞さだ自叙伝じじょでん』小島こじま憲一郎けんいちろう、1928年ねん。