多古たここう湿原しつげん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
多古たここう湿原しつげん
所在地しょざいち 千葉ちばけん香取かとりぐん多古たこまち山武さんぶぐん横芝よこしばひかりまち
位置いち 北緯ほくい3543ふん22びょう 東経とうけい14029ふん0びょう / 北緯ほくい35.72278 東経とうけい140.48333 / 35.72278; 140.48333座標ざひょう: 北緯ほくい3543ふん22びょう 東経とうけい14029ふん0びょう / 北緯ほくい35.72278 東経とうけい140.48333 / 35.72278; 140.48333
面積めんせき  0.24 km2
プロジェクト 地形ちけい
テンプレートを表示ひょうじ
地図
多古たここう湿原しつげん所在地しょざいち

多古たここう湿原しつげん(たこひかりしつげん)は、千葉ちばけん香取かとりぐん多古たこまち山武さんぶぐん横芝よこしばひかりまち千葉ちば県内けんない最大さいだいきゅう湿原しつげんである[1]

概要がいよう[編集へんしゅう]

多古たこまちきゅうひかりまち境界きょうかい位置いちするため多古たここう湿原しつげんばれている[2]面積めんせきやく24ヘクタールで、千葉ちば県内けんない最大さいだいきゅうである[1]栗山川くりやまがわとうかわ合流ごうりゅうする場所ばしょ位置いちする[1][3]栗山川くりやまがわ中流ちゅうりゅうには多古たここう湿原しつげんのほかうみあとみずうみである坂田池さかたいけ乾草かんそうぬま(ひぐさぬま)があり、湿原しつげんぐんをなしている[1]

多古たここう湿原しつげん千葉ちばけんレッドデータブックに掲載けいさいされる千葉ちばけんさい重要じゅうよう保護ほご植物しょくぶつ生育せいいくする場所ばしょでもある[4][5][6]。また、ムジナクグというカヤツリグサスゲぞく植物しょくぶつはこの湿原しつげんにのみられる[4][5]

栗山川くりやまがわから多古たここう湿原しつげん横芝よこしばひかりまちがわ

湿原しつげん[編集へんしゅう]

縄文じょうもん時代じだい縄文じょうもんうみすすむのため多古たここう湿原しつげんふく九十九里平野くじゅうくりへいや海底かいていにあった[7]。その気候きこう変動へんどうによりうみ退すさこり、沖積ちゅうせきとして多古たここう湿原しつげんまれた[4]本来ほんらいは汽水域すいいき寒冷かんれい育成いくせいする植物しょくぶつ多古たここう湿原しつげん生育せいいくしているのは、かつてうみ寒冷かんれいであったころのたねのこそんしたものとかんがえられている[8]明治めいじには70ヘクタールほどの面積めんせきだったと推定すいていされているが、周辺しゅうへん水田すいでんとなってやく24ヘクタールに面積めんせき縮小しゅくしょうされた[1]。かつては多古たここう湿原しつげんえるヨシ家屋かおくかや屋根やね材料ざいりょうとして利用りようするため、周辺しゅうへん住民じゅうみんによる共同きょうどう管理かんりおこなわれていた[5]

植生しょくせい[編集へんしゅう]

多古たここう湿原しつげんではこれまでに288しゅ植物しょくぶつ確認かくにんされている[9]湿原しつげん中央ちゅうおうヨシやカモノハシがめ、周辺しゅうへんハンノキかこんでいる[10]。ハンノキは土地とち境界きょうかいしめすためにならんでえられている[10]はるにはヨシ、オオニガナワレモコウ、エゾツリスゲ、チガヤ、ノハナショウブ、ヌマトラノオなどが生育せいいくする[10]なつからあきにはヨシ、オギなどがそだつほか、コオニユリ、コバギボウシ、カサスゲ、ツルマメ、ヒメシダ、クサレダマ、エゾミソハギなどもられる[8]周辺しゅうへんからセイタカアワダチソウなどの外来がいらいしゅ進入しんにゅうしている[11]

かつてうみであったころの名残なごりで、汽水域すいいき育成いくせいするカヤツリグサのオオクグが内陸ないりくにある多古たここう湿原しつげん生育せいいくしている[8]。また、寒冷かんれいであったころの名残なごりで、カヤツリグサのエゾツリスゲ、ヌマクロボスゲ、ムジナスゲがられる[8]

多古たここう湿原しつげん発見はっけんされた新種しんしゅとして、カヤツリグサのムジナクグがある[8]。1989ねん確認かくにんされ[8]、のちに新種しんしゅとしてみとめられた[12]。その生育せいいく確認かくにんされた植物しょくぶつのうち、アゼオトギリ、エキサイゼリ、エゾツリスゲ、ヌマクロボスゲ、ムジナスゲ、コアナミズゴケが2009ねん千葉ちばけんレッドデータブックさい重要じゅうよう保護ほご対象たいしょうとして掲載けいさいされている[13]。また。けん重要じゅうよう保護ほごとしてレッドデータブックに掲載けいさいされているカキツバタ、キセルアザミ、コムラサキなどの植物しょくぶつられる[14]

動物どうぶつ昆虫こんちゅう[編集へんしゅう]

千葉ちばけんではレットデータブックに掲載けいさいされているニホンアカガエルられる[15]

鳥類ちょうるいもおよそ50種類しゅるいほど観察かんさつでき、チョウゲンボウノスリミサゴといった猛禽もうきんるいから、カルガモ、マガモなどの水鳥みずとり、タゲリ、カワセミ、ヒバリなどをることができる[16]

昆虫こんちゅうではミドリシジミやオオルリハムシなどがられる[17]。オオルリハムシは、多古たここう湿原しつげんでははるあきにそれほどめずらしくはないが、全国ぜんこくてきには生息せいそくかぎられ、千葉ちばけん重要じゅうよう保護ほご生物せいぶつ指定していされている[18]

保全ほぜん活動かつどう[編集へんしゅう]

多古たここう湿原しつげんでは、開発かいはつによって減少げんしょうする栗山川くりやまがわ流域りゅういき湿地しっちたい中心ちゅうしん活動かつどうする「栗山川くりやまがわ流域りゅういき自然しぜん調査ちょうさかい」による調査ちょうさ研究けんきゅう保全ほぜん活動かつどうおこなわれていた[2]。「栗山川くりやまがわ流域りゅういき自然しぜん調査ちょうさかい」では横芝よこしばひかりまちがわのヨシばら作業さぎょう観察かんさつかいおこなっていたが、多古たこまちがわにも保全ほぜん活動かつどう必要ひつようせいがあるとかんがえ、多古たこまちの「まちづくりテラスのかい」と共同きょうどうで「多古たここう湿原しつげん保全ほぜんかい」をげた[19]

多古たこまち横芝よこしばひかりまち住民じゅうみんによってつくられた「多古たここう湿原しつげん保全ほぜんかい[5]によってヨシのりがおこなわれている[6]どうかいによる観察かんさつかいのほか[20]多古たここう湿原しつげん存在そんざい周知しゅうちするための講演こうえんかい[21][22]写真しゃしんてんおこなわれている[23]。 また、多古たここう湿原しつげん保全ほぜんかい多古たここう湿原しつげんについての図書としょ多古たここう湿原しつげん 植物しょくぶつ自然しぜん』も出版しゅっぱんしている[5][24]

1997ねん横芝よこしばひかりまちにある坂田さかたふれあい公園こうえんない湿性しっせい植物しょくぶつえんつくられ、栗山くりやま川中かわなか流域りゅういき植物しょくぶつ移植いしょくされ、この地域ちいき特徴とくちょうてき植物しょくぶつ保護ほご育成いくせいおこなわれている[25][26]。ムジナスゲ、オオクグ、ムジナクグなどの植物しょくぶつ湿性しっせい植物しょくぶつえんでも保存ほぞん育成いくせいされている[27]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • たにじょう勝弘かつひろ監修かんしゅう多古たここう湿原しつげん 植物しょくぶつ自然しぜん多古たここう湿原しつげん保全ほぜんかい、2017ねん6がつ15にち、120ぺーじ 
  • 千葉ちばけん生物せいぶつ学会がっかい編集へんしゅう千葉ちばけんいきものかんさつガイド 千葉ちばけん生物せいぶつ学会がっかい70周年しゅうねん記念きねん千葉ちばけん生物せいぶつ学会がっかい、2018ねん2がつ、125ぺーじISBN 978-4-925111-57-7 
  • 千葉ちばけん史料しりょう研究けんきゅう財団ざいだん千葉ちばけん自然しぜん べつへん2 千葉ちばけん植物しょくぶつ写真しゃしんしゅう』 49かん千葉ちばけんけんシリーズ〉、2005ねん12月。 
  • 千葉ちばけん史料しりょう研究けんきゅう財団ざいだん千葉ちばけん自然しぜん 本編ほんぺん5 千葉ちばけん植物しょくぶつ2 植生しょくせい』 44かん千葉ちばけんけんシリーズ〉、2001ねん3がつ 
  • たにじょう勝弘かつひろ; 市原いちはら通雄みちお横芝よこしばひかりまちふれあい坂田池さかたいけ公園こうえん湿性しっせい植物しょくぶつえん植生しょくせい 栗山川くりやまがわ流域りゅういき自然しぜん調査ちょうさかい支援しえんともに20ねん栗山川くりやまがわ流域りゅういき自然しぜん調査ちょうさかい、2020ねん3がつ、11ぺーじ 
  • たにじょう勝弘かつひろ多古たここう湿原しつげん植物しょくぶつ 識別しきべつむずかしいスゲぞく見方みかたぶしはな紹介しょうかい千葉ちばけん植物しょくぶつ研究所けんきゅうじょ、2021ねん、7ぺーじ 
  • たにじょう勝弘かつひろ多古たここう湿原しつげん植物しょくぶつとその保護ほごについて」『千葉ちば生物せいぶつだい59かんだい1ごう千葉ちばけん生物せいぶつ学会がっかい、2009ねん7がつ、17-24ぺーじISSN 0385-0986 
  • Endo Y.、Yashiro K.「Carex × Takoensis Endo et Yashiro (Cyperaceae), a New Hybrid from Chiba Prefecture, Central Japan」『植物しょくぶつ研究けんきゅう雑誌ざっし(J.Jpn.Bot.)』だい70かんだい5ごう、ツムラ、1995ねん10がつ、273-279ぺーじISSN 0022-20622021ねん5がつ2にち閲覧えつらん 
  • 市原いちはら通雄みちお「「栗山川くりやまがわ流域りゅういき自然しぜん調査ちょうさかい」の活動かつどう」『地下水ちかすい新生しんせいだい20ごう横芝よこしばひかりまち社会しゃかい文化ぶんか、2018ねん3がつ、17-18ぺーじ 
  • 堀井ほりいけんさく (2020ねん4がつ6にち). “<ふさのこくさがせたから> 多古たここう湿原しつげん横芝よこしばひかり多古たこ) 希少きしょう動植物どうしょくぶつ宝庫ほうこ 保全ほぜんかい維持いじ後世こうせいに」”. 千葉ちば日報にっぽう (千葉ちば日報にっぽうしゃ): p. 2 
  • 馬場ばば秀幸ひでゆき (2015ねん10がつ1にち). “<地方ちほうはつワイド> 「多古たここう湿原しつげん」の価値かちって 世界せかい唯一ゆいいつのムジナクグ自生じせい”. 千葉ちば日報にっぽう (千葉ちば日報にっぽうしゃ): p. 10 
  • 多古たここう湿原しつげん価値かちかたる たにじょう勝弘かつひろさん貴重きちょう植物しょくぶつ[ムジナクグ]を紹介しょうかい”. 千葉ちば日報にっぽう (千葉ちば日報にっぽうしゃ): p. 10. (2017ねん6がつ7にち) 
  • 植生しょくせい維持いじ総動員そうどういん 多古たここう湿原しつげん 背丈せたけえのヨシり”. 千葉ちば日報にっぽう (千葉ちば日報にっぽうしゃ): p. 10. (2018ねん2がつ12にち) 
  • “ハナショウブ原種げんしゅ開花かいか 県内けんないかぶ希少きしょうしゅ観察かんさつ 多古たここう湿原しつげん”. 千葉ちば日報にっぽう (千葉ちば日報にっぽうしゃ): p. 2. (2018ねん6がつ5にち) 
  • 多古たここう湿原しつげん”. 多古たここう湿原しつげん保全ほぜんかい. 2021ねん5がつ2にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]